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内部留保はなぜ使わない?【図解】3つの誤解と経営者が本当に知るべき戦略的活用法
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「過去最高益を更新したのに、なぜ企業は内部留保を吐き出さないのか」という批判的なニュースを目にすることがあります。 経営者の立場からすれば「内部留保なぜ使わないのか」と問われても、「すでに設備や在庫に使っている」「万が一のために取り崩せない」というのが本音ではないでしょうか。 内部留保(利益剰余金)は、決して金庫に眠る現金ではありません。本記事では、世間の誤解を解き明かしつつ、会社を強くするための内部留保の正しい理解と、攻めと守りの戦略的な活用法を徹底解説します。 監修者Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。 まずは結論!「内部留保を使わない」と言われる理由が一目でわかる比較表 世間一般で語られる「内部留保」と、経営現場における実態には大きな乖離があります。 「なぜ使わないのか」という批判は、そもそも内部留保を「現金」だと誤認していることから生じています。 まずは、この認識のズレを解消するために、以下の比較表で実態を整理しました。 比較項目世間のイメージ(誤解)経営上の実態(正解)内部留保の正体会社の金庫に眠っている「現金」過去の利益の蓄積であり、設備や在庫など様々な資産に形を変えている使わない理由経営者がケチで溜め込んでいるすでに事業投資に使われているため、物理的に「使う」ことができない場合が多い増える意味従業員への還元を拒んだ結果会社の財務基盤が強化され、倒産リスクが下がり信用力が高まった結果 内部留保が増えることは、必ずしも現金の増加を意味しません。 利益が出ていても、その資金がすぐに機械の購入や店舗の改装に使われていれば、内部留保(利益剰余金)の数値は増えますが、手元に使える現金は残っていないのです。 そもそも内部留保とは?経営者がおさえるべき3つの基本 経営者であっても、決算書の「利益剰余金」と実際の「現預金」の関係を正確に説明できる人は多くありません。 内部留保を戦略的に活用するためには、まず会計上の正しい定義と仕組みを理解する必要があります。 ここでは、経営判断の基礎となる3つのポイントを解説します。 1. 内部留保の正体は「利益の蓄積」であり「現金」ではない 内部留保(利益剰余金)とは、創業から現在までに会社が稼ぎ出した利益のうち、配当などで社外へ流出させずに社内に蓄積された金額の累計を指します。 ここで重要なのは、内部留保はあくまで「資金の調達源泉(どうやってお金を集めたか)」を示しているに過ぎないという点です。 自分で稼いで調達した資金が、現在どのような形(運用形態)になっているかは、貸借対照表の左側(資産の部)を見なければわかりません。 多くの場合、蓄積された利益は現預金だけでなく、売掛金、在庫(棚卸資産)、土地、建物、機械装置などに姿を変えています。 したがって、「内部留保が600兆円ある」というニュースは、「日本企業全体で600兆円の現金が眠っている」という意味では決してないのです。 2. 貸借対照表と損益計算書で見る内部留保の仕組み【図解】 内部留保が積み上がる仕組みは、決算書(財務諸表)のつながりを理解すると明確になります。 損益計算書(P/L)で計算された1年間の「当期純利益」から、株主への配当金を差し引いた残りが、貸借対照表(B/S)の純資産の部にある「繰越利益剰余金」に加算されます。 これが毎期繰り返されることで、利益剰余金(内部留保)という貯金箱の残高が増減していきます。 例えば、100万円の利益が出ても、そのお金で100万円の機械を買えば、資産の部に「機械装置」が計上されますが、右側の純資産の部には「利益剰余金100万円」が残ります。 このように、お金を使ってしまっても帳簿上の内部留保は減らないため、「使わずに溜め込んでいる」という誤解が生まれるのです。 3. なぜ「内部留保=悪」というイメージが広まったのか? メディアなどで「内部留保=悪」として批判される背景には、「企業が利益を労働者に分配せず、不当に溜め込んでいる」という見方があります。 確かに、統計上、企業の内部留保が増加し続ける一方で、従業員の賃金上昇がそれに追いついていないという側面は否定できません。 そのため、労働組合などからは「内部留保を取り崩して賃上げに回すべきだ」という主張がなされます。 しかし、前述の通り内部留保の多くはすでに設備投資などに回っています。 無理に「内部留保を吐き出す(現金を配る)」には、工場や土地を売却して現金化しなければならないケースもあり、それは事業規模の縮小や雇用の喪失につながる本末転倒な結果を招きかねないのです。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 内部留保は「現金の保管場所」ではなく「利益の記録」です。帳簿上の数字と手元の現金は全く別物。この違いを理解することが経営判断の第一歩です。 【データで見る】日本企業の内部留保は600兆円超!過去最高を更新し続ける現状 ニュースでよく耳にする「企業の内部留保が過去最高」という報道。その実態はどうなっているのでしょうか。 ここでは、財務省の統計データや企業規模による違い、そして財務安全性との関係性について、客観的な数値をもとに解説します。 1. 財務省の法人企業統計で見る内部留保の推移 財務省が発表する法人企業統計調査によると、日本企業の内部留保(利益剰余金)は増加の一途をたどっており、2024年度には600兆円を大きく超え、過去最高を更新し続けています。 この増加の背景には、近年の円安による輸出企業の収益改善や、コロナ禍からの経済回復があります。 また、長引くデフレ経済下で、企業が将来の不安から設備投資を抑制し、手元資金を厚くしようとする防衛本能が働いたことも要因の一つです。 特に2012年度以降、利益剰余金は毎年増加傾向にあり、日本企業全体として「稼いだ利益を社内に蓄積する」という財務体質が強固になっていることが読み取れます。 2. 中小企業の内部留保の平均は? 「600兆円」という数字は、あくまで大企業を含めた日本全体の合計値です。実は、中小企業に限って見れば、内部留保は決して潤沢ではありません。 日本の中小企業の約7割は赤字決算であると言われており、赤字企業は利益剰余金が積み上がるどころか、過去の蓄積を取り崩している状態です。 黒字企業であっても、大企業に比べれば内部留保の厚みは薄く、数ヶ月の売上減少で資金ショートしてしまう会社も少なくありません。 大企業の巨額な内部留保と、資金繰りに奔走する中小企業の実態を同一視して議論することは危険です。 中小企業においては、むしろ「いかに内部留保を増やして生存確率を高めるか」が喫緊の課題といえます。 3. 内部留保と自己資本比率の関係性 内部留保(利益剰余金)が増えることは、貸借対照表の「純資産(自己資本)」が増加することを意味します。これにより、総資産に占める自己資本の割合である「自己資本比率」が上昇します。 自己資本比率は、会社の財務的な安全性を示す最も重要な指標の一つです。 内部留保が積み上がり自己資本比率が高まれば、借入金への依存度が下がり、不況時でも倒産しにくい「強い会社」になります。 金融機関も融資の審査において自己資本比率を重要視するため、内部留保の増加は資金調達力の向上にも直結します。 つまり、内部留保の積み増しは、単なる溜め込みではなく、企業の存続基盤を強化する行為そのものなのです。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 大企業と中小企業では内部留保の実態が全く異なります。中小企業は「いかに増やすか」、大企業は「いかに使うか」が課題。自社の立ち位置を見極めましょう。 経営者が内部留保を使わない(使えない)4つの本当の理由 世間からの批判とは裏腹に、経営者が内部留保を安易に取り崩せないのには切実な理由があります。 ここでは、建前と本音、そして会計上の実態と心理的要因という4つの視点から、経営者が「使わない(使えない)」本当の理由を深掘りします。 1.【建前】将来の不確実性に備えるための「守りの資金」 経営者が内部留保を厚くする最大の理由は、将来の不測の事態に備えるためです。 リーマンショックや東日本大震災、そして記憶に新しい新型コロナウイルスのパンデミックなど、経営環境を一変させる危機は突然やってきます。 売上が急減した際、従業員の給与や家賃などの固定費を支払い続け、会社を存続させるためには、手元に潤沢な資金(内部留保の裏付けとなる現預金)が必要です。 「会社を潰さず、雇用を守り抜く」という責任感から、経営者は利益を配当や過度な投資に回さず、万が一の時の「防波堤」として内部留保を積み増そうとするのです。 2.【本音】明確な投資先がない「ビジョンの欠如」 「中長期的な成長のために資金が必要だ」と説明する経営者は多いですが、具体的に何に投資するのかを問われると、明確な答えが返ってこないケースも少なくありません。 本音の部分では、魅力的な投資案件や新規事業のアイデアがなく、「とりあえず持っておくのが安心」という消極的な理由で内部留保が積み上がっている場合もあります。 「自分の在任中はリスクを取りたくない」「次の経営者に判断を委ねたい」という事なかれ主義や、明確な成長ビジョンの欠如が、結果として目的のない内部留保の増大を招いている側面は否定できません。 3.【実態】設備投資や在庫として「すでに使われている」 これは「使わない」のではなく、「物理的に使えない」という会計上の実態です。前述した通り、内部留保(利益剰余金)は現金の形とは限りません。 例えば、利益を使って新工場を建設したり、将来の販売のために在庫を大量に仕入れたりした場合、帳簿上の内部留保は減りませんが、手元の現金は消えています。 「内部留保を使え」と言われても、すでに機械や建物、在庫という形で事業活動に投入済みであるため、これ以上現金として配当や賃上げに回す余力がないというのが、多くの企業の偽らざる実情なのです。 4.【心理】失敗を恐れる「経営者のリスク回避姿勢」 日本企業の経営者は、欧米に比べてリスク回避志向が強い傾向にあります。 一度の失敗で経営責任を問われることを恐れ、大胆なM&Aや大規模な研究開発投資(R&D)に二の足を踏んでしまうのです。 失敗して資産を減らすくらいなら、現預金のまま保持して内部留保を維持したいという心理が働きます。 また、デフレ経済が長かった日本において、「現金を持つこと」が最も安全な資産防衛策であったという成功体験も影響しています。 この「失敗を恐れる心理」が、攻めの投資を阻害し、結果として有効活用されないまま内部留保が積み上がる要因となっています。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ「使わない」と「使えない」は違います。会計上の制約、将来への不安、そして経営者自身の心理的ハードルが複雑に絡み合っています。本質的な解決には明確なビジョンが必要です。 内部留保のメリット・デメリットを徹底比較 内部留保は「善」か「悪」かという二元論ではなく、バランスの問題です。 適度な内部留保は会社を守りますが、過度な蓄積は弊害も生みます。 自社にとって最適な水準を見極めるために、メリットとデメリットを整理して比較しましょう。 内部留保のメリット 内部留保には主に以下のようなメリットがあります。 それぞれ解説していきます。 1. 財務基盤の安定化(倒産リスクの低減) 内部留保の最大のメリットは、企業の安全性が高まることです。内部留保(利益剰余金)が増えれば純資産が増加し、自己資本比率が向上します。 自己資本が厚ければ、一時的に赤字が出ても債務超過(資産より負債が多い状態)に陥るリスクが低くなります。 また、手元に現預金として確保されていれば、急な売上減少や取引先の倒産といったトラブルが発生しても、資金ショートを起こさずに持ちこたえることができます。 中小企業にとって、内部留保は会社と従業員の生活を守るための「命綱」であり、経営の安定には不可欠な要素です。 2. 金融機関からの信用力向上 銀行などの金融機関は、融資の審査において企業の「返済能力」と「安全性」を厳しくチェックします。 この際、最も重視される指標の一つが、内部留保の蓄積状況(利益剰余金の額)と自己資本比率です。 内部留保が潤沢な企業は、「過去に利益を出し続けてきた実績がある」「財務体質が健全で貸し倒れリスクが低い」と評価されます。 その結果、融資が受けやすくなるだけでなく、金利の引き下げや無担保・無保証での借入が可能になるなど、有利な条件で資金調達ができるようになります。 3. 機動的な事業展開が可能に 内部留保を原資として現預金を確保しておけば、チャンスが訪れた際に即座に投資を行うことができます。 銀行融資や増資によって資金を調達する場合、審査や手続きに時間がかかり、好機を逃してしまう可能性があります。 また、借入金には返済義務と利息の支払いが発生しますが、自己資金であればその負担もありません。 スピーディーな設備投資やM&A、新規事業への参入など、経営者の判断一つで機動的に「攻めの経営」を展開できるのは、豊富な内部留保があってこそです。 内部留保のデメリット 一方で、内部留保には以下のようなデメリットもあります。 それぞれ解説していきます。 1. 機会損失と資金効率の悪化(ROEの低下) 内部留保を現預金のまま過剰に溜め込むことは、資金を有効活用できていないことを意味します。投資家からは「資金効率が悪い」と判断され、ROE(自己資本利益率)の低下を招きます。 本来であれば、その資金を成長分野に投資することで、さらなる利益を生み出せたかもしれません。 内部留保をただ眠らせておくことは、将来得られたはずの利益を逃している「機会損失」の状態であり、企業価値の向上を阻害する要因となり得ます。 2. 株主や従業員からの不満 会社が利益を上げているにもかかわらず、配当も増やさず、賃上げも行わずに内部留保ばかりを増やせば、ステークホルダーからの不満が高まります。 株主は「もっと配当を出せ」と要求し、従業員は「会社は儲かっているのに給料が上がらない」とモチベーションを低下させます。 「内部留保を使わない」姿勢は、優秀な人材の流出や株価の低迷を招き、長期的には会社の競争力を削ぐ結果につながるリスクがあります。 3. 留保金課税による税負担増のリスク 特定同族会社(創業家などの少数の株主グループが株式の50%超を保有する会社)の場合、過度な内部留保に対してペナルティ的な税金が課されることがあります。これを「留保金課税」といいます。 これは、配当を出さずに会社に利益を溜め込むことで、株主個人の所得税負担を回避することを防ぐための制度です。 通常の法人税に加えて追加の税金を払わなければならなくなるため、オーナー企業においては、内部留保の水準と税負担のバランスを慎重に検討する必要があります。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 内部留保は諸刃の剣。守りすぎれば成長の機会を逃し、使いすぎれば会社の基盤が揺らぎます。自社の成長ステージに合わせた最適なバランスを見つけることが経営の腕の見せ所です。 攻めの経営へ!内部留保を会社の成長に変える9つの戦略的活用法 内部留保はただ守るためのものではなく、未来をつくるための原資です。 「内部留保を使わない」と言われないよう、経営者はこの資金を戦略的に循環させる必要があります。 ここでは、企業のステージを変える9つの活用法を具体的に紹介します。 1. 収益性を高める「設備投資」 老朽化した機械の更新や、生産効率を高める最新設備の導入は、最も基本的な内部留保の活用法です。 生産能力の増強や省力化によって原価を低減できれば、利益率が向上し、投資額以上のリターン(利益)となって将来戻ってきます。 単なる現状維持ではなく、「稼ぐ力」を強化するための設備投資は、内部留保を次の利益に変える好循環の第一歩です。 2. 競争優位を築く「研究開発(R&D)投資」 激変する市場環境の中で生き残るためには、新しい商品やサービスの開発が不可欠です。 内部留保を活用して研究開発(R&D)を行うことで、他社にはない技術やノウハウを蓄積し、競争優位性を築くことができます。 研究開発は成果が出るまでに時間がかかり、失敗のリスクも伴いますが、返済義務のない内部留保(自己資本)であれば、長期的な視点でじっくりと取り組むことが可能です。 3. 組織力を強化する「人材への投資(採用・教育・賃上げ)」 「企業は人なり」と言われるように、人材への投資は最もリターンが高い投資の一つです。 内部留保を原資に賃上げを行えば、従業員のモチベーション向上や定着率の改善につながります。 また、採用コストをかけて優秀な人材を獲得したり、研修費を投じて社員のスキルアップを図ったりすることで、組織全体の生産性が高まります。 人への投資は、財務諸表には表れない「人的資産」として会社の成長を支える土台となります。 4. 事業規模を拡大する「M&A(企業の買収・合併)」 自社の成長スピードを加速させる手段として、M&A(合併・買収)は非常に有効です。 内部留保を活用して他社を買収することで、時間をかけずに新規事業や販路、技術、人材を手に入れることができます。 ゼロから事業を立ち上げるリスクを回避しつつ、一気に事業規模を拡大できるため、豊富な内部留保を持つ企業にとってM&Aは、最もダイナミックな資金活用法といえるでしょう。 5. 信頼を高める「株主への還元(配当・自社株買い)」 事業投資に回す予定のない余剰資金であれば、株主に還元することも重要な戦略です。 増配(配当金の増額)や自社株買いを行うことで、株主からの信頼を獲得し、株価の上昇につなげることができます。 特に上場を目指す企業や、株主との関係を重視する企業においては、適切な株主還元方針を示すことが、市場からの評価を高め、次の資金調達を円滑にする鍵となります。 6. 業務効率を劇的に改善する「DX(デジタルトランスフォーメーション)投資」 アナログな業務プロセスをデジタル化するDX投資は、人手不足の解消や業務効率の劇的な改善をもたらします。 会計システムや顧客管理システム(CRM)の導入、RPAによる自動化などに内部留保を投じることで、社員は付加価値の高い業務に集中できるようになります。 DX投資は、コスト削減だけでなく、新たなビジネスモデルの創出にもつながる攻めの投資です。 ※出典:経済産業省|DX推進ガイドライン 7. 持続可能な成長を実現する「ESG(環境・社会・ガバナンス)投資」 近年、企業の社会的責任(CSR)やSDGsへの取り組みが重視されています。 環境負荷の低減や働き方改革、ガバナンス強化といったESG分野への投資は、ブランドイメージの向上や優秀な人材の確保に寄与します。 短期的な利益には直結しにくい分野ですが、内部留保を活用して社会課題の解決に取り組むことは、企業の持続可能性(サステナビリティ)を高めるために不可欠です。 8. 不測の事態に備える「財務基盤の強化(借入金返済など)」 有利子負債(借入金)が多い企業の場合、内部留保を使って借金を返済し、財務体質を改善することも立派な活用法です。 借入金が減れば支払利息の負担が軽くなり、キャッシュフローが改善します。 また、自己資本比率がさらに向上するため、銀行からの格付けが上がり、いざという時に新たな融資を受けやすくなります。 守りを固めることは、次の攻めに転じるための準備でもあります。 9. 新たな収益源を作る「新規事業への挑戦」 既存事業の市場が縮小していく中、第二、第三の収益の柱を作ることは経営の至上命題です。 内部留保という余裕資金があるうちに、リスクを取って新規事業に挑戦すべきです。 失敗しても本業が揺るがない範囲で予算を組み、トライアンドエラーを繰り返すことができるのは、内部留保がある企業だけの特権です。 現在の利益(内部留保)を、未来の収益源(新規事業)に変換する意識が、永続企業を作る条件です。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ9つの活用法は「全部やる」のではなく、自社のステージと経営課題に合わせて「選択と集中」することが重要です。明確な経営計画があってこそ、内部留保は真の力を発揮します。 【ケーススタディ】あなたの会社は大丈夫?内部留保から見る会社の健康診断 内部留保の数字だけを見て安心していませんか? 実は、その中身や増減の背景にこそ、会社の危険な兆候が隠れていることがあります。 ここでは3つのケーススタディを通じて、決算書から読み解く会社の健康診断を行います。 1.【ケース1】内部留保は多いのに現金が少ない(黒字倒産の危険性) 貸借対照表上は利益剰余金(内部留保)が積み上がっているのに、手元の現預金が極端に少ないケースです。 これは、利益が「売掛金(未回収の代金)」や「不良在庫(売れない商品)」として滞留している可能性があります。 帳簿上は黒字でも、現金が入ってこなければ支払いができず、いわゆる「黒字倒産」に陥るリスクがあります。 「利益は出ているのにお金がない」と感じたら、まずは売掛金の回収状況や在庫の回転率をチェックし、資金繰りの改善を急ぐ必要があります。 2.【ケース2】内部留保がマイナス(累積赤字)になっている 繰越利益剰余金がマイナスになっている場合、それは創業からの赤字が利益を上回っている「累積赤字」の状態です。 さらにこのマイナスが大きくなり、資本金の額を超えてしまうと「債務超過(純資産がマイナス)」となります。 これは銀行からの融資が極めて困難になる危険水域です。 一刻も早い黒字化計画の策定と、役員借入金の資本化や増資などの抜本的な財務対策が求められます。 まさに経営の非常事態と言えるでしょう。 3.【ケース3】内部留保の伸び率が同業他社より低い 同業他社に比べて内部留保の蓄積スピードが遅い場合、収益力が低下している可能性があります。 売上は伸びていても利益率が低い、あるいは固定費が高すぎるなどの原因が考えられます。 また、過度な節税対策(保険や高級車の購入など)によって、本来残すべき利益を減らしてしまっているケースも散見されます。 内部留保は会社の基礎体力です。 過度な節税を見直し、しっかりと税金を払ってでも利益を積み増していく経営へと舵を切るタイミングかもしれません。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 決算書は会社の健康診断書。内部留保の「額」だけでなく、「質」「中身」「他社との比較」まで見て初めて、本当の財務状態が見えてきます。定期的なチェックを習慣にしましょう。 内部留保の最適解は「経営計画書」にある! 「結局、いくら内部留保を持っていれば正解なのか?」 その答えは、経営者の頭の中だけではなく、具体的な「経営計画書」の中にあります。 どんぶり勘定ではなく、根拠に基づいた目標設定が会社の未来を決めます。 1. なぜ、戦略的な資金活用に経営計画書が不可欠なのか? 内部留保を「なんとなく不安だから」という理由で貯めていると、いつまでたっても投資に踏み切れず、会社の成長が止まってしまいます。 逆に、無計画に使えば資金ショートのリスクが高まります。 「5年後に売上を2倍にする」「3年後に新工場を建てる」といった具体的なビジョンと、それを実現するための数値計画(経営計画書)があって初めて、「今、いくら貯めるべきか」「いつ、いくら使うべきか」という最適な資金配分が見えてくるのです。 2. 計画書で「未来の支出」を明確にし、必要な内部留保額を算出する 経営計画書を作成する際は、まず「守りの資金」と「攻めの資金」を明確にします。 守りの資金として、固定費の3〜6ヶ月分の現預金を確保することを最低ラインとします。 その上で、将来の設備投資や人材採用、M&Aなどに必要な「攻めの資金」を積み上げます。 こうして逆算することで、「来期はこれだけの利益(内部留保)が必要だ」という明確な目標が決まり、社員とも危機感や方向性を共有できるようになります。 3. 今すぐ使える!Encoach代表北薗監修「経営計画書テンプレート」 「経営計画書を作りたいが、何から始めればいいかわからない」という経営者の方へ。 Encoachでは、数多くの財務支援実績をもとに開発された、実践的な「経営計画書テンプレート」を提供しています。 数値を入力するだけで、自社の財務状況や必要な利益目標が可視化できるツールです。 まずはこのテンプレートを使って、自社の現在地と目指すべき未来を数字で描いてみてください。 それが戦略的な内部留保活用の第一歩です。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 経営計画書は「作って終わり」ではありません。定期的に見直し、実績と比較し、軌道修正する。このサイクルを回すことで、内部留保は初めて「戦略的な武器」になります。 会社の利益構造にお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 財務のプロがあなたの会社の課題を正確に可視化します 「利益は出ているはずなのに手元にお金がない」「内部留保をどこまで増やせばいいかわからない」といったお悩みはありませんか? Encoachでは、決算書上の数字だけでなく、実質的なキャッシュフローや財務体質を分析し、あなたの会社が抱える見えにくい財務課題を明確にします。 漠然とした不安を数値に基づいた経営判断へと変えるお手伝いをいたします。 資金繰り改善から事業計画策定までワンストップでサポート 銀行融資の獲得に向けた格付け対策から、節税と内部留保のバランスを考慮した役員報酬の適正化まで、幅広くサポートします。 単なる経理代行ではなく、経営者のパートナーとして「会社のお金」を最大化するための戦略を共に描きます。 将来の事業承継やM&Aを見据えた、長期的な財務戦略の策定もお任せください。 まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 財務の専門家が、貴社の状況に合わせたオーダーメイドの解決策をご提案します。 まずは現状の財務診断や、ちょっとした疑問の解消から始めてみませんか? 下記のLINEリンクから簡単に無料相談にお申し込みいただけます。 お金の悩みを解決し、本業の成長に集中できる環境を整えましょう。 LUNEで無料相談する 内部留保に関するよくある7つの質問 最後に、内部留保に関して経営者から寄せられることの多い7つの疑問に回答します。 税務リスクや賃上げとの関係など、実務で誤解しやすいポイントを整理しました。 Q1. 内部留保が多すぎると税務署に指摘されますか?(留保金課税について) 一般的な中小企業であれば、内部留保が多くても税務署から指摘されることはありません。 ただし、創業家などの同族グループが株式の50%超を保有する「特定同族会社」で、かつ資本金が1億円を超える場合などは、過度な内部留保に対して「留保金課税」がかかる可能性があります。 多くの中小企業は資本金1億円以下で適用除外となるケースが大半ですが、念のため税理士に確認することをお勧めします。 Q2. 内部留保を取り崩して役員賞与を出す場合の注意点は? 内部留保(利益剰余金)は過去の利益の蓄積ですので、資金(現預金)さえあれば役員賞与を出すことは可能です。 しかし、役員賞与は原則として会社の経費(損金)にならず、法人税の対象となります(事前確定届出給与などを除く)。 会社にとっては法人税を払った後のお金から支払い、個人でも所得税がかかるため、税負担が重くなる点に注意が必要です。 また、資金繰りを圧迫しないかどうかの確認も不可欠です。 Q3. 内部留保と賃上げは本当に関係ないのですか? 直接的な関係はありませんが、原資という意味では関係があります。 「内部留保があるから賃上げできる」のではなく、「将来も安定して利益(内部留保)を生み出せる見込みがあるから、固定費である賃金を上げられる」と考えるべきです。 内部留保は過去の利益です。 一度上げると下げにくい賃上げの原資として、ストックである内部留保を安易に充てるのは危険ですが、生産性向上への投資(内部留保の活用)を通じて、結果として賃上げを実現することは経営の王道です。 Q4. 内部留保がマイナス(赤字)だとどうなりますか? 内部留保(繰越利益剰余金)がマイナスということは、創業からの通算で会社が赤字であることを意味します。 銀行からの評価は著しく低下し、新規融資が受けにくくなります。 また、このマイナスが資本金を食いつぶす「債務超過」になると、実質的な倒産予備軍とみなされます。 早急な経営改善計画の策定と、黒字化によるマイナスの解消が必要です。 Q5. 個人事業主の場合、内部留保という考え方はありますか? 個人事業主には「内部留保」という概念はありません。 個人事業では、事業の利益はすべて事業主個人の所得とみなされ、全額に所得税が課税されます。 法人(会社)のように「給与」と「会社の利益(内部留保)」を分けることができないためです。 事業資金をプールしたい場合は、法人化(法人成り)を検討するタイミングかもしれません。 Q6. 適切な内部留保の目安はどれくらいですか?(内部留保率・自己資本比率) 業種によって異なりますが、安全性の目安としては「自己資本比率が20%〜40%以上」、資金繰りの観点からは「固定費の3ヶ月〜6ヶ月分の現預金」を確保できる水準が望ましいとされています。 まずはこのラインを目指して内部留保を積み上げ、それを超える分については成長投資に回すという基準を持つと良いでしょう。 まとめ:内部留保は「使わない」のではなく「戦略的に活用する」時代へ 内部留保は、会社を守る「盾」であり、成長のための「矛」でもあります。 「内部留保なぜ使わない」という外野の声に惑わされず、自社のフェーズに合わせて最適なバランスを見極めることが経営者の責務です。 ただ漫然と溜め込む時代は終わりました。 これからは、明確なビジョン(経営計画)のもと、内部留保を戦略的に投資し、さらなる成長と分配の好循環を生み出す経営へとシフトしていきましょう。 LUNEで無料相談する -
繰越利益剰余金とは?会社の体力を示す重要指標を経営に活かす方法
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「決算書にある『繰越利益剰余金』、正しく理解できていますか?」 実はこれ、会社の基礎体力を示す非常に重要な数字です。一言で言えば、創業から積み上げてきた「利益の貯金箱」。この数値を読み解くことで、銀行融資の可否や、将来の投資、万が一の時の耐久力など、経営の安定性を左右する判断が可能になります。 本記事では、難解な会計用語ではなく、経営者の視点でその仕組みから仕訳、増やすための戦略までをわかりやすく解説します。正しい知識を身につけ、どんな不況にも負けない強い財務体質を作りましょう。 監修者Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。 1. 繰越利益剰余金は「会社がこれまで稼いできた利益の貯金」 繰越利益剰余金は、貸借対照表(B/S)の純資産の部に表示され、会社が過去に稼いだ利益の蓄積を表す項目です。単年度の成績を示す「当期純利益」とは異なり、創業からの利益を積み上げた金額がここに表示されます。銀行融資の審査や経営の安定性を測る重要な指標として、経営者が必ず押さえておくべき数値です。 1-1. 利益剰余金・資本剰余金との明確な違い 繰越利益剰余金とよく混同されるのが「資本金」や「資本剰余金」です。これらの違いは資金の出どころにあります。資本金は、会社設立時や増資時に株主から集めた「元手(種銭)」です。 一方、繰越利益剰余金は、その元手を使って事業を行い、自力で稼ぎ出した「果実(利益)」の累積にあたります。誰かから預かったお金ではなく、会社自身の実力で増やした返済不要の自己資金。まずは「元手」か「稼ぎ」かの違いを押さえましょう。 1-2. 【図解】貸借対照表(B/S)における繰越利益剰余金のポジション 貸借対照表(B/S)において、繰越利益剰余金は右下の「純資産の部」に位置します。純資産は「株主資本」とも呼ばれ、資本金や利益剰余金が含まれる部分です。 さらに細かく見ると、「利益剰余金」という大枠の中に「利益準備金」や「任意積立金」があり、それ以外の自由に使える部分が「繰越利益剰余金」として表示されます。この金額が厚いほど、会社内部に利益が留保されており、外部への依存度が低い安定した経営状態であることを示しています。 1-3. なぜ繰越利益剰余金が重要なのか?金融機関が見るポイント 金融機関が融資審査を行う際、この繰越利益剰余金の額は厳しくチェックされます。プラスであれば過去の黒字の積み上げがある証明となり、マイナスの場合は過去の赤字が累積していることを意味するからです。 繰越利益剰余金が潤沢にあれば、一時的な赤字が出ても債務超過に陥るリスクが低く、返済能力が高いと判断されます。会社の安全性や「体力」を客観的に証明する、まさに経営の通信簿のような役割を果たしているのです。 参照:中小企業庁:中小企業の会計31問31答 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 繰越利益剰余金は「会社の貯金通帳」。銀行はここを見て「この会社にお金を貸しても大丈夫か」を判断します。プラスが多いほど信用力アップです! 2. 繰越利益剰余金の変動要因|増える・減る仕組みを理解する 繰越利益剰余金は固定された数字ではなく、毎年の決算や株主総会の決議によって増減します。基本的には「利益が出れば増え、損失や配当があれば減る」というシンプルな仕組みです。ここでは具体的な4つの変動要因を見ていきましょう。 主な変動要因は以下の4つです。 当期純利益の計上 当期純損失(赤字)の発生 株主への配当金の支払い 任意積立金への振替 それぞれ解説していきます。 2-1. 増加要因:1. 当期純利益の計上 最も基本的かつ健全な増加要因は、本業でしっかりと利益を出すことです。損益計算書(P/L)で計算された1年間の最終的な利益である「当期純利益」は、決算振替という手続きを経て、全額が繰越利益剰余金に加算されます。 例えば、前期末の残高が1,000万円で、当期純利益が500万円出れば、繰越利益剰余金は1,500万円に積み上がります。毎期黒字を出し続けることが、会社の体力を強化する王道です。 2-2. 減少要因:2. 当期純損失(赤字)の発生 決算で「当期純損失(赤字)」を出してしまった場合、その赤字額分だけ繰越利益剰余金を取り崩すことになります。例えば、繰越利益剰余金の残高が500万円の時に、1,000万円の赤字を出せば、残高はマイナス500万円となり、いわゆる「繰越欠損」の状態に陥ります。 過去の蓄積を食いつぶしてしまうため、経営者はこの減少を極力避けなければなりません。赤字が続けば会社の体力が失われていきます。 2-3. 減少要因:3. 株主への配当金の支払い 会社が稼いだ利益は、株主への配当原資となります。株主総会で配当金の支払いが決議されると、その金額分だけ繰越利益剰余金が減少します。配当は利益処分の一つであり、会社から社外へキャッシュが流出することを意味します。 配当を行えば株主は喜びますが、会社の内部留保は減るため、将来の投資資金とのバランスを慎重に検討する必要があります。成長段階にある会社は、配当よりも内部留保を優先すべきでしょう。 2-4. 減少要因:4. 任意積立金への振替 繰越利益剰余金は使い道が限定されていない資金ですが、特定の目的のために「色をつける」ことがあります。これを「任意積立金」への振替と呼びます。例えば、工場の修繕に備える「修繕積立金」や、将来の事業拡大のための「別途積立金」などです。 これらに振り替えると繰越利益剰余金自体は減少しますが、純資産の総額は変わりません。あくまで純資産内部での「ポケットの移動」だと理解してください。将来の投資計画に合わせて行われる処理です。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 繰越利益剰余金は「黒字で増え、赤字・配当・積立で減る」。特に配当は社外流出なので、財務体力とのバランスが大切です! 3. 【ケース別】繰越利益剰余金の仕訳例を徹底解説 経理実務において、繰越利益剰余金がどのように動くのかを仕訳で確認しましょう。簿記3級レベルの知識ですが、経営者もこのお金の流れを知っておくことで、決算書の数字の動きがより鮮明にイメージできます。 主なケースは以下の4つです。 黒字決算で利益を繰り越す場合 赤字決算で損失を補填する場合 株主へ配当金を支払う場合 別途積立金など任意積立金に振り替える場合 それぞれ解説していきます。 3-1. ケース1:黒字決算で利益を繰り越す場合 1年間の活動が終わり、当期純利益が確定した時の仕訳です。損益勘定で計算された利益を、純資産である繰越利益剰余金へ移動させます。 (借方)損益 ××× (貸方)繰越利益剰余金 ××× 損益勘定の借方に利益を計上してゼロにし、その分を貸方の繰越利益剰余金に加算します。これにより、今年稼いだ利益が会社の「貯金」として正式に組み込まれます。黒字経営の証として、純資産が確実に増加する仕訳です。 3-2. ケース2:赤字決算で損失を補填する場合 残念ながら赤字(当期純損失)となってしまった場合は、逆の仕訳を行います。 (借方)繰越利益剰余金 ××× (貸方)損益 ××× 純資産の勘定科目である繰越利益剰余金を借方(左側)に置くことで、その金額を減少させます。これは、過去に貯めた利益を取り崩して、今年の赤字の穴埋めをしたことを意味します。繰越利益剰余金という会社の貯金が目減りしていく処理です。早期の黒字化が求められます。 3-3. ケース3:株主へ配当金を支払う場合 株主総会で配当が決議された時の仕訳です。ここでは会社法特有のルールに注意が必要です。 (借方)繰越利益剰余金 ××× (貸方)未払配当金 ××× (貸方)利益準備金 ××× 配当額の10分の1を「利益準備金」として積み立てる義務があります。つまり、配当金以上に繰越利益剰余金が減少することになる点を押さえておきましょう。配当100万円なら、繰越利益剰余金は110万円減少します。社外流出を伴う重要な処理です。 3-4. ケース4:別途積立金など任意積立金に振り替える場合 使い道自由な利益を、特定の目的のために積み立てる場合の仕訳です。 (借方)繰越利益剰余金 ××× (貸方)別途積立金 ××× 繰越利益剰余金を減らし、同額の積立金を増やします。外部への流出ではなく、社内での資金区分の変更であるため、純資産全体への影響はありません。将来の投資計画に合わせて行われる処理です。設備投資や事業拡大の資金を確保する際に活用されます。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 仕訳を理解すると「お金の動き」が見える化されます。配当時は利益準備金の積立も必要なので、思ったより繰越利益剰余金が減ることに注意! 4. 繰越利益剰余金がマイナスに陥る3つの原因と危険性 繰越利益剰余金のマイナスは、会社にとっての「危険信号」です。創業からのトータル成績が赤字であることを示しており、金融機関からの信用も大きく低下します。なぜマイナスになってしまうのか、その主な原因とリスクを解説します。 主な原因は以下の3つです。 創業以来の赤字の累積 過大な配当金の支払い 多額の特別損失の発生 それぞれ解説していきます。 4-1. 原因1:1. 創業以来の赤字の累積 最も一般的な原因は、慢性的な赤字経営です。単年度の赤字であれば過去の蓄積でカバーできますが、何年も赤字が続くと貯金が底をつき、マイナス圏に突入します。 特に創業間もない時期は赤字になりがちですが、早期に黒字化できないとマイナス幅が拡大し続けます。「稼ぐ力」自体が不足している状態であり、ビジネスモデルの根本的な見直しが急務です。売上拡大か、コスト削減か、抜本的な改革が必要でしょう。 4-2. 原因2:2. 過大な配当金の支払い 利益の蓄積が十分でないにもかかわらず、無理な配当を行うことも原因となります。中小企業では少ないケースですが、利益以上に配当を出せば、当然ながら繰越利益剰余金は削られます。配当はあくまで「余剰資金」から行うべきものです。 自社の財務体力を無視した過度な株主還元は、会社の首を絞め、将来の成長投資や危機対応の資金を枯渇させる要因となります。配当と内部留保のバランスを慎重に判断すべきです。 4-3. 原因3:3. 多額の特別損失の発生 本業は順調でも、予期せぬトラブルで巨額の損失が出ることがあります。災害による工場の損壊、訴訟による賠償金、固定資産の売却損などです。 これらは「特別損失」として計上され、当期純利益を大きく押し下げます。一過性の要因であっても、積み上げてきた利益を一気に吹き飛ばし、繰越利益剰余金をマイナスに転落させる破壊力を持っています。リスク管理と保険加入が重要です。 4-4. 繰越利益剰余金のマイナスが経営に与える深刻な影響 繰越利益剰余金がマイナスになると、銀行からの融資が極めて難しくなります。「返済能力に懸念あり」と見なされるからです。 さらにマイナスが拡大し、資本金をも食いつぶすと「債務超過」となり、倒産リスクが高い状態と判断されます。取引先からの信用不安を招き、掛取引の縮小や現金決済を求められるなど、資金繰りが急速に悪化する恐れがあります。早期の経営改善計画が不可欠です。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 繰越利益剰余金のマイナスは「会社の赤信号」。融資はストップし、取引先からの信用も失います。早期の黒字化が何より重要です! 5. 経営者必見|繰越利益剰余金を増やすための5つの経営戦略 繰越利益剰余金を増やし、強い会社を作るにはどうすればよいのでしょうか。単に「売上を上げる」だけでなく、財務的な視点でのコントロールが重要です。ここでは、着実に利益を蓄積していくための具体的な5つの戦略をご紹介します。 具体的な戦略は以下の5つです。 売上総利益(粗利)の改善 販売費及び一般管理費(販管費)の見直し 営業外損益・特別損益のコントロール 適切な配当政策の実施 税務メリットを活かした利益計画 それぞれ解説していきます。 5-1. 戦略1:1. 売上総利益(粗利)の改善 繰越利益剰余金の源泉は「利益」です。まずは本業の利益率、つまり粗利の改善に取り組みましょう。安易な値引きをやめる、付加価値の高い商品を開発する、原価を見直すなど、利益率を高める努力が必要です。売上高が同じでも、粗利率が数パーセント上がるだけで、最終的に残る利益は大きく変わります。質の高い売上を追求することが第一歩です。値引き競争から脱却し、差別化を図りましょう。 5-2. 戦略2:2. 販売費及び一般管理費(販管費)の見直し 売上の拡大とともに、経費(販管費)が膨らんでいないかチェックしてください。家賃、広告費、人件費などが適正かを見直すことで、営業利益を確保します。 無駄な固定費を削減できれば、損益分岐点が下がり、不況時でも利益が出やすい体質になります。利益が出やすい体質になれば、自然と繰越利益剰余金も積み上がりやすくなります。コスト構造を定期的に見直す習慣をつけましょう。 5-3. 戦略3:3. 営業外損益・特別損益のコントロール 本業以外の収支にも目を光らせましょう。不要な資産を売却して利益を出したり、支払利息を減らすための借入金交渉を行ったりすることが有効です。 また、含み損のある資産を早めに処理して損失を出し、法人税を抑えることでキャッシュアウトを防ぐという高度なテクニックもあります。トータルでの「最終利益」を最大化する視点を持ってください。営業外損益も軽視できない利益源です。 5-4. 戦略4:4. 適切な配当政策の実施 中小企業の場合、オーナー社長自身が株主であることが多いですが、無計画な配当は避けるべきです。会社の成長フェーズに合わせて、内部留保を優先するか、配当を出すかを戦略的に決定します。今は会社に力を蓄える時期だと判断すれば、配当を抑えて繰越利益剰余金を厚くし、財務基盤の強化を優先するのが賢明な判断と言えるでしょう。将来のM&Aや事業承継も視野に入れて検討してください。 5-5. 戦略5:5. 税務メリットを活かした利益計画 利益が出すぎると税金が増え、手元資金が残りにくいというジレンマがあります。そこで、倒産防止共済(経営セーフティ共済)などの制度を活用し、利益を繰り延べる戦略も有効です。 課税を適法に先送りしながら資金をプールし、将来の赤字補填や投資が必要なタイミングで収益化することで、税負担を平準化しつつ繰越利益剰余金をコントロールできます。税理士と連携し、賢い節税対策を実施しましょう。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 繰越利益剰余金を増やすには「粗利改善×経費削減×賢い税務戦略」の三位一体が鉄則。一つ一つの積み重ねが強い財務体質を作ります! 会社の利益構造にお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 「利益は出ているのにお金が残らない」「適切な配当額がわからない」「銀行からの融資が通らない」といったお悩みはありませんか。Encoachでは、貴社の財務状況を詳細に分析し、最適な資金繰りと成長戦略を提案します。 配当政策の見直しから事業計画の策定まで、財務のプロフェッショナルがワンストップでサポート。経営者が本業に集中できる環境を整えます。まずはお気軽にご相談ください。 財務のプロがあなたの会社の課題を正確に可視化します 決算書上の数字だけでは見えない、現場の資金繰りや収益構造の課題を徹底的に洗い出します。専門家の視点で現状を分析し、どこにキャッシュフローの詰まりがあるのか、利益体質への転換点はどこにあるのかを明確にします。 多くの経営者が見落としがちな財務の盲点も、プロの目なら即座に発見できます。現状を正しく把握することが、会社を次のステージへ進めるための第一歩となります。課題の可視化から始めましょう。 資金繰り改善から事業計画策定までワンストップでサポート 単なる分析にとどまらず、銀行融資の獲得支援や、実効性の高い事業計画の策定まで一気通貫でサポートします。配当政策の見直しも含め、経営者が本業に集中できる強固な財務基盤づくりをお手伝いします。 補助金・助成金の活用提案や、資金調達戦略の立案も行います。資金面での不安を解消し、攻めの経営に転じるためのパートナーとして、私たちが伴走いたします。経営の悩みを一緒に解決していきましょう。 まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 財務に関するお悩みは、会社ごとに千差万別です。まずは現状のお困りごとを私たちにお聞かせください。以下のLINEリンクから簡単に無料相談にお申し込みいただけます。初回相談は完全無料で、オンラインでも対面でも対応可能です。 まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 財務に関するお悩みは、会社ごとに千差万別です。まずは現状のお困りごとを私たちにお聞かせください。以下のLINEリンクから簡単に無料相談にお申し込みいただけます。初回相談は完全無料で、オンラインでも対面でも対応可能です。プロのアドバイスを受けることで、長年のモヤモヤが一瞬で解決することも珍しくありません。具体的な解決策が見つかるはずです。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 財務の悩みは一人で抱え込まず、プロに相談を。無料相談で解決の糸口が見つかります! 公式サイトを見る 6. 繰越利益剰余金に関するよくある質問(Q&A) 繰越利益剰余金について、経営者の方からよくいただく質問をまとめました。キャッシュとの違いや、税務上の取り扱いなど、誤解しやすいポイントをクリアにしておきましょう。 Q1. 繰越利益剰余金が多いほど良い会社?注意点は? 基本的には多いほど財務安定性は高いと言えます。しかし、あまりに溜め込みすぎると、株主(投資家)から「資金を有効活用していない」と見なされ、ROE(自己資本利益率)が低下するというデメリットもあります。 上場企業では投資効率も問われますが、中小企業においては、倒産リスク回避のために繰越利益剰余金を厚くしておくことが、まずは優先されるべきでしょう。 Q2. 繰越利益剰余金と「現金(キャッシュ)」はなぜ一致しない? 「繰越利益剰余金が1億円あるのに、現金がない」というのはよくある話です。利益は、売掛金(まだ入ってきていないお金)や在庫、設備投資(建物や機械)など、現金以外の形に変わっていることが多いからです。 繰越利益剰余金はあくまで「計算上の利益の累積」であり、今すぐ使える「現金残高」とはイコールではないことを強く意識してください。 Q3. 欠損金の繰越控除とは何ですか? 青色申告をしている法人であれば、赤字(欠損金)を出しても、その赤字を翌期以降10年間にわたって繰り越すことができます。 将来黒字が出た際に、過去の赤字と相殺して法人税を安くできる制度です。繰越利益剰余金がマイナスになった場合でも、この制度を活用することで、税務上のリカバリーを図りながら財務の立て直しが可能です。 Q4. 中小企業でも株主への配当はすべきですか? オーナー企業であれば、無理に配当する必要はありません。配当には税金がかかるうえ、会社の資金が流出してしまいます。 役員報酬として受け取るか、会社に残して株価(企業価値)を上げるか、出口戦略(M&Aや事業承継)を見据えて税理士と相談するのがベストです。会社の状況に合わせて柔軟に決定しましょう。 Q5. 会社の解散・清算時、繰越利益剰余金はどうなりますか? 会社をたたむ(清算する)場合、すべての資産を現金化し、負債を返済した後に残った財産は「残余財産」として株主に分配されます。 この時、繰越利益剰余金がたっぷり残っていれば、株主(経営者)は出資額以上の戻りを得ることができます。逆に債務超過であれば、戻ってくるお金はゼロになる可能性が高いです。 7. まとめ:繰越利益剰余金を理解して、強い財務体質の会社を目指そう 繰越利益剰余金は、会社が歩んできた歴史そのものであり、不測の事態から会社を守る「防波堤」です。 繰越利益剰余金は「過去の利益の貯金箱」 銀行融資や信用力に直結する重要指標 黒字を積み重ねることでしか増えない 現金とは一致しないため、資金繰りとは別で管理が必要 この数値を意識して経営することで、会社の安全性は確実に高まります。まずは自社の決算書を見直し、繰越利益剰余金がどのような状態にあるか確認することから始めましょう。 財務体質の改善や資金調達について、より専門的なアドバイスが必要な場合は、ぜひEncoachにご相談ください。経験豊富な専門家が、貴社の状況に合わせた最適な戦略をご提案します。 Encoach株式会社 財務改善や補助金活用に関する最新情報は、LINEでも配信しています。無料相談も受け付けておりますので、まずはお気軽にご登録ください。 LINEで無料相談 -
利益剰余金と当期純利益の違いとは?経営者が知るべき5つの活用法と財務戦略
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「決算書を見ても、利益剰余金と当期純利益の違いがよくわからない」「結局、会社にお金を残すにはどちらを重視すればいいの?」 経営者であれば一度は抱く、財務諸表に関する疑問。実は、この2つの違いを正しく理解しているかどうかで、会社の倒産リスクや将来の成長スピードが大きく変わります。 この記事では、混同しやすい「利益剰余金」と「当期純利益」の違いを、ダムと川の流れに例えてわかりやすく解説。さらに、黒字倒産を防ぎ、銀行評価を上げるための具体的な財務戦略まで網羅しました。 財務の基礎を固め、どんな不況にも負けない強い会社を作るためのヒントを持ち帰ってください。 監修者Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。 まずは結論!利益剰余金と当期純利益の違いが一目でわかる比較表 両者の最大の違いは「期間」の概念にあります。1年間の成績表である損益計算書(PL)と、創業からの歴史を表す貸借対照表(BS)、それぞれの役割を整理しましょう。 利益剰余金と当期純利益は、会社の「過去」と「現在」をつなぐ重要な指標です。 簡潔に言えば、当期純利益は「1年間の稼ぐ力(フロー)」であり、利益剰余金は「創業から現在までに蓄積された体力(ストック)」を指します。当期純利益が毎年の成績表なら、利益剰余金はその成績の積み重ねです。 この2つは連動しており、毎年の当期純利益から配当などを引いた残りが、利益剰余金として貸借対照表に積み上がっていきます。 会社の利益の蓄積「利益剰余金」と1年間の成果「当期純利益」の基礎知識 経営において、利益は単なる数字ではありません。会社の安全性や成長余力を示すバロメーターです。 1. 利益剰余金とは?会社の体力を示すストック 利益剰余金とは、会社が創業してから現在までに稼いだ利益の蓄積のことです。よく「内部留保」とも呼ばれ、貸借対照表の純資産の部に表示されます。 これは単なる貯金ではなく、会社が長年かけて培ってきた「基礎体力」のようなもの。赤字や不況などの予期せぬ事態が起きても、利益剰余金が潤沢であれば会社は持ちこたえられます。逆に言えば、この蓄積が少ないと、わずかな赤字で経営危機に陥るリスクがあるのです。 2. 当期純利益とは?会社の稼ぐ力を示すフロー 当期純利益とは、1会計期間(通常1年間)の最終的な利益を指します。売上から原価、販管費、そして法人税などを差し引いたあとに残る、会社にとっての「手取り」です。 損益計算書(PL)の最終行に記載されるため「ボトムライン」とも呼ばれます。この数字がプラスであれば黒字、マイナスであれば赤字となり、その年の経営成績をダイレクトに表します。ただし、あくまで「その1年間」だけの成果である点に注意が必要です。 3.【図解】ダムの水と川の流れで理解する!利益剰余金と当期純利益の切っても切れない関係 この2つの関係は、よく「ダム(利益剰余金)」と「川の流れ(当期純利益)」に例えられます。 川から流れてくる水(当期純利益)が、ダム(会社)に貯まっていき、その貯水量が利益剰余金となります。川の水量が増えればダムの水位も上がり、逆に水が干上がればダムの貯えを取り崩すことになります。 つまり、毎期の黒字経営(川の流れ)があって初めて、強固な財務基盤(ダムの貯水)が作られるのです。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ当期純利益は「今年の成績」、利益剰余金は「これまでの蓄積」。両方をバランスよく見ることが、健全な経営判断の第一歩です。 利益剰余金は3種類!その構成要素と計算・仕訳の具体例 利益剰余金は以下の3つの要素で構成されています。 利益準備金:会社法で定められた積立金 任意積立金:会社が自由に目的を定めて積み立てるお金 繰越利益剰余金:使い道が決められていない利益の蓄積 それぞれ解説していきます。 1. 利益準備金:会社法で定められた積立金 利益準備金とは、株主への配当を行う際に、会社法によって積み立てが義務付けられているお金です。 会社が利益をすべて配当してしまうと、債権者(銀行や取引先)を守るための財産がなくなってしまいます。そのため、配当金の10分の1を、資本金の4分の1に達するまで強制的に積み立てるルールになっています。会社の安全性を保つための「法律による強制貯金」とイメージしてください。 2. 任意積立金:会社が自由に目的を定めて積み立てるお金 任意積立金とは、会社が特定の目的のために自主的に積み立てるお金のことです。 「将来の工場建設のために修繕積立金をしよう」「役員の退職金に備えて別途積立金を作ろう」といった具合に、使い道を限定して利益を確保しておくものです。株主総会などの決議を経て設定されます。目的を持った貯金であり、計画的な経営を行う企業によく見られる項目です。 3. 繰越利益剰余金:使い道が決められていない利益の蓄積 繰越利益剰余金は、利益剰余金の中でも「使い道が決まっていないフリーな資金」です。 当期純利益が出ると、まずはこの繰越利益剰余金に加算されます。ここから配当を出したり、積立金に回したりします。翌期以降に繰り越される利益の源泉であり、中小企業の決算書では、この科目の金額が実質的な内部留保の厚みを示していることが多いです。 4.【具体例で解説】当期純利益から利益剰余金が計算されるまでの流れと仕訳 決算で当期純利益が確定すると、その金額は貸借対照表の「繰越利益剰余金」に振り替えられます。 例えば、当期純利益が100万円出た場合、損益計算書の利益がゼロになり、その分貸借対照表の利益剰余金が100万円増えます。 計算式:期末の利益剰余金 = 期首の利益剰余金 + 当期純利益 - 配当金など この仕訳を通じて、1年間のフロー(PL)が資産のストック(BS)へと統合されるのです。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ利益剰余金の内訳を把握することで、会社の財務戦略が見えてきます。繰越利益剰余金の厚みが、経営の自由度を決めます。 なぜ?利益剰余金がマイナスになる2つの主な原因と危険性 利益剰余金がマイナスになる主な原因は以下の2つです。 赤字の継続による取り崩し 過度な配当(※ただし日本では財源規制あり) それぞれ解説していきます。 1.【原因1】赤字の継続による取り崩し 最も一般的な原因は、慢性的な赤字経営です。赤字(当期純損失)が出ると、過去に積み上げた利益剰余金を取り崩して穴埋めすることになります。 貯金を切り崩して生活している状態と同じです。単年度の赤字ならまだしも、何年も続けば蓄積は底をつき、マイナス(欠損)へと転落します。創業間もない時期を除き、この状態が続くことは経営の持続可能性に直結する深刻な問題です。 2.【原因2】過度な配当(※ただし日本では財源規制あり) 理論上は、稼いだ利益以上に配当を出せば利益剰余金は減ります。しかし、日本の会社法では「分配可能額」という規制があり、利益剰余金などがマイナスになるような過度な配当は原則としてできません。 そのため、配当によって利益剰余金がマイナスになるケースは日本では稀です。もしマイナスになっているなら、配当の出し過ぎではなく、本業での損失が原因である可能性が高いと見るべきでしょう。 3. 利益剰余金のマイナスが示す「債務超過」への危険信号 利益剰余金のマイナスが拡大し、資本金の額を超えてしまうと「債務超過」になります。 これは、資産をすべて売り払っても負債を返済しきれない「実質的な破綻状態」です。銀行からの融資は極めて困難になり、取引先からの信用も失墜します。 利益剰余金がマイナスになることは、会社が倒産に向かっている危険なサインだと認識し、早急な経営改善が必要です。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ利益剰余金のマイナスは「赤字の継続」が主因です。単年度の赤字で慌てる必要はありませんが、数年続くなら抜本的な改革が必須です。 会社の健康診断!利益剰余金を使った財務分析と5つの経営活用法 利益剰余金の主な活用法は以下の5つです。 自己資本比率で見る「会社の安全性」 キャッシュフロー計算書と合わせて「黒字倒産」のリスクを回避 利益剰余金を原資とした「未来への投資」で成長を加速させる 企業のステージ別「利益剰余金の目標設定」 事業計画書と連動させた「戦略的な資金繰り」 それぞれ解説していきます。 1.【活用法1】自己資本比率で見る「会社の安全性」 利益剰余金が増えると、自己資本(純資産)が厚くなります。総資産に占める自己資本の割合を「自己資本比率」といい、これが高いほど倒産しにくい会社と評価されます。 銀行は融資の際、この数値を厳しくチェックします。借入金に頼らず、自分たちの稼いだお金(利益剰余金)で経営を回せているかどうかが、対外的な信用力の決定的な差となるのです。 2.【活用法2】キャッシュフロー計算書と合わせて「黒字倒産」のリスクを回避 注意点として、利益剰余金はあくまで会計上の数字であり、必ずしも「現金」として金庫にあるわけではありません。 利益が出ていても、在庫や売掛金になっていれば手元の現金は不足し、「黒字倒産」のリスクがあります。利益剰余金の額だけでなく、キャッシュフロー計算書とセットで確認し、実際に使える現金がどれくらいあるかを把握することが生存戦略の基本です。 3.【活用法3】利益剰余金を原資とした「未来への投資」で成長を加速させる 蓄積した利益剰余金は、守りのためだけでなく、攻めのために使うべきです。設備投資、人材採用、M&Aなど、成長のための再投資に回します。 借入金と違い、返済義務のない自己資金を投資に回せるため、思い切った戦略が取れるのが強みです。内部留保を厚くし、それを次の利益を生む資産に変えていくサイクルこそが、優良企業の成長パターンです。 4.【活用法4】企業のステージ別「利益剰余金の目標設定」 目指すべき利益剰余金の水準は、企業のステージによって異なります。 創業期はまずは黒字化し、マイナスを作らないことが最優先。成長期・成熟期に入れば、「年間売上高の2割」程度の自己資本(資本金+利益剰余金)の確保を目標にすると良いでしょう。これは、万が一売上が2割落ち込むような経済危機が起きても、会社を存続させるための安全マージンとなります。 5.【活用法5】事業計画書と連動させた「戦略的な資金繰り」 利益剰余金を計画的に積み上げるには、行き当たりばったりの経営では不可能です。「5年後に利益剰余金をこれだけ残す」というゴールから逆算し、毎年の売上・利益目標を立てる必要があります。 事業計画書に「目標とする貸借対照表(B/S)」を落とし込むことで、単なる売上目標だけでなく、財務体質の強化を含めた戦略的な資金繰りが可能になります。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ利益剰余金は「守り」と「攻め」の両面で活用できます。安全性を確保しつつ、成長投資にも回せる余裕を持つことが理想です。 【無料ダウンロード】Encoach代表・北薗が監修した経営計画書テンプレートはこちら 1000社以上の経営者と向き合ってきた財務のプロ、Encoach代表の北薗が作成した「経営計画書(事業計画書)テンプレート」を無料でご提供します。利益剰余金の目標設定や資金繰り計画の策定に、ぜひご活用ください。 ダウンロードはこちら Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ経営計画書は「作って終わり」ではありません。定期的に見直し、実績と比較することで、財務体質の改善スピードが加速します。 財務のプロが伴走!会社の未来を共に創るEncoachの財務コンサルティング テンプレート入力だけでは不安な方や、より高度な財務戦略を立てたい方は、プロの力を借りるのが近道です。Encoachは、単なる税務処理ではなく「会社を良くするための財務」を支援します。Encoach株式会社では、財務の専門家が経営者に寄り添い、事業計画の策定から実行までを伴走支援します。自社の財務状況に不安がある、利益を最大化する戦略を立てたいという方は、ぜひ一度お気軽にご相談ください。 公式サイトはこちら 利益剰余金と当期純利益に関するよくある4つの質問 最後に、経営者の方からよくいただく質問に回答します。用語の混同や、素朴な疑問をここで解消しておきましょう。 Q1. 内部留保と利益剰余金は同じ意味ですか? 基本的には同じ意味と考えて差し支えありません。 厳密には、会計用語として貸借対照表に載るのが「利益剰余金」、経済ニュースなどで企業の蓄えとして語られるのが「内部留保」です。どちらも「過去の利益の蓄積」を指しており、会社の中に残っている体力を表す言葉です。 Q2. 利益は出ているのに、利益剰余金が増えません。なぜですか? 配当金の支払いや、過去の赤字の補填に使われている可能性があります。 利益剰余金の計算式は「期首残高 + 当期純利益 - 配当金」です。たとえ黒字でも、それを上回る配当を出していれば利益剰余金は減ります。また、過去の累積赤字を解消している段階では、プラスに見えてこないこともあります。 Q3. 個人事業主の場合、利益剰余金の考え方はどうなりますか? 個人事業主には「利益剰余金」という勘定科目はありません。 個人の場合、過去の利益の蓄積は「元入金(もといれきん)」という科目に含まれて計算されます。法人化(法人成り)すると、この元入金や蓄積した利益が資本金や利益剰余金として整理されることになります。 Q4. 利益剰余金が多ければ多いほど良い会社と言えますか? 安全性は高いですが、効率性が悪いと見られることもあります。 利益剰余金が多いのは倒産しにくい証拠ですが、過度に溜め込みすぎると「投資をしていない」「株主へ還元していない」と判断され、ROE(自己資本利益率)が下がります。成長投資とのバランスが重要です。 まとめ:利益剰余金と当期純利益の違いを理解し、未来を創る財務戦略を描こう 利益剰余金は「会社の歴史と体力」、当期純利益は「1年間の成績」です。この2つを正しく理解することは、会社の寿命を延ばし、成長させるための第一歩です。 目先の節税や利益だけでなく、将来を見据えて利益剰余金をどう積み上げ、どう使うか。 この視点を持つことで、経営の景色は大きく変わります。ぜひ今回ご紹介したテンプレートや無料相談を活用し、強い財務体質作りをスタートさせてください。 -
その他利益剰余金とは?繰越利益剰余金との違いを解説!
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「その他利益剰余金」という言葉を聞いて、正確に意味を答えられますか?「繰越利益剰余金と何が違うの?」と疑問に思う経営者の方は非常に多いです。 ここを曖昧にしたままだと、決算書の数字を正しく読めず、会社の財務体質を強化するチャンスを逃してしまいます。 この記事では、用語の定義から具体的な仕訳、マイナスになった時のリスクまで、専門用語を噛み砕いて解説します。読めば会社の「貯金」の正体がわかり、未来への投資判断に自信が持てるようになります。 監修者Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。 まずは結論!その他利益剰余金と関連用語の違いが一目でわかる比較表 その他利益剰余金は「会社が法的な縛りを受けずに自由に使える蓄え」の総称です。貸借対照表の純資産の部で、利益剰余金から利益準備金を差し引いた部分を指します。さらに、使い道を決めた「任意積立金」と、まだ決まっていない「繰越利益剰余金」に分類されます。この関係性を整理することで、決算書での位置づけがクリアになります。 用語意味性質利益剰余金会社が稼いだ利益の累積総額利益の貯金全体利益準備金会社法で積立が義務付けられたお金強制的な貯金その他利益剰余金利益剰余金 - 利益準備金自由な貯金任意積立金会社が独自の判断で積み立てたお金目的別の貯金繰越利益剰余金前期から繰り越された未処分の利益自由な財布 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロその他利益剰余金は「自由な貯金」の総称。内訳は「任意積立金(目的別)」と「繰越利益剰余金(自由な財布)」の2つだけです! 会社の「へそくり」?貸借対照表から読み解く利益剰余金の全体像 貸借対照表の右下、「純資産の部」には聞き慣れない言葉が並び、戸惑いますよね。ここには返済不要な会社のお金が記載されています。会社の「へそくり」とも言える利益剰余金は、大きく以下の2つに分類されます。 1. 会社法で定められた義務「利益準備金」 2. 会社の意思で積み立てる「その他利益剰余金」 ・2-1. 使途を決めた積立「任意積立金」 ・2-2. 自由な利益の蓄積「繰越利益剰余金」 それぞれ解説していきます。 1. 会社法で定められた義務「利益準備金」 利益準備金は会社法で積立が義務付けられているお金です。配当を行う際、会社財産が流出しすぎるのを防ぐため、配当額の10分の1を積み立てます。債権者保護のための「守り」の資金であり、会社が自由に取り崩して使うことは原則できません。法律で定められた最低限の備えと考えてください。 2. 会社の意思で積み立てる「その他利益剰余金」 その他利益剰余金は法律の縛りなく会社が自由に使える資産です。利益剰余金から強制的な「利益準備金」を除いた部分を指します。ここが厚くなると自己資本比率が高まり、倒産しにくい強い会社になります。この「その他利益剰余金」は、さらに「任意積立金」と「繰越利益剰余金」に分解できます。 2-1. 使途を決めた積立「任意積立金」 任意積立金は企業が独自に行う積立金です。将来の特定の目的のために利益を留保するもので、「修繕積立金」や「役員退職積立金」などがこれに当たります。特定目的を持たない「別途積立金」として積み立てるケースも多く、株主総会の決議を経て設定されます。無駄な資金流出を防ぐ効果があります。 2-2. 自由な利益の蓄積「繰越利益剰余金」 繰越利益剰余金は使い道が決まっていない利益の累積です。前期までの繰越利益に当期純利益を加算したもので、決算日時点でまだ何に使うか決まっていない「自由な財布」のような存在。次期以降に配当か積立金か、そのまま繰り越すかを選択できる柔軟な資金です。経営判断の自由度が最も高い項目といえます。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 利益準備金は「強制」、その他利益剰余金は「自由」。この違いを理解すれば、貸借対照表の純資産の部がスッキリ読めるようになります! 【仕訳例つき】その他利益剰余金の使い道は3つだけ! 蓄えた利益はどう使うのが正解でしょうか。その他利益剰余金の主な使い道は大きく分けて以下の3つです。 1. 株主への感謝のしるし「配当」 2. 将来への備え「任意積立金への振替」 3. いざという時の赤字補填「欠損填補」 株主総会の決議を経て決定される、これら3つの具体的な使い道をお金の流れを示す「仕訳」とともに見ていきます。 1. 株主への感謝のしるし「配当」 最も代表的な使い道は株主への配当です。「繰越利益剰余金」を原資として現金を支払います。例えば株主に1,000万円を配当する場合、その10分の1の100万円を利益準備金として積み立てます。 ● (借方) 繰越利益剰余金 1,100万円 / (貸方) 未払配当金 1,000万円、利益準備金 100万円 このように、配当とセットで準備金の積立が行われます。 2. 将来への備え「任意積立金への振替」 将来の支出に備え、繰越利益剰余金を「任意積立金」へ振り替えることができます。例えば、数年後の大規模修繕に備えて500万円を積み立てる場合などが該当します。 ● (借方) 繰越利益剰余金 500万円 / (貸方) 修繕積立金 500万円 この処理で、配当などでの資金流出を防ぎ、会社内部に資金を確実にプールできます。 3. いざという時の赤字補填「欠損填補」 会社が赤字で繰越利益剰余金がマイナスになった場合、他の項目から補填できます。これを欠損填補(てんぽ)といい、任意積立金を取り崩して赤字を埋めたり、場合によっては「資本準備金」を振り替えてマイナスを解消します。 ● (借方) 別途積立金 300万円 / (貸方) 繰越利益剰余金 300万円 これにより、決算書の見栄えを整え、配当可能な状態への復帰を目指します。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 使い道は「配当」「積立」「赤字補填」の3つだけ。それぞれ株主総会の決議が必要で、仕訳もシンプルです! なぜ経営者はその他利益剰余金を重視すべきなのか?会社を強くする3つの理由 「税金が高くなるから利益は出したくない」と考えるのは危険です。その他利益剰余金を厚くすることは、会社を長期的に存続させるための最強の防衛策。内部留保とも呼ばれるこの資金が充実している理由は以下の3つです。 1. 会社の体力を示す「財務の安定性」 2. 未来の成長の種「投資の原資」 3. 金融機関からの信頼度アップ それぞれ詳しく見ていきます。 1. 会社の体力を示す「財務の安定性」 その他利益剰余金が積み上がっているのは過去の利益が蓄積されている証拠です。不況や予期せぬトラブルで一時的に赤字になっても、この蓄えがあればすぐに倒産することはありません。人間で言えば「基礎体力」が高い状態で、多少の不調でも持ちこたえられる強い経営体質を作れます。 2. 未来の成長の種「投資の原資」 新規事業や設備導入の際、手元に十分な剰余金があれば借金をせず自己資金で投資できます。返済義務のないお金で投資すれば、金利負担もなく、失敗時のリスクも最小限。その他利益剰余金は、会社が次のステージへ成長するための「攻め」の原資となります。チャンスを逃さず機動的に動けるのが強みです。 3. 金融機関からの信頼度アップ 銀行は融資審査で「純資産の部」を厳しくチェックします。その他利益剰余金がプラスで推移し、自己資本が厚い会社は「返済能力が高い」と判断され、融資が受けやすくなります。逆にマイナスだと「債務超過」のリスクありと見なされ、資金調達が困難に。銀行からの信用を守るためにも黒字の蓄積は不可欠です。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 利益剰余金は「守り」と「攻め」の両方に使える最強の経営資源。節税だけを考えて利益を出さないのは本末転倒です! 要注意!その他利益剰余金がマイナスになる2つのケース 決算書で「その他利益剰余金がマイナスになっている」と気づいたら、それは赤信号です。通常、利益の蓄積であるこの項目がマイナスになるには、経営上の重大な原因があります。主な要因は以下の2つです。 1. 赤字続きで利益の蓄積を食いつぶしている 2. 配当のしすぎで会社のお金が流出している 早急に対策を打つ必要があるため、それぞれ詳しく解説します。 1. 赤字続きで利益の蓄積を食いつぶしている 最も多い原因は毎年の決算で赤字が続いていることです。単年度の赤字が出ると、過去に積み上げた繰越利益剰余金を取り崩して穴埋めします。この状態が何年も続くと、過去の貯金がつきてマイナスに転落。企業の財務状態が極めて悪化しているサインで、早急な収益改善が必要です。 2. 配当のしすぎで会社のお金が流出している 利益以上の金額を株主に配当してしまった場合もマイナスになる可能性があります。会社法では純資産が300万円を下回る場合などは配当できませんが、無理な配当政策を続けると内部留保が枯渇します。稼いだ利益の範囲内で適切な配当を行わないと、会社の財務基盤を自ら切り崩すことになります。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ マイナスは「赤信号」。赤字体質の改善か、配当政策の見直しが急務です。放置すると債務超過へ一直線! 会社の5年後、10年後を本気で考えるなら「経営計画書」が必須 利益剰余金を着実に積み上げ、どんな不況にも負けない強い会社を作るには、行き当たりばったりの経営では不可能です。会社がどこへ向かうのかを示す地図、つまり「経営計画書」が不可欠。数字に基づいた計画がなければ、いつの間にか赤字体質に陥ってしまいます。 1. なぜ今、経営計画書が必要なのか? 2. 1000社以上の経営者を見てきたプロが作った「経営計画書テンプレート」を無料プレゼント それぞれ詳しく解説します。 1. なぜ今、経営計画書が必要なのか? 経営環境が激しく変化する現代、どんぶり勘定の経営は命取りです。経営計画書を作成することで、「いつまでに」「どれくらいの利益剰余金を積み上げるか」が明確になります。目標と現状のギャップを可視化し、適切な投資判断やコスト管理を行うための羅針盤として、すべての企業に必要とされています。 2. 1000社以上の経営者を見てきたプロが作った「経営計画書テンプレート」を無料プレゼント 「経営計画書が大事なのはわかるが、作り方がわからない」という経営者様のために、数多くの企業の財務改善を支援してきたEncoachが作成した「経営計画書テンプレート」を無料でプレゼントしています。穴埋め形式で、自社の課題と未来の数字を整理できる実践的なツール。まずは公式LINEに登録して、テンプレートを受け取ってください。これを使うだけで、会社の未来図がガラリと変わるはずです。 経営計画書テンプレートを受け取る(無料) Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 経営計画書は「会社の地図」。目的地が明確でないと、どんなに頑張っても迷子になるだけです! 財務の悩み、一人で抱えていませんか?Encoachの財務コンサルティング 「決算書を見てもどこが悪いのかわからない」「銀行との交渉がうまくいかない」。そんな孤独な悩みを抱えている経営者の方は少なくありません。Encoach株式会社では、財務のプロフェッショナルがあなたの会社の「社外CFO」として伴走し、利益剰余金が積み上がる強い財務体質作りをサポートします。 1. あなたの会社の財務状況を健康診断し、課題を正確に可視化します 2. 資金繰り改善から事業計画策定まで、元パリコレモデルの異色コンサルタントが伴走します 3. まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください それぞれご紹介します。 1. あなたの会社の財務状況を健康診断し、課題を正確に可視化します 人間ドックと同じように、会社にも「財務の健康診断」が必要です。Encoachでは、決算書データを詳細に分析し、キャッシュフローの詰まりや無駄なコスト、利益が出にくい構造的な原因を徹底的に洗い出します。感覚ではなく数値に基づいて現状を把握することで、打つべき対策が明確になります。 2. 資金繰り改善から事業計画策定まで、元パリコレモデルの異色コンサルタントが伴走します Encoachの代表は元パリコレモデルという異色の経歴を持つ財務コンサルタントです。厳しいプロの世界で培った目標達成への執着心と、1000社以上の経営者を見てきた財務の知見を融合させ、資金繰り改善から銀行交渉、事業計画の策定までトータルでサポート。机上の空論ではない、現場で使える財務戦略を提案します。 3. まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 財務の改善は早ければ早いほど効果が出ます。「まだコンサルを頼む段階じゃないかも」と遠慮する必要はありません。まずは現状のお悩みをお聞かせください。今ならLINE登録者限定で、無料相談を実施中です。以下のリンクから友だち追加をして、あなたの会社の未来について話してみませんか? Encoachに無料相談する(LINE登録) Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 財務は一人で悩むより、プロに相談する方が圧倒的に早く解決します。まずは無料相談から! その他利益剰余金に関するよくある5つの質問 その他利益剰余金について、多くの経営者様から寄せられる質問をQ&A形式でまとめました。疑問を解消して、スッキリした状態で実務に向き合いましょう。 Q1. その他利益剰余金と繰越利益剰余金は同じものですか? いいえ、厳密には違います。その他利益剰余金は「任意積立金」と「繰越利益剰余金」の合計です。つまり、繰越利益剰余金はその他利益剰余金の一部(内訳)という関係になります。決算書上では、その他利益剰余金という大項目の下に、内訳として繰越利益剰余金が記載される形です。 Q2. その他利益剰余金は多ければ多いほど良いのでしょうか? 基本的には多い方が財務の安定性は高まります。しかし、あまりに溜め込みすぎて設備投資や社員への還元(賃上げなど)を行わないと、将来の成長機会を逃すことにもなりかねません。「内部留保」と「成長投資」のバランスをとることが、優れた経営判断と言えます。 Q3. マイナスになったら、すぐに倒産しますか? マイナスになったからといって、直ちに倒産するわけではありません。しかし、その他利益剰余金がマイナスということは、過去の利益を食いつぶしている、あるいは借金に頼っている状態を示唆します。資金繰りが厳しくなっている可能性が高いため、金融機関からの融資が受けにくくなるなど、倒産リスクが高まっている危険な状態です。 Q4. 個人事業主にも関係ありますか? いいえ、個人事業主の決算書には「その他利益剰余金」という項目はありません。これは法人の会計特有の概念です。個人事業主の場合は、過去の利益の蓄積は「元入金」に含まれる形で処理されます。法人成りを検討する際には、この資本の考え方の違いを知っておく必要があります。 Q5. 任意積立金にはどんな種類がありますか? 大きく分けて、使用目的が限定されているものと、そうでないものがあります。目的があるものには「修繕積立金」「役員退職積立金」「配当積立金」などがあります。一方、特定の目的を定めずに会社独自の判断で積み立てる「別途積立金」というものも。これらは株主総会での決議によって設定されます。 まとめ:その他利益剰余金を理解し、会社の未来をデザインしよう その他利益剰余金は、単なる会計用語ではなく、会社の「過去の頑張りの結晶」であり「未来を守る盾」です。繰越利益剰余金との違いや、仕訳の流れを理解することで、自社の財務状況を正しく把握できるようになります。 利益を出し、適切に内部留保を積み上げることが、社員や取引先を守ることにつながります。ぜひ今回の知識を活かし、盤石な財務体質づくりに取り組んでください。そして、より具体的な計画が必要だと感じたら、ぜひEncoachの無料相談を活用してみてください。 Encoach公式サイトはこちら -
利益剰余金の配当ガイド|計算方法・仕訳・手続きを徹底解説
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「今期は赤字だが配当は出せるのか」「いくらまで配当して良いのか」と悩む経営者は少なくありません。「利益剰余金 配当」は、株主還元と会社の財務健全性を両立させるための重要なテーマです。この記事では、配当可能額の計算方法から、必要な手続き、会計処理(仕訳)までをわかりやすく解説します。正しいルールを理解し、会社の成長と株主還元のバランスが取れた最適な財務戦略を実現しましょう。 監修者Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。 そもそも利益剰余金とは?会社の成長を示す重要な指標 利益剰余金とは、創業から現在までに会社が積み上げてきた「稼ぎの蓄積」のことです。決算書(貸借対照表)の純資産の部に表示され、企業の安定性や成長力を示すバロメーターとなります。単年度の黒字・赤字だけでなく、過去からの積み重ねがどれだけあるかを表す数値であるため、金融機関や投資家が会社の基礎体力を判断する際に重視する、極めて重要な指標といえます。 利益剰余金と「当期純利益」の関係 両者の違いは「フロー(その年の成績)」か「ストック(過去の蓄積)」かです。当期純利益は1年間の活動結果を示す単年度の数値ですが、利益剰余金は毎年の当期純利益が貯水槽のように溜まった合計額を指します。つまり、毎期の黒字が積み重なることで利益剰余金が増加し、会社の財務基盤が盤石になるという密接な関係にあります。会社の安定性や成長性を判断する際、この蓄積額が大きな判断材料となるのです。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 利益剰余金は会社の「貯金」のようなもの。当期が赤字でも、過去の蓄積があれば配当は可能です! 利益剰余金から配当を行う3つのステップ 利益を株主へ還元するには、法律で定められた厳格なルールを守る必要があります。以下の3つのステップで進めていきましょう。 【ステップ1】いくらまで配当できる?「分配可能額」の計算方法 【ステップ2】配当の実施を決定する「株主総会決議」 【ステップ3】配当金の支払いと会計処理(仕訳) それぞれ、解説していきます。 【ステップ1】いくらまで配当できる?「分配可能額」の計算方法 配当は無制限にできるわけではなく、会社法で定められた「分配可能額」の範囲内に収める必要があります。基本的には「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」の合計から、自己株式や当期に支払う予定の配当額などを差し引いて算出します。 会社財産を確保し、債権者を保護するための重要なルールですので、上限を超えた「違法配当」にならないよう正確な計算が求められます。専門家に相談するのも賢明な選択です。 【ステップ2】配当の実施を決定する「株主総会決議」 配当額や支払日を決めるには、原則として株主総会での普通決議が必要です。ここでは「配当財産の種類(通常は金銭)」「配当総額」「1株あたりの配当額」「効力発生日」などを具体的に定めます。 株主総会議事録への記載も忘れずに行いましょう。なお、取締役会設置会社であれば、定款に定めることで、年1回の中間配当を取締役会の決議だけで実施することも可能です。柔軟な配当政策を実現できます。 【ステップ3】配当金の支払いと会計処理(仕訳) 配当が決議されたら仕訳を行いますが、利益剰余金を減額し、未払配当金を計上するのが基本です。この際、配当額の10分の1を「利益準備金」として積み立てる義務がある点に注意してください(ただし、資本金の4分の1に達するまで)。 実際の支払時には源泉所得税(20.42%)を預かり、残額を株主に支払う処理となるため、税務と会計の両面から正確な記帳が必要です。仕訳ミスは後々大きな問題になりかねません。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 配当のプロセスは「計算→決議→支払」の3ステップ。特に利益準備金の積立を忘れずに! 【経営者向け】会社の成長を加速させる戦略的配当の考え方 配当は単なる利益の流出ではありません。株主との信頼関係構築や、将来の投資資金確保とのバランスを考慮した「戦略的な意思決定」が、企業の持続的な成長には不可欠です。短期的な株主還元に偏りすぎると成長投資が疎かになり、逆に配当を全く出さないと株主の不満が高まります。 会社のステージや事業環境に応じて、最適な配当政策を見極めることが経営者の重要な役割です。以下の判断基準を参考にしてください。 1. 配当すべきか?内部留保との最適なバランスとは 配当を出せば株主は喜びますが、手元のキャッシュ(内部留保)は減少します。成長フェーズにある企業なら、配当を抑えて新規事業や設備投資に回し、将来の企業価値向上を目指すのも一つの戦略です。 一方、成熟企業であれば安定配当を重視し、株主との長期的な信頼関係を構築する方針も有効でしょう。目先の還元だけでなく、将来の事業拡大に必要な資金が確保できているかを基準に、最適な配当性向を見極めることが経営者の腕の見せ所です。 2. 役員報酬と配当、税金面で有利なのはどっち? オーナー社長の場合、役員報酬で取るか配当で取るかは悩みどころです。役員報酬は会社の経費(損金)になるため法人税が減りますが、個人では所得税・住民税・社会保険料がかかります。 一方、配当金は税引き後の利益から支払うため経費になりませんが、個人の税率は約20%で社会保険料もかかりません。法人税と個人の所得税・社会保険料をトータルでシミュレーションし、手取りが最大化する方法を選ぶ視点が重要です。税理士と相談しながら最適解を見つけましょう。 3. 【ケーススタディ】こんな時どうする?中小企業の配当戦略 例えば、突発的な赤字や設備投資に備えて厚めに内部留保を持ちたい中小企業の場合、無理に配当を行わない選択も合理的です。キャッシュの安定確保が最優先でしょう。逆に、後継者への事業承継を控えている場合は、株価対策としてあえて配当を行い、純資産を減らして株式評価額を下げるケースもあります。 また、業績好調な年に特別配当を出し、株主へ感謝を示す方法も効果的です。自社のステージや承継のタイミングに合わせて、柔軟に配当政策を使い分けることが、賢い財務戦略と言えるでしょう。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 配当は「株主還元」と「成長投資」のバランスが命。会社のステージに合わせた柔軟な判断を! 会社の利益構造にお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 「利益は出ているのにお金が残らない」「適切な配当額がわからない」「銀行からの融資が通らない」といったお悩みはありませんか。Encoachでは、貴社の財務状況を詳細に分析し、最適な資金繰りと成長戦略を提案します。配当政策の見直しから事業計画の策定まで、財務のプロフェッショナルがワンストップでサポート。経営者が本業に集中できる環境を整えます。まずはお気軽にご相談ください。 財務のプロがあなたの会社の課題を正確に可視化します 決算書上の数字だけでは見えない、現場の資金繰りや収益構造の課題を徹底的に洗い出します。専門家の視点で現状を分析し、どこにキャッシュフローの詰まりがあるのか、利益体質への転換点はどこにあるのかを明確にします。多くの経営者が見落としがちな財務の盲点も、プロの目なら即座に発見できます。現状を正しく把握することが、会社を次のステージへ進めるための第一歩となります。課題の可視化から始めましょう。 資金繰り改善から事業計画策定までワンストップでサポート 単なる分析にとどまらず、銀行融資の獲得支援や、実効性の高い事業計画の策定まで一気通貫でサポートします。配当政策の見直しも含め、経営者が本業に集中できる強固な財務基盤づくりをお手伝いします。補助金・助成金の活用提案や、資金調達戦略の立案も行います。資金面での不安を解消し、攻めの経営に転じるためのパートナーとして、私たちが伴走いたします。経営の悩みを一緒に解決していきましょう。 まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 財務に関するお悩みは、会社ごとに千差万別です。まずは現状のお困りごとを私たちにお聞かせください。以下のLINEリンクから簡単に無料相談にお申し込みいただけます。初回相談は完全無料で、オンラインでも対面でも対応可能です。 プロのアドバイスを受けることで、長年のモヤモヤが一瞬で解決することも珍しくありません。具体的な解決策が見つかるはずです。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 財務の悩みは一人で抱え込まず、プロに相談を。無料相談で解決の糸口が見つかります! 利益剰余金と配当に関するよくある質問 利益剰余金や配当の実務において、経営者の方から頻繁に寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。判断に迷った際や、実務で困った時の参考にしてください。配当に関する正しい知識を身につけることで、自信を持って経営判断ができるようになります。ここでは特に多い質問について、わかりやすく解説します。不明点があれば専門家に相談することをおすすめします。 Q1. 赤字の期でも配当はできますか? はい、可能です。その期が赤字であっても、過去の利益の蓄積である「その他利益剰余金」などに十分な残高があり、分配可能額の範囲内であれば配当を行えます。当期の業績が悪くても、過去の蓄えを取り崩すことで、株主への安定配当を維持することができる仕組みになっています。 ただし、将来の事業継続を考えると、赤字が続く中での配当は慎重に判断すべきです。財務体質の悪化につながる可能性があるため、専門家と相談しながら決定しましょう。 Q2. 資本剰余金を原資に配当すると税金が変わりますか? はい、変わります。利益剰余金からの配当は「配当所得」として約20%の税率で課税されますが、資本剰余金からの配当は「みなし譲渡」として扱われ、税務計算が複雑になります。 受け取る株主側で取得価額の調整などが必要になり、場合によっては譲渡所得として課税される可能性もあります。実施する際は株主への事前の丁寧な案内や説明が不可欠です。税理士と相談しながら、株主に不利益が生じないよう慎重に進めることをおすすめします。 Q3. 配当しないと何か罰則はありますか? 配当を行わなくても、法的な罰則は一切ありません。配当するかどうかは会社の自由な判断に委ねられています。特に中小企業では、将来の投資や不測の事態に備えて利益を全額内部留保するケースも一般的です。 むしろ、無理に配当して資金繰りが悪化する方が問題です。ただし、株主から配当要求がある場合や、過度な内部留保が税制上の問題(特定同族会社の留保金課税など)になる可能性がある点には留意しましょう。バランスの取れた判断が大切です。 Q4. 個人事業主の場合も考え方は同じですか? いいえ、全く異なります。個人事業主には「給与」や「配当」という概念がなく、事業で得た利益はすべて事業主個人の所得として扱われます。法人のように利益を会社に留保するという選択肢はありません。 生活費として引き出す際は「事業主貸」という勘定科目を使いますが、これは法人における配当とは税務上の性質も手続きも別物であることを理解しておきましょう。個人事業主と法人では財務の仕組みが根本的に異なるため、混同しないよう注意が必要です。 まとめ:戦略的な配当で、会社の未来をデザインしよう 利益剰余金の配当は、単なる事務手続きではなく、会社の未来を左右する重要な経営判断です。分配可能額の計算や適正な手続きを守りつつ、内部留保とのバランスを見極めることが求められます。短期的な株主還元と長期的な成長投資、両者のバランスを取ることが経営者の腕の見せ所です。 確かな財務戦略に基づいた配当政策を実行し、株主の信頼獲得と企業の持続的成長の両立を目指していきましょう。迷った時は専門家の力を借りることも賢明な選択です。 -
黄金株(拒否権付種類株式)とは?事業承継で後継者の暴走を防ぐ5つの活用法と導入リスク
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「後継者に会社を譲りたいが、経験不足で判断を誤らないか心配」「引退後も重要事項の決定権は持ちたい」。事業承継を控える経営者にとって、権限委譲とガバナンスのバランスは最大の悩みどころです。 黄金株(拒否権付種類株式)を活用すれば、株式の過半数を譲渡した後でも、経営の重要事項に対して「拒否権」を持てます。 この記事では、黄金株の仕組みやメリットだけでなく、認知症や相続トラブルを防ぐための「取得条項」を活用した高度な設計まで、専門的な視点で解説します。会社の未来を守る「伝家の宝刀」を正しく理解し、円滑な承継を実現しましょう。 監修者Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。 まずは結論!黄金株と属人的株式(VIP株)の3つの違いと選び方 黄金株と同様に事業承継で活用される手法に「属人的株式(通称:VIP株)」がありますが、これらは法的な性質や効果が異なります。主な違いは以下の3点です。 拒否権を持つ「黄金株」と議決権を増やす「VIP株」の違い 登記が必要な「黄金株」と定款変更のみの「VIP株」 第三者への対抗力が強いのは「黄金株」 それぞれ解説していきます。 1. 拒否権を持つ「黄金株」と議決権を増やす「VIP株」の違い 黄金株(拒否権付種類株式)の最大の特徴は、株主総会の決議を覆せる「拒否権」を持っている点です。たった1株でも保有していれば、後継者が提案した取締役の選任やM&Aなどの重要事項に対し、「NO」を突きつけられます。あくまで「拒否する権利」であり、能動的に何かを決める権利ではありません。 一方で属人的株式(VIP株)は、特定の株主の「議決権の数」を増やす設計です。例えば「A社長の株式は、1株につき100個の議決権を有する」と定めます。これにより、株式数が少なくても議決権の過半数を維持し、実質的な支配権を握り続けることが可能です。 2. 登記が必要な「黄金株」と定款変更のみの「VIP株」 導入の手続きにおいて、両者には大きな違いがあります。黄金株を導入する場合、その内容は法務局で「登記」され、登記簿謄本(登記事項証明書)に記載されます。そのため、誰でも閲覧可能な公の情報となります。 対してVIP株(属人的株式)は、定款の変更のみで導入可能であり、登記簿には記載されません。社外に内容を知られずに導入できるため、金融機関や取引先に余計な懸念を与えにくいのが特徴です。 3. 第三者への対抗力が強いのは「黄金株」 黄金株は「株式そのもの」に特別な権利が付与されているため、その効力は強力です。もし黄金株が第三者に譲渡された場合でも、強力な拒否権は維持されます。そのため、敵対的買収への防衛策としても機能します。 一方、VIP株は「その人(属人)」に着目した権利です。VIP待遇を受けている株主が株式を第三者に譲渡した場合、譲受人はVIP待遇を受けられず、通常の「1株1議決権」に戻ります。M&A防衛策や第三者への対抗力という意味では、黄金株の方が優れています。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ「誰にも知られずにこっそり支配権を残したい」ならVIP株、「対外的に強い効力を示して会社を守りたい」なら黄金株、という使い分けが重要です。 たった1株で会社を守る!黄金株によって拒否権を行使できる6つの重要事項 黄金株を1株保有するだけで、株主総会や取締役会で決議された事項に対し、拒否権を行使できます。具体的にコントロールできる主要な項目は以下の6つです。 取締役・代表取締役の選任および解任 役員報酬の決定に関する事項 合併や事業譲渡などのM&A関連事項 定款変更や新株発行などの組織再編 多額の借財や重要な資産の処分 配当金の決定などの財務事項 それぞれ解説していきます。参照元URL https://www.ma-cp.com/about-ma/glossary/detail_30.htmlhttps://ma-royal.com/column/basic/golden-shares/ 1. 取締役・代表取締役の選任および解任 経営の根幹である「人」に関する決定権をコントロールできます。後継者が未熟なうちに、不適切な人物を取締役に選任しようとしたり、先代が信頼する役員を勝手に解任しようとしたりした場合、黄金株を行使してこれを阻止できます。 これにより、経営体制の急激な変化や組織の崩壊を未然に防ぐことが可能です。特に承継直後の不安定な時期において、人事権の暴走を抑える強力なブレーキとなります。 2. 役員報酬の決定に関する事項 後継者が自分や親族に対して、会社の財務状況を無視した高額な役員報酬を設定しようとした場合、これにストップをかけられます。 会社財産の不当な流出を防ぎ、健全な財務体質を維持するために重要な項目です。オーナー企業では「会社のお金」と「個人のお金」の境界が曖昧になりがちですが、黄金株によって最低限の規律を保つことができます。 3. 合併や事業譲渡などのM&A関連事項 会社の存続に関わるM&A(合併・買収)や事業譲渡についても、拒否権を設定できます。後継者が独断で会社を売却しようとしたり、相乗効果の薄い会社と合併しようとしたりするリスクを回避できます。 会社の支配権が意図せず第三者に渡るのを防ぐ、最後の砦となります。創業者が守り抜いてきた暖簾(のれん)を、安易な売却から守るために不可欠な権利です。 4. 定款変更や新株発行などの組織再編 会社の基本規則である「定款」の変更や、第三者への新株発行(増資)に対しても拒否権を持てます。特に新株発行は、既存株主の持株比率を低下させる恐れがあるため、創業家以外の株主の影響力が増すことを防ぐ意味でも重要です。 勝手にルールを変えられたり、外部資本を入れられて経営権を薄められたりする事態を防ぎ、創業家のコントロール権を維持するための基盤となります。 5. 多額の借財や重要な資産の処分 会社が多額の借金をして不動産を購入したり、逆に重要な工場や土地を売却したりする際にも、黄金株保有者の承認を必要とすることができます。「いくら以上の借入・処分」といった金額基準を設けるのが一般的です。 日常業務は後継者に任せつつ、財務的な致命傷になりかねない大きな判断のみを監視できます。会社の屋台骨を揺るがすような投資や資産売却を、経験豊富な先代がチェックする仕組みです。 6. 配当金の決定などの財務事項 株主への配当金の決定についても拒否権を行使できます。過大な配当による資金流出を防ぐだけでなく、逆に適切な配当を行わない場合に牽制するなど、資本政策の安定化を図るために活用されます。 後継者が利益を会社に残さず過度に配当したり、逆に株主還元を無視したりする極端な財務方針を正し、中長期的な視点での会社経営を促す効果があります。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ黄金株は「何でも口出しできる権利」ではなく、「会社が危ない時にブレーキを踏む権利」です。日常業務には干渉せず、ここぞという場面でのみ使うのが賢い運用法です。 事業承継で黄金株を導入する3つのメリット 黄金株は、特に中小企業の事業承継において強力なツールとなります。主なメリットは以下の3点です。 後継者の暴走や未熟な経営判断にブレーキをかけられる 敵対的買収(M&A)に対する強力な防衛策になる 経営権を段階的に移譲しながら創業者の影響力を残せる それぞれ解説していきます。参照元URL https://ma-s.jp/knowledge/6446/ 1. 後継者の暴走や未熟な経営判断にブレーキをかけられる 黄金株の最大のメリットは、後継者の「暴走」を防げる点です。株式の過半数を後継者に譲渡して経営権を移した後でも、先代経営者が黄金株を持っている限り、会社を危険にさらすような決定を拒否できます。 後継者が経験を積み、一人前の経営者になるまでの「お守り」として機能します。失敗が許されない重要な局面で、先代が最終的な安全装置として存在することは、会社全体にとって大きな安心材料となります。 2. 敵対的買収(M&A)に対する強力な防衛策になる 黄金株は、敵対的買収に対する最強の防衛策(ポイズンピル)の一つです。もし買収者が市場で株式を買い集め、過半数の議決権を握ったとしても、黄金株を持つ株主が取締役の選任や合併を拒否すれば、買収者は経営のコントロールを奪えません。 実際に、国際石油開発帝石(INPEX)では、海外企業からの買収を防ぐために政府が黄金株を保有しています。たった1株で会社乗っ取りを防げる鉄壁の守りとなります。 3. 経営権を段階的に移譲しながら創業者の影響力を残せる 一気にすべての権限を渡すのではなく、「株式(財産)」は先に譲り、「重要事項の決定権(黄金株)」は手元に残すという段階的な承継が可能になります。 後継者の成長を見守りつつ、本当に危ない時だけ口を出せる仕組みを作れるため、先代・後継者双方にとって精神的な安定につながります。完全に引退する前の「並走期間」を設けることで、スムーズな世代交代を実現できます。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ「財産権」と「経営権」を切り離して考えられるのが黄金株の強み。株は渡しても、会社を守るためのグリップは握っておけます。 導入前に知っておくべき黄金株の4つのデメリットとリスク 強力な権限を持つ反面、黄金株には無視できないリスクやデメリットも存在します。導入前に以下の4点を確認しておきましょう。 黄金株自体が相続されると経営が混乱するリスク 拒否権の乱用により迅速な経営判断が阻害される 登記簿に記載されるため対外的な信用に影響する可能性 事業承継税制の適用対象外になるケースがある それぞれ解説していきます。参照元URL https://www.youtube.com/watch?v=kYJvLddrQ6ghttps://ma-royal.com/column/basic/golden-shares/ 1. 黄金株自体が相続されると経営が混乱するリスク 最も注意すべきは、黄金株を持っていた先代経営者が亡くなった後の相続です。もし遺言などがなく、経営に関与させたくない親族や、会社と敵対的な人物に黄金株が相続されてしまうと、その人物が強力な拒否権を持つことになります。 これにより、後継者が何も決められず、会社経営が麻痺してしまうリスクがあります。強力な武器が悪意ある第三者の手に渡るのと同じであり、最悪のケースでは会社が立ち行かなくなります。 2. 拒否権の乱用により迅速な経営判断が阻害される 先代経営者が頻繁に拒否権を行使すると、「結局、親父が全部決めるんじゃないか」と後継者のやる気を削ぐ原因になります。 また、いちいち黄金株主(種類株主総会)の承認を得る必要があるため、迅速な意思決定が求められる現代のビジネススピードにおいて、経営の足かせになる恐れがあります。あくまで「非常時のブレーキ」であるべきものが、日常的な障害物になってはいけません。 3. 登記簿に記載されるため対外的な信用に影響する可能性 黄金株の内容は登記簿に記載され、誰でも閲覧できます。これにより、「この会社はまだ先代が支配しており、現社長には決定権がない」「親子関係がうまくいっていないのではないか」と外部から推測されかねません。 金融機関や取引先からの信用に影響を与える可能性があります。事業承継が完了しているのか疑念を持たれないよう、対外的にしっかりとした説明が求められます。 4. 事業承継税制の適用対象外になるケースがある 黄金株の保有状況によっては、事業承継税制の特例措置が受けられない可能性があります。事業承継税制は「後継者が経営権を握っていること」が前提となるため、先代が強力すぎる権限を持ち続けていると、要件を満たさないと判断されるリスクがあります。 税制優遇を受けられないと、多額の贈与税や相続税が発生する恐れがあります。導入の際は、必ず税理士などの専門家に確認が必要です。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ最大の落とし穴は「相続」です。先代が亡くなった瞬間、黄金株が誰の手に渡るかわからない状態は、会社にとって時限爆弾を抱えているのと同じです。 【プロの視点】「取得条項付」にしないと危険?認知症・相続トラブルを防ぐ2つの高度な設計 黄金株を導入する際、単に拒否権をつけるだけでは不十分です。「取得条項(Call Option)」を組み合わせることで、以下の2つのリスクを劇的に下げることができます。 認知症対策:会社が強制的に買い取る「取得条項」の活用 相続対策:後継者以外への流出を防ぐ遺言と売渡請求 それぞれ解説していきます。参照元URL https://www.youtube.com/watch?v=J_jKjTUDJgUhttps://www.youtube.com/watch?v=4T1FjWClX_w 1. 認知症対策:会社が強制的に買い取る「取得条項」の活用 黄金株を持つ先代経営者が認知症になり、判断能力を失うと大変なことになります。成年後見人がついた場合、経営判断のたびに後見人の許可が必要になり、実質的に経営がストップしてしまうからです。 これを防ぐために、「株主が後見開始の審判を受けた場合、会社が強制的にその株式を買い取る」という「取得条項」を定款に定めておきます。これにより、先代が認知症になった瞬間に黄金株は会社に回収され、拒否権は消滅するため、後継者はスムーズに経営を継続できます。 2. 相続対策:後継者以外への流出を防ぐ遺言と売渡請求 黄金株が意図しない人物に渡らないよう、「黄金株は後継者に相続させる」という遺言書(公正証書遺言)を作成しておくことが基本です。 さらに安全策として、「株主が死亡した場合、会社がその株式を買い取ることができる」という条項(売渡請求や取得条項)を入れておくことも有効です。万が一遺言が無効だったり、遺留分減殺請求などで揉めたりした場合でも、会社が黄金株を回収して無効化することが可能になります。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ黄金株は「抜き身の刀」です。認知症や死亡というリスクに備えて、自動的に鞘(さや)に収まる「取得条項」という仕組みが絶対に必要です。 最短で導入!黄金株(拒否権付種類株式)を発行する4つのステップ 黄金株の発行には、会社法に基づいた厳格な手続きが必要です。既存の株式を変更する場合の一般的な流れは以下の4ステップです。 株主総会の特別決議による定款変更 対象株主との合意書作成および同意の取得 法務局への種類株式の変更登記申請 発行後の運用ルールの策定 それぞれ解説していきます。参照元URL https://www.ma-cp.com/about-ma/glossary/detail_30.html 1. 株主総会の特別決議による定款変更 まず、株主総会を招集し、定款を変更して「拒否権付種類株式(黄金株)」の内容を追加する決議を行います。 これには議決権の3分の2以上の賛成が必要な「特別決議」が求められます。会社にとって非常に重要な変更であるため、普通決議(過半数)よりも厳しい要件が課されています。 2. 対象株主との合意書作成および同意の取得 次に、現在発行されている普通株式の一部を黄金株に変更するために、対象となる株主(先代経営者など)と会社の間で合意書を作成します。 また、ある株主の株式だけ種類を変えることは他の株主にも影響するため、原則として株主全員の同意書が必要になります。少数株主がいる場合は、事前の根回しや丁寧な説明が不可欠です。 3. 法務局への種類株式の変更登記申請 手続きが完了したら、法務局へ変更登記を申請します。「黄金株の内容」「発行可能株式総数」「種類ごとの発行済株式数」などを登記簿に反映させます。 この登記が完了して初めて、第三者に対しても効力を持つことになります。社内手続きだけで終わらせず、確実に公的な手続きを行う必要があります。 4. 発行後の運用ルールの策定 発行して終わりではありません。「どのような場合に拒否権を行使するのか」「いつまで黄金株を維持するのか(消滅時期)」といった運用ルールを明確にしておくことが重要です。 特に、黄金株には必ず「譲渡制限」を付し、会社の承認なしに勝手に売買できないようにしておくことが必須です。設計図だけでなく、使い方のマニュアルもセットで用意しましょう。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ手続きのミスは後々「決議無効」の訴えにつながるリスクがあります。司法書士や弁護士のチェックを受けながら、慎重に進めることが大切です。 複雑な資本政策や事業承継にお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 財務のプロがあなたの会社の課題を正確に可視化します 黄金株の導入は強力な手段ですが、設計を誤ると将来の火種になります。Encoachでは、貴社の財務状況や親族関係を深く分析し、最適な資本政策をご提案します。 資金繰り改善から事業計画策定までワンストップでサポート 単なる節税や手続き代行にとどまらず、事業承継後の資金繰り改善や、後継者が自信を持って経営するための事業計画策定まで、一気通貫でサポートします。 まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 「うちの会社に黄金株は必要?」「認知症対策はどうすればいい?」など、財務・事業承継に関するお悩みがあれば、まずはEncoachの無料相談をご活用ください。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ黄金株はオーダーメイドの設計が必要です。自社だけで判断せず、第三者の専門家の意見を入れることで、リスクのない承継プランが完成します。 黄金株・種類株式に関するよくある質問 この章では、黄金株に関してよくある質問とその答えをご紹介します。 Q1. 黄金株の相続税評価額は高くなりますか? 基本的には普通株式と同じ評価額となります。黄金株は強力な権限を持ちますが、国税庁の通達では拒否権の有無を考慮せずに評価するとされており、原則として相続税評価額が高くなることはありません。 ただし、配当優先権など経済的な価値が異なる設計にした場合は、評価が変わる可能性があるため注意が必要です。 Q2. 黄金株は上場企業でも導入できますか? 原則として難しいですが、例外的に認められているケースがあります。東京証券取引所は「株主平等の原則」を重視しており、上場企業の黄金株導入には消極的です。 しかし、国策に関わる企業などでは例外があり、国際石油開発帝石(INPEX)は、日本政府が保有する黄金株を発行している唯一の上場企業です。 Q3. 後継者が成長した後、黄金株を消滅させることは可能ですか? 可能です。定款変更と株主総会の決議によって黄金株を廃止・回収することができます。 また、あらかじめ「発行から10年経過したら普通株に転換する」といった条件を定款に定めておくことで、自動的に消滅させることも可能です。期間限定の権利とすることで、後継者の自立を促せます。 Q4. 黄金株を持っていると銀行融資に影響しますか? 直接的なマイナス評価にはなりにくいですが、懸念される可能性はあります。黄金株は登記簿に記載されるため、金融機関は「先代の影響力が強く、現経営者の決定権が弱い」と判断する材料にする可能性があります。 事業承継が完了しているのかどうか、疑念を持たれないよう丁寧な説明が必要です。 まとめ:黄金株は「伝家の宝刀」。取得条項とセットで設計し、円滑な事業承継を実現しよう 黄金株(拒否権付種類株式)は、たった1株で会社の重要事項をコントロールできる強力なツールです。後継者の暴走を防ぎ、敵対的買収から会社を守る「盾」として機能します。 しかし、その強力さゆえに、設計を誤ると「認知症リスク」や「相続トラブル」によって、逆に会社の首を絞めることになりかねません。 導入する際は、必ず「取得条項」をセットで検討し、万が一の際には会社が黄金株を回収できる仕組みを整えておくことが、プロが推奨する安全な運用法です。専門家の知見を借りながら、あなたの会社に最適な事業承継プランを設計してください。 -
利益剰余金と内部留保の3つの違いとは?計算方法や増やし方、活用術まで徹底解説
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「ニュースでよく聞く『内部留保』と決算書の『利益剰余金』、一体何が違うの?」「うちの会社には関係ある言葉?」 そんな疑問をお持ちの経営者や経理担当者の方は多いはず。実はこの2つ、指している中身はほぼ同じです。しかし、使われる場面やニュアンスには明確な違いがあります。 この記事では、利益剰余金と内部留保の決定的な違いから、計算方法、メリット・デメリットまで徹底解説します。言葉の意味を正しく理解し、財務基盤を強化して「潰れない強い会社」を作るためのヒントを持ち帰ってください。 監修者Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。 まずは結論!利益剰余金と内部留保の違いが一目でわかる比較表 利益剰余金と内部留保は、しばしば混同されますが、厳密には「会計上の用語」か「経済的な概念」かという点で異なります。 両者の違いを整理した比較表は以下の通りです。 項目利益剰余金内部留保定義企業が生み出した利益の蓄積額税引後利益から配当等を控除し社内に残った資金分類会計用語(勘定科目)経済用語(概念的な呼び名)決算書貸借対照表(純資産の部)に記載あり決算書に「内部留保」という項目はなし構成利益準備金、その他利益剰余金利益剰余金に加え、引当金等を含む場合があるイメージ過去の利益の積み上げ実績企業の「蓄え」や「埋蔵金」というニュアンス このように、決算書(貸借対照表)に載っている正式名称が「利益剰余金」であり、それを経済ニュースや経営分析の文脈で呼ぶ際の通称が「内部留保」であると理解するとスムーズです。 ※1 出典:財務省「法人企業統計調査」 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロこの表を押さえておけば、ニュースや金融機関との会話で混乱することはありません。「会計用語か経済用語か」という違いだけです。 そもそも利益剰余金・内部留保とは?会計上の定義と関係性 「利益剰余金」と「内部留保」。似て非なるこの2つの言葉ですが、実務上はほぼイコールと考えて差し支えありません。 なぜ呼び名が分かれているのか、そしてなぜ多くの人が誤解してしまうのか。会計上の定義と、よくある勘違いについて詳しく解説します。 1. 利益剰余金とは?貸借対照表(B/S)における「利益の蓄積」 利益剰余金とは、創業から現在までに会社が稼ぎ出した利益の累積額のこと。単年度の成績である「当期純利益」とは異なり、過去の頑張りの結晶とも言える数字です。 貸借対照表(B/S)では、右下の「純資産の部」に表示されます。具体的には、毎年の決算で出た利益から、税金を払い、株主へ配当金を支払った後の「残り」がここに積み上がっていきます。 いわば会社の「通知表」の累計点のようなもの。この金額が大きいほど、長年安定して利益を出してきた証拠であり、会社としての体力があることを示します。 2. 内部留保とは?会計用語ではないが「利益剰余金」とほぼ同義 内部留保という言葉は、実は会計の正式な勘定科目ではありません。決算書の中を探しても「内部留保」という項目は見当たらないはずです。 一般的には、利益剰余金を指す経済用語として使われます。広義には、減価償却費などの「社内に留保される資金」を含める場合もありますが、中小企業の経営実務においては「内部留保=利益剰余金」と捉えて問題ありません。 ニュースなどで「企業の内部留保が過去最高」と報じられる際は、この利益剰余金の総額が増えていることを意味しています。 3. なぜ混同される?「内部留保=現金・預金」というよくある誤解を解説 最も多い誤解が、「内部留保がたくさんある=金庫に現金が唸っている」という思い込みです。これは大きな間違い。 内部留保(利益剰余金)はあくまで「利益の計算上の蓄積」であって、現金の残高とは一致しません。稼いだお金は、すでに工場や機械、商品の在庫といった「資産」に形を変えていることが多いからです。 例えば、1億円の利益があっても、それを元手に1億円の工場を建てていれば、手元の現金は減りますが、内部留保の額は減りません。「埋蔵金があるなら賃上げしろ」という議論が噛み合わない原因は、この資金運用(資産)と資金調達(純資産)の混同にあります。 ※2 出典:中小企業基盤整備機構「J-Net21 内部留保のメリットとデメリットについて教えてください。」 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ「内部留保=現金」ではないという点を理解しているかどうかで、財務を見る目が大きく変わります。B/Sの左側(資産)と右側(純資産)を分けて考えることが基本です。 利益剰余金(内部留保)の3つの内訳 利益剰余金は、ひとくくりにされがちですが、実は中身が3つに分かれています。 利益準備金 任意積立金 繰越利益剰余金 それぞれの性質を知ることで、決算書の解像度がぐっと上がります。 1. 利益準備金:会社法で定められた積立金 会社法という法律で、「配当を出すなら、その一部を強制的に積み立てなさい」と決められているお金です。 具体的には、配当金の10分の1を積み立てる義務があります(資本準備金と合わせて資本金の4分の1に達するまで)。これは、会社財産が配当によって流出しすぎてしまい、債権者(銀行や取引先)が困るのを防ぐためのルール。 いわば、会社の安全を守るための「強制貯金」のような存在です。 2. 任意積立金:企業が任意で積み立てるお金 会社が自分たちの意思で、「将来のために取っておこう」と決めて積み立てるお金です。 修繕積立金:将来の設備修繕に備える 退職給付積立金:従業員の退職金に備える 別途積立金:特に目的を定めない予備費 これらは定款や株主総会の決議によって設定されます。目的がはっきりしているため、経営の計画性を示す指標とも言えるでしょう。 3. 繰越利益剰余金:自由に使える利益の蓄積 利益準備金や任意積立金以外で、翌期以降に繰り越される利益のことです。 配当の原資となるのは主にこの部分。使い道が限定されていないため、経営者が最も柔軟に活用できる資金です。決算書上では、ここがプラスであれば「これまで黒字を積み重ねてきた」、マイナスであれば「過去の赤字がまだ解消できていない」という判断材料になります。 多くの中小企業では、この繰越利益剰余金の積み上げこそが、経営の安定度を測るバロメーターとなります。 ※3 出典:財務省「法人企業統計調査」 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ繰越利益剰余金は経営者の「自由度」を表す数字です。ここが厚いほど、急な投資や不況への対応が柔軟にできる体制が整っていると言えます。 利益剰余金(内部留保)を増やす4つのメリット なぜ多くの経営者は内部留保を厚くしたがるのでしょうか。それは単なる「ため込み」ではなく、会社の生存確率を高めるための合理的な理由があるからです。 主なメリットは以下の4つです。 財務基盤の安定 融資の受けやすさ 成長投資への活用 リスクへの備え それぞれ具体的に見ていきましょう。 1. 財務基盤が安定し、会社の信用力が向上する 利益剰余金は、返済義務のない「自己資本」です。これが積み上がると、総資産に占める自己資本の割合(自己資本比率)が高まります。 自己資本比率が高い会社は、借金に依存していない「潰れにくい会社」として評価されます。取引先からの信用も上がり、掛け取引の限度額が拡大するなど、ビジネス上の好条件を引き出しやすくなるでしょう。 まさに、企業の「履歴書」や「通知表」を良くする効果があるのです。 2. 金融機関からの融資が受けやすくなる 銀行が融資審査で最も重視するポイントの一つが、この利益剰余金の厚みです。 「過去にこれだけ利益を出して蓄積してきた」という実績は、返済能力の強力な証明になります。逆に、ここがマイナス(債務超過)だと、融資のハードルは極端に上がります。 内部留保が潤沢であれば、プロパー融資(信用保証協会の保証なしの融資)を受けやすくなったり、金利条件が優遇されたりと、資金調達の選択肢が広がります。 3. 新規事業や設備投資など、成長への再投資が可能になる 蓄えた利益を元手にすれば、銀行からお金を借りたり、増資で株主を募ったりする手間をかけずに、スピーディーな投資が可能です。 老朽化した設備の更新 新規事業の立ち上げ DX(デジタル化)への投資 これらを「自分のお金」で賄えるため、金利負担も発生しません。経営の自由度を保ったまま、攻めの経営に転じることができるのは大きな強みです。 4. 不測の事態に備えることができ、経営の安定性が増す コロナ禍のような予期せぬ不況や、大口取引先の倒産など、経営にはリスクがつきものです。 そんな時、厚い内部留保があれば、一時的な赤字が出ても会社は揺らぎません。赤字は利益剰余金を食いつぶしますが、蓄積が十分にあれば債務超過への転落を防げます。 いわば経営の「ダム」や「防波堤」としての機能。従業員の雇用を守り、嵐が過ぎ去るのを待つ体力がつくのです。 ※4 出典:中小企業庁「中小企業の財務基盤強化について」 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ内部留保は「守り」だけでなく「攻め」のための武器でもあります。チャンスを逃さず掴むためにも、一定の蓄えは経営の必須条件です。 知っておくべき利益剰余金(内部留保)の3つのデメリットと注意点 メリットの多い内部留保ですが、ただ闇雲に増やせば良いわけではありません。過度な蓄積は、時にステークホルダーとの摩擦や、税務上のリスクを招くこともあります。 押さえておくべき3つの注意点を解説します。 1. 賃上げや株主への還元が少ないと見なされる可能性がある 内部留保が増え続ける一方で、従業員の給料が上がらなかったり、配当が増えなかったりすると、不満の種になります。 「会社だけ儲けて、還元していないのではないか」 従業員や労働組合、株主からこのように見られるリスクがあります。特に近年は「人的資本経営」が叫ばれており、利益を適切に人件費や配当に回すバランス感覚が経営者に求められています。 2. 留保金課税の対象となり、追加の税負担が発生する場合がある 特定の同族会社(創業家などが株の過半数を持っている会社など)では、内部留保が一定額を超えると「留保金課税」というペナルティ的な税金がかかる場合があります。 これは、オーナー社長が配当を出さずに会社にお金を貯め込み、個人の所得税(配当課税)を回避するのを防ぐための制度。 資本金1億円以下の中小企業は基本的に対象外ですが、資本金が大きい同族会社は注意が必要です。顧問税理士と相談し、適正な水準を管理しましょう。 3. 投資機会を逃し、成長が鈍化するリスクがある 「守り」に入りすぎて現預金としての内部留保ばかり増やしてしまうと、成長のチャンスを逃すことになります。 競合が設備投資をして生産性を上げている 新しい技術への投資が必要な時期 こうした局面でお金を出し惜しみすれば、長期的には競争力を失います。「お金を持っていること」自体は価値を生まないため、インフレ時には資産価値が目減りするリスクもあります。適切な再投資こそが、将来の内部留保をさらに大きくするのです。 ※5 出典:国税庁「特定同族会社の留保金課税」 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ内部留保は「貯める」ことより「使う」ことの方が難しい。適切な投資判断ができる経営者こそが、真に強い会社を作れます。 利益剰余金(内部留保)の計算方法と増やし方 「自社の内部留保を増やしたいが、どうすればいい?」 仕組みはシンプルですが、実行には戦略が必要です。具体的な計算式と、増やすためのステップを確認しましょう。 1. 利益剰余金の計算式:前期繰越利益剰余金+当期純利益-配当金 今期の決算書に載る「利益剰余金」は、以下の式で求められます。 期末の利益剰余金 = 期首の利益剰余金 + 当期の純利益 - 株主への配当金 つまり、前年までの貯金に、今年稼いだ手取りの利益を足し、そこから配当などで外に出した分を引いた残りです。 シンプルに言えば、「稼いで(純利益)、使わずに残す(配当控除)」ことでしか増えません。魔法のような増やし方は存在しないのです。 2. 効果的に内部留保を増やす2つのステップ 内部留保を厚くするには、以下の2段階のアプローチが有効です。 ステップ1:収益性を改善し、当期純利益を最大化する まずは「入ってくる水」を増やすこと。売上を上げるだけでなく、コスト削減や生産性向上で最終的な「当期純利益」を残す経営にシフトします。 不採算事業の見直し 固定費の削減 高利益率商品への注力 特に中小企業の場合、節税対策で利益を圧縮しすぎると、内部留保が積み上がらず、銀行評価が上がらないジレンマに陥りがちです。適正に税金を払い、利益を計上することが、結果的に最強の財務強化策になります。 ステップ2:配当政策を見直し、社内留保とのバランスを取る 次に「出ていく水」を調整します。株主(オーナー社長自身であることも多い)への配当金をどの程度にするか、戦略的に決定します。 配当を抑えれば内部留保は増えますが、株主還元との兼ね合いが重要です。中小企業オーナーの場合は、役員報酬とのバランスも見ながら、「会社に残すお金」と「個人に残すお金」の最適解を探る必要があります。 ※6 出典:国税庁「No.5700 特定同族会社の留保金課税」 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ内部留保を増やす王道は「利益を出すこと」に尽きます。節税も大事ですが、適正な利益計上が長期的な信用力につながることを忘れずに。 会社の成長を加速させる!利益剰余金(内部留保)の戦略的な3つの使い方 内部留保は「貯めること」がゴールではありません。「使うこと」で初めて将来の利益を生み出します。 賢い経営者は、蓄えた資金を以下の3つの分野へ戦略的に再投資しています。 1. 設備投資:生産性向上や事業拡大の基盤を作る 製造業であれば最新の機械導入、サービス業であれば店舗改装やITシステムの刷新など、事業の足腰を強くする投資です。 内部留保を使えば、借入金の利息負担なく投資できるのが最大のメリット。また、減価償却を通じて将来の節税効果も期待できます。「稼いだお金で次の飯の種をまく」という、最も健全なサイクルの起点となります。 2. 研究開発(R&D):将来の競争優位性を確立する 新商品の開発や技術研究にお金を投じます。成果が出るまで時間がかかるR&D投資こそ、返済期限のある借入金ではなく、返済不要な内部留保を使うべき分野です。 短期的には費用がかさみ利益を圧迫しますが、数年後の市場での優位性を作るためには欠かせない「未来への貯金」と言えます。 3. M&A(企業の合併・買収):スピーディーに事業規模を拡大する 時間を買う投資、M&A。事業承継や規模拡大のために他社を買収する際、豊富な内部留保があれば迅速に決断できます。 融資審査を待っている間にライバルに先を越されるリスクを回避でき、即断即決でチャンスを掴めるのは、キャッシュリッチな企業の特権です。国の「M&A促進税制」などを活用すれば、投資リスクを抑えつつ成長を加速させることも可能です。 ※7 出典:中小企業庁「事業承継・引継ぎ補助金(M&A)」 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ内部留保は「守りの盾」であると同時に「攻めの矛」でもあります。成長のための投資にこそ、本当の価値が生まれます。 財務体質の改善や資金繰りにお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 「内部留保を増やしたいが、思うように利益が残らない」 「設備投資と内部留保、どちらを優先すべきか判断できない」 財務の悩みは、会社のフェーズによって千差万別です。一般的な知識だけでなく、御社の状況に合わせたオーダーメイドの戦略が必要です。 財務のプロがあなたの会社の課題を正確に可視化します Encoachでは、決算書を分析し、「どこにお金が消えているのか」「適正な内部留保の水準はいくらか」を明確にします。経営者自身が気づいていない財務のボトルネックを発見し、改善の道筋を示します。 資金繰り改善から事業計画策定までワンストップでサポート 単なる節税アドバイスにとどまらず、銀行融資の交渉サポートや、中期経営計画の策定まで伴走します。「攻め」と「守り」の両輪を整え、持続的に成長できる財務体質への変革をお手伝いします。 まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 「まずは自社の現状を知りたい」という経営者様のために、無料相談を受け付けています。プロの視点を取り入れ、強固な財務基盤を作る第一歩を踏み出しませんか。 利益剰余金・内部留保に関するよくある5つの質問 最後に、経営者の方からよく寄せられる質問にお答えします。 Q1. 利益剰余金がマイナスだとどうなりますか? 過去の赤字が累積し、蓄えを食いつぶしている状態です。さらに悪化して資本金まで食いつぶすと「債務超過」となり、銀行融資が極めて困難になります。早急な黒字化と財務改善が必要です。 Q2. 内部留保の適切な目安はどれくらいですか? 業種によりますが、固定費の3〜6ヶ月分程度の現預金を確保できる水準が一つの目安です。自己資本比率で言えば、30%〜50%以上を目指すと財務が安定します。 Q3. 中小企業でも内部留保は重要ですか? 非常に重要です。大企業のように市場から簡単に資金調達できない中小企業こそ、自前の「防波堤」である内部留保が命綱になります。銀行評価に直結するため、融資を受ける上でも必須の要素です。 Q4. 内部留保に税金はかかりますか? 通常の法人税を支払った後の残りなので、原則として二重に税金はかかりません。ただし、前述の通り「特定同族会社」などの要件に当てはまる場合、留保金課税という追加課税が発生する可能性があります。 まとめ:利益剰余金と内部留保の違いを正しく理解し、強い会社を作ろう 利益剰余金と内部留保は、「決算書の正式名称」か「経済的な通称」かの違いであり、実態は「過去の利益の蓄積」です。 利益剰余金:B/Sの純資産にあり、会社の体力(自己資本)を表す 内部留保:現金だけでなく、設備や在庫など様々な資産に形を変えて会社に残っている 活用法:財務の安定だけでなく、投資の原資として成長のエンジンになる 正しい理解なしに「内部留保は悪だ」「とにかく減らせ」と考えるのは危険です。一方で、ただ貯め込むだけでも機会損失になります。 重要なのは、「適正な額を蓄え、効果的に使う」バランス感覚。自社の財務状況を正しく把握し、戦略的に内部留保をコントロールして、どんな不況にも負けない強い会社を作り上げていきましょう。 -
1人社長の自宅は経費にできる!家賃の経費化から節税まで徹底解説
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「毎月の家賃、これを会社の経費にできればどれだけ資金繰りが楽になるだろう」 1人社長として会社を経営していると、自宅の家賃や光熱費の負担の重さに悩むことはありませんか。実は、正しい知識と手続きを踏めば、自宅家賃の大部分を経費にすることは十分に可能です。 この記事では、1人社長が自宅を賢く「社宅化」して手取りを最大化する方法や、税務調査で否認されないための鉄則を解説します。合法的に税金を抑え、会社の利益を個人の資産として守るための具体的なロードマップを手に入れてください。 監修者Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。 結論!1人社長の自宅経費はこう変わる【個人事業主との比較】 1人社長(法人)と個人事業主では、自宅を経費にする際のルールや節税効果が劇的に異なります。その最も大きな違いは、「社宅制度」が使えるかどうかです。 個人事業主の場合、「事業に使っている部分(面積や時間)」しか経費にできませんが、法人の場合は「会社が借り上げて社長に貸す」形式をとることで、プライベート空間を含めた家賃の多くを経費化できる可能性があります。まずは以下の表で、その決定的な差を確認しましょう。 項目個人事業主(自宅兼事務所)1人社長(役員社宅)経費計上の考え方家事按分(事業使用割合のみ)社宅制度(法人契約して貸与)経費にできる範囲事業スペースのみ(例:30%)家賃の50%〜90%程度が可能契約名義個人名義法人名義節税効果限定的非常に大きい 個人事業主の「家事按分」は、税務署に対して「ここは仕事場、ここは寝室」と厳密に説明する必要があります。一方、法人の「社宅扱い」であれば、家賃の半分以上、場合によっては8〜9割を経費として計上することも可能になり、会社と個人双方の税負担を大きく減らせます。 ※出典:国税庁 No.2210 必要経費の知識※出典:国税庁 No.2600 役員に社宅などを貸したとき Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ経費になる範囲が「面積」ではなく「規定」で決まるのが法人の強み。この差が数百万の手残りの差を生みます。 1人社長が自宅家賃を経費にするための3つの鉄則 1人社長が自宅家賃を経費にするには、単に領収書を保存するだけでは不十分です。税務調査で否認されないためには、「法人と個人の契約関係」を明確にすることが何より重要です。 持ち家の場合と賃貸の場合ではアプローチが全く異なります。自分自身の状況に合わせて適切な法的手続きを踏まないと、後から「認定賞与」として課税されるリスクがあります。ここでは、絶対に外せない3つのルールを解説します。 【持ち家の場合】法人へ売却 or 賃貸する 【賃貸の場合】法人契約へ切り替える 合理的な「事業利用割合」を計算する それぞれ詳しく解説します。 1.【持ち家の場合】法人へ売却 or 賃貸する 持ち家を経費化する方法は大きく分けて2つあります。 自宅を法人へ売却する建物が法人の所有物になれば、減価償却費や固定資産税、修繕費などをすべて法人の経費にできます。ただし、移転登記費用や不動産取得税などのコストがかかる点に注意が必要です。 自宅を法人へ賃貸する社長個人と法人で賃貸借契約を結び、法人が事務所として使用します。法人は近隣相場や使用面積に応じた賃料を経費にできますが、社長個人には「不動産所得」が発生するため、個人の確定申告が必要になります。 ※出典:国税庁 No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得) 2.【賃貸の場合】法人契約へ切り替える 賃貸マンション等に住んでいる場合は、契約の名義を「個人」から「法人」へ切り替えること(社宅化)が鉄則です。これを「借り上げ社宅」と呼びます。 法人が大家さんと契約して家賃全額を支払い、社長個人から「一定の賃料(賃貸料相当額)」を徴収します。これにより、法人が支払う家賃と、社長から受け取る賃料の差額(一般的に家賃の50〜80%程度)がそのまま法人の経費となります。 大家さんや管理会社によっては法人契約への変更や社宅利用を断られるケースもあるため、事前の確認が不可欠です。 3. 合理的な「事業利用割合」を計算する(家事按分) 社宅制度を使わず、自宅兼事務所として「家事按分」で経費にする場合や、水道光熱費を経費にする場合は、「事業利用割合」の根拠が必要です。 「なんとなく50%」といった決め方は税務調査で通用しません。「床面積の30%を執務スペースにしている」「1週間のうち40時間を業務に使用している」など、客観的に説明できる数値をもとに計算してください。 特にWeb系やコンサル業など在庫を持たない業種の場合、プライベートとの区切りが曖昧になりがちなので、見取り図や使用記録を残しておくのがベストです。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ「誰の名義で契約しているか」が運命の分かれ道。賃貸なら今すぐ契約変更の可否を管理会社に確認しましょう。 家賃だけじゃない!自宅で経費にできる7つの費用 自宅を拠点にビジネスをする際、経費にできるのは家賃だけではありません。事業活動に関連する支出であれば、生活費の一部も経費として計上できる可能性があります。 ただし、すべてを経費にできるわけではなく、あくまで「事業に使った分だけ」が対象です。見落としがちですが、積み重なると大きな節税効果を生む費用について、経費化のポイントを解説します。主に以下の7つが挙げられます。 水道光熱費 通信費(インターネット・電話代) 消耗品費 固定資産税 住宅ローンの利息 火災保険料・地震保険料 駐車場代 ひとつずつポイントを解説します。 ※出典:国税庁 家事関連費(第1号関係) 1. 水道光熱費 電気代、ガス代、水道代も、業務に必要な範囲であれば経費になります。特にPC作業が多いIT業や、自宅でサロンを開く場合などは電気代の比率が高くなるでしょう。 重要なのは按分(あんぶん)の基準です。電気代はコンセントの数や使用時間、水道代はトイレや給湯の使用頻度などで計算するのが一般的です。ただし、家族とお風呂や料理で使う分は事業と無関係なため、全額計上はできません。合理的に説明できる20〜30%程度に設定するのが無難です。 2. 通信費(インターネット・電話代) インターネット回線やプロバイダ料金、スマホ代は、現代のビジネスに不可欠なコストです。 仕事専用の回線やスマホであれば全額経費にできます。プライベートと兼用の場合は、使用時間や日数で按分しましょう。例えば「平日の日中は仕事で使うため5/7を経費にする」といった計算も可能です。Wi-Fiルーターなどの機器購入費も対象になります。 3. 消耗品費 自宅で使用するコピー用紙、インク、文房具、仕事用のデスクや椅子などは「消耗品費」として経費になります。 1つあたりの金額が10万円未満(青色申告の場合は30万円未満の特例あり)であれば、購入した年に一括で経費計上が可能です。トイレットペーパーや洗剤なども、来客用トイレや事務所スペースの清掃に使う分であれば経費として認められます。 4. 固定資産税 持ち家を事業に使用している場合、土地や建物の固定資産税を経費にできます。 これも家事按分の対象となり、事業用スペースの床面積割合(例:総床面積の30%)に応じて計算します。賃貸の場合は大家さんが支払うものなので関係ありませんが、持ち家の1人社長にとっては大きな節税ポイントです。 5. 住宅ローンの利息 持ち家の場合、住宅ローンの返済額そのものは経費になりませんが、「利息部分」のみ経費計上が可能です。 元本部分は「借金の返済」であり費用ではないためです。返済予定表を確認し、年間の支払利息のうち、事業使用割合に応じた金額を経費に入れます。ただし、事業割合を50%以上に設定すると「住宅ローン控除」が受けられなくなる場合があるため、バランスには十分注意してください。 6. 火災保険料・地震保険料 自宅にかけている火災保険や地震保険の保険料も、事業利用分を経費にできます。 長期契約で一括払いしている場合は、その年の分だけを計算して計上します(期間対応)。これらも固定資産税と同様、床面積の割合で按分するのが一般的です。事務所としての機能を守るためのコストなので、忘れずに計上しましょう。 7. 駐車場代 社用車を使用している場合、自宅の駐車場代も経費になります。 賃貸で駐車場代が家賃に含まれている場合は家賃と一緒に処理しますが、別契約の場合は駐車場代として計上します。持ち家の敷地内であれば費用は発生しませんが、月極駐車場を借りているなら全額経費にできる可能性が高いです。事業専用車でない場合は、走行距離などで按分する必要があります。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロチリも積もれば山となる。「これは仕事でも使っている」という支出は、必ず領収書を残す癖をつけましょう。 税務調査で絶対否認されないための4つの注意点 節税効果が高いからこそ、自宅関連の経費は税務調査で厳しくチェックされるポイントでもあります。「実態がない」「私的流用だ」と判断されると、追徴課税などのペナルティを受ける恐れがあります。 しかし、正しい手続きと証拠さえ残しておけば恐れることはありません。調査官が見るのは「客観的な事実」と「記録」です。ここでは、調査官に指摘されないための防御策として、以下の4つを徹底してください。 契約書・議事録を必ず整備する 家賃の相場からかけ離れない 社長個人への家賃支払いを忘れない プライベートな支出と明確に区別する それぞれの詳細を確認しましょう。 ※出典:国税庁 No.2600 役員に社宅などを貸したとき 1. 契約書・議事録を必ず整備する 口約束や曖昧な処理は絶対にNGです。法人契約の賃貸であれば「賃貸借契約書」の名義が法人になっているか確認しましょう。 役員社宅として運用する場合や、持ち家を法人に貸す場合は、「社宅管理規定」や「株主総会議事録」を作成し、決定事項を書面に残す必要があります。「いつ、誰が、どのような条件で決定したか」という証拠書類が、税務調査時の最強の盾になります。 2. 家賃の相場からかけ離れない 法人から社長個人に家賃を払う場合(持ち家を貸すケース)、その金額は「近隣の家賃相場」とかけ離れてはいけません。 相場が10万円のエリアで、会社から社長へ30万円の家賃を払っていれば、差額の20万円は「実質的な役員賞与」とみなされ、損金算入を否認されるリスクがあります。不動産サイトなどで近隣の類似物件の賃料を調べ、プリントアウトして保管しておくと良いでしょう。 3. 社長個人への家賃支払いを忘れない 社宅制度(借り上げ社宅)を利用する場合、社長は会社に対して、毎月「賃貸料相当額(家賃の10〜50%程度)」を必ず支払わなければなりません。 会社が家賃を全額負担してしまうと、本来社長が負担すべき分まで会社が払ったことになり、その分が「現物給与」として社長個人の所得税課税対象になります。給与から天引きするか、毎月会社口座へ振り込む運用を徹底してください。 4. プライベートな支出と明確に区別する 「法人の経費」と「個人の生活費」の境界線は明確に引きましょう。 例えば、家族全員分の食費を「会議費」にしたり、子供のゲーム機代を「消耗品費」にするのは脱税行為です。水道光熱費や通信費も、事業に使った分だけを合理的に按分すべきです。「事業に関係がある支出である」と第三者に説明できないものは、経費に入れない勇気を持つことが会社を守ることにつながります。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ税務署が見ているのは「実態」と「証拠」。書類一枚で数百万円の追徴課税を防げると考えれば、安い手間です。 自宅経費の最大化で終わらない!攻めの節税戦略5選 自宅の経費化は守りの節税ですが、1人社長にはさらに「お金を残す」ための攻めの節税手段がいくつも存在します。利益が出ているなら、ただ税金を払うのではなく、将来の退職金や不測の事態への備えとして資金をプールしておくべきです。 これらは単なる節税だけでなく、会社と個人の資産形成を加速させる強力なツールとなります。ここでは、自宅経費とあわせて実施したい、効果の高い5つの節税戦略を紹介します。 役員報酬の最適化 出張旅費規程の活用 生命保険の活用 経営セーフティ共済(倒産防止共済)への加入 小規模企業共済への加入 順に見ていきましょう。 1. 役員報酬の最適化 役員報酬は高すぎても低すぎても損をします。報酬を上げれば個人の所得税・住民税・社会保険料が跳ね上がり、下げすぎれば会社の法人税負担が増えます。 会社と個人の税金・社会保険料の合計が最小になる「最適ポイント」をシミュレーションして設定しましょう。また、社宅制度を活用して手取りを増やせば、額面の役員報酬を抑えて社会保険料を削減することも可能です。 2. 出張旅費規程の活用 「出張旅費規程」を作成すれば、出張のたびに一定額の「出張手当(日当)」を経費として支給できます。 この手当は、会社側は消費税込みの経費として計上でき、受け取る社長個人は非課税(所得税がかからない)という大きなメリットがあります。宿泊費や交通費の実費だけでなく、日当を設定することで、出張の手間を正当に節税につなげられます。 3. 生命保険の活用 かつてのような「全額損金」の保険商品は減りましたが、依然として法人保険は有効な手段です。 事業保障や退職金の積み立てを目的とした保険であれば、支払う保険料の一部を経費にしつつ、将来の解約返戻金を会社の資金として活用できます。ただし、解約のタイミングや返戻率を慎重に見極めないと損をするリスクもあるため、専門家のアドバイスが必須です。 4. 経営セーフティ共済(倒産防止共済)への加入 国が運営する「経営セーフティ共済」は、掛金を全額経費(月額最大20万円、総額800万円まで)にできる強力な制度です。 本来は取引先の倒産に備える制度ですが、40ヶ月以上納付すれば解約時に掛金が100%戻ってくるため、実質的な利益の繰り延べ(貯金)として使えます。突発的な赤字が出た年に解約して利益を補填するなど、資金繰りの調整弁として非常に優秀です。 5. 小規模企業共済への加入 こちらは「経営者の退職金制度」です。掛金(月額最大7万円)は、法人の経費ではなく社長個人の所得控除になります。 個人の課税所得を直接減らせるため、所得税・住民税の節税効果が絶大です。将来受け取る際も「退職所得」扱いとなり税制優遇が受けられるため、1人社長ならiDeCoとあわせて真っ先に検討すべき制度と言えます。 ※出典:中小機構 経営セーフティ共済※出典:中小機構 小規模企業共済 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ節税の目的は「税金を減らすこと」ではなく「手元資金を最大化すること」。出口戦略まで考えたプランニングが重要です。 経費や財務戦略でお悩みならEncoach株式会社へ 1人社長の節税や経費対策は、個人の状況によって正解が異なります。「自分の場合はいくら経費にできるのか?」「もっと手残りを増やす方法はないか?」とお悩みの方は、ぜひ専門家の視点を取り入れてください。 財務のプロがあなたの会社の課題を正確に可視化します Encoach株式会社では、単なる経理代行ではなく、経営者のパートナーとして「お金の悩み」を根本から解決します。現状の財務状況を正確に分析し、どこに無駄があり、どこに投資すべきかを可視化します。 資金繰り改善から事業計画策定までワンストップでサポート 節税対策はもちろん、銀行融資のサポートや資金繰り表の作成、将来の事業計画策定まで幅広く対応。「攻め」と「守り」の両輪で、あなたの会社の成長をバックアップします。 1人社長の自宅経費に関するよくある5つの質問 最後に、自宅の経費化について多くの1人社長が疑問に思うポイントをQ&A形式でまとめました。知っているだけでトラブルを防げる知識ばかりですので、実行前に必ずチェックしておきましょう。 Q1. 妻名義の持ち家でも社宅にできますか? 可能です。ただし、会社と奥様との間で賃貸借契約を結び、適正な家賃を支払う必要があります。この場合、奥様に家賃収入(不動産所得)が発生するため、金額によっては奥様の扶養が外れたり、確定申告が必要になったりする点に注意してください。 Q2. 経費の計算で間違いやすいポイントは? 最も多い間違いは「住宅ローンの元本」を経費に入れてしまうことです。経費になるのは「利息部分」のみです。また、借り上げ社宅の場合、社長個人が負担すべき「賃貸料相当額」の計算は複雑(固定資産税評価額などを使用)なため、簡易的に「家賃の50%」とするケースも多いですが、正確に計算した方が個人の負担額を下げられる場合があります。 Q3. 法人カードで支払うメリットはありますか? 大きなメリットがあります。法人カードで支払うことで「事業用支出」であることが明確になり、証拠能力が高まります。また、経理処理の手間が省け、会計ソフトとの連携もスムーズになります。ポイントも貯まるため、現金や個人カードで払うよりもお得です。 Q4. 途中で引っ越した場合の手続きはどうなりますか? 引っ越し先の物件で改めて「法人名義での契約」を結ぶ必要があります。また、本店所在地を自宅に登記している場合は、法務局での「本店移転登記」が必要です。これには登録免許税(3万円〜)や手続きの手間がかかるため、頻繁に引っ越す可能性がある場合は、バーチャルオフィス等を本店所在地にするのも一つの手です。 Q5. 税理士に相談するベストなタイミングはいつですか? 「契約する前」または「会社設立前」がベストです。賃貸契約を一度個人で結んでから法人に変更するのは、手数料や大家さんの許可などハードルが高くなります。最初から「法人契約が可能か」「社宅として使えるか」を専門家と相談しながら物件探しや設立準備を進めるのが、最もスムーズで無駄がありません。 ※出典:国税庁 No.2600 役員に社宅などを貸したとき(計算方法など) まとめ:自宅経費を制する者が、1人社長の経営を制する 1人社長にとって、自宅に関する費用は最大の固定費であり、同時に最大の節税チャンスでもあります。 個人事業主の「家事按分」から法人の「社宅制度」へ切り替えるだけで、年間数十万円〜数百万円単位で手元に残るお金が変わることも珍しくありません。 重要なポイントをおさらいしましょう。 社宅制度を活用する(法人契約・賃料徴収) 契約書や規定などの「証拠」を整備する 家賃以外の生活費も合理的に経費化する 役員報酬や共済と組み合わせてトータルで節税する 「面倒だから」と後回しにせず、今の家賃や光熱費が経費にならないか、一度見直してみてください。その小さな見直しが、会社の財務体質を強くし、あなたの事業を長く支える基盤となるはずです。 -
利益剰余金がマイナスとは?銀行融資への影響や債務超過との違い、解消法を徹底解説
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決算書を見て「利益剰余金がマイナスになっている」ことに気づき、銀行融資への悪影響や倒産のリスクを心配されている経営者の方は少なくありません。この数字は会社の健康状態を示す重要なバロメーターであり、放置するのは危険です。 この記事では、税務・財務のプロフェッショナルが、利益剰余金がマイナスになる本当の意味や、債務超過との違い、銀行員が見ている審査のポイントについて分かりやすく解説します。 これを読めば、マイナスを解消するための具体的な手順と、銀行評価の高い強い財務体質を作る方法が分かります。 まずは現状を正しく理解し、改善への一歩を踏み出しましょう。 監修者Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。 まずは結論!利益剰余金のマイナスは即倒産ではないが「融資・信用の危険信号」 利益剰余金のマイナスは即倒産を意味するわけではありません。倒産は赤字の有無にかかわらず、手元の現預金が尽きて支払いができなくなった時に起こります。 しかし、マイナスの状態は過去の赤字が積み上がり、資本金を食いつぶし始めている「危険信号」であることは間違いありません。人間で言えば基礎体力が落ちている状態で、ちょっとした環境変化で資金ショートを起こすリスクが高まっていると認識すべきです。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ マイナスだからといって即倒産するわけではありませんが、「体力が落ちている状態」と認識することが大切です。早めの対策が明暗を分けます。 そもそも「利益剰余金がマイナス」とはどのような状態か 決算書の「純資産の部」に見慣れないマイナス表記があるとギョッとするものです。この数字が表す本当の意味を見ていきましょう。 利益剰余金の正体:会社設立から現在までの「稼ぎ」と「税引後利益」の積み上げ 利益剰余金とは、会社が創業から現在に至るまでに稼ぎ出した利益の「蓄積」 です。毎年の決算で出た黒字から、法人税等を払い、株主へ配当などをした「残り(内部留保)」がここに積み上がります。つまり、単年度の成績ではなく、会社の歴史そのものであり、経営者の長期的な通信簿とも言える数字です。この数字がプラスであれば、過去の経営が順調で利益を再投資に回せる体力があることを示しています。 「内部留保=現金」ではない?マイナスでも現金があるケース、黒字でも現金がないケース よくある誤解ですが、利益剰余金の額と銀行口座の現金残高は一致しません。稼いだ利益は設備投資や仕入れに使われ、機械や在庫という「形」に変わっている ことが多いからです。そのため、利益剰余金がプラスでも現金がない「黒字倒産」のリスクもあれば、逆に借入金で現金を持っていて利益剰余金はマイナス、というケースも存在します。あくまで会計上の計算結果であり、現金の有り無しとは別問題と捉えてください。 マイナスになる主な原因:恒常的な赤字、過剰配当、創業期の先行投資 最も一般的な原因は「赤字経営」です。単年度の赤字が出ると、その分だけ利益剰余金が減少し、過去の蓄積以上に赤字を出せばマイナス表示 になります。また、稀なケースですが、稼いだ利益以上に株主への配当を行いすぎた場合にも減少します。例外として、創業期や大型投資を行った直後は一時的にマイナスになることもありますが、基本的には「稼ぎ」よりも「失った金額」の方が多い状態と言えます。 利益剰余金のマイナスには「2つの危険レベル」がある 一口に「マイナス」と言っても、その深刻度には段階があります。利益剰余金のマイナスには、以下の2つの危険レベルがあります。 1. 資本欠損(純資産はプラスだが、元手である資本金を食いつぶしている) 2. 債務超過(純資産そのものがマイナスで、資産を売っても負債を返せない) それぞれ解説していきます。 1. 資本欠損(純資産はプラスだが、元手である資本金を食いつぶしている) 利益剰余金がマイナスでも、株主が出資した「資本金」の額がそれより大きければ、純資産の合計はプラスを維持できます。これを「資本欠損」と呼びます。元手を食いつぶしている状態 ですが、まだ資産の方が負債より多い(資産>負債)ため、即座に致命的な状態ではありません。ただし、このまま赤字が続けば次の危険なステージへ移行してしまうため、早期の黒字化による止血が求められる段階です。 2. 債務超過(純資産そのものがマイナスで、資産を売っても負債を返せない) 赤字が膨らみ、利益剰余金のマイナスが資本金の額を超えてしまうと、純資産全体がマイナスになります。これが「債務超過」です。資産をすべて売り払っても借金を返せない状態 を意味し、銀行からの信用は地に落ちます。事実上の倒産状態とも言われ、新規の融資を受けることは極めて困難になります。一刻も早い経営再建が必要な、待ったなしの危険な状態です。 なぜ赤字が続くと債務超過に転落するのか? 毎期の赤字は、まず利益剰余金を削り取ります。貯金(過去の利益)が底をつくと、次は資本金(元手)を侵食し始めます。 赤字が止まらない限り、自己資本は減り続け、最終的にマイナス圏へと転落します。債務超過の原因は借金の多さだと思われがちですが、根本原因は「赤字による資産の目減り」です。出血を止めない限り、会社は確実に財務体質を悪化させていくのです。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 債務超過は「借金が多い」のではなく「赤字で資産が減った」結果です。出血を止める経営改善が何より重要! 経営者が最も気にする「銀行融資」への影響と審査のリアルな視点 資金繰りにおいて銀行との付き合いは生命線です。マイナス決算が銀行員の目にどう映るのか、リアルな審査視点をお伝えします。 銀行員は「実態バランスシート」で実質的な資産を見抜く 銀行員は、利益剰余金を「創業からの粉飾の蓄積」と疑って見ることがあります。決算書上はプラスでも、不良在庫や回収不能な売掛金が含まれていれば、それらを差し引いて実態を評価 します。 逆に、マイナスであっても、役員借入金を資本とみなせる場合などは評価が好転することもあります。銀行は表面的な数字ではなく、実質的な資産内容(実態バランスシート)を見て判断していることを忘れてはいけません。 マイナスでも即融資不可ではないが「2期連続」や「債務超過」は厳しい 利益剰余金がマイナスであることは、銀行の格付け評価を大きく下げる要因になります。しかし、即座に融資がストップするわけではありません。例えば、直近で黒字転換していたり、しっかりとした経営改善計画があれば、融資を受けられる可能性は残っています。 ただし、2期連続の赤字や債務超過の状態になると、銀行内の格付けが「要注意先」以下となり、融資のハードルは格段に上がります。 安全圏の目安は「年商の2割」 銀行から安定して融資を受け、強い財務体質を作るための目安として、利益剰余金と資本金の合計(自己資本)が「年商の2割」程度あると理想的 です。 これだけの厚みがあれば、突発的な不況で売上の1割程度の赤字が出ても、債務超過に転落せず耐えられます。この水準を目指して内部留保を積み上げることが、会社を守る最強の盾となります。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 自己資本が年商の2割あれば、ちょっとした不況でも会社は揺るぎません。この水準を目標に利益を積み上げましょう! 【ジレンマ】節税して税金を払わないと利益剰余金は増えない 多くの経営者が「節税したい」と考えますが、実は過度な節税は会社の財務体質を弱くしてしまいます。銀行評価と節税の切っても切れない関係を解説します。 「銀行評価」と「節税」は反比例の関係 利益剰余金は「税引後利益」の積み上げです。つまり、節税対策をして利益を圧縮すればするほど、利益剰余金は増えず、銀行からの評価も上がりません。 銀行は「税金を払って残った利益」を評価します。節税と銀行融資による資金調達のしやすさは、基本的に両立しないトレードオフの関係にあるのです。 税金を払ってでも利益剰余金を積み上げるべき理由 融資を受けて事業拡大を目指すなら、ある程度税金を払ってでも利益剰余金を増やすべき です。内部留保が厚くなれば、銀行からの信用力が増し、必要な時に低金利で多額の融資を受けられるようになります。 目先の税金支払いを嫌がって財務基盤を弱くするよりも、納税をコストと割り切り、将来の成長と安定のための「信用力」を買うという発想が、強い会社を作る秘訣です。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 過度な節税は会社の体力を削ります。税金を払って信用力を高めることで、将来の成長資金を調達しやすくなります! 利益剰余金のマイナスを解消・補填するための具体的な方法 マイナスを放置していては、いつまでも銀行の評価は上がりません。マイナスを消し、健全な姿に戻すための具体的な手法は、主に以下の3つです。 1. 黒字決算を出し続け、時間をかけてマイナスを埋める(欠損填補) 2. 資本剰余金の取り崩しによる穴埋め(株主総会決議が必要) 3. 減資(資本金の減少)による帳簿上のリセットと注意点 それぞれ解説していきます。 1. 黒字決算を出し続けてマイナスを埋める(欠損填補) 最も王道かつ健全な方法は、本業で利益を出して黒字決算を続けること です。毎年の黒字(当期純利益)は繰越利益剰余金に加算されるため、時間をかけてマイナスを埋めていくことができます。 小手先のテクニックではなく、収益構造を見直し、売上増・コスト削減を徹底することが、結果として銀行からの信頼回復にも直結します。地道ですが、これが唯一の根本治療です。 2. 資本剰余金の取り崩しで穴埋め(株主総会決議が必要) 帳簿上の見栄えを整える方法として、資本剰余金などを取り崩して利益剰余金のマイナスを穴埋めする「欠損填補(てんぽ)」 という処理があります。 これは会計上の振替処理であり、会社の実質的な財産が増えるわけではありませんが、決算書上の「マイナス表示」を消すことができます。ただし、原則として株主総会の決議など法的な手続きが必要となるため、顧問税理士との慎重な相談が必要です。 3. 減資(資本金の減少)で帳簿上をリセット 資本金の額を減らし、その減少分を利益剰余金のマイナス補填に充てる「減資」 という方法もあります。例えば、資本金1,000万円を100万円に減らし、差額の900万円で累積赤字を消すといった処理です。 これにより見た目上の財務体質は改善し、配当が可能になるなどのメリットがあります。しかし、対外的な信用力への影響や、債権者保護手続きなどのコストがかかる点には注意が必要です。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ 会計処理で見た目を整えることもできますが、根本治療は「黒字を出し続けること」。これこそが王道です! 利益剰余金がマイナスに関するよくある質問 利益剰余金のマイナスに関して経営者の方から頻繁に寄せられる疑問について、専門家の視点からQ&A形式で回答します。 利益剰余金がマイナスでも役員報酬は払えますか?株主配当はどうですか? 役員報酬は支払えますが、株主配当は原則としてできません。 会社法により、配当ができるのは「分配可能額」の範囲内と決められており、純資産が300万円を下回る場合なども配当は禁止されています。 役員報酬については、赤字であっても労働の対価として支払いは可能です。しかし、銀行融資の審査では「赤字なのに役員報酬が高い」とマイナス評価されることもあるため、バランスが重要です。 創業間もない時期のマイナスは銀行からどう評価されますか? 創業直後は初期投資がかさむ一方で売上が安定しないため、一時的にマイナスになることは珍しくありません。 計画的な赤字であれば、銀行も柔軟に見てくれることがあります。 重要なのは、そのマイナスが「事業計画の想定内」であり、将来的に回収できる見込みがあるかどうかです。ただし、無計画な赤字垂れ流しは創業期であっても厳しく評価されます。 利益剰余金のマイナス(繰越欠損金)は税務申告で有利になりますか? 会計上の利益剰余金マイナスと、税務上の赤字(繰越欠損金)は密接に関係しています。税務上の赤字がある場合、青色申告を行っていれば、その赤字を翌期以降(最大10年間)に繰り越すことが可能 です。 これにより、将来黒字が出た際に、過去の赤字と相殺して法人税を安く抑えることができます。マイナス自体は財務的に痛手ですが、税務上は将来の節税効果という唯一のメリットを持っています。 利益剰余金のマイナス対策や財務改善は「Encoach」に相談を 利益剰余金のマイナス解消は、一朝一夕でできることではありません。会計処理だけで表面を取り繕っても、銀行員にはすぐに見抜かれてしまいます。本質的な改善には、単なる税務処理だけでなく、銀行交渉や資金繰り改善を含めた「財務戦略」が必要です。 もし、現在の顧問税理士が「節税」の話ばかりで、「どうすれば銀行評価が上がるか」「どうすれば財務体質が強くなるか」という相談に乗ってくれないのであれば、財務に強い専門家のセカンドオピニオンを受ける時期かもしれません。 Encoach株式会社(エンコーチ) では、税務・会計のプロフェッショナルとして、中小企業の「お金」に関する悩みを解決し、強い経営体質を作るサポートを行っています。 自社の本当の財務評価を知りたい 銀行融資が受けられるか不安 赤字からの脱却プランを一緒に考えてほしい このようにお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。 ▼ 無料相談・最新情報は公式LINEから ▼ 公式サイトhttps://encoach.jp/ まとめ:小手先の処理より「稼ぐ力」!早期にマイナスを解消し強い会社を作ろう 利益剰余金のマイナスは、会社がピンチであることを告げるサイレンです。放置すれば債務超過へと進み、取り返しのつかない事態になりかねません。しかし、早期に対策を打ち、本業で利益を出し続ければ、必ず健全な状態に戻すことができます。 銀行評価の高い、ちょっとやそっとでは揺らがない強い会社を作るために、今すぐ財務改善の一歩を踏み出しましょう。 -
マイクロ法人で持ち家を経費化する方法|4つパターン別解説と節税シミュレーション
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マイクロ法人の設立を検討する際、「持ち家を会社の経費にできるのか」は多くの経営者が抱く疑問です。結論から言えば、持ち家でも正しい手順を踏めば経費化は可能ですが、個人の持ち家か法人名義かによってその方法は大きく異なります。 本記事では、マイクロ法人における持ち家の経費化について、4つの具体的なパターンを徹底解説します。住宅ローン控除との兼ね合いや、税務リスクを回避するためのポイントも網羅しました。 自身の状況に最適な経費化スキームを見つけ、賢く手元資金を残すための参考にしてください。 監修者Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。 マイクロ法人で持ち家の経費化が注目される理由 なぜ手間をかけてまで持ち家の経費化を目指すのか。その理由は、個人と法人の「税率差」と「社会保険料」の削減効果にあります。 通常、個人の財布(手取り給与)から支払う住居費を、法人の経費(損金)に付け替えることで、法人の利益を圧縮し、法人税を削減することが可能です。 さらに、住居費を法人が負担する分、役員報酬を低く設定すれば、個人の所得税・住民税、そして負担の重い社会保険料を大幅に軽減できます。「会社」と「個人」の財布をトータルで見たとき、手元に残るキャッシュを最大化できる合理的な手法として注目されています。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ「会社」と「個人」のお金を分けて考えず、「世帯全体の手取り」が増えるかどうかで判断するのが賢い経営者の思考法です。 まずは結論!マイクロ法人と持ち家の経費化パターン比較表 持ち家を経費化するには主に3つのアプローチがあり、それぞれ難易度や節税効果、リスクが異なります。まずは各パターンの全体像を把握し、自社に適用可能な方法を見極めましょう。 パターン方法節税効果難易度特徴パターン1個人名義のまま法人へ一部賃貸中中事業用スペースのみを経費化。個人の不動産所得申告が必要となるが、最も一般的。パターン2社宅扱い(役員社宅)高高節税効果は高いが、持ち家の場合、個人から法人へ全室賃貸する形となり、住宅ローン控除の適用外になるなどハードルが高い。パターン3法人への売却特大高建物自体を法人所有にする。移転コストや資金調達が必要だが、減価償却や修繕費をフル活用可能。パターン4個人事業主からの法人成り変動中個人時代の減価償却を引き継げない点や、名義変更の手続きに注意が必要。 最も導入しやすいのは、自宅の一部を事務所として法人に貸し出す「パターン1」です。手続きが比較的容易で、居住実態に合わせやすいためです。「パターン3」は効果絶大ですが、売買に伴う登記費用や税金が発生するため、慎重なシミュレーションが求められます。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ迷ったらまずは「パターン1」から検討を。資金力がついてきたら「パターン3」へステップアップするのが王道ルートです。 マイクロ法人が持ち家を経費化する際の基本概念 持ち家を経費にする前に、必ず押さえておくべき税務上のルールがあります。これらを無視してドンブリ勘定で経費計上すると、税務調査で否認されるリスクが高まるためです。 ここでは経費化の土台となる以下3つの重要概念を解説します。 家事按分(事業利用割合)の重要性 住宅ローン控除との関係 減価償却費の計算方法 それぞれ詳しく見ていきましょう。 1. 家事按分(事業利用割合)の重要性 持ち家を事務所として使用する場合、すべての費用を経費にできるわけではありません。プライベートな居住部分と事業用部分を明確に区分する「家事按分(かじあんぶん)」が必須となります。 具体的には、総床面積に対する事業用スペースの割合や、使用時間に基づいて「事業利用割合」を算出します。例えば、総床面積の20%を書斎として専用利用しているなら、関連費用の20%を経費計上します。 重要なのは、この割合に対して客観的な根拠を持つことです。図面や利用状況の写真を残し、税務署に対して「なぜこの割合なのか」を合理的に説明できるように準備しておきましょう。 ※1 出典:No.2210 家事関連費|国税庁 2. 住宅ローン控除との関係 住宅ローン控除を受けている場合、事業利用割合の設定には細心の注意が必要です。原則として、事業用部分の床面積が50%を超えると、住宅ローン控除が一切受けられなくなってしまいます。これは「居住用」としての要件を満たさなくなるためです。 逆に、事業利用割合を10%以下に抑えれば、控除額への影響をほぼ無くすことができます(居住用割合90%以上なら全額控除対象)。「経費化による法人税等の節税額」と「住宅ローン控除による所得税減税額」を天秤にかけ、どちらがトータルで有利かをシミュレーションすることが不可欠です。 ※1 出典:No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁 3. 減価償却費の計算方法 持ち家(建物部分)は、購入費用を一度に経費にするのではなく、耐用年数に応じて毎年分割して経費化します。これを減価償却と呼びます。土地部分は価値が減少しないため減価償却の対象外となり、あくまで建物部分のみが計算対象です。 建物の構造によって法定耐用年数は決まっており、木造なら22年、鉄筋コンクリート(RC)なら47年です。計算方法は原則として「定額法」を用います(取得価額×償却率)。持ち家を事務所にする場合、この計算で出た減価償却費に事業利用割合を掛けた金額が、法人の経費として計上できる上限の目安となります。 ※1 出典:No.2100 減価償却のあらまし|国税庁 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ住宅ローン控除が残っているなら「事業割合10%以下」が無難。「経費化」と「ローン控除」の二重取りができるギリギリのラインを狙いましょう。 パターン1|個人名義の持ち家を法人に転貸する場合 個人が所有する自宅の一部を、事務所としてマイクロ法人に貸し出す方法です。最もスタンダードな手法であり、法人と個人の間で「賃貸借契約」を結ぶことで成立します。 具体的な進め方は以下の通りです。 転貸契約の仕組みと必要な手続き 法人側で経費計上できる金額と項目 個人側の税務処理(不動産所得) 実例シミュレーション 順を追って解説します。 1. 転貸契約の仕組みと必要な手続き まず、役員個人(貸主)とマイクロ法人(借主)の間で「賃貸借契約書」を作成します。契約書には、使用する部屋の範囲、使用目的(事務所など)、月額賃料、契約期間などを明記する必要があります。口約束ではなく、書面に残すことが税務上の必須条件です。 重要なのは、あくまで「事務所として使用する部分」について契約を結ぶことです。個人側では、法人から受け取る家賃が不動産収入となります。契約書などの書類は、税務調査の際に実態を証明する重要な証拠となるため、必ず作成し、法人印と個人印を押印して保管してください。 2. 法人側で経費計上できる金額と項目 法人側では、個人に支払う家賃(地代家賃)を全額経費として計上できます。この際、家賃の設定額は「近隣の家賃相場」を基準に、事業で使用する面積割合で算出するのが一般的です。適当な金額設定は認められません。 もし相場より不当に高い家賃を設定すると、超過分が「役員賞与」とみなされ、法人の損金(経費)にならないうえに、個人側で源泉徴収の対象となるリスクがあります。周辺の類似物件(ワンルームマンション等)の坪単価などを参考に、客観的に妥当な賃料(例:相場の床単価×事業用面積)を設定しましょう。 3. 個人側の税務処理(不動産所得) 役員個人は、法人から受け取った家賃収入を「不動産所得」として確定申告する必要があります。受け取った家賃がそのまま利益になるわけではなく、そこから必要経費を差し引くことができます。これがこのスキームの大きなメリットです。 個人の経費として認められるのは、建物の減価償却費、固定資産税、住宅ローンの利息(元金は不可)、火災保険料などのうち、事業用割合に相当する金額です。家賃収入とこれら経費が同額程度になるように家賃を設定すれば、不動産所得はほぼゼロとなり、個人の税負担を増やさずに法人の経費を作ることができます。 ※1 出典:No.1370 不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)|国税庁 4. 実例シミュレーション|月額家賃20万円の場合 例えば、近隣相場が月20万円の物件で、自宅の30%を事務所として使用する場合を考えます。法人は月額6万円(20万円×30%)を家賃として個人に支払います。これにより、法人は年間72万円の地代家賃を経費化できます。 一方、個人側は年間72万円の収入を得ますが、同時に建物の減価償却費や固定資産税、ローン利息などの合計額の30%分を経費計上します。仮に個人の経費合計が240万円なら、その30%は72万円です。収入72万円-経費72万円=所得0円となり、個人には税金がかからず、法人だけが節税メリットを享受できる理想的な形になります。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ個人の不動産所得がプラスになると、個人の税金が増えて本末転倒。家賃は「個人の経費額」に合わせて調整するのがテクニックです。 パターン2|持ち家を社宅扱いにする場合 通常、賃貸物件で行われる「借り上げ社宅」のスキームですが、持ち家の場合でも理論上は可能です。しかし、個人所有の物件を社宅にするには、税務上のハードルやデメリットが伴うため、専門家による慎重な設計が求められます。 持ち家社宅のポイントは以下の通りです。 社宅扱いのメリットとデメリット 賃貸料相当額の計算方法 給与課税の対象にならない条件 実例シミュレーション それぞれ見ていきましょう。 1. 社宅扱いのメリットとデメリット 社宅制度の最大のメリットは、家賃の大部分(50%〜80%程度)を法人の経費にできる点です。役員個人は「賃貸料相当額」のみを負担すればよく、実質的な手取り収入が増加します。会社が家賃を肩代わりしてくれるイメージです。 しかし、持ち家を社宅扱いにする場合、個人から法人へ家全体を貸し出す形になります。これにより、個人の住宅ローン控除が適用外になる可能性が高いです。また、法人から個人への支払いが相場より高いとみなされるリスクもあり、持ち家での社宅適用は賃貸物件に比べてデメリットが大きくなりやすいのが現実です。 2. 賃貸料相当額の計算方法 社宅制度において、役員個人が負担すべき家賃(賃貸料相当額)は、国税庁が定める計算式で算出します。これを「法定家賃」とも呼びます。周辺の家賃相場ではなく、固定資産税評価額をベースに計算するのが特徴です。 計算には、その年度の「建物の固定資産税課税標準額」と「敷地の固定資産税課税標準額」、および総床面積を使用します。一般的に、市場家賃よりもかなり低い金額(相場の10〜20%程度)になることが多く、この市場価格との差額が、給与課税されずに法人が負担できる実質的な節税メリットとなります。 3. 給与課税の対象にならない条件 社宅として認められるためには、役員個人が法人に対して、計算された「賃貸料相当額」を毎月支払う必要があります(通常は給与天引き)。これを怠ると、大きな税務リスクを負うことになります。 もし役員が負担ゼロ(家賃無料)で住んでいる場合、家賃相当額全額が「現物給与」とみなされ、所得税・住民税の課税対象となってしまいます。また、徴収額が法定の賃貸料相当額に満たない場合も、その差額が給与課税されます。適正な金額を計算し、毎月徴収している記録(給与明細など)を残すことが必須条件です。 4. 実例シミュレーション|固定資産税評価額の場合 例えば、建物の課税標準額が1,000万円、敷地が2,000万円、床面積100㎡の物件の場合を考えます。国税庁の計算式(小規模住宅の場合)に当てはめると、賃貸料相当額は月額1〜2万円程度になることがあります。 この場合、法人が物件を借り上げて(あるいは所有して)維持費として月15万円かかっていたとしても、役員からは月2万円を徴収すれば税務上問題ありません。差額の13万円が法人の経費となります。ただし、これは法人が物件を所有または第三者から借りている場合の話であり、個人持ち家の場合は個人の税負担との兼ね合いを慎重に計算する必要があります。 ※1 出典:No.2600 役員に社宅などを貸したとき|国税庁 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ持ち家での社宅扱いは、「自分から自分へ貸す」不自然な取引になりがち。否認リスクが高いため、税理士への相談なしに進めるのは危険です。 パターン3|持ち家を法人に売却する場合 個人所有の持ち家を法人に売却し、名義を完全に法人に移す方法です。これにより、建物にかかるすべての維持費を法人の経費にでき、完全な「社宅」として運用可能になります。 最も強力な節税手段の一つですが、以下のステップで慎重に進める必要があります。 持ち家売却のメリットとデメリット 売却価格の決定方法 法人側の経費計上 個人側の税務処理 詳細を解説します。 1. 持ち家売却のメリットとデメリット メリットは、建物の減価償却費、固定資産税、修繕費、火災保険料、住宅ローン利息などのすべてを法人の経費にできる点です。個人は社宅として住むため、家計の支出を大幅に削減できます。特に大規模修繕などの高額出費も経費化できるのは大きな魅力です。 デメリットは、初期コストと手間です。売買に伴う登記費用、不動産取得税、登録免許税などの移転コストが発生します。また、個人は住宅ローンを一括返済する必要があり、法人は新たに資金調達をして物件を買い取る必要があるため、綿密な資金繰り計画が重要です。 2. 売却価格の決定方法 個人から法人への売却価格は、好き勝手に決めることはできません。必ず「時価(適正な市場価格)」で取引する必要があります。恣意的な価格設定は税務署の格好の標的となります。 もし時価よりも著しく低い価格で売却すると「みなし譲渡所得」として課税されたり、法人側で「受贈益」が発生して法人税が増えたりするリスクがあります。不動産鑑定士による鑑定評価を取得するか、近隣の取引事例や路線価などを参考にした合理的な価格設定を行い、その根拠資料を保存しておくことが不可欠です。 3. 法人側の経費計上 法人名義になった建物は、法人の資産として減価償却を行います。中古物件として取得するため、法定耐用年数ではなく、残存耐用年数に応じた短い期間で償却できるケース(簡便法)があり、単年度の経費計上額が大きくなるメリットがあります。 加えて、リフォーム費用や内装工事費なども、全額法人の経費として処理可能です。これにより、法人の利益を大きく圧縮することができます。個人の持ち家では経費にできなかった部分まで損金算入できるため、法人の利益が出すぎている場合の対策として非常に有効です。 ※1 出典:No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|国税庁 4. 個人側の税務処理 売却した個人側には、不動産を譲渡したことによる「譲渡所得」が発生する可能性があります。売却価格が購入価格(減価償却費を控除した額)を上回った場合、その利益に対して譲渡所得税(約20%〜39%)がかかります。 通常、マイホーム売却には「3,000万円の特別控除」がありますが、同族会社(自分が経営する法人)への売却にはこの特例が適用できない場合が多いです。そのため、売却益が出ないように価格を設定するか、税金を支払ってもなおメリットがあるか、慎重に計算する必要があります。 ※1 出典:No.3302 マイホームを売ったときの特例|国税庁 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ3,000万円控除が使えないのが最大の落とし穴。売却価格が「購入時の価格」より下がっている(売却損が出る)物件なら、税金がかからず狙い目です。 パターン4|個人事業主がマイクロ法人化した場合の持ち家経費化 これまで個人事業主として持ち家を経費計上していた人が、マイクロ法人を設立(法人成り)した場合の対応です。個人事業のルールと法人のルールは根本的に異なるため、切り替えのタイミングで契約形態や経費の考え方を再構築する必要があります。 主な変更点と戦略は以下の通りです。 法人化前後での経費計上の違い 法人化に伴う持ち家の経費化戦略 法人化による節税メリットの最大化 それぞれ確認しましょう。 1. 法人化前後での経費計上の違い 個人事業主時代は、自己所有の資産を使うため「家事按分」をして減価償却費などの一部を経費にするだけで済みました。しかし法人化後は、個人と法人は法的に別人格となるため、「賃貸借契約」または「売買契約」という契約行為が必要になります。 なんとなく今まで通り経費にする、ということはできません。法人設立と同時に、個人(貸主)と法人(借主)の間で「事務所の賃貸借契約書」を作成し、実際に賃料の支払いを開始するという明確な切り替え処理が必要です。この手続きを怠ると経費が否認される原因となります。 2. 法人化に伴う持ち家の経費化戦略 法人化のタイミングは、持ち家の経費化戦略を根本から見直す好機です。個人事業では認められなかった「社宅」という選択肢(パターン3の売却など)も視野に入ります。 いきなり売却するのが難しい場合は、まずは「パターン1(賃貸)」から始め、法人の資金力がついてきた段階で「パターン3(売却)」へ移行するという段階的な戦略も有効です。初期段階では、賃貸契約により法人の経費を作りつつ、個人の住宅ローン控除を維持する(事業割合を10%以下にするなど)運用が手堅いでしょう。 3. 法人化による節税メリットの最大化 法人化することで、経費計上の柔軟性が高まります。例えば、個人事業では全額経費にしにくかったリフォーム費用なども、法人との賃貸契約において「事務所の内装工事」として法人が負担することで、経費化しやすくなる場合があります。 また、役員報酬の設定と持ち家の経費化を組み合わせることで、個人の所得税率をコントロールし、世帯全体の手取りを最大化するシミュレーションを行いましょう。役員報酬を下げて所得税・社会保険料を抑えつつ、家賃という形で法人から個人へ資金を移動させるスキームは、マイクロ法人の王道的な節税策です。 ※1 出典:No.2108 中古資産を非業務用から業務用に転用した場合の減価償却|国税庁 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ法人成りの日が「契約の切り替え日」です。設立前に契約書を準備しておき、空白期間を作らないようにしましょう。 持ち家経費化で注意すべき5つのポイント 持ち家の経費化は節税効果が高い反面、税務署からのチェックも厳しくなりがちです。「公私混同」とみなされ、否認されて追徴課税を受けないよう、以下の5つのポイントを必ず守って運用してください。 家事按分の根拠資料の保管 適正な転貸料の設定 住宅ローン控除との両立 社宅扱いにする場合の給与課税 税務調査への対策 重要なポイントを解説します。 1. 家事按分の根拠資料の保管 「なぜその事業利用割合なのか」を証明できる客観的な資料を必ず保管しましょう。自宅の図面上で事業用スペースをマーキングしたものや、デスクやPCが置かれた使用状況がわかる写真、業務日報などが有効です。 「なんとなく30%」といった根拠のないドンブリ勘定は最も危険です。税務調査が入った際、こうした客観的な資料を即座に提示できれば、調査官の心証も良くなり、否認されるリスクを大幅に下げることができます。実態と乖離した割合設定は絶対に避けましょう。 2. 適正な転貸料の設定 法人から個人へ支払う家賃(転貸料)は、高すぎても安すぎても税務上の問題になります。高すぎる場合は「役員賞与(損金不算入)」とみなされ、安すぎる(無償など)場合は法人側に「受贈益」が発生するリスクがあります。 近隣の同等物件(広さや築年数が近いもの)の募集チラシや、不動産ポータルサイトのスクリーンショットを保存し、「相場に基づいている」という証拠を残しておきましょう。相場とかけ離れない常識的な範囲で設定することが鉄則です。 3. 住宅ローン控除との両立 前述の通り、事業利用割合を50%超にしてしまうと、住宅ローン控除が全額カットされます。住宅ローン残高が多い場合、経費化による法人税の節税額よりも、ローン控除による所得税の減税額の方が金額が大きいケースも多々あります。 目先の経費だけでなく、ローン控除の残存期間と金額を確認し、トータルで損をしない割合(例えば10%以下にして控除を全額守るなど)に設定するバランス感覚が重要です。両方のメリットを享受できるギリギリのラインを見極めましょう。 4. 社宅扱いにする場合の給与課税 社宅として運用する場合、役員から徴収すべき「賃貸料相当額」の計算ミスや徴収漏れに注意してください。計算式は複雑なため、自己流で行わず、固定資産税の通知書をもとに税理士に計算してもらうことを強く推奨します。 また、徴収は毎月の給与天引きで行い、給与明細に「社宅費」や「地代家賃」などの項目ではっきりと記録を残すことが、税務調査対策として有効です。実際に徴収している事実がないと、現物給与として課税されるのを防げません。 5. 税務調査への対策 持ち家に関連する経費は、個人の生活費(家事費)と混同されやすいため、税務調査の重点項目になりやすいです。契約書、領収書、按分の根拠資料、振込履歴などをセットで整理しておきましょう。 特に、個人と法人の間でお金が実際に動いていること(通帳の履歴)が重要です。帳簿上の処理だけでなく、毎月決まった日に家賃の振り込みを行うなど、実態を伴わせることが最大の防御策です。不明瞭な取引は疑われる原因となるため、透明性を確保してください。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ「現金手渡し」はNGです。必ず銀行振込を行い、通帳に「家賃」としての履歴を残すことが、自分の身を守る最強の証拠になります。 マイクロ法人の持ち家経費化で最大限の節税効果を得るための3つのステップ 持ち家経費化は、ただ契約書を作れば終わりではありません。現状分析から実行まで、戦略的に進めることで初めて効果を発揮します。失敗しないための3つのステップをご紹介します。 現状把握|あなたの持ち家の経費化ポテンシャルを診断 戦略立案|4つのパターンから最適な方法を選択 実行と最適化|税理士と協力して実装 具体的なアクションプランは以下の通りです。 1. 現状把握|あなたの持ち家の経費化ポテンシャルを診断 まずはご自身の状況を整理しましょう。「持ち家の名義」「住宅ローン残高と控除の残り期間」「建物の構造(木造かRCか)と築年数」「事業で実際に使える面積」を正確に確認します。 これにより、どのパターンが適用可能か、住宅ローン控除を優先すべきか、あるいは売却した方が得かといった方向性が見えてきます。特に築古の木造住宅などは、減価償却のメリットが出やすいため要チェックです。 2. 戦略立案|4つのパターンから最適な方法を選択 現状把握に基づき、前述の4パターンから最も効果的なものを選びます。初期コストをかけたくないなら「パターン1」、資金に余裕があり節税効果を最大化したいなら「パターン3」など、会社のフェーズに合わせた選択が重要です。 ここで無理な計画を立てないことが、長期的な安定運用につながります。専門家の意見も交えて決定しましょう。例えば、将来的に会社をたたむ可能性があるなら、売却(パターン3)は避けた方が無難かもしれません。 3. 実行と最適化|税理士と協力して実装 方針が決まったら、税理士の監修のもとで契約書作成、適正な家賃設定、登記などの実務を行います。運用開始後も、事業利用割合の見直しや、法人の成長に合わせたスキーム変更(賃貸から売却へ移行など)を定期的に検討し、節税効果を最適化し続けましょう。 一度決めたら終わりではなく、状況に応じてメンテナンスすることが大切です。法改正や税制変更にもアンテナを張り、常に適法な状態を保つよう心がけてください。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロネットのひな形をそのまま使うのは危険!契約書の一文が税務判断を分けることもあります。必ずプロのチェックを受けましょう。 マイクロ法人の持ち家経費化に関するよくある質問 持ち家の経費化に取り組む際、多くの経営者が直面する疑問や不安にお答えします。実務的なQ&Aを通して、運用のイメージをより具体的に掴んでください。 Q1. 事業利用割合は何%が目安ですか? 一般的には、床面積ベースで10%〜30%程度が妥当なラインとされています。住宅ローン控除をフル活用したい場合は10%以下、控除がない場合は実態に合わせて30%程度まで設定するケースが多いです。50%を超えると居住用とみなされなくなるリスクがあるため、特別な事情がない限り避けるのが無難です。 Q2. 転貸料を支払わない場合はどうなりますか? 法人が個人に家賃を支払わない(無償で借りる)場合、法人の経費にはなりません。逆に、通常支払うべき家賃相当額が「受贈益(もらい得)」として法人の収益に計上され、法人税が増える可能性があります。また、個人側も減価償却費などを経費計上できなくなります。必ず契約に基づき「適正な家賃」を支払うようにしましょう。 Q3. 住宅ローンの元金は経費にできますか? いいえ、元金の返済部分は一切経費になりません。経費にできるのは**「利息部分」のみ**です。元金返済はあくまで借入金(負債)の減少であり、費用の発生ではないためです。これは個人事業主でも法人への賃貸でも同様のルールです。シミュレーションの際は利息のみを経費として計算してください。 Q4. 社宅扱いにすると給与が増えますか? いいえ、むしろ額面給与を減らすことができます。会社が家賃を負担する分、役員報酬を同額程度減額しても、役員の手取り額や生活水準が変わらない(または増える)設計にするのが一般的です。これにより、報酬月額に連動する社会保険料や所得税の負担を下げることができ、手元に残るお金を最大化できます。 Q5. 個人事業主時代の減価償却費はどうなりますか? 法人成りした場合、個人事業時代の減価償却資産(建物など)は、法人に引き継ぐ(売却や現物出資)か、個人所有のまま賃貸するかを選択します。賃貸する場合(パターン1)、個人側で引き続き減価償却を行い、不動産所得の経費として計上します。ただし、業務転用資産としての償却計算の継続性に注意が必要です。 ※1 出典:No.2210 家事関連費|国税庁 マイクロ法人の持ち家経費化でお悩みなら、Encoachの財務コンサルティングへ 持ち家の経費化は、個別の事情によって正解が異なる複雑な領域です。「自分の場合はどの方法が一番得なのか?」と迷われている方は、ぜひEncoach株式会社にご相談ください。 あなたの持ち家の経費化ポテンシャルを正確に診断します 私たちは、お客様一人ひとりの資産状況や法人規模に合わせて、持ち家をどれくらい経費にできるか、どのスキームが最適かを詳細にシミュレーション・診断いたします。住宅ローン控除との比較など、複雑な計算もお任せください。 税務リスクを最小化した実行計画を提案します 「税務調査が怖い」という不安を解消するため、法令に基づいた適正な家賃設定や、必要な根拠資料(契約書、議事録など)の作成をサポート。税務リスクを最小限に抑えつつ、確実な節税を実現するプランをご提案します。 継続的なサポートで最大限の節税効果を実現します 導入時だけでなく、毎年の決算や法人の成長に合わせて、常に最適な財務戦略をアドバイスします。持ち家だけでなく、役員報酬の最適化など、トータルでの手取り最大化を支援します。 まずは無料相談でお気軽にお問い合わせください 持ち家の経費化は、タイミングを逃すと数百万単位で損をする可能性があります。まずは現状をお聞かせください。プロの視点で、あなたにベストな選択肢を提示します。 まとめ|マイクロ法人で持ち家を経費化し、最大限の節税効果を実現しよう マイクロ法人における持ち家の経費化は、経営者の手取りを増やすための強力な武器です。「パターン1(賃貸)」から「パターン3(売却)」まで、自社の状況に合わせた手法を選ぶことで、住宅関連費という大きな支出を賢く節税につなげることができます。 しかし、住宅ローン控除との兼ね合いや税務リスクなど、落とし穴も存在します。自己判断で進めず、専門家の知見を借りながら、盤石な節税スキームを構築してください。正しい知識と戦略で、あなたの会社と個人の資産を守り抜きましょう。 -
社員旅行は経費にできる?税務調査で否認されないための5つの条件と3つの注意点
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「社員旅行の経費はどこまで認められるのだろう?」「税務調査で指摘されたらどうしよう…」と、社員旅行の経費計上でお悩みの経営者や経理担当者の方は多いのではないでしょうか。 この記事を読めば、社員旅行を経費として正しく計上するための5つの必須条件から、税務調査で否認されないための具体的な注意点まで、すべてが明確になります。 国税庁の基準をわかりやすく解説し、明日から使える実務ポイントを凝縮しました。 まずは結論!社員旅行が経費になるかならないか一目でわかる比較表 社員旅行の費用を「福利厚生費」として処理するには、国税庁が定める条件のクリアが必須です。条件を満たさない場合、会社が負担した費用は「従業員への給与」とみなされ、課税対象となってしまいます。 条件の全体像を整理しましたので、まずは以下の比較表で確認しましょう。 項目経費にできる(福利厚生費)経費にできない(給与課税)旅行期間4泊5日以内(海外は現地滞在日数)5泊6日以上参加率全従業員(または職場単位)の50%以上全従業員の50%未満会社負担額1人10万円程度まで(少額の範囲内)社会通念上、高額すぎる参加対象全従業員(支店・部署単位も可)役員や特定社員のみ不参加者対応何も支給しない現金を支給する(全員課税リスク有) これらは法律上の明記ではありませんが、実務上の重要な判断基準です。 社員旅行を経費にするための5つの必須条件 社員旅行の費用を「福利厚生費」として計上するには、国税庁の指針や実務上の目安となる5つの条件をクリアする必要があります。これらを満たさない場合、会社負担分が給与とみなされるため注意が必要です。 それぞれ詳しく解説していきます。 1. 旅行期間は「4泊5日」以内か? 福利厚生費として認められる旅行期間は、4泊5日以内と定められています。この日数は一般的な社員旅行を想定した基準であり、これを超えると「単なる遊び」と判断され、給与課税されるリスクが高まります。 海外旅行の場合は、「現地での滞在日数が4泊5日以内」であれば問題ありません。移動にかかる機内泊などは日数に含まれないため、例えば「4泊6日(機中泊含む)」のハワイ旅行でも、現地滞在が条件内なら経費として認められます。 2. 参加率は「全従業員の50%」以上か? 社員旅行は、従業員に公平な機会を与える行事でなければなりません。そのため、旅行への参加者が全従業員数の50%以上であることが要件です。ここでの「全従業員」には、正社員だけでなく、普段から勤務しているパートやアルバイトも含まれます。 ただし、必ずしも全社一斉に行う必要はありません。支店や工場といった「職場単位」で実施し、その部署の半数以上が参加していれば条件を満たします。現場の状況に合わせて柔軟に計画を立てましょう。 3. 会社負担額は1人あたり「10万円」が目安 会社が負担する費用は、世間一般の常識的な範囲内でなければなりません。明確な法律の上限はありませんが、過去の事例から「会社負担額1人あたり10万円以内」が実務上の安全ラインとされています。 これは「少額不追求」という考え方に基づき、少額かつ一般的な行事であれば、あえて税金をかけないという趣旨です。あまりに高額な費用負担は給与(経済的利益)とみなされるため、豪華すぎるプランには注意が必要です。 4. 全従業員が参加対象になっているか? 社員旅行は一部の特権的な人のためではなく、全従業員を対象として企画する必要があります。「役員だけの旅行」や「成績優秀者限定の旅行」は、福利厚生費とは認められません。これらは地位や功績に対する報酬とみなされ、給与や賞与として課税されます。 経費計上するためには、全従業員(または職場単位の全員)に参加の機会を与え、その中から希望者を募るプロセスが不可欠です。特定の人だけが得をする仕組みは避けましょう。 5. 不参加者に現金を支給していないか? 旅行に参加しない従業員に対し、費用の代わりに現金を渡すことは絶対にNGです。「何もあげないのは不公平」という配慮でも、現金を渡すと「旅行か現金かを選べる状態」とみなされます。 選択権があると判断された場合、不参加者の現金だけでなく、参加者の旅行費用も含めて全員分が「給与」として課税されてしまいます。節税のつもりが全員への課税を招くため、最も注意すべき落とし穴です。 💬 ひとことポイント「1人10万円」はあくまで実務上の目安ですが、超えると否認リスクが急上昇します。最大の地雷は「不参加者への現金支給」。これをやると参加者も含めて全員が給与課税となるため、絶対におやめください。 ※参照:国税庁 税務調査で指摘される!経費にできない社員旅行3つのNGパターン 基本的な条件を満たしているように見えても、実態が伴わなければ否認されます。税務調査で「福利厚生費として認められない」と指摘されやすい、代表的な3つのNGパターンを確認しておきましょう。 役員だけ・特定の社員だけの「ご褒美旅行」 家族・取引先が参加する旅行(費用負担の問題) 実質的に私的旅行とみなされるケース それぞれ解説していきます。 1. 役員だけ・特定の社員だけの「ご褒美旅行」 参加者が限定されている旅行は、公平性の観点から福利厚生費として認められません。例えば、「役員だけの旅行」は役員賞与とみなされ、会社の経費にならないばかりか、個人の所得税も発生します。 また、「成績優秀者の招待旅行」も同様に、功績に対する報酬(給与)として扱われます。会社としては経費にできても、従業員には所得税・住民税がかかるため、福利厚生とは区別して考える必要があります。 2. 家族・取引先が参加する旅行 福利厚生費は、あくまで「自社の従業員」のために使われるお金です。家族や取引先の同伴自体は問題ありませんが、その費用を会社が負担すると経費(福利厚生費)にはなりません。 家族の費用を負担:その従業員に対する給与として課税 取引先の費用を負担:接待交際費として処理(損金算入に制限あり) トラブルを避けるため、家族同伴の場合は「家族分は全額自己負担」とし、会社からの支払いは従業員本人分のみに限定するのが鉄則です。 3. 実質的に私的旅行とみなされるケース 名目が社員旅行でも、中身が個人的な旅行と変わらない場合は否認されます。税務調査では「会社の行事としての実態があるか」が厳しくチェックされるため、以下のようなケースは危険です。 完全フリープラン:費用だけ会社が出し、行動も食事も自由 名ばかり研修:スケジュールのほぼ全てが観光 これらは「私的旅行の肩代わり」とみなされます。会社主導の団体行動や食事会を工程に組み込み、しおりや写真を証拠として残すことが重要です。 💬 ひとことポイント税務調査で否認されると、会社は源泉徴収漏れ、社員は所得税増額という「ダブルパンチ」を食らいます。「バレないだろう」という甘い判断は禁物です。 【ケーススタディ】こんな社員旅行は経費にできる?ケース別判断基準 実務では判断に迷うグレーゾーンも存在します。ここでは具体的なケースを取り上げ、経費にできるかどうかの判断基準を解説します。自社の状況と照らし合わせてみてください。 海外への社員旅行(5泊7日・機中泊2日) 参加率が50%未満になってしまった 豪華すぎる旅行プラン 研修を兼ねた社員旅行 それぞれ解説していきます。 1.【ケース1】海外への社員旅行(5泊7日・機中泊2日) 結論から言うと、「現地での滞在日数が4泊5日以内」であれば経費として認められます。海外旅行の場合、移動の機中泊などは日数にカウントしません。重要なのは「現地で何泊するか」です。 例えば7日間の旅行でも、往復の機内で2泊し、現地宿泊が4泊ならセーフです。逆に、現地で5泊するプランは基準を超えるため、原則として給与課税のリスクが高まります。スケジュールを組む際は、現地滞在日数を基準に考えましょう。 2.【ケース2】参加率が50%未満になってしまった 原則として否認リスクが高いですが、事情によっては認められる事例も出てきています。国税庁のQ&Aによると、「全従業員に参加の機会がある」「不参加者に現金を渡していない」等の条件を満たしていれば、結果的に50%未満でも認められるケースがあります。 ただし、これはあくまで「結果的に減ってしまった」場合の救済的な解釈です。最初から少人数で行くことは推奨されません。基本は50%以上の参加を目指し、全員への案内などプロセスを確実に踏むことが不可欠です。 3.【ケース3】豪華すぎる旅行プラン 「社会通念上、妥当な金額」を逸脱すると、費用の「全額」が給与課税される恐れがあります。例えば、会社負担が1人30万円を超えるような海外高級リゾートやファーストクラス利用は、福利厚生の範囲を超えた「私的な利益供与」とみなされます。 怖いのは、超過分だけでなく総額が課税されるケースが多いことです。確実に福利厚生費として処理するためには、節度ある金額設定(会社負担10万円程度)を守るのが最も安全な対策です。 4.【ケース4】研修を兼ねた社員旅行 業務に必要な部分は「研修費」、それ以外は「福利厚生費」として区分します。セミナー受講や工場視察など、明確な業務が含まれる時間は全額経費計上が可能です。 一方、観光や自由時間は福利厚生費となるため、社員旅行の要件(4泊5日以内など)を満たす必要があります。重要なのは「研修」と「観光」を明確に分けること。スケジュール表や研修レポートを保管し、単なる観光旅行ではないことを客観的に証明できるようにしましょう。 💬 ひとことポイント海外旅行は「機中泊を除いた現地滞在」で判定されます。ただし、豪華すぎる内容は全額否認のリスク大。実務上の目安(4泊・10万円)を守るのが無難です。 税務調査で慌てない!社員旅行の経費計上で必要な2つの実務対応 将来の税務調査で堂々と主張するためには、事前の準備と事後の処理が命です。ここでは必ず押さえておくべき2つの実務対応について解説します。 証拠書類(稟議書・参加者リスト・写真など)を必ず保管する 就業規則・福利厚生規程に明記する それぞれ解説していきます。 1. 証拠書類(稟議書・参加者リスト・写真など)を必ず保管する 税務調査で最も重視されるのは、「その旅行が本当に行われたか」を証明できる客観的な証拠です。口頭説明だけでは不十分なため、以下の書類は必ず揃えておきましょう。 企画段階:稟議書、旅行代理店の見積書 実施段階:行程表、参加者リスト、現地での集合写真 事後:領収書、研修レポート(ある場合) これらの書類は法人税法上、原則7年間の保存が義務付けられています。数年後の調査で困らないよう、体系的に整理して保管してください。 2. 就業規則・福利厚生規程に明記する 社員旅行が、会社の公式な制度であることを明確に示すことも重要です。就業規則や「福利厚生規程」の中に、社員旅行に関するルールを明文化しておくことを強く推奨します。 目的:従業員の慰安と親睦 対象:全従業員 費用負担:会社負担の範囲 規程として明文化することで、「場当たり的なイベント(私的旅行)」ではなく、制度として運用されている証明になります。税務調査での説得力が増すだけでなく、従業員への公平性も担保できます。 💬 ひとことポイント税務調査の対策は「証拠」が全てです。日程表や写真の保管はもちろん、就業規則への明記も忘れずに。口頭ではなく、客観的な資料で「会社の公式行事」であることを証明しましょう。 社員旅行の経費計上に関するよくある5つの質問 ここでは、社員旅行の経費に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。日々の業務の参考にしてください。 Q1. 勘定科目は何になりますか? 基本は「福利厚生費」ですが、目的によって使い分けが必要です。要件を満たす慰安旅行なら全額「福利厚生費」ですが、実態に合わせて以下の科目を検討します。 研修費・旅費交通費:業務に必要な研修や視察(移動費・会場費など) 接待交際費:取引先を招待した場合の、取引先負担分の費用 旅行の主たる目的がどこにあるかで判断しましょう。 Q2. 従業員の家族が参加した場合の費用はどうなりますか? 家族の分は会社負担にせず、「自己負担」としてもらいます。福利厚生費として認められるのは従業員本人のみ。家族の分まで会社が出すと、その分は従業員への「給与」となり課税されます。 家族同伴を認める場合は、本人から徴収するか、給与天引きで精算するルールを徹底しましょう。会社が負担していなければ、給与課税の問題は発生しません。 Q3. 個人事業主でも社員旅行は経費にできますか? 「家族以外の従業員」を雇用していれば可能です。法人と同様、従業員を対象とした慰安旅行であれば「福利厚生費」として計上できます。 ただし、「事業主と専従者(家族従業員)だけ」で行く旅行は、単なる家族旅行(家事費)とみなされ、経費にはなりません。経費にするには、家族以外の一般従業員も参加していることや、強制ではなく任意参加であることなど、「事業上の福利厚生」である実態が必要です。 Q4. アルバイトやパートも参加率の計算に含める必要はありますか? はい、原則として含める必要があります。福利厚生は「全従業員に公平に提供されること」が要件であり、ここには恒常的に勤務しているパートやアルバイトも含まれます。 参加率50%を計算する際の分母にも含めてください。最初から除外して企画すると、機会の平等性が損なわれていると判断され、否認されるリスクがあるため注意しましょう。 Q5. 旅行先で会議をすれば研修旅行として認められますか? 単に「名目上の会議時間」を設けただけでは認められません。研修旅行(業務)として経費計上するには、旅行先でなければできない理由や、明確な成果が求められます。 具体的な事業計画の策定 現地の工場や市場視察 こうした実質的な活動を行い、議事録やレポートを証拠として残す必要があります。観光がメインの実態であれば、会議以外の部分は給与課税される可能性があります。 社員旅行の経費化・財務改善でお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 「このプランで本当に税務調査は大丈夫か」「もっと効果的な節税方法はないか」社員旅行をはじめとする経費化の判断や、会社の財務に関する悩みは尽きないものです。そんな時は、私たちEncoachの財務コンサルタントにお任せください。1,000社以上の支援実績を持つ財務のプロが、あなたの会社の状況を徹底的に分析します。 財務のプロがあなたの状況に合わせた最適な節税・財務プランを無料で診断 Encoachでは、お客様一人ひとりの決算状況に合わせて、今回の社員旅行が財務的にプラスになるか、あるいは他に優先すべき節税策があるか、具体的な数値を基に無料で診断いたします。現在の利益状況やキャッシュフロー、将来の事業計画まで考慮し、あなたにとって最も有利な選択肢をご提案。「なんとなく」の節税ではなく、データに基づいた盤石な財務戦略を一緒に考えましょう。 規定の整備から税務調査対策までワンストップでサポート 社員旅行を経費にするために不可欠な「福利厚生規程」の作成や、税務調査で指摘されないための議事録・証拠書類の整備まで、Encoachがワンストップでサポートします。あなたは本業や旅行の企画に集中しているだけで、気づけば税務リスクのない最適な運用が実現している。そんな理想の環境をご提供するのが私たちの役目です。税務署にも堂々と説明できる、強い会社作りをお手伝いします。 まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 少しでも興味をお持ちいただけましたら、まずはお気軽に無料相談へお申し込みください。無理な勧誘は一切いたしません。あなたの会社の財務状況を改善し、手元資金を最大化するための有益な情報をご提供することをお約束します。「今の計画で問題ないか確認したいだけ」でも大歓迎です。あなたの勇気ある一歩が、会社の未来を大きく変えるかもしれません。下記のリンクから、今すぐお問い合わせください。 まとめ 社員旅行を経費にするためには、以下の5つの条件をクリアすることが基本です。 期間は4泊5日以内 参加率は50%以上 会社負担は10万円程度 全従業員が対象 不参加者に現金を渡さない 特に「不参加者への現金支給」は一発アウトの要因となるため、絶対に行ってはいけません。また、税務調査に備えて、写真を残す、就業規則に記載するといった「証拠作り」も忘れずに行いましょう。 不明点がある場合は、自己判断せずに税理士へ相談することをおすすめします。 -
マイクロ法人設立で社会保険料を劇的に削減!メリット・デメリットと失敗しないための全知識
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順調な売上とは裏腹に、重くのしかかる社会保険料や税金の負担。「手元にお金が残らない」と嘆く個人事業主の間で、今「マイクロ法人」が注目されています。 個人事業と法人を使い分ける「二刀流」なら、合法的に年間数十万円もの社会保険料を削減できる可能性があります。 ただし、安易な設立は禁物。財務のプロが、メリットから設立手順、失敗しないための全知識を徹底解説します。 まずは1分で診断!あなたにマイクロ法人は本当に必要? マイクロ法人は万人に適した選択肢ではありません。事業規模や今後の展望によって、向き不向きがはっきり分かれます。まずは5つの質問で、設立すべきかセルフチェックしてみましょう。 【診断チャート】 個人事業の所得(売上-経費)が500万円を超えている? 複数の事業を行っている、または明確に分離できる事業がある? 会社員で、副業の所得が年間300万円を超えている? 今後、融資や法人格が必要な取引先と契約する可能性がある? 帳簿付けや確定申告などの事務作業を、専門家に任せても良い? 「はい」が3つ以上なら検討の価値大。2つ以下でも、将来の選択肢として知識を深めておいて損はありません。 💬 ひとことポイント「はい」の数だけでなく、事業の将来性も重要です。今は規模が小さくても、将来的に大きくしたいなら早めの法人化が有利に働くこともあります。 【診断結果A】今すぐ設立を検討すべき人の3つの特徴 診断で「はい」が多かった方は、マイクロ法人の恩恵を最大限に受けられる可能性が高いでしょう。特に以下の3つの特徴に当てはまるなら、積極的な情報収集と検討をおすすめします。 個人事業の所得が安定して高い方 複数の事業を持つ方 社会的信用度を高めたい方 それぞれ解説していきます。 1. 個人事業の所得が安定して高い方 所得が増えるほど、国民健康保険料や所得税の負担は青天井に重くなります。ここでマイクロ法人を活用し、適切な役員報酬を設定することで、社会保険料等の負担を劇的に最適化できます。 今まで税金や保険料で消えていたお金を、自分の手元や事業投資に回せるようになるのが最大の魅力です。所得が500万円を超えてくると、個人事業主としての負担感は急増するため、法人化による節税効果がコストを上回りやすくなります。 2. 複数の事業を持つ方 事業を明確に分離できる場合、片方をマイクロ法人化する「二刀流」戦略が非常に有効です。 個人と法人の税率差や社会保険の仕組みを活かし、手取りの最大化が狙えます。 例えば、コンサル業と物販、Web制作と資産運用など、性質の異なる事業を持っているなら絶好のチャンスです。それぞれの事業で最適な税制を選択することで、全体の手取り額を大きく増やせる可能性があります。 3. 社会的信用度を高めたい方 法人格を持つことで、金融機関からの融資や大手企業との新規取引がスムーズに進むケースが多々あります。 事業拡大や対外的な信頼性を重視するなら、法人化は強力な武器になります。「個人」では越えられない信用の壁を、法人格が取り払ってくれるでしょう。特にBtoBビジネスにおいて、取引条件として「法人であること」を求められるケースは少なくありません。 💬 ひとことポイント「所得が高い」「事業が複数ある」は、マイクロ法人で成功するための黄金条件です。これらが揃っているなら、迷っている時間がもったいないかもしれません。 【診断結果B】まだ個人事業主のままが有利な人の3つの特徴 逆に、設立を急ぐと損をしてしまうケースもあります。コストや手間を考慮すると、個人事業主のまま活動する方が有利な人の特徴も押さえておきましょう。 所得がそれほど高くない方 事業が一つしかなく、分離が難しい方 事務作業が苦手で、コストをかけたくない方 それぞれの理由を見ていきます。 1. 所得がそれほど高くない方 事業所得が300万円以下の場合、法人化のメリットよりも維持コストが上回る可能性があります。 法人住民税の均等割(赤字でも年約7万円)や税理士報酬などを払うと、かえって手取りが減ってしまうことも。マイクロ法人は固定費がかかるため、一定以上の利益がないと節税効果が出ません。目先の節税だけでなく、トータルの収支を見極める必要があります。 2. 事業が一つしかなく、分離が難しい方 実態として分けられない事業を無理に法人に移すと、税務署から「租税回避行為」とみなされるリスクがあります。 事業実態の伴わない法人化は危険です。「誰が見ても別の事業」と言える明確な区分けができないなら、無理な法人化は避けるべきです。税務調査で否認されると、過去に遡って課税されるなど大きなペナルティを受けることになります。 3. 事務作業が苦手で、コストをかけたくない方 法人は個人事業主よりも経理処理や税務申告が厳格で複雑です。専門家のサポートなしでの運営はハードルが高く、その外注コストも予算に含める必要があります。 「面倒なことは嫌だ」「固定費は増やしたくない」という方は、個人事業主の身軽さを選ぶ方が無難でしょう。法人の事務負担は想像以上に重く、本業の時間を圧迫してしまう恐れもあります。 💬 ひとことポイント設立の目安は「個人事業なら所得500万」「会社員副業なら所得300万」が分岐点。維持コストや手間も考慮し、トータルな手取りで判断しましょう。 そもそもマイクロ法人とは?個人事業主との違い 言葉は聞くけれど実態がよく分からない方も多いはず。「社長一人の小さな会社」と個人事業主、一般的な法人の違いを整理します。 マイクロ法人の定義と「一人会社」との違い マイクロ法人とは法律用語ではなく、一般的に「社長一人、もしくは家族だけで経営している小規模な会社」を指す俗称です。 会社法上は株式会社や合同会社と変わりませんが、従業員はおらず、社長自身が事業のすべてを担います。「個人事業に近い規模感と機動力で運営される法人」という実態を捉えた言葉です。実質的には「一人会社」と同義で使われることが多く、組織拡大を目指さない点が特徴です。 【比較表】マイクロ法人 vs 個人事業主 vs 一般的な法人 それぞれの立ち位置を明確にするため、主な違いを表にまとめました。 項目個人事業主マイクロ法人一般的な法人設立費用ほぼ0円約6万円~約20万円~社会的信用△〇◎税金(個人)所得税(累進)所得税(給与)所得税(給与)社会保険国保・国民年金健保・厚生年金健保・厚生年金赤字の税金なし年約7万円~年約7万円~ 特に注目すべきは「社会保険」と「赤字の場合」の違いです。これらがマイクロ法人を検討する上で重要な判断材料となります。 💬 ひとことポイントマイクロ法人は「法人格を持った個人事業主」のようなイメージ。個人事業主の手軽さと、法人の節税メリットや社会的信用を、うまく両立させるための知恵と言えます。 なぜ今、マイクロ法人がフリーランスや副業で注目されるのか? 近年、フリーランス人口の増加や副業解禁を背景に注目度が急上昇しています。その最大の理由は、やはり「社会保険料の削減効果」にあります。 社会保険料の「最適化」という考え方 個人事業主が加入する国民健康保険料は、所得に比例して負担額が増え、上限額も年々引き上げられています。一方で、マイクロ法人を設立して役員報酬を低く設定すればどうなるでしょうか。 社会保険料(健康保険・厚生年金)を、法律で認められた最低限の負担に抑えることが可能です。この「社会保険料の最適化」こそが、マイクロ法人戦略の核心であり最大の魅力です。高所得になっても保険料を低く固定できる仕組みが、多くの人を惹きつけています。 💬 ひとことポイント「稼げば稼ぐほど保険料が上がる」という個人事業主の悩みに対する、合法的な解決策。それがマイクロ法人による社会保険料の最適化なのです。 【年間数十万円の節税効果】マイクロ法人の5つの絶大なメリット 社会保険料の削減以外にも、経営を有利に進めるための恩恵は多岐にわたります。マイクロ法人がもたらす5つの主要なメリットを見ていきましょう。 社会保険料を最適化できる 所得税・住民税の負担を軽減できる 経費にできる範囲が広がる 社会的信用度が向上する 赤字を10年間繰り越せる 各メリットの詳細を解説します。 1. 社会保険料を最適化できる【最大のメリット】 マイクロ法人の最大の利点です。例えば、役員報酬を月額4万5,000円〜6万円程度に設定すれば、社会保険料の総額は年間約27万円程度(会社負担分含む)に抑えられます。 個人事業で年間80万円以上の国保・年金を支払っているケースと比較すると、その差額は50万円以上にもなり得ます。残りの生活資金は個人事業の利益から得る「二刀流」を行うことで、合法的に社会保険料を最適化できるのです。 2. 所得税・住民税の負担を軽減できる(所得分散) 法人から役員報酬を受け取ることで、サラリーマンに認められている経費枠「給与所得控除(最低55万円〜)」を活用できます。 個人事業の所得(事業所得)だけでなく、法人からの給与(給与所得)を得ることで所得の種類が分散されます。控除額の分だけ課税対象となる所得が減るため、結果として所得税や住民税が安くなります。一つの財布から高い税率で払うより、分散して低い税率を適用させる賢い方法です。 3. 経費にできる範囲が広がる(役員報酬・社宅など) 法人格を持つことで、経費として認められる範囲が格段に広がります。最も大きいのは、自分自身への役員報酬が法人の経費(損金)になることです。 さらに、賃貸物件を法人契約して「社宅」扱いにすれば家賃の大部分を経費にできたり、出張手当を経費化できたりと、個人契約よりも大きな節税効果が見込めます。個人の財布から出ていた支出を、会社の経費として処理できる項目が増えるのは大きな利点です。 4. 社会的信用度が向上し、融資や取引で有利になる 法人は個人事業主と比べて社会的信用度が高いと評価されます。法務局に登記され、会社の基本情報が公開されているため、取引相手も安心して契約を結べるからです。 コンプライアンスを重視する大手企業との取引が可能になるほか、金融機関からの融資審査でも土俵に乗りやすくなります。 事業を拡大していく上で、法人格が持つ信用力は大きな武器です。個人のままでは門前払いされるような案件でも、法人ならチャンスが広がります。 5. 赤字を10年間繰り越せる(欠損金の繰越控除) 事業開始当初は赤字になることも珍しくありません。法人の場合、その年に出た赤字(欠損金)を翌年以降10年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺して法人税を減らせます。 個人事業主(青色申告)の繰越期間は3年間ですが、法人は10年間。事業の立ち上げ期を支える重要なセーフティネットと言えるでしょう。長い期間で損益を通算できるため、大きな投資をした年の赤字を無駄にせず、将来の税負担軽減に使えます。 💬 ひとことポイントメリットは社会保険料削減だけではありません。「経費の範囲拡大」や「社会的信用」など、事業を成長させるための武器が手に入ります。多角的な視点で評価しましょう。 【年間数十万円の節税効果】マイクロ法人の5つの絶大なメリット メリットの裏には必ずデメリットがあります。良い面だけに飛びつかず、コストや手間などの負の側面もしっかり理解した上で判断することが重要です。 設立・維持にコストと手間がかかる 会計・税務処理が複雑になる お金の引き出しが自由にできなくなる 失敗を避けるために知っておくべき3点です。 1. 設立・維持にコストと手間がかかる(法人住民税など) 個人事業主が開業届だけで始められるのに対し、法人の設立には約6万〜20万円の費用がかかります。さらに、赤字でも毎年必ず発生する「法人住民税の均等割」にも注意が必要です。 これは「法人の会費」のような税金で、最低でも年間約7万円の負担となります。利益が出ていなくても支払い義務があるため、事業が軌道に乗るまでは重荷になる可能性があります。固定費が増えることは経営のリスク要因となるため、事前の資金計画が欠かせません。 2. 会計・税務処理が複雑になり、専門家のサポートが推奨される 法人の会計や申告は、個人事業主とは比べ物にならないほど複雑です。複式簿記による厳密な帳簿付けに加え、決算報告書や法人税申告書の作成など、高度な専門知識が求められます。 税務知識のない方が一人でミスなく行うのは困難です。多くは税理士に依頼することになりますが、その顧問料もランニングコストとして考慮しなければなりません。ソフトで自力処理も可能ですが、税務リスクを避けるにはプロの手を借りるのが一般的です。 3. お金の引き出しが自由にできなくなる(役員報酬の制限) 個人事業主なら利益をいつでも自由に使えますが、法人は違います。会社のお金と個人のお金は厳格に区別されるため、役員報酬として決めた額以外は自由に引き出せません。 しかも役員報酬は原則1年間変更できません。「今月は生活費が足りないから会社から借りよう」といった安易な引き出しはNGであり、この資金の不自由さは大きなストレスになり得ます。個人の生活費は、予め設定した報酬内でやりくりする必要があります。 💬 ひとことポイントデメリットで最も大きいのは「固定費」と「資金拘束」の問題です。赤字でもかかる税金と税理士コスト、そして自由に使えない会社のお金。これらを許容できるか冷静な計算が必要です。 マイクロ法人で大失敗する3つの典型的なケース 節税のつもりが、税務調査で否認されたり手取りが減ったりしては本末転倒。初心者が陥りやすい3つの失敗パターンと対策を解説します。 事業の分離が曖昧で「実質一体」と見なされる 役員報酬の設定を間違え、生活苦や年金減を招く 安易な資金移動で「役員貸付金」地獄に陥る それぞれの対策を見ていきましょう。 1.【ケース1】事業の分離が曖昧で「実質一体」と見なされる 個人事業とマイクロ法人の「二刀流」で最も注意すべき点です。取引先や業務実態が重複していると、税務署から「実質的に一つの個人事業だ」と判断されるリスクがあります。 もし租税回避行為と認定されると、法人の所得が個人の所得として合算され、多額の追徴課税を課されかねません。契約書や請求書を完璧に使い分けるなど、客観的な分離が不可欠です。第三者から見ても明確に事業が分かれている状態を作り出すことが重要です。 2.【ケース2】役員報酬の設定を間違え、生活苦や年金減を招く 社会保険料を抑えたい一心で報酬を下げすぎると、手元の生活費が不足します。逆に高く設定しすぎれば、保険料負担が増えて法人化の意味がなくなってしまいます。 特に注意が必要なのは、将来受け取る厚生年金額や、病気・怪我の際の「傷病手当金」も低くなる点です。目先の節税だけでなく、将来のリスクと生活資金のバランスを慎重に見極めましょう。手取りの最大化と生活の安定、両方を考慮した報酬設定が求められます。 3.【ケース3】安易な資金移動で「役員貸付金」地獄に陥る 「会社にお金があるから」と個人的な支払いに使うのは厳禁です。これは「役員貸付金」となり、会社が社長にお金を貸している状態として、銀行融資などで致命的なマイナス評価を受けます。 さらに、貸付金には利息を計上して法人税を払う必要まで出てきます。会社の資金はあくまで会社のもの。 公私混同は、税務上も経営上も百害あって一利なしです。通帳やカードは厳格に分け、1円たりとも混同しない強い意志が必要です。 💬 ひとことポイント失敗例の根源は「やりすぎ」と「公私混同」にあります。客観的に見て不自然な節税策は必ず否認されます。常に「税務署から見てどう見えるか?」という視点を持つことが重要です。 【図解】最強の二刀流戦略!マイクロ法人設立7つのステップ マイクロ法人のメリットを最大化し、デメリットを最小化するための具体的な手順を解説します。段取りよく進めることが成功への近道です。 事業の切り分けと法人化する事業の決定 会社の基本事項の決定 定款の作成と認証 資本金の払込み 法人設立登記の申請 税務署・自治体への法人設立届出 年金事務所・労基署などへの届出 各ステップのポイントを押さえましょう。 Step1. 事業の切り分けと法人化する事業の決定 まずは現在行っている事業の棚卸しです。売上が安定的で、かつ個人事業と明確に分離できる事業を選んで法人化します。 例えば「Web制作は個人、資産運用は法人」のように、事業内容や取引先が異なるものを選ぶのが理想です。この最初の切り分けが、後の税務リスク(実質一体とみなされるリスク)を回避する最重要ポイントになります。事業の将来性も見据えて、どちらを法人に残すか慎重に決めましょう。 Step2. 会社の基本事項の決定(商号・目的・本店所在地など) 法人化する事業が決まったら、会社の骨格を決めます。商号(会社名)、事業目的、本店所在地、資本金、決算期などを具体的に定めていきましょう。 特に事業目的は、将来展開する可能性のある事業も幅広く記載しておくことが重要です。後から追加するには登記変更の手間と費用がかかるためです。本店所在地は自宅やレンタルオフィスなどが選択肢になりますが、賃貸の場合は法人登記可否の確認も忘れずに行いましょう。 Step3. 定款の作成と認証 基本事項を基に、会社の憲法とも言える「定款」を作成します。株式会社は公証役場での認証が必要ですが、合同会社は不要です。 紙で作成すると4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款(PDF)なら0円で済みます。 設立費用を抑えたい場合は、電子定款に対応したクラウドサービスや専門家を活用するのが賢明です。最近はオンラインで完結するサービスも増えているため、コスト削減のためにも検討してみましょう。 Step4. 資本金の払込み(通帳がない場合も対応) 定款ができたら、発起人(設立者)個人の銀行口座に資本金を払い込みます。ネット銀行などで通帳がない場合は、振込内容が分かる画面を印刷すれば証明書類として認められます。 資本金は1円から可能ですが、信用力や口座開設の審査を考慮し、少なくとも数十万〜100万円程度は用意しておくのが一般的です。払い込み後、証明書類を作成して実印を押印し、「払込証明書」を完成させます。 Step5. 法人設立登記の申請 必要書類を揃えて法務局に登記申請を行います。この申請日が記念すべき「会社の設立日」となります。不備がなければ1〜2週間で完了します。 登録免許税(株式会社は最低15万円、合同会社は最低6万円)が必要です。手続きは複雑なため、司法書士に依頼するか、オンラインの設立支援サービスを利用するのが一般的です。自分で行うことも可能ですが、書類不備による手戻りを防ぐならプロに任せるのが安心です。 Step6. 税務署・自治体への法人設立届出 登記完了後、速やかに税務署や自治体に届出を行います。「法人設立届出書」や「青色申告承認申請書」などが必須です。 特に「青色申告承認申請書」は提出期限(設立から3ヶ月以内等)を1日でも過ぎるとアウトです。その年は青色申告の特典(赤字繰越など)を使えなくなるため、設立届と一緒に必ず提出しましょう。設立後の最初の大仕事であり、絶対に忘れてはならない手続きです。 Step7. 年金事務所・労働基準監督署などへの届出 最後に社会保険関係の手続きです。社長一人の会社であっても、法人は社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられています。 年金事務所に「新規適用届」などを提出しましょう。なお、従業員を雇わない限り労働保険(労災・雇用保険)の手続きは不要です。書類作成はややこしいですが、これを済ませれば晴れてマイクロ法人としてのスタートです。 💬 ひとことポイント設立手続きは「段取りが八割」。特にStep1の「事業の切り分け」とStep6の「青色申告の期限遵守」は、将来の節税効果を左右する超重要ポイントです。絶対にミスがないよう確認しましょう。 マイクロ法人設立・運用にお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 「自分に最適な報酬額がわからない」「税務調査が不安」「手続きが難しそう」。そんなお悩みは、財務のプロであるEncoach株式会社にお任せください。 最適な設立シミュレーションを無料でご提案 会計・税務から社会保険までワンストップでサポート 専門家と二人三脚の安心感 私たちが提供する3つの価値をご紹介します。 1. 最適な設立シミュレーションを無料でご提案 お客様の事業内容や将来のビジョンを丁寧にヒアリングし、個人事業のままの場合とマイクロ法人を設立した場合の税金・社会保険料を詳細に比較します。 「本当に設立すべきか」「いくらの役員報酬がベストか」を客観的な数字で提示。納得のいく意思決定ができるよう、最適なプランをご提案します。感覚ではなく数値に基づいた判断ができるため、失敗のリスクを大幅に減らせます。まずは無料相談で効果を実感してください。 2. 会計・税務から社会保険までワンストップでサポート 設立前の相談から、定款作成・登記のサポート、設立後の税務顧問、社会保険手続きまで。マイクロ法人に関わるあらゆる業務をワンストップで対応します。 お客様は面倒な手続きや計算から解放され、ご自身の事業に集中できます。各分野の専門家がチームで連携し、あなたの事業成長をバックアップします。初めての法人運営でも、迷うことなく本業に専念できる環境を提供します。 3. 気兼ねない相談体制 「こんなこと聞いていいのかな?」という小さな疑問も大歓迎です。税務調査が入った際も私たちが窓口となり、適切に対応しますのでご安心ください。 専門家と二人三脚で進めることで、設立コスト以上の安心と、事業への集中環境が手に入ります。一人で悩んで時間を浪費するより、プロの知見を借りて最短距離で成功を目指しましょう。ぜひお気軽にご相談ください。 💬 ひとことポイントマイクロ法人設立は、専門家と二人三脚で進めるのが成功の秘訣です。設立コスト以上に、将来にわたる安心と事業成長への集中という、大きなリターンが得られます。 マイクロ法人に関するよくある5つの質問 最後に、経営者の皆様からよくいただく質問を5つピックアップし、Q&A形式でお答えします。細かい疑問点を解消し、理解を深めましょう。 Q1. 資本金は1円でも大丈夫? 法律上は可能ですが、現実的にはお勧めできません。資本金は会社の体力や信用力を示す指標であり、1円では銀行口座が開設できなかったり、取引先から不安視されたりする恐れがあります。 また、設立直後の経費や運転資金も必要です。設立費用や数ヶ月分の資金を考慮し、少なくとも数十万円〜100万円程度は用意しておくのが実務上の安全ラインです。見栄えだけでなく、実務上のスムーズさを考えて金額を決めましょう。 Q2. サラリーマン(会社員)でも設立できますか?副業はバレますか? 設立自体は可能です。ただし、住民税の金額から会社に副業がバレるリスクがあります。法人の役員報酬は給与所得となり、本業の給与と合算されて住民税が通知されるからです。 一般的に言われる「普通徴収にすればバレない」は個人事業の話です。「絶対にバレない方法はない」と認識し、就業規則を確認するなどリスク管理を徹底する必要があります。本業に支障が出ないよう、慎重に進めることが大切です。 Q3. どのタイミングで設立するのがベストですか?(年収の目安) 一概には言えませんが、一般的に個人事業の課税所得が500万円~800万円を超えてきたあたりが一つの目安です。 このくらいの所得になると個人の税・社会保険料負担が重くなり、法人の維持コスト(均等割や税理士報酬)を払っても節税メリットが出やすくなるからです。ただし、事業の成長速度や今後の計画によって最適な時期は変わります。正確な判断には専門家のシミュレーションをお勧めします。 Q4. 赤字でも税金はかかりますか? はい、かかります。これがマイクロ法人の大きなデメリットの一つです。事業が赤字で利益ゼロでも、法人住民税の「均等割」として最低年約7万円の納税義務があります。 個人事業主なら赤字であれば税金はかからないため、大きな違いです。設立初年度から、この固定費を負担できるだけの見通しがあるか確認しておきましょう。赤字でもキャッシュアウトが発生することを忘れてはいけません。 Q5. 自分で設立手続きはできますか? 最近は便利なオンラインサービスもあり、自分で行うことも可能です。しかし、定款の目的設定や税務署への各種届出(特に青色申告)には専門知識が必要で、ミスをすると将来の節税メリットを失うリスクがあります。 「手間なく確実に進めたい」「最初の設定で失敗したくない」という方は、数万円の手数料を払ってでも専門家に依頼するのが最も安全で確実です。時間は貴重な資源ですから、プロに任せて本業に集中するのも賢い選択です。 まとめ:マイクロ法人は諸刃の剣。専門家と相談し、慎重な判断を マイクロ法人は、個人事業主やフリーランス、副業を持つサラリーマンにとって、社会保険料や税金の負担を劇的に軽減できる可能性を秘めた強力なツールです。特に「二刀流」戦略は、手取りを最大化する有効な手段と言えるでしょう。 しかし、設立・維持コストや税務調査のリスクなど、多くのデメリットも存在します。メリットだけを見て安易に設立すると、かえって経営を圧迫しかねません。 成功の鍵は、①客観的な事業分離、②適切な役員報酬設定、③公私混同の排除の3点に尽きます。「自分の場合はどうなる?」と迷ったら、まずはEncoachのような専門家にご相談ください。最適な一歩を共に考えましょう。 -
会社の利益剰余金とは?目標目安や増やし方、マイナスのリスクをプロが解説
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赤字が続いてもびくともしない会社がある一方、黒字なのに倒産してしまう会社も少なくありません。その命運を分けるのが、会社の「基礎体力」とも言える利益剰余金です。 この記事では、利益剰余金の基本から、倒産しない強い会社を作るための具体的な目標設定、増やし方まで、プロの視点で徹底解説します。 まずは結論!利益剰余金が多い会社と少ない会社の違い 利益剰余金とは、創業から現在までに会社が稼ぎ出した「利益の蓄積」のこと。この蓄積が十分にあるかどうかで、不測の事態への抵抗力や銀行からの評価に決定的な差が生まれます。 具体的にどのような違いが生じるのか、財務のプロが着目するポイントは以下の通りです。 【利益剰余金の多寡による比較】 比較項目利益剰余金が多い会社(内部留保が厚い)利益剰余金が少ない会社(内部留保が薄い)倒産抵抗力不況に強い過去の蓄積がクッションとなり、一時的な赤字でも持ちこたえられる。経営危機に脆い損失を吸収するバッファが薄く、わずかな赤字で資金ショートのリスクが高まる。銀行融資有利な条件を引き出せる<br>「自己資本が厚い」と評価され、低金利・無担保など好条件での調達が可能。審査が厳しくなる財務基盤が脆弱とみなされ、融資を断られるか、高い金利を求められる。成長投資「攻め」の経営が可能自己資金で投資できるため、チャンスを逃さず挑戦できる。機会損失のリスク日々の資金繰りが優先され、成長のチャンスでも投資資金を捻出できない。 このように、利益剰余金は単なる会計上の数字ではありません。不況時には会社を守る「防波堤」となり、平時には成長を加速させる「エンジン」となる、経営の安定装置そのものなのです。 💬 ひとことポイント利益剰余金は、その会社の過去の頑張りを記録した「通信簿」のようなものです。銀行や新規取引先は、今の売上だけでなく「過去にどれだけ利益を残してきたか(=利益剰余金)」を見て、信用できる相手かを判断しています。 そもそも利益剰余金とは?会社の「貯金力」を示す重要指標 利益剰余金という言葉は知っていても、経営にどう関わるのか正確に理解している経営者は意外と多くありません。ここでは基本的な考え方から決算書との関係性まで、以下の4つのポイントで解説します。 会社の「利益の蓄積」である 貸借対照表(B/S)の純資産にある 3つの要素で構成される 損益計算書(P/L)と連動する それぞれ詳しく見ていきましょう。 1. 利益剰余金は会社の「利益の蓄積」であり「内部留保」の中核 利益剰余金とは、会社が創業してから稼いだ利益から、税金や配当を支払った後に残った「利益の蓄積」です。ニュースなどで耳にする「内部留保」も、一般的にはこの利益剰余金を指します。 ただし、必ずしも「現金」として金庫に保管されているわけではありません。利益剰余金はあくまで計算上の「元手」であり、実際には設備(建物や機械)や在庫、売掛金など、さまざまな資産に形を変えて会社の中に存在しています。「利益=現金」ではない点には注意が必要です。 2. 貸借対照表(B/S)のどこにある?純資産の部を図解 利益剰余金は、決算書の一つである「貸借対照表(B/S)」で確認できます。貸借対照表は、「資産」「負債」「純資産」の3つで構成されていますが、利益剰余金はこのうち「純資産の部」に含まれます。 純資産は、株主が出資した「資本金」などと利益剰余金から成り立っており、銀行などへ返済する必要のない自己資本です。つまり、純資産に占める利益剰余金の割合が高いほど、会社の財務基盤は盤石であると言えます。 3. 利益剰余金を構成する3つの要素 利益剰余金は、大きく分けて以下の3つの要素で構成されています。それぞれの役割を理解することで、より深く資金の性格を把握できます。 利益準備金会社法で積み立てが義務付けられたお金です。配当を行う際、配当額の10分の1を積み立てる必要があります(資本金の4分の1に達するまで)。債権者を保護するためのルールです。 任意積立金会社が独自の目的(将来の設備投資など)のために、任意で積み立てるお金です。定款や株主総会の決議によって設定されます。 繰越利益剰余金当期の損益を加減算し、最終的に会社に残っている利益のプールです。ここから配当や積立金への振替が行われます。 4. 損益計算書(P/L)の「当期純利益」との関係性 利益剰余金は、「損益計算書(P/L)」と密接に連動しています。損益計算書で計算された最終利益である「当期純利益」が、貸借対照表の「繰越利益剰余金」に合流する仕組みです。 つまり、毎年黒字を出せば利益剰余金は雪だるま式に増え、赤字になれば取り崩されます。P/Lの成果(フロー)が、B/Sの体力(ストック)として蓄積される。この循環を理解し、毎年の利益を積み上げることが財務改善の第一歩です。 💬 ひとことポイント重要なのは「利益剰余金=現金」ではないということ。あくまで会計上の数字です。実際の現金の動きはキャッシュフロー計算書で確認し、「勘定合って銭足らず」にならないよう注意しましょう。 なぜ利益剰余金が重要なのか?会社を強くする3つの理由 利益剰余金は、ただの会計上の数字ではありません。会社の未来を左右する極めて重要な経営資源です。利益剰余金を積み上げていくことで、会社は以下の「守り」「攻め」「信用」という3つの力を手に入れることができます。 【守り】赤字でも「債務超過」を防ぐ 【攻め】リスクを取った投資が可能になる 【信用】銀行格付けが上がり融資が有利になる 具体的に解説します。 1.【守り】赤字でも「債務超過」を防ぎ、倒産リスクを下げる 十分な利益剰余金は、会社の財務を守る「防波堤」です。経営には売上の急減や災害など、予期せぬ事態がつきものですが、過去の蓄積があれば単年度の赤字を吸収できます。 もし蓄えが乏しいと、わずかな赤字で「債務超過(資産<負債)」に転落してしまいます。債務超過は金融機関からの信用を失墜させ、資金調達を困難にするため、倒産の直接的な引き金になりかねません。利益剰余金の厚みこそが、危機に対する最大の保険なのです。 2.【攻め】リスクを取った投資や借入が可能になる 利益剰余金(自己資本)の厚みは、成長のための「リスク許容度」を高めます。返済義務のない自己資本が充実していれば、万が一投資が回収できなくても会社は揺らぎません。そのため、経営者は大胆な意思決定が可能になります。 また、「利益剰余金が厚い=過去に利益を現金化してきた実績がある」ケースが多いため、手元資金でスピーディーに投資を実行できます。借入が必要な場合でも、自己資本が厚い会社は借入余力が大きいため、成長資金をスムーズに調達できるのです。 3.【信用】銀行格付けが上がり、融資条件が有利になる 利益剰余金の多さは、会社の「社会的信用度」の証明書です。金融機関が融資審査を行う際、企業の「格付け」を行いますが、ここで最も重視される指標の一つが「自己資本比率」です。 格付けが高いと、「融資の可否」だけでなく、「金利の引き下げ」や「無担保・無保証」など、有利な条件を引き出せる可能性が格段に高まります。利益剰余金を積み上げることは、銀行との交渉力を高め、より低コストで安定した資金調達を実現する最短ルートと言えるでしょう。 💬 ひとことポイント利益剰余金は「守り」だけでなく、未来への「攻め」の原資にもなります。このお金があるからこそ、思い切った事業投資や人材採用ができるのです。 あなたの会社は大丈夫?倒産しないための利益剰余金3つの目安 利益剰余金の重要性は理解できても、「具体的にいくら貯めればいいのか?」と迷う方もいるでしょう。ここでは、経営状態を判断する際に重視すべき3つのステップに沿って、目指すべき水準を解説します。 【最低ライン】利益剰余金のプラス化 【安全圏】月商の3ヶ月分 【業種別】ビジネスモデルに合った目標 自社の決算書と照らし合わせて確認してみてください。 1.【最低ライン】まずは「利益剰余金がプラス」を目指す 最初の目標は、利益剰余金の残高を「1円でも多くプラスにする(黒字化)」ことです。もしマイナスであれば、創業からの赤字が累積していることを意味し、その額が資本金を食いつぶすと「債務超過」という危険な状態になります。 債務超過は、銀行融資がストップする最大の要因であり、事実上の「倒産予備軍」です。まずは単年度の黒字を積み重ね、過去の赤字を解消して利益剰余金をプラスに転換することが、会社存続のための絶対条件です。 2.【安全圏】「月商の3ヶ月分」を目標にする 倒産しない強い会社を作るための標準的な目標は、利益剰余金を「月商の3ヶ月分」確保することです。多くの専門家が「手元資金として月商の3ヶ月分」を推奨していますが、これを実現する裏付けとなるのが同額程度の利益剰余金です。 例えば、月商1,000万円の会社なら、3,000万円の利益剰余金がある状態が理想です。これだけの蓄えがあれば、売上が急減するような危機的状況でも、半年〜1年程度は耐えられる体力が生まれます。まずは「月商の3倍」を合言葉にしましょう。 3.【業種別】ビジネスモデルに合った目標値を見つける より現実的な目標を設定するには、自社の「資金繰りの特徴」を考慮することが重要です。一概に売上比率で決めるのではなく、業種ごとの特徴に合わせて微調整しましょう。 飲食・小売業(日銭が入る):月商の1〜2ヶ月分現金が回りやすいため比較的少なくて済みますが、不況の影響を受けやすいため油断は禁物です。 建設・製造業(立替期間が長い):月商の3〜6ヶ月分支払いが先行するため、厚い運転資金が必要です。優良企業の自己資本比率は40〜50%と高水準です。 IT・コンサル業:月商の3ヶ月分以上固定費(人件費)が重いため、売上減が即赤字に繋がります。雇用を守るためにも厚めの蓄積が求められます。 💬 ひとことポイントまずはシンプルに「月商の3倍」を目標にしてみましょう。この水準をクリアできれば、銀行からの評価も格段に上がり、そう簡単には倒産しない「強い財務体質」になったと言えます。 利益剰余金がマイナス!債務超過が会社に与える3つのリスク もし利益剰余金がマイナスなら、経営の黄色信号。さらに資本金まで食いつぶし「純資産がマイナス(債務超過)」になると、会社は以下の3つのリスクに直面します。 銀行融資のハードルが上がる 取引先や条件を失う 資金ショートによる実質的倒産 それぞれの恐ろしさを解説します。 1. 銀行融資のハードルが極限まで上がる 債務超過は、銀行から「返済能力が欠如している」とみなされる最大の要因です。原則として格付けが「要注意先」以下に下がり、新規の融資を受けることは極めて困難になります。 「経営改善計画書」を提出して支援を受けられるケースもありますが、金利の上昇や追加担保の要求など、条件が厳しくなることは避けられません。資金調達の道が細ることは、会社の生命線が絶たれることに等しいのです。 2. 信用調査によって取引先や条件を失う 「中小企業の決算書は見られない」と高を括ってはいけません。帝国データバンクなどの信用調査会社を通じて、あなたの会社の財務状況(評点)は取引先に伝わります。 取引先が債務超過を知れば、「売掛金が回収できないかも」と警戒するのは当然です。その結果、突然の取引停止や、「掛け(後払い)」から「現金前払い」への変更を求められるなど、資金繰りを直撃する厳しい要求を突きつけられるリスクがあります。 3. 資金ショートによる「実質的倒産」が現実味を帯びる 債務超過そのものが倒産ではありませんが、倒産への最短ルートであることは間違いありません。追加融資が閉ざされ、取引条件も厳しくなれば、手元の資金(キャッシュ)は急速に枯渇します。 最終的に、従業員の給与や手形の決済ができず、資金ショートを起こした時点で会社は終わりを迎えます。利益剰余金のマイナスは、この最悪のシナリオへ向かう「スリップ事故」の始まりです。傷が浅いうちに、早期の黒字化対策を打つ必要があります。 💬 ひとことポイント利益剰余金のマイナスは、人間で言えば「出血」です。資本金という「輸血」があるうちは持ちこたえられますが、それが尽きれば(=債務超過)、命に関わる事態になります。一刻も早い止血(黒字化)が必要です。 利益剰余金を増やすための具体的な3つのステップ 利益剰余金を増やすことに魔法のような裏技はありません。しかし、場当たり的な経営ではなく、数字に基づいた正しいステップを踏めば、着実に会社の「基礎体力」を強化していくことが可能です。 多くの黒字企業が実践している、具体的な3つのステップを紹介します。 自社の「実力値」を把握する 「逆算思考」で利益目標を決める 税金を払って「内部留保」に残す 1.【Step1】まずは自社の「実力値」を正確に把握する 全ての戦略は、現在地を知ることから始まります。まずは直近の貸借対照表(B/S)を用意し、以下の2点をチェックしましょう。 残高はプラスか?:マイナスの場合は、あといくら利益を出せばゼロに戻せるのか把握します。 推移はどうなっているか?:過去3期分を比較し、「年々増えている」のが理想です。「横ばい」や「減少」の場合は、慢性的な収益力不足か、過度な節税・配当が原因の可能性があります。 2.【Step2】「逆算思考」で必要な利益目標を決める 「結果的に利益が出た」ではなく、「必要な蓄積額から逆算して利益を作る」のが強い会社の鉄則です。例えば、5年後に利益剰余金を3,000万円増やしたいなら、年間600万円の税引後利益(内部留保)が必要です。 ここからさらに逆算します。法人税率を約30%と仮定すると、税引前利益は約860万円(600万円÷0.7)必要になります。「目標とする内部留保額」→「必要な税引後利益」→「必要な税引前利益」→「必要な売上高」という順序で、根拠のある年間計画を策定しましょう。 3.【Step3】税金を払い、堂々と「内部留保」に残す ここが最大のポイントですが、利益剰余金とは「法人税を支払った後の残り」です。つまり、利益剰余金を最大化するためには、「適正に税金を払う」という痛みを伴う決断が不可欠です。 多くの経営者は「節税」に熱心になりますが、経費を使って利益を圧縮すれば、当然ながら会社に残るお金も減ります。「目先の税金を減らすこと」と「将来のために会社にお金を残すこと」はトレードオフの関係。「今年は会社を強くするために、あえて節税せずに税金を払う」といった戦略的な判断が求められます。 💬 ひとことポイント過度な節税は、会社の体力を奪う「麻薬」になりかねません。「税金は、会社を強くするための必要経費(内部留保コスト)」と割り切り、堂々と利益を計上する勇気を持ちましょう。 利益剰余金の管理・目標設定にお悩みならEncoachへ 「利益剰余金の重要性はわかったけれど、自社だけで管理するのは難しい」「具体的な目標設定や利益計画の立て方がわからない」そんなお悩みをお持ちの経営者の方も多いのではないでしょうか。 Encoach株式会社では、そんな経営者の皆様に寄り添い、会社の成長をサポートする財務コンサルティングを提供しています。 財務のプロがあなたの会社の課題を正確に可視化します 私たちは、元大手税理士法人で1000社以上の経営者と向き合ってきた財務のプロフェッショナルです。貴社の決算書を拝見すれば、どこに課題があり、どこに成長のポテンシャルが眠っているのかを正確に読み解くことができます。 感覚的な経営から脱却し、数字に基づいた的確な意思決定ができるよう、財務状況をわかりやすく「可視化」します。会社の健康状態を正しく把握し、次の一手を打つための羅針盤を提供します。 事業計画策定から資金繰り改善まで伴走型でサポート Encoachのコンサルティングは、単なるアドバイスではありません。事業計画や資金繰り表の作成、月次の予実管理まで、経営者と二人三脚で進める「伴走型」のサポートが特徴です。 財務知識に自信がない方でも、私たちが隣でサポートしますのでご安心ください。経営者が本業に集中できる環境を整えながら、質の高いPDCAサイクルを回し、着実に会社を成長軌道に乗せていきます。 利益剰余金に関するよくある5つの質問 最後に、利益剰余金に関して経営者の方からよく寄せられる質問にお答えします。多くの人が疑問に思うポイントを解消し、理解をさらに深めていきましょう。 Q1. 利益剰余金は「現金」として金庫にあるのですか? いいえ、必ずしも現金として存在するわけではありません。利益剰余金はあくまで「過去にこれだけ利益を生み出した」という計算上の記録です。その利益(お金)が今どうなっているかは、貸借対照表の「資産の部」を見る必要があります。 例えば、利益剰余金が1億円あっても、その多くが建物や機械、あるいは売れていない在庫に形を変えている場合、手元の現金はほとんどないこともあり得ます。これを「勘定合って銭足らず」と言います。会社の安全性を測るには、利益剰余金の額だけでなく、すぐに使える「現預金」がどれだけあるかもセットで確認しましょう。 Q2. 利益剰余金を増やすには、結局どうすればいいですか? シンプルに言えば、「税金を払った後の利益(税引後利益)」を積み上げるしかありません。利益剰余金は、売上から全ての経費を引き、さらに法人税等を支払った後の「残りカス」です。したがって、増やす方法は以下の2つに集約されます。 本業で利益を出す:売上アップ、コスト削減で税引前利益を最大化する。 社外流出を抑える:配当金や過度な役員報酬の増額を控え、会社内に資金を留める。 魔法のような裏技はありません。地道に利益を出し、税金を払い、内部留保として残し続ける。これが唯一にして最短の道です。 Q3. 役員報酬を増やすのと、利益剰余金を貯めるのはどちらが優先ですか? 会社の財務基盤が弱いうちは、「利益剰余金」を優先すべきです。役員報酬を増やせば、個人の手取りは増え、会社の利益(法人税)は減らせますが、会社の純資産は増えません。 会社が赤字や債務超過の状態で役員報酬を高く取りすぎると、銀行からの融資が受けられなくなるリスクがあります。まずは利益剰余金を「月商の3ヶ月分」程度まで貯め、会社が倒産しない体力をつけてから、役員報酬での還元を検討するのが経営のセオリーです。 Q4. 個人事業主の場合、利益剰余金という考え方はありますか? 正確にはありませんが、「元入金(もといれきん)」がそれに近い役割を果たします。個人事業主の決算書(青色申告決算書)には利益剰余金という項目はありませんが、事業の元手である「元入金」が、前年の利益や事業主借・貸の精算を経て毎年変動します。 法人における「資本金+利益剰余金」の役割を、個人では「元入金」が担っていると考えてください。この元入金が年々増えている個人事業主は、健全な経営ができている証拠です。 Q5. 利益剰余金が多いと税務調査で狙われやすくなりますか? 「多いから」という理由だけで狙われることはありません。むしろ利益剰余金が多いのは、過去に正しく申告・納税してきた優良企業の証でもあります。税務署が注視するのは、「売上規模に対して利益率が異常に低い」「売上が急増しているのに利益が変わらない」といった不自然な変動です。 ただし、多額の利益剰余金があるのに、それが「使途不明金」や「貸付金」などに化けている場合は、厳しくチェックされる可能性があります。クリーンな会計処理であれば、積み上げること自体を恐れる必要はありません。 まとめ:利益剰余金は会社の「履歴書」であり「命綱」 この記事では、利益剰余金の仕組みから、具体的な目標設定、そして増やし方までを解説してきました。 最後に改めて強調したいのは、「利益剰余金は、会社が生き残るための命綱である」ということです。 守り: 赤字や不況から会社を守る防波堤になる 攻め: 成長投資や融資を引き出す信用力になる 継続: 毎年の納税と内部留保の積み重ねが、強い会社を作る 目先の節税に走って利益を消してしまうのではなく、堂々と税金を払い、胸を張って利益剰余金を積み上げていく。その経営判断こそが、あなたの会社を10年、20年と続く強い企業へと育てていくはずです。 -
持ち家を自宅兼事務所にして年間124万円節税!経費にできる項目と社宅スキームを解説
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「持ち家でも経費にできるの?」「住宅ローン控除はどうなる?」個人事業主や法人経営者にとって、自宅兼事務所の活用は節税の大きなチャンスです。 しかし、ルールを誤ると税務調査で否認されるリスクも。この記事では、経費計上の基本から、年間124万円もの効果を生む「社宅スキーム」まで、財務のプロが徹底解説します。 【1分で診断】あなたの持ち家はどこまで経費にできる? まずは簡単な5つの質問で、あなたが今すぐ何をすべきか診断してみましょう。ご自身の状況に最も近い選択肢を選んでください。 現在の事業形態は?A. 個人事業主B. 法人経営者 住宅ローンの状況は?A. 住宅ローン控除を受けているB. 住宅ローンはない(完済済み・控除期間終了) 事業で自宅を使用する割合は?A. 50%未満(または10%程度)B. 50%以上 年間の事業所得(個人の場合)または役員報酬(法人の場合)は?A. 800万円未満B. 800万円以上 経理や税務の手続きは?A. 自分でやっている、またはこれからやるB. 税理士に任せている 診断A:今すぐ「事業割合10%」を目指すべき個人事業主 1-A〜5-Aに多く当てはまる方は、「住宅ローン控除」を最大限活用する戦略が鉄則です。 実は、事業用部分を床面積の10%以下に抑えれば、住宅ローン控除を満額受けつつ、その10%分を経費に計上できる特例があります。逆に、不用意に50%以上にすると控除が全額消滅するため注意が必要です。 まずは「家事按分(生活費と事業費を分けること)」の基礎を学び、控除と経費の「いいとこ取り」を目指しましょう。 診断B:情報収集から始めるべき個人事業主 まだ事業を始めたばかりの方や経費計上に不安がある方は、正しい知識の習得が急務です。 特に電気代や通信費などの家事按分は、税務調査で最もチェックされやすい項目。「なんとなく50%」ではなく、使用時間や面積といった客観的な根拠を記録として残すことが身を守ります。 まずはこの記事で解説する計算ルールを理解し、根拠のある節税対策をスタートさせましょう。 診断C:「法人への売却」検討も視野に入る法人経営者 Bの項目が多い方は、個人所有の自宅を会社に売却し「社宅」にする方法を検討してください。 建物の減価償却費や固定資産税、修繕費などを法人の経費にできる上、社長個人の家賃負担を相場の10〜20%程度に抑えられる可能性があります。 ただし、移転コストやローンの借り換えが必要になるため、長期的なメリットがコストを上回るかシビアな計算が必要です。 💬 ひとことポイント個人事業主なら「事業割合10%以下」でローン控除フル活用が定石。法人経営者の「持ち家社宅化」は、登記費用や税金などの移転コストも含めた損益計算が必須です。 【徹底比較】個人事業主の「家事按分」と法人の「社宅スキーム」の違い 持ち家を経費にする方法は、個人事業主と法人で大きく異なります。それぞれの特徴を理解し、どちらが自分にとって有利なのかを把握しましょう。 比較項目個人事業主(家事按分)法人(社宅スキーム:所有型)経費にできる金額事業で使用する割合のみ(例:全体の20〜30%)建物等の維持費全額(減価償却費、固定資産税など)個人の実質負担住宅ローンの大半は個人負担相場の10〜20%程度(賃料相当額のみ負担)手続きの難易度比較的簡単(按分計算の根拠作成のみ)非常に高い(売却登記、銀行交渉など)節税効果限定的非常に大きい住宅ローン控除併用可能(事業割合10%以下なら満額)併用不可(法人へ売却するため適用外) 1. 個人事業主の場合:狙い目は「事業割合10%」でのローン控除フル活用 個人事業主の基本は、自宅費用のうち事業で使った分だけを経費にする「家事按分」です。 しかし、住宅ローン控除を受けている場合は要注意。事業割合が50%を超えると控除がゼロになります。一方、事業割合を10%以下に抑えれば、住宅ローン控除を満額受けながら、その10%分を経費にする「いいとこ取り」が可能です。 節税効果を最大化するには、このバランス調整がカギとなります。 2. 法人の場合:維持費を経費にしつつ、個人負担を激減させる 法人なら、社長個人の持ち家を会社が買い取る「社宅スキーム(所有型)」が強力です。 建物が法人名義になるため、減価償却費や固定資産税、保険料などの維持コストをすべて法人の経費にできます。社長個人は「賃料相当額」を会社に支払いますが、これは市場家賃の10〜20%程度で済みます。 会社は経費増で法人税を減らし、社長は手取りを減らさずに住居費を抑えられる、まさに一石二鳥の仕組みです。 💬 ひとことポイント手軽に住宅ローン控除と経費を併用したいなら「個人事業主(按分10%)」、移転コストをかけてでも数百万円単位の節税を狙うなら「法人化(社宅)」が正解です。法人の場合は銀行ローンの借り換えハードルが高い点もお忘れなく。 【基礎編】個人事業主向け!持ち家で経費にできる7つの項目 個人事業主が持ち家を経費にする際の基本は「家事按分」です。ここでは、代表的な7つの項目について解説します。 減価償却費 固定資産税・都市計画税 住宅ローンの金利 火災保険料・地震保険料 水道光熱費 通信費 修繕費・リフォーム費用 これらの費用を漏れなく、かつルール通りに計上することが節税の第一歩です。それぞれ見ていきましょう。 1. 減価償却費:建物部分を経費にする 持ち家は時の経過とともに価値が減少します。この減少分を、法定耐用年数に応じて毎年経費にするのが「減価償却費」です。 土地は価値が減らないため対象外ですが、建物部分は経費化できます。例えば、3,000万円で購入した木造住宅(耐用年数22年)のうち、建物価格が1,500万円だった場合、定額法の償却率0.046を掛けて計算します。 購入時の売買契約書で「建物価格」を確認し、正しく計算しましょう。 2. 固定資産税・都市計画税:納税額の一部を経費に 毎年支払う固定資産税や都市計画税も、家事按分の対象です。 納税通知書に記載されている税額のうち、事業で使用している割合(面積比や時間比)を経費として計上できます。固定資産税は土地と建物それぞれにかかりますが、どちらも按分計算の対象となります。 納税通知書は捨てずにしっかり保管し、事業割合を乗じて忘れずに計上しましょう。 3. 住宅ローンの金利:控除との「両取り」を意識 住宅ローン返済中の方は、返済額のうち**「利息部分」のみ**を経費にできます(元本は経費になりません)。 重要なのは「住宅ローン控除」との兼ね合いです。事業割合が50%を超えると控除が受けられなくなりますが、10%以下に抑えれば控除を満額受けつつ、その10%分の金利を経費にできます。 控除期間中は、欲張らず「10%経費」に留めるのが賢い選択です。 4. 火災保険料・地震保険料:経費と控除を使い分ける 建物にかけている火災保険料や地震保険料も、事業割合分を経費にできます。 特に地震保険料については、「事業用部分は経費(損害保険料)」、「居住用部分は所得控除(地震保険料控除)」として明確に区分して申告する必要があります。 例えば、地震保険料が2万円で事業割合が30%の場合、6,000円は経費、残りの1万4,000円は地震保険料控除の対象となります。二重計上はできないので注意しましょう。 5. 水道光熱費:基本は「電気代」のみ 水道光熱費も経費になりますが、デスクワーク中心の事業であれば、経費として認められやすいのは主に**「電気代」**です。 水道代やガス代については、料理教室や美容室など、業務で直接使用する明確な理由がない限り、税務調査で否認されるリスクがあります。 電気代については、使用時間やコンセントの数、あるいは使用面積などで合理的な按分基準を設けて計上しましょう。 6. 通信費:インターネット・固定電話代を按分 インターネット回線の使用料や固定電話の基本料金も、家事按分の対象です。これらは使用日数や時間で按分するのが一般的です。 例えば、週5日稼働であれば「週7日のうち5日=約70%」を事業割合とするなど、実態に即した基準を設定します。スマートフォンの料金も、業務通話の履歴などが明確であれば按分可能です。 プライベート利用と混在しやすい項目なので、説明できる基準を持っておくことが大切です。 7. 修繕費・リフォーム費用:事業に関連する部分のみ 持ち家の修繕費やリフォーム費用も、経費にできる可能性があります。 例えば、仕事部屋の壁紙の張り替えや、業務用の空調設備の修理などは全額経費にしやすい項目です。一方、屋根や外壁の塗装など家全体に関わる修繕は、事業割合で按分します。 なお、建物の価値を高めるような大規模なリフォームは「資本的支出」とみなされ、一括経費にできず減価償却が必要になる場合があるため注意してください。 💬 ひとことポイント個人事業主の経費化は「家事按分」がすべて。特に「事業割合10%」での住宅ローン控除との併用テクニックは効果絶大です。水道光熱費は「電気代」を中心に、根拠のある計上を心がけましょう。 【図解】家事按分の計算方法|面積と時間で合理的に按分する2つの基準 家事按分で最も重要なのは「客観的で合理的な基準」で事業割合を計算することです。 税務調査で「なぜこの割合なのですか?」と聞かれた際に、明確に説明できなければなりません。ここでは、代表的な2つの計算基準を解説します。 面積基準(主に建物関連費用) 時間基準(主に光熱費・通信費) それぞれの使い分けを見ていきましょう。 1. 面積基準:事業で使うスペースの割合で計算 面積基準は、自宅全体の床面積のうち、事業専用で使っているスペースの面積が占める割合で計算する方法です。 主に、地代家賃、減価償却費、固定資産税、火災保険料など、建物そのものにかかる費用を按分する際に用います。リビングの一角などプライベートと区分できない空間は認められないリスクがあるため、間取り図などで「事業専用部屋」であることを示せるようにしましょう。 計算式:事業専用スペースの面積 ÷ 自宅全体の面積 = 事業使用割合 2. 時間基準:事業で使う時間の割合で計算 時間基準は、1日(または1週間・1ヶ月)のうち、事業を行っている時間の割合で計算する方法です。 主に、電気代やインターネット通信費など、利用頻度に応じて発生する費用を按分する際に用います。「週の稼働日数」や「1日の活動時間に対する業務時間」で算出します。 いずれの場合も、日々の業務時間を記録した日報や、使用実績がわかる資料を残しておくことが重要です。 計算式:事業で使用した時間 ÷ 全体の時間 = 事業使用割合 💬 ひとことポイント家賃などは「面積」、通信費などは「時間」や「日数」での按分が基本。電気代は使用状況に合わせて選びましょう。最も重要なのは、税務署に「なぜその割合なのか」を説明できる根拠(間取り図や業務記録)を残すことです。 【上級編】年間124万円の節税も!持ち家を社宅にして経費を最大化するスキーム 個人事業主の家事按分では満足できない、もっと大きな節税をしたい、という法人経営者におすすめなのが「社宅スキーム」です。 これは、経営者個人の持ち家を法人に売却、または法人が借り上げて、役員社宅として利用する方法です。正しく活用すれば、大きな節税効果が期待できます。 1. なぜ社宅制度が強いのか?個人事業主の家事按分との決定的違い 社宅スキームが強い理由は、経費にできる範囲の広さにあります。 個人事業主の家事按分では事業使用割合(30%など)しか経費にできませんでした。しかし、法人所有の社宅にすれば、建物にかかる維持費(減価償却費、固定資産税、保険料、修繕費、借入金利息など)の多くを法人の経費に計上できます。 社長個人は、税法で定められた「賃料相当額」を会社に支払うだけで済み、実質的な住居費負担を大幅に抑えられます。 2. 【シミュレーション】年間124万円の経費を生み出す仕組みとは? 実際にどれくらいの効果があるのでしょうか。建物価格2,000万円(木造、耐用年数22年)の持ち家を社宅にしたケースで試算します。 減価償却費:約91万円 固定資産税:約25万円 火災保険料など:約8万円 法人の経費合計:約124万円 ここから、社長が法人に支払う社宅家賃を差し引いた残額が、法人の節税メリットとなります。さらに社長個人にとっては、固定資産税などの支払いがなくなり、手取りが増える効果もあります。 3. 【重要】持ち家を法人に売却して社宅化する4ステップと注意点 持ち家を社宅化する一般的な方法は、社長個人から法人へ自宅を売却することです。ただし、個人の住宅ローンが残っている場合は要注意です。 金融機関との調整:法人への名義変更は契約違反になるため、借り換え等の承諾が必要。 不動産売買契約:適正価格(時価)での契約が必要。鑑定評価が推奨されます。 所有権移転登記:法務局で移転登記。不動産取得税や登録免許税が発生します。 賃貸借契約:法人と社長個人の間で、社宅契約を結びます。 4. 役員負担は1〜2割?「賃料相当額」の計算方法 社長が法人に支払う家賃(賃料相当額)は、国税庁の定める計算式で算出します。「小規模な住宅」(木造などで床面積132㎡以下)の場合、以下の3つの合計額となります。 (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)× 0.2% 12円 ×(その建物の総床面積(㎡)/ 3.3㎡) (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)× 0.22% この計算式で算出される金額は、市場家賃よりも大幅に安くなるケースが多く、その差額が実質的なメリットとなります。 💬 ひとことポイント社宅スキームは強力ですが、住宅ローンの完済や移転コスト(不動産取得税など)、売却時の譲渡所得税など、導入ハードルも高い手法です。トータルで得するかどうか、必ず税理士とシミュレーションを行いましょう。 【要注意】持ち家を経費化する際に失敗しないための4つのチェックリスト 持ち家の経費化はメリットが大きい反面、ルールを間違えると税務調査で指摘され、追徴課税を受けるリスクもあります。ここでは、失敗しないために最低限確認すべき4つのポイントを解説します。 住宅ローン控除との併用は可能か? 按分割合の根拠は明確か? 青色申告を選択しているか? 社宅スキームの売却価格は適正か? 1. 住宅ローン控除との併用は可能か?(最重要) 個人事業主の場合、事業割合の設定に最大の注意が必要です。 50%以上:住宅ローン控除は全額適用外。 10%〜50%未満:控除額が減額(居住部分のみ適用)。 10%以下:住宅ローン控除を全額受けられます。 多くの場合、事業割合を高く設定して経費を増やすよりも、住宅ローン控除をフル活用する方がトータルの節税効果が高い傾向にあります。必ずシミュレーションを行いましょう。 2. 按分割合の根拠は明確に説明できるか? 税務調査で最もチェックされやすいのが「按分割合の合理性」です。客観的な証拠なしに「なんとなく30%」と設定するのは危険です。 面積基準なら「事業専用スペースを明示した間取り図」、時間基準なら「業務時間を記録した活動報告書」などの準備が有効です。プライベートと混在するリビングなどは、原則として按分の対象外となるリスクが高い点も押さえておきましょう。 3. 青色申告と白色申告での取り扱いの違いは? 青色申告と白色申告では、家事按分の認められやすさに違いがあります。 青色申告:取引記録等で業務遂行上必要であることが明らかにできれば経費計上可能。 白色申告:原則、事業割合が「おおむね50%超」でなければ計上不可。 自宅兼事務所で事業を行うなら、経費計上の範囲が広く、特別控除などのメリットもある青色申告を選択することを強く推奨します。 4. 社宅スキームのデメリットと注意点は? 社宅スキーム導入時、個人から法人へ自宅を売却する「売却価格」の設定は慎重に行う必要があります。 時価より著しく低い価格(低額譲渡)や高い価格で売買すると、法人税の対象になったり、役員賞与とみなされたりするリスクがあります。単なる「売買」にとどまらず、思わぬ税金がかかる恐れがあるため、不動産鑑定士や税理士による適正な価格算定が不可欠です。 💬 ひとことポイント「住宅ローン控除」との兼ね合いは最大の落とし穴です。事業割合を増やして目先の経費を作るより、住宅ローン控除(10〜13年間)を維持した方が得なケースが大半です。必ず比較計算を行いましょう。 自宅兼事務所の経費化・法人化でお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 「自分に最適な方法がわからない」「具体的な節税額を知りたい」持ち家の経費化に関する悩みは尽きないものです。そんな時は、私たちEncoachの財務コンサルタントにお任せください。1,000社以上の支援実績を持つ財務のプロが、あなたの状況を徹底的に分析します。 財務のプロがあなたの状況に合わせた最適な節税プランを無料でシミュレーション Encoachでは、お客様一人ひとりの状況に合わせて、個人事業主のまま家事按分をすべきか、法人化して社宅スキームを導入すべきか、具体的な数値を基に無料でシミュレーションいたします。 住宅ローンの残高や所得状況、将来のライフプランまで考慮し、あなたにとって最も有利な選択肢をご提案。「なんとなく」ではない、データに基づいた最適な節税プランを一緒に考えましょう。 複雑な按分計算から法人設立・社宅制度導入までワンストップでサポート 家事按分の面倒な計算や、社宅スキーム導入に伴う法人設立、不動産登記、各種契約書の作成まで、Encoachがワンストップでサポートします。 あなたは本業に集中しているだけで、気づけば最適な節税が実現している。そんな理想の環境をご提供するのが私たちの役目です。税務調査にも堂々と対応できる、盤石な体制を一緒に作り上げましょう。 まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 少しでも興味をお持ちいただけましたら、まずはお気軽に無料相談へお申し込みください。無理な勧誘は一切いたしません。あなたの会社の財務状況を改善するための、有益な情報をご提供することをお約束します。 「話を聞いてみるだけ」でも大歓迎です。あなたの勇気ある一歩が、会社の未来を大きく変えるかもしれません。下記のリンクから、今すぐお問い合わせください。 💬 ひとことポイント財務の悩みは、一人で抱え込んでも解決しません。専門家は、あなたが思いもよらない視点や解決策を知っています。無料相談は、あなたの会社を次のステージへ進めるための、最も確実で簡単な方法です。 自宅兼事務所の経費に関するよくある5つの質問 最後に、自宅兼事務所の経費に関してよく寄せられる質問とその回答をまとめました。あなたの疑問も、ここで解決するかもしれません。 Q1. 持ち家をリフォームした場合の費用は経費にできますか? A1. はい、内容や金額によって可能です。原状回復(壊れた箇所を直す)のための費用であれば「修繕費」として一括で経費にできます。目安として60万円未満、または修繕周期が約3年以内のものが該当します。ただし、価値を高める大規模なリフォームは資産計上が必要です。 Q2. 住宅ローンを完済している場合はどうなりますか? A2. 節税の選択肢が大きく広がります。住宅ローン控除との兼ね合いを気にする必要がなくなるため、個人事業主であれば事業割合を50%以上に設定し、経費を最大化しやすくなります。法人経営者の場合も、銀行の承諾ハードルがなくなるため、社宅スキーム導入の絶好の機会です。 Q3. 親名義の持ち家を事務所として使っている場合、経費にできますか? A3. 「生計を一にしているか」で扱いが異なります。親と生計を別にしていれば、支払った家賃を経費にできます。しかし、同居などで**生計を一にしている場合、家賃は経費にできません。**その代わり、親が負担している固定資産税等のうち、事業使用分を経費として計上可能です。 Q4. 税務調査で按分割合を否認されないためにはどうすればいいですか? A4. 「客観的で合理的な根拠」を資料として残すことが最重要です。面積基準であれば事業用スペースを色分けした間取り図、時間基準であれば業務日報などを必ず用意しましょう。「なぜその割合になるのか」を第三者に論理的に説明できる資料があれば、それが最大の防御策となります。 Q5. 法人化して社宅にする場合、どのくらいの費用がかかりますか? A5. 法定費用として数十万円〜が必要です。法人設立の実費(約6〜25万円)に加え、自宅を法人へ移すための登記費用(登録免許税・司法書士報酬)や不動産取得税が発生します。トータルで数十万〜100万円程度の初期コストを見込み、回収可能かシミュレーションしましょう。 まとめ:持ち家の経費化はルール理解が必須!専門家と相談して最適な節税を実現しよう 今回は、持ち家を自宅兼事務所として経費にする方法について、個人事業主向けの「家事按分」から、法人向けの「社宅スキーム」まで解説しました。 個人事業主:減価償却費や固定資産税などを合理的に按分する。ローン控除があるなら「事業割合10%以下」を検討。 法人経営者:大きな節税なら「社宅スキーム」。ただし移転コストや手続きの複雑さを考慮する。 どちらを選択するにせよ、最も重要なのは「ルールを正しく理解し、客観的な根拠に基づいて処理する」ことです。この記事を参考に、あなたの会社に最適な節税方法を見つけ、力強い経営を実現してください。 -
旅費規程で年間100万円の節税も!財務のプロが教える作成方法と8つのステップ
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「出張のたびに経費精算が面倒」「日当の基準が曖昧で社員から不満が出た」。経営者なら一度は抱える悩みですが、実は「旅費規程」一つで解決できるかもしれません。 旅費規程は単なるルールブックではありません。正しく運用すれば、年間100万円以上の節税効果を生み出し、経理業務を劇的に効率化する「最強の経営ツール」となります。1000社以上の財務改善を支援してきたプロの視点から、税務調査で否認されない作成方法を徹底解説します。 まずは結論!旅費規程を導入すべき会社とそうでない会社 旅費規程は会社と個人の双方に「節税」と「業務効率化」のメリットをもたらしますが、すべての事業者に適しているわけではありません。特に「個人事業主(本人利用)」は制度の対象外となるため注意が必要です。自社が導入すべきかどうか、以下の表でチェックしてみましょう。 項目旅費規程を導入すべき会社(向いている)導入できない、または慎重に検討すべき会社事業形態法人(一人社長などの小規模法人も含む)個人事業主・フリーランス(※事業主本人には日当を出せません)出張頻度社長や役員、従業員の出張が多い(目安:年数回以上の宿泊や遠距離移動がある)出張がほとんどない(年に1〜2回程度、近場のみなど)財務状況黒字決算で、手元のキャッシュに余裕がある(法人税等の節税メリットを享受したい)赤字続き、または資金繰りが厳しい(日当支給によるキャッシュアウトが負担になる)管理体制経費精算の手間を削減したい運用ルール(出張報告書など)を守れる社内ルールの管理・作成が苦手<br>どんぶり勘定で済ませたい もしあなたの会社が「導入すべき会社」に当てはまるなら、この先を読み進める価値は十分にあります。一度作ってしまえば、「会社は経費算入(法人税・消費税減)」「個人は非課税収入(所得税・住民税ゼロ)」というダブルの恩恵を受け続けられる強力な武器となるでしょう。 💬 ひとことポイント個人事業主の方はご自身への日当支給が認められないため、従業員を雇っていない限り導入のメリットはありません。また、法人の一人社長であっても「カラ出張」を疑われないよう、出張報告書の作成など厳格な運用が求められます。 そもそも旅費規程とは?会社と社員の双方にメリットがある最強の節税策 なぜ旅費規程が「最強の節税策」と呼ばれるのか。その理由は、経費としての認められ方と、会社・個人の双方にかかる税負担を同時に減らせる仕組みにあります。ここでは、以下の3つのポイントに分けて解説します。 なぜ「経費」として認められるのか 4つの税金が安くなる仕組み 規程がない場合のリスク それぞれ詳しく見ていきましょう。 1. 旅費規程の基本!なぜ「経費」として認められるのか? 旅費規程とは、役員や従業員が出張する際のルールを定めた社内規程のことです。この規程に基づいて支給される「出張手当(日当)」は、税金の計算上、給与ではなく「実費弁償(実際にかかった費用の穴埋め)」として扱われます。 出張には食事代や通信費、細かな移動費など、領収書の取りにくい細かな出費がつきもの。税務署も「社会通念上妥当な金額」であれば、これらを実費相当とみなし、受け取る個人に対して「非課税所得」とすることを認めているのです。この非課税の枠組みを合法的に活用することが、節税の基本となります。 2.【図解】4つの税金(法人税・消費税・所得税・社会保険料)が安くなる仕組み 旅費規程の最大のメリットは、一つの税金だけでなく、会社と個人のキャッシュフローに関わる「4つの負担」を同時に軽減できる点です。 法人税:日当は全額「旅費交通費」として経費(損金)にできるため、会社の利益が圧縮され税金が減ります。 消費税:国内出張の日当は「課税仕入れ」扱いとなり、会社が納める消費税から控除可能です(※海外出張は対象外)。 所得税・住民税:受け取る社員にとって「給与」ではなく「実費弁償」となるため、税金がかかりません。 社会保険料:労働の対価ではないため、原則として社会保険料の計算基準(標準報酬月額)に含まれず、会社・社員双方の保険料負担が増えません。 例えば、社長に月数万円の日当を支給した場合、同額を役員報酬として増額するケースに比べ、年間で数十万円〜100万円規模の手残り金額(会社+個人)の差が生まれることも珍しくありません。 3. 旅費規程がない場合のリスクとは? 逆に、旅費規程を作らずに社長の判断で都度「出張手当」を支給したらどうなるでしょうか。この場合、税務調査で「役員への臨時ボーナス(役員賞与)」とみなされる可能性が極めて高くなります。 役員賞与と判断されると、以下の「往復ビンタ」を受けます。 会社側:経費(損金)として認められず、その分に法人税が課される(損金不算入)。 個人側:給与所得として課税され、所得税・住民税・社会保険料が増える。 従業員への支給でも、規程がないと給与認定され、源泉徴収漏れを指摘されるリスクがあります。明確なルールなき支給は、節税どころかペナルティを招く危険な行為なのです。 💬 ひとことポイント「手取りを増やしたいから日当を出す」という動機でもOKですが、必ず「文書化されたルール(規程)」という防具を装備し、株主総会等での決議を経てから実行しましょう。 節税だけじゃない!旅費規程がもたらす4つの経営メリット 旅費規程の魅力は節税だけにとどまりません。実は、会社の経営基盤そのものを強くする、実務的なメリットが4つ存在します。 業務効率化(インボイス対応の負担軽減) 公平性の確保(不満の解消) コスト管理(予算の固定化) 採用力強化(福利厚生の充実) これらを理解することで、旅費規程の真の価値が見えてきます。 1.【業務効率化】インボイス対応の負担減!精算事務を劇的にスリム化 実費精算の場合、経理担当者は従業員から回収した領収書が「適格請求書(インボイス)」の要件を満たしているか、登録番号や税率を一枚ずつ確認しなければなりません。 しかし、旅費規程に基づいて支給する出張旅費等(日当・宿泊費・交通費)には、消費税法上の「出張旅費特例」が適用されます。これにより、会社はインボイス(領収書)の保存が不要となり、一定事項を記載した「帳簿のみの保存」で仕入税額控除が可能になります。 「領収書の厳格なチェック」という膨大な事務作業から解放されることは、制度導入後の現在において、節税以上に大きなメリットと言えるでしょう。 2.【公平性の確保】社員の不満をなくし、エンゲージメント向上 「A部長は高級ホテルなのに、自分はビジネスホテル」「出張のたびに精算ルールが変わる」。こうした曖昧さは、社員の不公平感やモチベーション低下を招きます。 旅費規程は、役職や出張先に応じた明確な「ものさし」となります。全社員に適用される公平なルールがあることで、「誰が行っても同じ基準」という納得感が生まれ、社員は安心して業務に集中できます。組織の透明性を高めることは、会社への信頼感にも直結します。 3.【コスト管理】予算の「見える化」と社員のコスト意識向上 実費精算では、繁忙期などで宿泊費が高騰すると、会社の経費負担も青天井になりがちです。旅費規程で宿泊費を「定額支給」にすれば、出張1回あたりのコストが固定化され、予算管理が容易になります。 さらに、社員には「規定額より安く泊まれば、差額は自分の手取りになる」というインセンティブが働くため、無駄に高いホテルを避け、自発的にコストを抑えようとする意識が芽生えます。結果として、会社全体の無駄な出費が抑制される効果が期待できます。 4.【採用力強化】「手取りが増える」福利厚生としてアピール 優秀な人材の獲得競争が激化する中、旅費規程は強力な採用ツールになります。求職者に対し、「当社には出張手当があり、非課税で手取り収入が増える仕組みがある」と具体的にアピールできるからです。 これは単なる給与額の提示以上に、「社員の税金や手取りのことまで考えてくれる会社」というポジティブなメッセージとなります。特に出張が多い営業職などの採用では、他社との差別化を図る決定打になり得ます。 💬 ひとことポイント「出張=疲れるもの」から「出張=少しお小遣いが増える楽しみ」に変われば、社員のフットワークも軽くなり、結果として営業成績や現場対応力の向上にもつながります! 税務調査で否認されない旅費規程の作り方8つのステップ それでは、具体的な作成方法を見ていきましょう。税務調査で「これは認められません」と言われないためには、正しい手順とポイントを押さえることが不可欠です。以下の8つのステップに沿って進めれば、誰でも安全な規程が作成可能です。 目的と範囲の明確化 出張の定義 旅費の種類 金額設定 役職差の設定 手続きの決定 承認と届出 周知と保管 順に解説します。 Step1. 規程の「目的」と「適用範囲」を明確にする まず冒頭で「何のためのルールなのか」を宣言します。「役員及び従業員が出張する際の手続きと基準を定めるものである」といった一文を入れましょう。 次に適用範囲ですが、原則として「全役員・全従業員」を対象にします。「社長だけ」といった特定の人物のみを対象にすると、給与とみなされ否認されるリスクが高まります。 ※注意:パート・アルバイトを出張させる可能性がある場合、一律に対象外とすると「同一労働同一賃金」の観点で問題になることがあります。業務実態に合わせて適用するか、別途ルールを設けましょう。 Step2. 「出張」の定義を具体的に定める(距離・時間) 次に、「どのような場合に『出張』とみなすか」という線引きを明確にします。ここが曖昧だと、現場での混乱や税務署との見解の相違を生みます。一般的には「直線距離」や「移動距離」で定義します。 【定義の例】 距離基準:「勤務地から片道100km以上(または50km以上)の移動を伴う業務」 時間基準:「移動・業務を含め○時間以上の拘束がある場合」 自社のエリア事情に合わせて、誰もが迷わない定義を設定しましょう。 Step3. 支給する旅費の種類を決める(交通費・宿泊費・日当) 旅費規程で支給する費用の種類を定義します。 交通費:電車、飛行機、タクシー代などの実費 宿泊費:ホテル代や旅館代(定額支給または実費上限) 日当(出張手当):出張中の食事代や少額の雑費を補填するもの この他、海外出張時の「支度金(パスポート取得費等の補填)」や、長期出張の「赴任手当」なども定めることが可能です。 Step4. 【最重要】日当・宿泊費を「相場の範囲内」で設定する ここが最重要ポイントです。金額が高すぎると「節税ではなく脱税(給与課税)」と指摘されます。「社会通念上妥当な金額」の目安として、民間調査データ(産労総合研究所など)を参考にすると安全です。 【日当の一般的な相場目安(国内出張)】 社長・役員クラス: 3,000円 〜 5,000円 一般社員クラス: 2,000円 〜 3,000円 自社の規模や財務状況も考慮し、この範囲内で設定するのが無難です。 Step5. 役職ごとの金額差を設定する際の注意点 役職(社長、部長、一般社員など)に応じて金額に差をつけることは認められています。ただし、その差は合理的でなければなりません。「社長は日当5万円だが社員は1,000円」といった極端な格差は否認リスクを高めます。 一般社員の金額を基準とし、役職が上がるごとに1.2倍〜2倍程度までの勾配をつけるのが一般的かつ安全な設計です。 Step6. 出張の申請から精算までの社内手続きを定める 規程の実効性を担保するため、運用ルール(ワークフロー)を定めます。基本は、「出張申請書」による事前承認と、「出張報告書」による事後報告のセットです。 特に「出張報告書」は、税務調査で「本当に仕事で行ったのか(カラ出張ではないか)」を証明する最重要証拠となります。訪問先、用件、成果などを記載させるよう規定しましょう。 Step7. 株主総会の承認と就業規則としての届出 作成した規程を法的に有効にするための手続きです。 株主総会での決議(必須):役員への旅費支給は、お手盛り防止のため株主総会決議(または定款への記載)が必要です。これがないと税務上、役員賞与とみなされる危険があります。 労基署への届出:従業員を含める場合、旅費規程は「就業規則の一部」となります。常時10人以上の従業員がいる事業場では、労働基準監督署への届出が必要です。 Step8. 作成した規程の全社への周知と適切な保管 最後に、完成した規程を全社員に周知し、いつでも閲覧できる状態にします(周知義務)。また、「株主総会の議事録」と「制定した規程」はセットで厳重に保管してください。 税務調査が入った際、調査官はまず「規程はいつ制定されたか」「株主総会で承認されているか」を確認します。このエビデンス(証拠)が節税の正当性を守る盾となります。 💬 ひとことポイント特にStep7の「株主総会議事録」は要注意。「作ったつもり」で議事録が残っていないケースが多発しています。必ず作成し、実印を押して金庫に保管しましょう。 いくらが妥当?日当・宿泊費のリアルな金額相場を大公開 旅費規程を作成する上で、最も頭を悩ませるのが「金額設定」でしょう。高すぎると税務リスクになり、低すぎると社員の持ち出しになります。ここでは、国内・海外出張のリアルな相場と、2025年に大きく変わった「国家公務員の旅費基準」について解説します。 1.【国内出張】役職別の宿泊費・日当の相場一覧(2023年度調査より) 産労総合研究所の「2023年度 国内・海外出張旅費に関する調査」によると、民間企業の平均的な支給額は以下の通りです。2019年頃と比較し、宿泊費の実費上限などは微減・横ばいの傾向が見られます。 役職宿泊費(定額支給の場合)日当(1日あたり)社長10,000円 〜 15,000円3,000円 〜 5,000円役員10,000円 〜 13,000円3,000円 〜 4,000円部長クラス9,000円 〜 11,000円2,500円 〜 3,000円一般社員8,600円 〜 9,800円2,000円 〜 2,500円 【ポイント】宿泊費は「定額支給」をやめ、ホテル代高騰に対応するため「実費精算(上限あり)」に切り替える企業が増えています。日当については、一般社員で2,000円〜3,000円、役員で3,000円〜5,000円の範囲が、税務署にも説明しやすい安全圏と言えるでしょう。 2.【海外出張】地域別の宿泊費・日当の相場一覧 海外出張は円安や現地の物価上昇が著しいため、国・地域ごとに等級を分けて設定するのが一般的です(以下は北米・欧州などの主要地域目安)。 項目支給額の目安備考宿泊費1.5万円 〜 2.5万円地域の実勢価格に合わせて設定<br>(※実費支給が主流)日当4,000円 〜 7,000円国内日当に2,000円程度上乗せが相場 【ポイント】海外の日当は、食事代やチップなどの雑費がかさむため、国内より高めに設定されます。ただし、1万円を超えるような高額な日当は、その根拠(現地の物価データ等)がない限りリスクが高いため注意が必要です。 3. 要注意!「国家公務員の旅費法」は2025年に大改正されました これまで民間企業の「お手本」とされてきた国家公務員の旅費基準ですが、2025年4月の法改正で仕組みがガラリと変わりました。 宿泊費: 従来の「定額支給」が廃止され、「上限付き実費支給」に変更されました。 例:東京都内宿泊の上限額 → 19,000円(職務10級以下)〜40,000円(総理大臣等) 日当: 旧来の「日当」は廃止・再編され、新たに「宿泊手当(一律2,400円)」等が新設されました。 ▼民間企業への影響この改正により、「公務員が定額でもらっているから、ウチも定額でOK」というロジックは使いにくくなりました。今後は、「宿泊費は実費精算(または実勢に即した上限設定)」+「日当は手当として数千円支給」というスタイルが、官民問わずスタンダードになっていくと考えられます。規程作成の際は、古い公務員基準(日当3,800円等)を鵜呑みにしないよう注意してください。 💬 ひとことポイント「節税したい」からといって、宿泊費を相場(1〜1.5万円)より極端に高く設定(例:3万円定額など)すると、実費との差額が「給与」とみなされるリスクが高まります。欲張らず「実費+α(数千円の日当)」で設計するのが賢明です。 【諸刃の剣】旅費規程で失敗する3つのケースと税務調査対策 旅費規程は強力な節税ツールですが、運用を一歩間違えれば「脱税行為」とみなされ、重加算税を含む追徴課税を招くリスクがあります。ここでは、税務調査で特に狙われやすい3つの失敗例と、その具体的な防衛策を解説します。 1.【ケース1】金額設定が「相場」より著しく高い 最も多い失敗は、節税効果を狙うあまり、日当や宿泊費を相場からかけ離れた高額に設定してしまうケースです。「社長の日当は1日3万円」といった極端な設定は、税務調査で「不相当に高額な部分は給与(役員賞与)」と認定され、会社の経費から否認される可能性が高いです。 ▼対策:客観的な「根拠」を残す2025年の公務員旅費法改正により、公務員基準(旧・定額日当)を根拠にするのは難しくなりました。現在は以下の2点を重視してください。 民間相場データの活用: 産労総合研究所などの統計データ(社長3,000〜5,000円程度)を参考にし、突出しない範囲に収める。 決定プロセスの正当化: 株主総会議事録に、金額の算定根拠や決議内容を明記し、「恣意的に決めたわけではない」証拠を残す。 2.【ケース2】「カラ出張」を疑われる(記録・証拠がない) いくら立派な規程があっても、その出張が実在したか証明できなければアウトです。特に定額支給の場合、「領収書がいらないから」と何も残していないと、税務署から「本当に行ったのか?(カラ出張ではないか)」と厳しく追及されます。 ▼対策:定額支給でも「事実証拠」は捨てるな以下の「3点セット」を必ずセットで保管してください。 出張報告書: 「誰と会って、どんな話をしたか」という業務内容の記録。 出張精算書: 移動ルートや金額の計算書。 事実証明資料: ホテルの予約確認メール、航空券の半券、ETC利用明細など。 ※インボイス制度の特例で「帳簿のみ保存」が認められる場合でも、税務調査対策としてホテルの領収書等を保管しておくのが、最強の防衛策です。 3.【ケース3】社長や役員しか利用していない 「規程上は全社員対象だが、実際には社長しか日当をもらっていない」というケースも危険です。実態として「役員への利益供与(隠れボーナス)」と判断されかねません。 ▼対策:従業員への適用実績を作る規程の適用範囲を「全役員・全従業員」とするのは当然ですが、重要なのは運用です。たとえ頻度が少なくても、一般社員が出張した際には規程通りに日当を支給し、その実績(精算履歴)を残してください。「社員にも公平に適用されている」という事実こそが、役員分の支給を正当化する最大の防御壁となります。 💬 ひとことポイント税務調査官は「高すぎる金額」と「実態のない出張」を狙っています。数行の「出張報告書」と、スマホで撮った「ホテルの看板写真」一枚があるだけでも、調査時の心証は劇的に良くなります。 旅費規程の作成・運用にお悩みならEncoachの財務コンサルティングへ 「自社に最適な金額設定がわからない」「税務調査で否認されないか不安だ」。旅費規程の作成には、専門的な知識と多くの手間がかかります。そんな経営者の皆様のお悩みを、私たちEncoach株式会社が解決します。 財務のプロがあなたの会社に最適な旅費規程をオーダーメイドで設計 私たちは、これまで1000社以上の財務改善を支援してきた経験豊富な財務のプロフェッショナル集団です。貴社の事業内容、出張の実態、財務状況を徹底的に分析し、節税効果を最大化しつつ、税務リスクを最小限に抑える最適な旅費規程をオーダーメイドで設計します。 テンプレートをただ当てはめるだけでは、本当の意味での「使える規程」にはなりません。貴社の成長戦略に貢献する、攻めの財務ツールとしての旅費規程をご提案します。 税務調査も安心!作成から運用までワンストップで徹底サポート Encoachのサポートは、規程を作って終わりではありません。株主総会議事録の作成サポート、従業員への説明会、そして実際の運用フローの構築まで、ワンストップで徹底的に伴走します。 万が一の税務調査の際にも、財務のプロとして、規程の合理性を理論的に説明し、経営者の皆様をしっかりお守りします。専門家がバックにいるという安心感が、経営者が本業に集中できる環境を生み出します。まずは無料相談から、お気軽にお問い合わせください。 💬 ひとことポイント自己流の規程で税務否認されると、節税額以上の追徴課税が発生します。プロの知見は「保険」であり、同時にキャッシュフローを最大化する「投資」でもあります。 旅費規程に関するよくある5つの質問 最後に、旅費規程に関して経営者の皆様からよくいただく質問を5つピックアップし、Q&A形式でお答えします。細かい疑問点を解消し、旅費規程への理解をさらに深めましょう。 Q1. 個人事業主でも旅費規程は作れますか? A1. 事業主本人には適用できませんが、従業員には適用可能です。 残念ながら、個人事業主本人の出張に対し、旅費規程に基づく非課税の日当を支給することはできません。また、同居の家族従業員(専従者)への支給も、税務上「生計を一にする親族」として認められないケースが一般的です。ただし、生計を別にする従業員を雇用している場合は、その従業員に対して旅費規程を適用し、日当を支給することは可能です。 ※法人化(法人成り)すれば、社長自身も「役員」として日当を受け取れるようになります。 Q2. 日当に食事代を含めても良いですか? A2. はい、むしろ日当には「食事代」が含まれていると解釈されます。 日当は本来、出張に伴う食事代や少額の雑費(飲み物代など)を補填する「実費弁償」としての手当です。そのため、日当とは別に「昼食代」を経費精算するのは二重計上となり、認められません。ただし、取引先との会食費用は、業務遂行上の「接待交際費」または「会議費」として、日当とは別に実費精算することが可能です。 Q3. 海外出張の場合の注意点はありますか? A3. 日当・宿泊費を国内より高めに設定し、必要に応じて「支度金」を定めます。 海外は物価や為替の影響を受けるため、地域(北米・欧州・アジア等)ごとに等級を分けて金額を設定するのが一般的です。また、パスポート取得費や予防接種代、スーツケース購入補助などの名目で、海外出張時(初回のみ等)に支給する「支度金」を規程に盛り込むことも可能です。これも社会通念上妥当な範囲(例:数万円〜10万円程度)であれば、非課税扱いとなります。 Q4. 規程を作れば、領収書は一切不要になりますか? A4. 「精算上の提出」は不要になりますが、「保管」は強く推奨します。 旅費規程に基づいて支給する定額の日当や宿泊費は、インボイス制度の「出張旅費特例」により、インボイス(領収書)の保存がなくても会社は消費税の控除が可能です。しかし、税務調査で「本当に宿泊したのか(カラ出張ではないか)」を問われた際、ホテルの領収書や明細書が唯一の決定的な証拠となります。経理提出は不要でも、万が一のために画像データ等で保管しておくのが賢明です。 Q5. 途中で規程の内容を変更することはできますか? A5. 可能ですが、金額を下げる場合は「従業員の同意」が原則必要です。 規程の変更自体は可能ですが、日当を減額するなどの変更は、労働契約法上の「不利益変更」にあたります。会社側の都合だけで一方的に変更することはできず、「合理的な変更理由(経営悪化など)」と「従業員への十分な説明・合意」が必要です。トラブルを防ぐためにも、変更の際は社会保険労務士などの専門家に相談することをお勧めします。 まとめ:旅費規程は中小企業こそ活用すべき最強の経営ツール 旅費規程は、単なる経費精算のルールではありません。法人税、消費税、所得税、社会保険料という4つの負担を合法的に軽減し、会社のキャッシュフローを最大化する「攻めの節税策」です。同時に、経理業務の効率化、社内の公平性確保、そして採用力の強化まで実現する、まさに中小企業にとって「最強の経営ツール」と言えるでしょう。 確かに、税務調査で否認されない規程を作成するには、専門的な知識と手間がかかります。しかし、その手間を乗り越えた先には、会社の経営基盤を盤石にする大きなメリットが待っています。 -
財務とは?経理との5つの違いから仕事内容・必要な資格まで専門家が解説
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「財務って何?経理とどう違うの?」「会社の成長に重要とは聞くけど、具体的にどんな仕事?」そんな疑問を抱えていませんか。 この記事では、財務とは何か、その役割を経理との明確な違いから具体的な仕事内容、キャリアに役立つ資格まで、財務のプロが徹底解説します。 最後まで読めば、財務が会社の未来を創る「攻めの要」であることが理解でき、明日からの仕事や経営に活かせる知識が身につきます。 監修者Encoach株式会社代表 北薗 寛人カルロ2008年よりファッションモデルとして活動し、パリコレ出演やUNIQLO世界広告などの実績を持つ。2015年から従業員1,000人超規模の大手税理士法人にて経験を積み、顧客紹介実績やMVP受賞などの実績を経て、2021年に独立・Encoach株式会社を設立。現在は財務を主軸に、経営者の意思決定と実行を支える伴走型コンサルティングを数多くのクライアントに対して提供。 まずは結論!財務と経理の主な違いが一目でわかる比較一覧表 財務と経理は、会社のお金を扱う点は同じですが、その役割と目的は全く異なります。 財務が未来志向で企業の成長を資金面から支える「攻めの財務」であるのに対し、経理は過去の取引を正確に記録・管理する「守りの経理」と理解すると分かりやすいでしょう。 両者の主な違いは以下の表の通りです。 観点財務経理時間軸未来過去・現在主な役割会社の未来のために資金を調達し、運用する(攻め)日々のお金の動きを正確に記録・管理する(守り)主な仕事内容財務戦略の立案、資金調達(融資・出資)、予算管理、資金運用、IR活動仕訳・記帳、現預金管理、経費精算、決算書の作成情報の提供先経営陣、金融機関、投資家など社外の利害関係者経営陣、各事業部門など社内の関係者仕事のゴール企業価値を最大化すること会社の財務状況を正確に把握できるようにすること 💬 ひとことポイント財務は未来の資金計画、経理は過去の資金記録。この「時間軸」の違いが、両者を理解するうえで最も重要なポイントです! 財務とは?会社の未来を創る「攻め」の管理部門 財務とは、会社の未来を創るために資金を管理する「攻め」の管理部門です。 会社が将来にわたって成長するために必要なお金を集め、その活用法を計画・実行する役割を担います。 経理が作成した過去の会計データなどを分析し、未来の企業価値を最大化するための戦略を立てる、経営の中核を担う重要な仕事といえるでしょう。 財務の役割は「未来のお金」を最適化し企業価値を高めること 財務の最も重要な役割は、未来のお金を最適化し、企業価値を高めることです。 企業の持続的な成長には、事業の源泉となる資金をいかに効率よく集め、使うかが直結します。 例えば、金融機関と融資交渉を行ったり、投資家向けにIR活動(※)をしたりして事業に必要な資金を調達します。また、余剰資金を有利な条件で運用し、新たな収益源を確保することも重要な仕事です。 このように、財務は単にお金を管理するだけでなく、会社の未来を創る戦略的な機能を持っています。 ※IR活動:株主や投資家に対し、投資判断に必要な情報を提供していく活動全般のこと。 財務状況とは企業の「体力」を示す通知表 財務状況とは、企業の収益力や支払い能力を数値で示した「企業の体力」を示す通知表です。 人間でいう「健康診断の結果」のようなもので、その中心となるのが経理が作成する財務諸表(※)です。 例えば、財務諸表の一つである貸借対照表を見れば、会社がどれくらいの資産や負債を持っているかが分かり、企業の体力を測れます。自己資本比率が高ければ、返済不要な資金が多く経営が安定した「筋肉質な会社」と判断できるでしょう。 このように財務状況を分析し、企業の健康状態を正確に把握することが、将来の経営戦略を立てる土台となります。 ※財務諸表:企業の財政状態や経営成績を株主や債権者などに報告するために作成される書類のこと。貸借対照表、損益計算書などがある。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ財務は未来を創るための羅針盤!経理が作った過去の地図(財務諸表)を読み解き、会社の未来への航路を描くのが財務の役割です。 財務の具体的な7つの仕事内容 財務の仕事は、会社の未来を創るための多岐にわたる活動を含みます。経営の根幹を支える財務戦略の策定から日々の資金繰り、会社の成長を加速させるM&Aまで、7つの具体的な仕事内容を解説します。 財務戦略の立案:経営目標達成のための資金計画 資金調達:銀行融資や出資など未来への投資資金を集める 予算管理:会社全体のお金の流れを計画・統制する 資金運用:余剰資金を投資し効率的に増やす M&A・事業投資:企業の成長を加速させる戦略実行 IR活動:投資家に向けて経営状況を報告する 監査対応:企業の財務状況の健全性を示す それぞれ見ていきましょう。 1. 財務戦略の立案:経営目標達成のための資金計画 財務の最重要業務は、経営目標を達成するための資金計画、すなわち財務戦略を立案することです。 企業のビジョンを実現するには「いつ、いくら資金が必要で、どう調達し、何に投資するか」という設計図が不可欠だからです。 具体的には、経理が作成した財務諸表を分析して会社の現状を把握します。そのうえで「5年後に売上を倍増させる」といった経営目標から逆算し、必要な資金額や最適な調達方法(借入や増資など)を盛り込んだ中長期の資金計画を作成します。 2. 資金調達:銀行融資や出資など未来への投資資金を集める 企業の成長に必要な運転資金や設備投資資金などを、最適な方法で外部から集めてくることが財務の重要な役割です。 事業拡大や新規プロジェクトには多額の資金が欠かせません。 調達方法には、返済義務がある「融資」と、返済不要だが株式を渡す「出資」の2種類があります。財務は、会社の状況や目的に応じてどちらが最適かを判断し、金融機関や投資家と交渉を行うのです。会社の未来を左右する重要な資金を集める、責任ある仕事といえます。 3. 予算管理:会社全体のお金の流れを計画・統制する 予算管理とは、会社全体の利益目標を達成するため、各部門の収入と支出を計画し、その実績を統制する仕事です。 これは、限られた経営資源を有効活用し、会社を計画通りに運営するための重要な業務といえます。 具体的には、まず全社の売上や利益の目標を立て、各部署に必要な経費などの予算を割り振ります。そして定期的に「予算」と「実績」を比較分析し、目標との間にズレ(予算差異)が生じていれば、原因を調査して改善策を講じるのです。 4. 資金運用:余剰資金を投資し効率的に増やす 事業活動で生まれた余剰資金(キャッシュ)を、投資などを通じて効率的に運用し、会社の資産をさらに増やすことも財務の仕事です。 現代のような低金利時代では、使途のない資金をただ銀行口座に預けておくだけでは、インフレによって実質的な価値が目減りするリスクがあります。 そこで財務は、当面の事業運営に必要ない「余剰資金」の範囲内で、株式や債券などの金融商品に投資し、リターンを追求します。安全性と収益性のバランスを考慮し、会社の資産を最大化することが求められます。 5. M&A・事業投資:企業の成長を加速させる戦略実行 M&A(企業の合併・買収)や大規模な事業投資は、企業の成長を飛躍的に加速させるための重要な財務戦略です。 自社だけで技術開発や市場開拓を行うには長い時間とコストがかかります。しかしM&Aによって他社の技術や販路、人材を一気に獲得できれば、短期間で事業規模を拡大できます。 財務部門は、M&Aの候補となる企業の価値を算定したり、買収先の財務状況を精査(デューデリジェンス)したりする中心的な役割を担う、専門性の高い業務です。 6. IR活動:投資家に向けて経営状況を報告する IR(Investor Relations)活動とは、株主や投資家といった社外の利害関係者に対し、会社の経営や財務の状況を正しく報告する広報活動全般を指します。 企業が安定的に成長していくためには、投資家からの信頼を得て、いつでも資金調達がしやすい環境を整えておくことが重要です。 具体的には、決算発表時に「決算説明会」を開催して業績や今後の経営戦略を説明したりします。地道な情報発信を通じて自社の魅力を伝え、良好な関係を築くことがIR活動のゴールです。 7. 監査対応:企業の財務状況の健全性を示す 監査対応とは、公認会計士や監査役が行う監査を受け、会社の財務諸表が正しく作成され、内部統制が有効に機能していることを証明する業務です。 会社の決算情報が信頼できるものであることを、第三者によって客観的に担保してもらうための重要な手続きといえます。 監査では、財務部門が中心となって会計帳簿や取引の証拠書類などを提示し、会計処理の方法について監査人に説明します。監査法人から受けた指摘事項を改善することで、企業の透明性と信頼性を向上させることにつながります。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ財務の仕事は「戦略立案」から「M&A」まで非常に幅広いです。すべてに共通するのは、会社の「未来」を良くするための活動であるという点です。 もう迷わない!財務・経理・会計の明確な3つの違い 会社のお金を扱う仕事には「財務」「経理」「会計」がありますが、これらの違いを明確に説明するのは難しいかもしれません。 大枠として「会計」というルールの中に、過去のお金を扱う「経理」と未来のお金を扱う「財務」があると考えると分かりやすいでしょう。ここでは3つの視点から、その違いを解説します。 時間軸の違い:財務は「未来」、経理は「過去」 役割の違い:「攻めの財務」と「守りの経理」 情報提供先の違い:財務は「社外」、経理は「社内」 1. 時間軸の違い:財務は「未来」、経理は「過去」 財務と経理の最も大きな違いは、お金を扱う時間軸の向きが正反対である点です。 経理はあくまで過去に発生した取引を正確に記録し、現在の財政状態をまとめる役割を担います。 一方の財務は、経理が作成した決算書という「過去のデータ」を分析し、それをもとに未来の資金計画や投資戦略を立てるのです。経理が作成した「過去の地図」を頼りに、財務が「未来への航路」を描くという関係で成り立っています。 2. 役割の違い:「攻めの財務」と「守りの経理」 両者の役割は、しばしば「攻めの財務」と「守りの経理」と表現されます。 財務の主なミッションは、資金調達やM&A、新規事業投資などを通じて会社の成長を加速させ、企業価値を最大化することにあります。そのため、未来の収益を見据えてリスクを取る「攻め」の姿勢が求められます。 対照的に経理は、日々のお金の流れをミスなく正確に記録・管理し、法令を遵守することで、会社の資産と信頼性を守る「守り」の役割を担います。 3. 情報提供先の違い:財務は「社外」、経理は「社内」 誰に情報を提供するかも、財務と経理の大きな違いです。 財務が主に情報を届ける相手は、金融機関や投資家、株主といった「社外」の利害関係者です。これは、資金調達やIR活動といった、外部との交渉や説明責任を果たすことが財務の重要な業務だからです。 一方で、経理がまとめる情報は、主に経営陣や各事業部の責任者といった「社内」の関係者のために活用されます。これは、社内の業績管理やコスト削減といった、経営の意思決定に役立てることが目的だからです。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ「時間軸(未来⇔過去)」「役割(攻め⇔守り)」「相手(社外⇔社内)」という3つの対比で覚えると、財務と経理の違いがスッキリ整理できます。 財務担当者に向いている人とは?求められる4つのスキルとおすすめの資格 財務の仕事は、単に数字に強いだけでは務まりません。会社の未来を創る重要な役割のため、専門知識に加え、経営的な視点や交渉力、高い倫理観が求められます。 財務担当者に不可欠な4つのスキルと、キャリアアップに役立つ資格を解説します。 財務諸表の読解力と分析スキル 経営陣や金融機関と渡り合う交渉力・コミュニケーション能力 会社の未来を見通す経営的視点と戦略的思考力 プレッシャーに強く、高い倫理観を持っている 【補足】財務でキャリアアップするための有利な資格 1. 財務諸表の読解力と分析スキル 財務担当者にとって最も基礎的かつ重要なスキルは、財務諸表を正しく読み解き、会社の経営状態を分析する力です。 なぜなら、あらゆる財務戦略は、自社の現状を客観的な数字で正確に把握することから始まるからです。 財務諸表を分析すれば、会社の収益性や安全性、成長性といった「企業の体力」を多角的に評価できます。この分析を通じて経営上の課題を発見し、改善策を提案することが、財務担当者の付加価値となるのです。 2. 経営陣や金融機関と渡り合う交渉力・コミュニケーション能力 財務の仕事は、社内外の多くの関係者を巻き込みながら進めるため、高度な交渉力とコミュニケーション能力が求められます。 立案した財務戦略や資金計画の妥当性を経営陣に分かりやすく説明し、納得してもらう必要があります。 また、資金調達の場面では、銀行などの金融機関に対して自社の事業の将来性を魅力的に伝え、有利な条件を引き出すための交渉力が不可欠です。論理的に説明し、信頼関係を築く対話力が極めて重要になります。 3. 会社の未来を見通す経営的視点と戦略的思考力 財務担当者には、単に数字を管理するだけでなく、会社全体の目標達成のために資金をどう活用すべきか考える「経営的視点」と「戦略的思考力」が求められます。 なぜなら、財務は経営戦略そのものと密接に結びついているからです。 例えば「5年後の業界地図はどう変わるか」「その中で自社が成長するために、今どの事業に投資すべきか」といった長期的な視点で資金配分を考える必要があります。短期的な視点にとらわれず、常に会社全体の持続的な成長を考えて行動することが、優れた財務担当者の条件です。 4. プレッシャーに強く、高い倫理観を持っている 会社の未来を左右する多額の資金を扱う財務の仕事は、大きなプレッシャーが伴います。 そのため、予期せぬ事態が起きても冷静な判断力を保つ精神的な強さが不可欠です。 同時に、会社の重要情報を扱い、巨額の資金を動かす立場にあるからこそ、法令遵守はもちろんのこと、不正を許さない極めて高い倫理観が求められます。株主や金融機関、従業員といったすべての利害関係者からの信頼こそが財務部門の基盤であり、その信頼は担当者一人ひとりの誠実な行動によって成り立っています。 【補足】財務でキャリアアップするための有利な資格 財務の仕事に就くために必須の資格はありませんが、専門知識を証明し、キャリアアップを目指す上で有利になる資格は存在します。 公認会計士・税理士:会計・税務の最高峰の専門家。財務戦略の立案やM&Aといった高度な財務業務に直結するため、キャリアアップに極めて有利です。 日商簿記検定:特に2級以上は必須の知識とみなされることが多いです。経理が作成した財務データを理解できなければ、財務分析は始まりません。 ファイナンシャルプランナー(FP):金融、税金、投資といった幅広い知識は、企業の資金運用や事業承継計画にも応用できます。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ財務は「分析力」「交渉力」「戦略的思考力」そして「倫理観」が重要。資格はあくまで知識の証明。実務でこれらのスキルを磨くことがキャリアアップの鍵です。 会社の成長ステージ別|財務の重要性と中小企業が抱える3つの課題 財務が果たすべき役割は、会社の成長段階によって変化します。創業期には資金調達、成長期には運転資金の管理が最重要課題です。 そして安定期・成熟期には、M&Aなどを通じてさらなる企業価値向上を目指します。各ステージで財務がどう機能するのか、その重要性を解説します。 創業期:事業計画に基づいた融資・資金調達 成長期:事業拡大に向けた追加の資金調達と予算管理 安定期・成熟期:M&Aや新規事業投資による企業価値の最大化 創業期:事業計画に基づいた融資・資金調達 創業期における財務の最重要ミッションは、事業をスタートさせ、軌道に乗せるための初期資金を確保することです。 自己資金だけでは設備投資や運転資金をまかなえないケースがほとんどだからです。 この段階ではまだ事業実績がないため、金融機関や投資家から信頼を得るには、説得力のある「事業計画書」がすべてです。事業の将来性や収益性を客観的な数字で示し、融資や出資に繋げることが財務の最初の大きな仕事となります。 成長期:事業拡大に向けた追加の資金調達と予算管理 成長期には、売上拡大に伴って急増する運転資金を管理し、資金ショートを防ぐことが財務の最大の課題です。 売上が伸びると、仕入れ代金や人件費などの支払いも増加し、入金よりも支払いが多くなる「黒字倒産」のリスクが高まります。 これを防ぐために、精度の高い「予算管理」が不可欠です。月次の資金繰り表を作成してキャッシュの流れを常に監視し、必要に応じて金融機関からの追加融資を計画的に実行します。事業の成長スピードを落とさずに、安定した経営基盤を維持するバランス感覚が求められるのです。 安定期・成熟期:M&Aや新規事業投資による企業価値の最大化 事業が安定・成熟期に入ると、財務の役割は既存事業の維持から、M&Aや新規事業投資を通じて企業価値をさらに最大化させることへとシフトします。 市場の成長が鈍化する中で持続的に成長を続けるには、自社にない技術や販路を持つ他社を買収(M&A)したり、将来性のある新たな分野へ投資したりする「攻めの財務戦略」が有効です。 その際、財務は投資対象となる企業の価値を正しく評価し、投資のリスクとリターンを分析する重要な役割を担います。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ会社の成長ステージによって財務の役割は「資金調達」→「資金管理」→「価値創造」へと進化します。自社のステージに合った財務戦略が重要です。 中小企業に財務部がない理由と潜むリスク 多くの中小企業では、コストや人材不足から専任の財務部を置かず、経営者や経理担当者が兼任しているのが実情です。 しかし、これには大きなリスクが潜んでいます。 日々の経理業務に追われ、未来を見据えた財務戦略に手が回らず、資金繰りが場当たり的になりがちです。財務知識が不十分なまま金融機関と交渉し、不利な条件で契約してしまうケースも少なくありません。 また、業務が特定の人物に集中する「属人化」は、不正の温床になったり、担当者の退職で業務が完全に停止したりする危険性もはらんでいます。 💬 ひとことポイント財務の不在は、気づかぬうちに会社の成長機会を逃し、リスクを増大させる時限爆弾のようなものです。早めの対策が肝心です。 財務の専門家に相談すべき3つのケース 中小企業が自社だけで高度な財務課題に対応するのは容易ではありません。会社の将来を大きく左右する重要な局面では、客観的な視点と専門知識を持つ外部の専門家を頼ることが成功の確率を高めます。 財務のプロに相談を検討すべき3つの代表的なケースをご紹介します。 数千万円以上の大規模な資金調達を成功させたい M&Aを検討しているが、相手企業の財務状況調査(デューデリジェンス)に不安がある 会社の資金繰りが悪化しており、原因調査と改善策の立案を急いでいる ケース1:数千万円以上の大規模な資金調達を成功させたい 数千万円から億単位の大規模な資金調達は、融資元の金融機関や投資家を納得させる、より精緻な事業計画と交渉戦略が不可欠です。 調達額が大きくなるほど、審査のハードルは格段に上がり、計画の実現可能性や企業の将来性を厳しく評価されるからです。 財務の専門家は、客観的な市場分析や財務予測に基づいた説得力のある事業計画書を作成し、複数の金融機関の中から最も有利な条件を引き出すための交渉を代行します。これにより、経営者は本業に集中しながら、事業成長に必要な資金を最適な形で確保できる可能性が高まります。 ケース2:M&Aを検討しているが、相手企業の財務状況調査(デューデリジェンス)に不安がある M&Aの成功は、買収対象企業の価値やリスクを正確に見抜く「財務デューデリジェンス」にかかっていると言っても過言ではありません。 決算書に現れない簿外債務や、将来の業績を悪化させる要因を見逃したまま買収を進めると、後に深刻な損失を被るリスクがあります。 財務の専門家は、第三者の客観的な立場で対象企業の財務状況を徹底的に調査し、隠れたリスクを洗い出します。これにより、買収価格が妥当かどうかを判断し、リスクを織り込んだ上で安全にM&Aを実行するための的確なアドバイスを提供します。 ケース3:会社の資金繰りが悪化しており、原因調査と改善策の立案を急いでいる 資金繰りの悪化は、放置すれば倒産に直結しかねない緊急事態であり、迅速かつ的確な原因究明と対策が求められます。 売上の減少、過剰な在庫、回収できない売掛金など、原因は様々ですが、社内の人間だけでは根本的な問題に気づけないことも少なくありません。 財務の専門家は、キャッシュフローの動きを詳細に分析して資金繰り悪化の真因を特定します。そして、即効性のある改善策(不要資産の売却など)と、中長期的な再発防止策(収益構造の見直しなど)を立案・実行。危機的な状況において、冷静な判断と実行力で会社の立て直しをサポートします。 Encoach株式会社代表北薗 寛人カルロ「大きな資金調達」「M&A」「資金繰りの悪化」は会社の運命を左右する三大テーマ。迷ったらすぐに専門家に相談することが、最善の結果につながります。 財務に関するよくある質問 財務の世界は専門性が高く、多くの疑問が寄せられます。ここでは、キャリアに関する質問から、学習方法、企業規模による仕事内容の違いまで、財務に関するよくある質問にQ&A形式で分かりやすくお答えします。 Q1. 財務の仕事は未経験からでも挑戦できますか? 結論から言うと、未経験から財務職に挑戦することは不可能ではありませんが、簡単な道ではありません。 多くの企業は専門知識や実務経験を重視するため、経験者の方が有利な傾向にあります。 しかし、金融機関での勤務経験や、経理部門で財務諸表の作成に関わった経験など、関連性の高い職務経験があれば、未経験でも十分にアピールできます。まずは経理職として経験を積みながら簿記などの資格を取得し、財務部門へのキャリアチェンジを目指すのが現実的なキャリアパスの一つです。 Q2. 財務の勉強は何から始めるべきですか? 財務の勉強は、まず「会計」の基礎を学び、財務諸表(貸借対照表、損益計算書など)を読めるようになることから始めるのが最も効率的です。 なぜなら、財務分析や戦略立案は、すべて会計データという土台の上になりたっているからです。 具体的には、日商簿記検定2級の取得を目指して学習することをおすすめします。簿記を学ぶことで、会社のお金がどのように記録され、決算書が作成されるのかという一連の流れを体系的に理解できます。基礎が固まったら、専門書やオンライン講座などを活用して、財務分析や企業価値評価といった、より実践的な分野へと学習を進めていくと良いでしょう。 Q3. 大企業と中小企業で財務の仕事内容に違いはありますか? はい、企業規模によって財務の仕事内容は大きく異なります。 大企業では財務部と経理部が完全に独立しており、担当業務が細分化・専門化されています。資金調達、M&A、IRなど、特定の分野のスペシャリストとして深い知識を追求できます。 対して中小企業では、一人の担当者が経理と財務の両方を兼任することが一般的です。日々の資金繰り管理から金融機関との交渉、経営計画の策定まで、幅広く携わるため、経営全体を見渡すゼネラリストとしての経験を積むことができます。 まとめ:財務の理解は、企業の未来を創る第一歩 この記事では、財務の役割や経理との違い、具体的な仕事内容から必要なスキルまで、網羅的に解説してきました。 過去の取引を記録する「守りの経理」とは対照的に、財務は未来の企業価値を最大化するための「攻めの管理部門」です。財務戦略の立案から資金調達、M&Aの実行まで、その仕事は会社の成長と存続に直結する重要な役割を担っています。 財務の仕事は、単に数字を扱うだけではありません。財務諸表を分析して課題を発見し、経営陣や金融機関と交渉しながら、会社の未来を創っていく戦略的な仕事です。この記事を読んで財務への理解を深めることが、あなたの会社の未来をより良い方向へ導く、確かな第一歩となるでしょう。 財務戦略でお悩みなら、Encoach株式会社へご相談ください 財務の重要性は理解できても、自社だけで最適な戦略を立て、実行するのは容易ではありません。Encoach株式会社は、代表の北園が大手税理士法人で1,000社以上の経営者を支援した経験を基に設立した、経営財務コンサルティングのプロフェッショナル集団です。 私たちは、単なる数字のアドバイスにとどまらず、経営者の「想い」を実現するための「未来の数字」を共に創り上げる伴走支援を信条としています。 資金繰りの不安解消から、成長を加速させるための資金調達、M&A戦略まで、財務に関するあらゆる課題に、経営者の右腕として寄り添います。初回のご相談は無料ですので、まずはお気軽にお問い合わせください。 -
【プロ監修】経営計画書テンプレートを無料ダウンロード!目的別の書き方や作成ポイントを徹底解説
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「金融機関から融資を受けたいけど、説得力のある経営計画書の書き方が分からない…」「会社の進むべき道筋を明確にしたいけど、何から手をつければいい?」 この記事では、そんな悩みを抱える経営者の方へ、資金調達や組織力強化に直結する**「経営計画書」の書き方を、テンプレート付きで徹底解説します。** 経営計画書と事業計画書の違いといった基本から、金融機関も納得する具体的な作成ステップ、そして計画倒れを防ぐ活用法まで、この記事を読めばすべてが分かります。 数々の企業を支援してきたプロが監修した無料テンプレートも活用し、会社の未来を描く羅針盤を手に入れましょう。 そもそも経営計画書とは?事業計画書との3つの違い 経営計画書と事業計画書は、どちらも会社の未来を描く設計図ですが、その役割と中身は異なります。この違いを理解することが、ぶれない経営戦略を立てる第一歩です。 ここでは、目的、期間、内容という3つの観点から、それぞれの違いを分かりやすく解説します。 1. 目的の違い:経営計画書は「社内向け」、事業計画書は「社外向け」 経営計画書と事業計画書の最も大きな違いは、その目的が「社内向け」か「社外向け」かという点です。 経営計画書は、企業の理念やビジョンを全社員で共有し、組織の足並みをそろえるための「社内の約束事」としての役割が強いです。 対して事業計画書は、金融機関や投資家から融資や出資を得る際に提出します。事業の将来性や収益性を客観的なデータで示し、相手を説得するための「社外への説明資料」という性格を持ちます。 2. 期間の違い:経営計画書は「中長期(3〜5年)」、事業計画書は「短期(1年)」 経営計画書が「中長期(3〜5年)」の視点で描かれるのに対し、事業計画書は「短期(1年)」の具体的な実行計画を定めるのが一般的です。 多くの企業では、まず3〜5年後になりたい姿を「中期経営計画」として策定します。 この大きな目標を達成するために、年度ごとの具体的なアクションに落とし込んだものが、短期経営計画です。これは事業計画書とほぼ同じ意味で使われます。長期的な視点で会社の進むべき道筋を示し、それを足元の行動へとつなげる関係にあります。 3. 内容の違い:経営計画書は「会社の羅針盤」、事業計画書は「行動計画」 経営計画書が企業の理念やビジョンといった「会社の羅針盤」の役割を担う一方、事業計画書は具体的な「行動計画」と位置づけられます。 経営計画書は、「私たちは何のために存在するのか」という企業の根本的な価値観や、目指すべき未来像(ビジョン)といった、より抽象的で根本的な方針を示すものです。 それに対し事業計画書は、その方針を実現するために「誰が」「何を」「いつまでに」行うのか、そしてその結果どれだけの売上や利益を見込むのか、といった具体的な戦術と数値計画にまで落とし込まれています。 比較項目経営計画書事業計画書目的社内の意思統一、方向性の共有金融機関、投資家など社外への説明、資金調達対象者経営者、従業員金融機関、投資家、取引先期間中長期(3〜5年)短期(1年)内容企業理念、ビジョン、経営戦略、基本方針具体的な行動計画、販売戦略、数値計画、資金計画役割会社の進むべき方向を示す「羅針盤」目標達成のための具体的な「行動計画」 💬 ひとことポイント経営計画書は「会社の夢」、事業計画書は「夢の叶え方」。まずは誰に何を伝えたいのかを明確にすることが、計画書作成の第一歩です! 経営計画書を作成する3つのメリット 経営計画書は、単なる書類作成にとどまらず、企業の成長を加速させる強力なエンジンです。明確な計画を立てることで、日々の業務に追われる中で見失いがちな会社の進むべき道筋が明らかになり、組織全体に活力が生まれます。 計画書がもたらす代表的なメリットは以下の3つです。 会社の進むべき方向性が明確になる 金融機関や投資家からの信用力が向上する 組織の一体感を醸成し、社員の主体性を引き出せる それぞれ解説していきます。 1. 会社の進むべき方向性が明確になる 経営計画書の策定は、経営理念やビジョンという目的地へたどり着くための、具体的な航路図を描く作業です。 多くの経営者は頭の中に事業の構想を持っていますが、それを言語化・数値化する過程で、自社の現状、市場での立ち位置、そして将来のリスクを客観的に分析せざるを得ません。 このプロセスを経ることで、事業展開や人材採用、資金調達といった経営判断の場面で、場当たり的な意思決定を避け、一貫性のある選択ができるようになります。 2. 金融機関や投資家からの信用力が向上する 綿密に練られた経営計画書は、金融機関や投資家に対して「計画的に経営できる企業」という客観的な信頼の証となります。 融資審査の際、金融機関は事業の将来性や返済能力を厳しく評価します。その際に、具体的な数値目標とその根拠が示された計画書を提示することで、自社の事業内容や成長戦略への理解が深まります。 結果として、「この会社に任せられる」という信用力が高まります。資金調達がスムーズに進んだり、より有利な条件での取引が可能になったりする可能性が高まるでしょう。 3. 組織の一体感を醸成し、社員の主体性を引き出せる 会社が目指すビジョンや目標を全社員で共有することで、組織全体に一体感が生まれ、従業員一人ひとりのパフォーマンス向上につながります。 経営計画書を通じて会社の進むべき方向性が示されると、従業員は自分の日々の業務が会社のどの目標達成に貢献しているのかを理解できます。 これにより、仕事への目的意識やモチベーションが高まり、指示待ちではなく自発的に行動する「主体性」が引き出されます。策定の段階から従業員を巻き込むことで、計画は「自分ごと」となり、全社一丸となって目標達成に向かう強力な推進力が生まれるでしょう。 💬 ひとことポイント経営計画書は、社長の頭の中を「見える化」するツールです。社内外の協力者を増やし、会社を力強く前進させるための設計図だと考えましょう。 【無料ダウンロード】Encoach代表・北薗監修の経営計画書テンプレート ここでは、Encoach代表の北薗が数々の企業の経営支援を行う中で、実用性を追求し磨き上げたオリジナルの経営計画書テンプレートを、2つの形式でご紹介します。 どちらも無料で、すぐにお使いいただけます。ご自身の目的や使い慣れたツールに合わせて、最適なものをお選びください。 1. 今すぐ使える!経営計画書テンプレート(Googleスプレッドシート) 本記事で最もおすすめする、資金調達から組織運営まで幅広く対応できる網羅的なテンプレートです。 経営計画に必要な要素を体系的に整理しており、このテンプレートに沿って入力するだけで、説得力のある計画書が完成します。 Googleスプレッドシート形式のため、アカウントがあれば無料で利用でき、チームでの共同編集や専門家との共有もスムーズです。 ▼テンプレートはこちら▼ 💬 ひとことポイントまずは汎用性の高いスプレッドシート形式がおすすめです。数値計画の自動計算や複数人での同時編集機能は、効率的な計画書作成の強い味方になります。 【記入例付き】テンプレートを使った経営計画書の書き方10ステップ ここからは、テンプレートを使った経営計画書作成の具体的な手順に入ります。会社の根幹となる理念の策定から、具体的な行動計画の策定まで、10のステップに分けて、各項目で何を書くべきかを記入例を交えながら詳しく解説します。 企業理念・ビジョン・ミッション(会社の存在意義) 会社概要(自社の基本情報) 事業ドメイン(誰に、何を、どのように提供するか) 外部環境分析(市場・競合の動向) 内部環境分析(自社の強み・弱み) SWOTクロス分析と経営戦略(分析から戦略を導き出す) 個別戦略(マーケティング・販売戦略) 行動計画(誰が・いつまでに・何をするか) 数値計画・財務計画(最も重要な定量目標) エグゼクティブサマリー(要約) 一つひとつのステップを着実に進めることで、説得力のある計画書が完成します。 1. 企業理念・ビジョン・ミッション(会社の存在意義) 経営計画の根幹をなすのが、会社の存在意義や目指すべき姿を言語化した企業理念・ビジョン・ミッションです。 これらは、あらゆる経営判断のブレない軸となり、社員の行動指針にもなります。 理念:「社会においてどのような存在でありたいか」という企業の究極的な目的 ビジョン:3〜5年後に「具体的にどのような会社になっているか」という未来像 ミッション:ビジョンを実現するための「具体的な使命や役割」 例えば、「テクノロジーで人々の暮らしを豊かにする」という理念のもと、「3年後、地域で最も信頼されるITパートナーになる」というビジョンを掲げ、そのために「中小企業のDX化をワンストップで支援する」というミッションを遂行する、といった形で定義します。 2. 会社概要(自社の基本情報) 会社の基本情報を正確に記載することで、読み手(特に金融機関など)に信頼感を与え、計画全体の信憑性を高めます。 ここでは、社名、所在地、設立年月日、資本金、事業内容、役員構成、従業員数、取引銀行といった登記情報や基本情報を簡潔にまとめます。 特に、代表者の経歴は、事業に関連する経験やスキルをアピールする重要な項目です。なぜこの事業を立ち上げたのかという「創業の動機」と合わせて記載することで、事業への情熱や本気度を伝えることができます。 3. 事業ドメイン(誰に、何を、どのように提供するか) 事業ドメインとは、「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを明確に定義し、事業活動の範囲を定めることです。 これにより、経営資源を集中させるべき領域を特定できます。 例えば、「都心で働く健康志向の30代女性(誰に)」に対し、「国産有機野菜を使った栄養バランスの取れたランチボックス(何を)」を、「サブスクリプション型の宅配サービス(どのように)」で提供する、といった具合です。 ターゲット顧客を絞り込み、自社ならではの提供価値と方法を明確にすることで、競合との差別化ポイントが明らかになり、後のマーケティング戦略が立てやすくなります。 4. 外部環境分析(市場・競合の動向) 自社ではコントロールできない外部の市場や競合の動向を客観的に分析し、事業の「機会(Opportunity)」と「脅威(Threat)」を洗い出します。 主な分析手法として、世の中の大きな潮流を分析する「PEST分析」や、業界の構造を分析する「ファイブフォース分析」などがあります。 PEST分析とは、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの観点から、法改正や景気動向、ライフスタイルの変化などが自社に与える影響を整理する手法です。公的機関の統計データなども活用し、客観的な視点で分析することが重要です。 5. 内部環境分析(自社の強み・弱み) 自社の持つ技術・人材・資金・ブランド力といった経営資源を客観的に評価し、競争上の「強み(Strength)」と「弱み(Weakness)」を把握します。 これは、自社でコントロール可能な内部の要因を分析する作業です。 顧客アンケートの結果や、財務諸表の分析、従業員へのヒアリングなどを通じて、「他社に負けない独自の技術力」といった強みと、「資金調達力が弱い」といった弱みをリストアップします。 弱みを悲観的に捉えるのではなく、克服すべき課題として正直に認識することが、実現可能な計画を立てる上で不可欠です。 6. SWOTクロス分析と経営戦略(分析から戦略を導き出す) 外部環境と内部環境の分析結果を掛け合わせる「クロスSWOT分析」を通じて、自社の強みを活かして機会を掴むための具体的な経営戦略を導き出します。 ここまでの分析を具体的な行動指針へと昇華させる、計画策定の心臓部です。 強み × 機会(積極化戦略) 強み × 脅威(差別化戦略) 弱み × 機会(改善・挽回戦略) 弱み × 脅威(防衛・撤退戦略) 例えば、高い技術力(強み)を持つ企業が、市場拡大(機会)という追い風を受け、「新製品開発に積極的に投資する」といった戦略を立てることができます。 7. 個別戦略(マーケティング・販売戦略) 経営戦略を絵に描いた餅で終わらせないために、マーケティング、販売、開発といった機能ごとに具体的な戦術を策定します。 全社的な経営戦略が「方針」であるならば、個別戦略はそれを実行するための「方法」です。例えば、「若年層の新規顧客獲得」という経営戦略に基づき、マーケティング戦略として「SNS広告の強化」、販売戦略として「学割キャンペーンの実施」などを具体的に定めます。 製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)を考える「4P分析」などのフレームワークを活用すると、抜け漏れなく戦略を整理できます。 8. 行動計画(誰が・いつまでに・何をするか) 戦略を具体的な実行に移すため、「誰が」「いつまでに」「何を」行うのかをタスクレベルまで落とし込んだ詳細な行動計画を作成します。 ここで重要になるのが5W1Hの視点です。例えば、「新商品のWebサイト制作」というタスクに対し、「マーケティング部のAさんが(誰が)」「来年3月末までに(いつまでに)」「商品紹介ページのコンテンツを作成し、デザインをBさんに依頼する(何を)」といったレベルまで具体化します。 ガントチャートなどのツールを使い、各タスクの担当者と期限を一覧化することで、進捗管理が容易になり、計画の実行性が格段に高まります。 9. 数値計画・財務計画(最も重要な定量目標) これまでの戦略や行動計画が、絵に描いた餅で終わらないように、具体的な数値に落とし込み、事業の実現可能性と収益性を客観的に証明するのが数値計画・財務計画です。 具体的には、以下の5つの計画を作成します。 9-1. 売上計画 9-2. 人員・人件費計画 9-3. 設備投資計画 9-4. 損益計算書(P/L)計画 9-5. 資金繰り表(キャッシュフロー計算書) それぞれ、作成のポイントを解説します。 9-1. 売上計画の立て方 売上計画は、「客単価 × 顧客数」といった基本的な式をベースに、事業の特性に応じて分解して積み上げて作成します。 例えば、小売店であれば「1日の来客数 × 購入率 × 客単価 × 営業日数」で計算できます。商品数が多い場合は「商品カテゴリごとの平均単価 × 販売数」で算出することもあるでしょう。 単に前年比で目標を立てるのではなく、「新規顧客を〇人増やす」「リピート率を〇%向上させる」といった具体的な行動計画と連動させることが重要です。これにより、計画の精度と説得力が格段に高まります。 9-2. 人員計画・人件費計画の立て方 人員・人件費計画は、事業計画を遂行するために「どのような人材が」「何人必要なのか」を明らかにし、それにかかるコストを算出するものです。 まずは現状の人員構成と総人件費を正確に把握します。その上で、売上計画の達成に必要な営業担当者や、新規事業に必要な開発者などを部署ごと・役職ごとに洗い出し、採用や育成の計画を立てましょう。 人件費は、給与だけでなく社会保険料や福利厚生費なども含めて試算することが重要です。ここを漏れなく計算することで、より実態に近い費用計画を立てられます。 9-3. 設備投資計画の立て方 設備投資計画とは、事業の成長や生産性向上のために必要な設備投資について、その内容、金額、時期を具体的に定めるものです。 新規出店のための店舗改装費、生産能力向上のための機械導入、業務効率化のためのシステム開発などがこれにあたります。 投資の必要性を明確にした上で、「その投資によってどれくらいの収益が見込めるか(投資利益率)」や「何年で元が取れるか(回収期間)」といった指標を用いて、投資の妥当性を客観的に示すことが求められます。 9-4. 損益計算書(P/L)計画の作り方 損益計算書(P/L)計画は、売上計画や各種費用計画を統合し、最終的に会社にどれくらいの利益が残るのかを示すものです。 売上高から始まり、売上総利益、営業利益、経常利益、そして税引後当期純利益までを、月次および年次で予測します。 金融機関などは特に、計画に描かれた利益が着実に生み出されるかを見ています。楽観的・悲観的ないくつかのシナリオを用意しておくと、事業のリスクを多角的に検討している証となり、より説得力が増すでしょう。 9-5. 資金繰り表(キャッシュフロー計算書)の作り方 利益が出ていても手元に現金がなければ会社は立ち行かなくなるため、現金の出入りを正確に予測する資金繰り表(キャッシュフロー計算書)の作成は不可欠です。 キャッシュフローは、本業の儲けを示す「営業活動」、設備投資などによる「投資活動」、借入や返済による「財務活動」の3つに区分して現金の増減を把握します。 これにより、いつ資金が不足しそうかを事前に察知でき、余裕を持った資金調達の準備を進めることができます。黒字倒産のリスクを回避するためにも、極めて重要な計画です。 10. エグゼクティブサマリー(要約) エグゼクティブサマリーは、経営計画書全体の要点を1〜2ページ程度に凝縮したもので、多忙な経営者や投資家が最初に目を通す最も重要な部分です。 この計画を通じて「何を解決し(課題)」「どのように実現し(解決策)」「どのような成果が見込めるのか(期待される結果)」を簡潔かつ魅力的に伝える必要があります。 事業のビジョン、市場機会、競争優位性、数値目標のハイライト、必要な資金額などを盛り込み、読み手が詳細を読み進めたくなるような、いわば「予告編」の役割を果たします。 💬 ひとことポイント計画書のステップは、会社の現状を健康診断し、未来の処方箋を書くプロセスです。特に、SWOT分析から具体的な行動計画への落とし込みが、戦略の成否を分けます。 説得力を3倍高める!経営計画書作成で押さえるべき4つのコツ せっかく時間をかけて作成する経営計画書。その説得力を飛躍的に高め、読み手の心を動かすためには、押さえるべきいくつかのコツがあります。 重要なポイントは以下の4つです。 客観的なデータと根拠を示す 5W2Hを意識して具体的に記述する 実現可能な計画を立てる 第三者(専門家)のレビューを受ける これらを意識するだけで、計画書は単なる書類から、事業を成功に導く強力な武器へと変わります。 1. 客観的なデータと根拠を示す 経営計画書に記載する市場予測や売上目標は、希望的観測ではなく、客観的なデータや事実に基づいてその根拠を明確に示す必要があります。 なぜその市場が成長すると言えるのか、なぜその売上目標が達成可能なのかについて、公的機関が発表している統計データや信頼できる調査会社のレポートなどを引用して説明します。 例えば、「当社のターゲット市場は今後5年で10%成長する見込み」と記述するなら、その根拠として「〇〇総合研究所の市場動向調査(2025年版)」といった出典を明記しましょう。 2. 5W2Hを意識して具体的に記述する 行動計画や戦略を記述する際は、5W2Hを意識することで、内容が具体的かつ明確になります。 5W2Hとは、いつ(When)・どこで(Where)・誰が(Who)・何を(What)・なぜ(Why)・どのように(How)・いくらで(How much)を指すフレームワークです。 「売上を拡大する」といった曖昧な表現ではなく、「来年4月から(When)、関東エリアの(Where)、営業部のAチームが(Who)、新商品のBを(What)販売する」といったレベルまで具体的に落とし込みます。これにより、誰が見ても行動すべき内容が一目瞭然となり、計画の実行性が担保されます。 3. 実現可能な計画を立てる 経営計画は、夢を語るだけでなく、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ)を踏まえた上で、実現可能なものでなければなりません。 高すぎる目標や、現状とかけ離れた計画は、かえって社内外からの信頼を損なう原因となります。売上計画を立てる際には、過去の実績や現在の営業リソースを考慮し、少し挑戦的ではあるものの、現実的に達成可能なラインを見極めることが重要です。 計画の実現可能性を示すことで、金融機関は「この会社は堅実に事業を運営できる」と判断し、融資の確度が高まります。 4. 第三者(専門家)のレビューを受ける 完成した経営計画書は、必ず自分以外の第三者、特に経営や財務の専門家に見てもらい、客観的なフィードバックを受けることが極めて重要です。 自分では完璧だと思っていても、論理の飛躍や説明不足、矛盾点など、当事者だからこそ気づけない落とし穴は意外と多く存在します。 税理士や中小企業診断士、経営コンサルタントといった専門家は、数多くの企業の計画書を見ており、金融機関がどこを重視するかを熟知しています。彼らからの指摘を反映させることで、計画の精度と説得力は格段に向上します。 💬 ひとことポイント「情熱」を「論理」で補強するのが、説得力ある計画書の秘訣。客観的なデータ(Fact)、具体的な行動(Action)、そして実現可能性(Feasibility)の3点を常に意識しましょう。 作っただけでは無意味!経営計画書を成果につなげる3つの活用法 経営計画書は、作成して棚に飾っておくだけでは一枚の紙に過ぎません。その価値は、組織全体に浸透させ、日々の活動に落とし込み、着実に実行されて初めて生まれます。 計画を「絵に描いた餅」で終わらせないための具体的な活用法は以下の3つです。 経営計画発表会を開催し、全社で目標を共有する 定期的な進捗確認会議(モニタリング)を実施する 人事評価制度と連動させる それぞれ解説していきます。 1. 経営計画発表会を開催し、全社で目標を共有する 経営計画発表会は、社長自らが会社のビジョンや今期の目標を全社員に直接語りかけ、組織全体のベクトルを合わせるための極めて重要なイベントです。 多くの社員は日々の業務に追われ、会社の全体像や向かうべき方向を見失いがちです。発表会という公式な場で、経営者の想いや計画の背景にある熱意を伝えることで、社員は計画を「自分ごと」として捉え、仕事への目的意識が高まります。これにより組織の一体感が醸成され、計画達成に向けた強力な推進力が生まれるのです。 2. 定期的な進捗確認会議(モニタリング)を実施する 計画の実行性を担保し、「絵に描いた餅」で終わらせないためには、定期的な進捗確認会議(モニタリング)を通じて、計画と現実のギャップを埋めていく作業が不可欠です。 多くの計画が失敗する原因は、実行段階での管理不足にあります。月次や四半期ごとに経営会議を開き、売上や利益などの数値目標と実績を比較検証します。 計画通りに進んでいない項目があれば、その原因を深掘りし、すぐに対策を講じることが重要です。このPDCAサイクルを回し続けることで、計画の精度が高まり、目標達成の確度も向上します。 3. 人事評価制度と連動させる 経営計画の目標と個人の評価基準を連動させることで、社員は「会社の目標達成が自らの評価や成長に直結する」と認識し、モチベーションを高く保ちながら業務に取り組むようになります。 会社が目指す方向と、社員一人ひとりの頑張る方向が一致して初めて、組織の力は最大化されます。 例えば、経営計画で掲げた「新規顧客獲得数」や「生産性向上率」といった目標を、部署や個人の評価項目に具体的に落とし込みます。その達成度合いが昇給や賞与に反映される仕組みを構築することで、社員の主体的な行動を促し、組織全体の成長を加速させることができます。 💬 ひとことポイント計画は「作る」ことより「使う」ことが100倍重要です。発表会で「宣言」し、会議で「確認」し、評価で「連動」させる。この3点セットで、計画を会社の血肉に変えましょう。 経営計画書の作成・実行にお悩みならEncoach株式会社へ 経営計画書の作成から実行までには、専門的な知識と多大な労力が求められます。「計画の立て方が分からない」「作ったはいいが、どう活用すればいいのか…」 そんな経営者の悩みに寄り添い、ゴールまで伴走するのが私たちEncoach株式会社です。財務のプロフェッショナルが、あなたの会社の成長を力強くサポートします。 1. 財務のプロが伴走し、実現可能な数値計画の策定を支援します 財務のプロが伴走することで、金融機関も納得する、客観的根拠に基づいた実現可能性の高い数値計画の策定が可能です。 特に専門性が問われるのが数値計画です。知識や経験が不足したまま作成すると、希望的観測に基づいた非現実的な計画になりがちです。 Encoachでは、財務コンサルタントがお客様と伴走し、事業の実態に即した売上計画や資金繰り計画の策定を支援します。これにより、融資審査などの場面でも説得力を持つ、盤石な計画を共に作り上げます。 2. 計画倒れで終わらせない!モニタリング体制の構築までサポートします 私たちは計画を「作って終わり」にせず、月次の予実管理(モニタリング)を通じて計画が着実に実行される体制の構築まで一貫してサポートします。 素晴らしい計画も、実行されなければ意味がありません。Encoachでは、定期的なミーティングを通じて計画の進捗状況を確認し、目標と実績の間に生まれたギャップの原因を分析、軌道修正を支援する「伴走支援」を強みとしています。 このPDCAサイクルを経営に定着させることで、「計画倒れ」を防ぎ、着実な目標達成へと導きます。 3. まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください 「経営の漠然とした悩みを相談できる相手がいない」と感じていませんか?ぜひ一度、当社の無料相談をご活用ください。 初回のヒアリングでは、お客様の現状の課題や財務状況、そして目指す未来の姿を丁寧に伺い、課題解決に向けた具体的なアクションプランをご提案します。相談したからといって、無理に契約を迫ることは一切ありません。 会社の未来をより良くするための第一歩として、まずはお気軽にLINE相談ください。 💬 ひとことポイント一人で悩む時間はもったいない!専門家は、あなたの会社の「外部CFO」です。客観的な視点と専門知識で、計画の質と実行力を劇的に高めるお手伝いをします。 経営計画書テンプレートに関するよくある4つの質問 経営計画書の作成にあたり、多くの方が抱く疑問にお答えします。 Q1. テンプレートは無料で使えますか? はい、この記事で提供しているEncoach監修のテンプレートをはじめ、多くの高品質なテンプレートが無料で利用可能です。 ExcelやGoogleスプレッドシート形式で提供されているものが多く、自社の状況に合わせてカスタマイズして活用できます。無料であっても、金融機関の融資審査で求められる項目を網羅した実用的なものが数多く存在します。 Q2. トヨタのような大企業の経営計画書は参考になりますか? 中小企業がそのまま真似するのは困難ですが、考え方や構成を学ぶ上で非常に参考になります。 大企業の経営計画は、長期的な視点でのビジョンの描き方、事業ポートフォリオ戦略、グローバル市場への対応など、学ぶべき点が多くあります。それらのエッセンスを抽出し、自社の規模や事業フェーズに合わせて応用することが、計画の質を高める上で有効です。 Q3. 個人事業主でも経営計画書は必要ですか? 法的な作成義務はありませんが、作成することを強く推奨します。 経営計画書を作成する過程で、事業の強みや課題、将来の方向性が明確になります。また、日本政策金融公庫からの融資や各種補助金の申請時には、事業計画の提出が必須となるケースがほとんどです。事業を客観的に見つめ直し、成長の道筋を描くために、ぜひ作成しましょう。 Q4. 経営計画書と事業計画書はどちらを先に作るべきですか? 一般的には、会社の理念や3〜5年後の姿を示す中長期の「経営計画書」を先に作り、それを達成するための単年度の具体的な行動計画である「事業計画書」を次に作成します。 まず会社の進むべき大きな方向性(経営計画)を定め、その目的地に至るための詳細な地図(事業計画)を描くという流れです。これにより、一貫性のあるブレない経営が実現できます。 まとめ 本記事では、経営計画書の重要性から、Encoach代表監修の無料テンプレートを使った具体的な書き方、そして計画を成果につなげるための活用法までを網羅的に解説しました。経営計画書は、会社の未来を左右する設計図です。 経営計画書を成功させる鍵は、客観的なデータに基づいた実現可能な計画を立て、組織全体で共有し、粘り強く実行し続けることにあります。 この記事とテンプレートが、あなたの会社の成長を加速させる一助となれば幸いです。計画策定や実行の過程で悩みが生じた際は、一人で抱え込まず、ぜひEncoachの無料相談をご活用ください。財務のプロが、あなたの会社の理想の未来を実現するために伴走します。 -
営業利益・経常利益・純利益の違いとは?5つの利益の関係と経営分析のコツも
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「営業利益と経常利益、純利益って、言葉は聞くけど違いがよくわからない…」「決算書を見ても、結局どの数字が一番重要なの?」 この記事では、会社の成績表である損益計算書に登場する「営業利益」「経常利益」「純利益」という3つの利益の違いと関係性を、プロの財務コンサルタントが初心者にもわかりやすく解説します。 この記事を読めば、それぞれの利益が持つ意味を完全に理解し、経営者・投資家・銀行といった異なる立場から、会社の本当の実力を見抜くための分析スキルが身につきます。 まずは結論!営業利益・経常利益・純利益の違いが一目でわかる比較表 企業の経営状況を読み解く上で欠かせない「営業利益」「経常利益」「純利益」。これら3つの利益の違いを理解することが、財務分析の第一歩です。 それぞれの利益が何を示しているのか、以下の表でその定義、特徴、計算式を確認しましょう。 利益の種類定義特徴計算式営業利益売上総利益から販売費・一般管理費を差し引いた利益本業による稼ぐ力を示す指標です。広告宣伝費や人件費など、事業運営に必要なコストを差し引いた利益を指します。営業利益 = 売上総利益 – 販売費および一般管理費経常利益営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いた利益本業以外の財務活動なども含めた、会社の平常時における総合的な収益力を示します。例えば、受取利息や支払利息などがこれに含まれます。経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用純利益税引前当期純利益から法人税などを差し引いた最終的な利益一時的な損益や税金もすべて反映した、会社が最終的に手元に残せる利益です。株主への配当や将来への投資の源泉となります。当期純利益 = 税引前当期純利益 – 法人税等 会社の成績表!損益計算書(P/L)における5つの利益の流れ 会社の経営成績を示す「損益計算書」には、実は5つの利益が登場します。 利益は、売上から費用を差し引いていく過程で計算され、この流れを理解することが会社の儲けの構造を多角的に分析するカギとなります。 具体的には、利益は「売上総利益」→「営業利益」→「経常利益」→「税引前当期純利益」→「当期純利益」の順番で計算されます。 この流れを理解することで、会社が「何で」「どれくらい」儲けたのかを明らかにできるのです。 損益計算書に登場する5つの利益は以下の通りです。 すべての利益の源泉「売上総利益(粗利)」 本業の稼ぐ力を示す「営業利益」 会社の実力を示す「経常利益」 税金計算の元になる「税引前当期純利益」 最終的な会社の手残り「当期純利益(純利益)」 それぞれ詳しく見ていきましょう。 1. すべての利益の源泉「売上総利益(粗利)」 売上総利益は「粗利(あらり)」とも呼ばれ、事業の基本的な収益力を示す最も源泉となる利益です。 これは、商品の販売やサービスの提供によって得られた「売上高」から、その商品を作るためや仕入れるために直接かかった費用である「売上原価」を差し引いて計算されます。 例えば、80円で仕入れた商品を100円で販売した場合、売上総利益は20円です。この利益は、提供する商品やサービスの付加価値そのものを表しているため、すべての利益の源泉と言える重要な指標です。 2. 本業の稼ぐ力を示す「営業利益」 営業利益とは、会社が「本業」でどれだけ稼いだかを示す利益指標です。 先ほどの売上総利益から、商品を販売するためや会社を運営するためにかかった経費である「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引くことで算出されます。 販管費には、営業担当者の給料や広告宣伝費、オフィスの家賃などが含まれます。営業利益を見ることで、その企業が本業のビジネスでしっかりと利益を出せているかという、事業そのものの収益性がわかります。 3. 会社の実力を示す「経常利益」 経常利益は、会社の本業の儲け(営業利益)に、本業以外で経常的に発生する収益と費用を加減した利益です。 これにより、財務活動なども含めた会社全体の平常時の収益力が明らかになります。 例えば、銀行預金の受取利息(営業外収益)や借入金の支払利息(営業外費用)などがこれにあたります。本業が好調でも、多額の借入金があり支払利息が大きいと経常利益は圧迫されます。そのため、金融機関は融資の際にこの経常利益を重視する傾向があります。 4. 税金計算の元になる「税引前当期純利益」 税引前当期純利益は、その名の通り、税金を支払う前の最終的な利益額を示す指標です。 これは、経常利益に対して、その期にだけ発生した特別な利益(特別利益)や損失(特別損失)を加減して計算されます。 特別利益には固定資産の売却益などが、特別損失には災害による損失などが該当します。税引前当期純利益は、法人税などの税額を計算する際の基礎となる数字であり、企業のその期のすべての活動を含んだ利益と評価できます。 5. 最終的な会社の手残り「当期純利益(純利益)」 当期純利益(または純利益)は、税引前当期純利益から法人税などの各種税金を差し引いて計算される、会計期間における最終的な手残り利益です。 これは、一年間の企業活動の最終的な成果であり、株主への配当金の原資となったり、将来の成長のための内部留保として会社に蓄えられたりします。 当期純利益こそが、一年間の経営活動の末に会社の手元に最終的にいくら残ったのかを示す、まさに会社の成績表といえるでしょう。 💬 ひとことポイント利益は5段階で計算される!どの段階で利益が減っているかを見るのが、会社分析の第一歩です。例えば、営業利益が出ていないなら本業に、経常利益が低いなら財務活動に課題があるかもしれません。 【シーン別解説】営業利益・経常利益・純利益、結局どれが一番重要なの? 営業利益、経常利益、純利益は、それぞれ異なる企業の側面を映し出すため、一概に「これが一番重要」とは言えません。 重要なのは、あなたが「誰の立場で」「何を知りたいか」によって、注目すべき利益を使い分けることです。 ここでは、経営者、投資家、銀行という3つの異なる視点から、どの利益がなぜ重要なのかを解説します。 立場ごとに重視する利益は以下の通りです。 経営者が重視すべきは「営業利益」と「経常利益」 投資家が注目するのは「純利益」と「営業利益」 銀行(融資担当者)が見ているのは「経常利益」 それぞれ解説していきます。 1. 経営者が重視すべきは「営業利益」と「経常利益」 経営者は日々の経営判断や事業戦略を立てる上で、本業の稼ぐ力を示す「営業利益」と、会社全体の経常的な収益力を示す「経常利益」の両方を重視すべきです。 なぜなら、営業利益は主力事業が健全に成長しているかを示す直接的な指標だからです。この利益が伸びていなければ事業の根幹が揺らいでいるサインと言えます。 一方、経常利益は借入金の利息負担や資産運用の成果といった財務活動も反映するため、会社全体の資金繰りや財務体質の健全性も併せて確認できます。 2. 投資家が注目するのは「純利益」と「営業利益」 投資家は、投資先の将来性や株主への還元力を評価するために、最終的な儲けである「純利益」と、本業の収益性を示す「営業利益」に注目します。 その理由は、純利益は株主への配当金の原資や、企業の再投資に回される内部留保の源泉となり、企業の成長ポテンシャルに直結するからです。 一方で、純利益は不動産の売却といった一時的な要因に左右されることがあるため、持続的な収益力を見極めるには、本業でどれだけ稼いでいるかを示す営業利益の確認が不可欠です。 3. 銀行(融資担当者)が見ているのは「経常利益」 銀行などの金融機関が融資審査を行う際に最も重視するのは「経常利益」です。 なぜなら、銀行が融資で最も知りたいのは「貸したお金を利息も含めて、継続的に返済してくれる能力があるか」であり、その返済原資となるのが企業の経常的な収益力、すなわち経常利益だからです。 純利益は、災害による損失などで一時的に赤字になることがありますが、経常利益が安定して黒字であれば、銀行は「返済能力は十分にある」と判断しやすくなります。 💬 ひとことポイント見る人の立場で重要度が変わる!自分がどの視点で会社を見たいのかを明確にすることが大切です。経営者なら事業の足腰、投資家なら成長性、銀行なら返済能力、というように目的意識を持って決算書を見ましょう。 3つの利益でここまで分かる!会社の健康診断を行う4つのケーススタディ 損益計算書に並ぶ3つの主要な利益(営業利益・経常利益・純利益)の関係性を読み解くことで、企業の経営状態をより深く、多角的に分析できます。 まるで健康診断のように、数字の組み合わせから企業の隠れた課題や強みが見えてくるのです。 ここでは、特に注意すべき4つのケーススタディを通して、具体的な分析方法を解説します。 注目すべき4つのケースは以下の通りです。 【ケース1】営業利益は黒字なのに経常利益が赤字の会社 【ケース2】経常利益は黒字なのに純利益が赤字の会社 【ケース3】営業利益と経常利益の差が異常に大きい会社 【ケース4】利益は出ているのに現金がない(黒字倒産)の危険性 1.【ケース1】営業利益は黒字なのに経常利益が赤字の会社 この状況は、本業ではしっかり利益を出せているものの、借入金の支払利息など、財務活動が経営全体の足を引っ張っている危険な状態を示唆しています。 本業の儲けである営業利益から、支払利息などの営業外費用を差し引いたものが経常利益です。 そのため、営業利益が黒字でも、それを上回る営業外費用(特に支払利息や為替差損など)が発生していると、経常利益は赤字になってしまいます。事業そのものに問題はなくとも、過大な借入金が収益を圧迫しているため、早急な財務体質の改善が求められます。 2.【ケース2】経常利益は黒字なのに純利益が赤字の会社 このケースは、会社の通常の事業活動は好調であるものの、その期に限定された突発的な損失(特別損失)によって、最終的な利益が赤字になってしまった状態を表します。 経常利益に、固定資産の売却損益や災害による損失といった一時的な損益(特別損益)を加減し、税金を差し引いたものが最終的な純利益です。 そのため、経常利益が黒字でも、それを上回る巨額の特別損失が発生すれば、純利益は赤字になります。この場合は一過性の損失が原因である可能性が高いため、過度に悲観する必要はありません。むしろ、経常利益が黒字である点を評価し、来期以降のV字回復を期待できるケースと言えるでしょう。 3.【ケース3】営業利益と経常利益の差が異常に大きい会社 営業利益と経常利益の差額は、その会社の財務活動の実態を映し出します。この差が異常に大きい場合、本業以外の活動が経営に与える影響が極めて大きいことを意味しており、その内容を慎重に分析する必要があります。 例えば、経常利益が営業利益を大幅に上回っている場合、本業の儲け以上に、株式の配当金や不動産賃料収入といった「財テク」による収益が大きいことを示します。 一見すると好ましい状況に見えますが、本業の収益力が低下しているのを財務収益で補っている可能性も考えられ、注意が必要です。 4.【ケース4】利益は出ているのに現金がない(黒字倒産)の危険性 黒字倒産とは、損益計算書上では利益(黒字)が出ているにもかかわらず、支払いに必要な現金が不足し、会社が倒産してしまう状況を指します。 この最大の原因は、会計上の「利益」と手元にある「現金(キャッシュ)」のズレにあります。日本の企業間取引では、商品を販売してもすぐに現金が入金されるとは限らず、「売掛金」として後日入金されるのが一般的です。 この売掛金は会計上、売上として利益に計上されますが、手元に現金はありません。そのため、利益の額だけを見て安心するのではなく、現金の動きを示すキャッシュフローを常に監視することが、企業の生死を分けるのです。 💬 ひとことポイント利益の「差額」に注目!「営業利益と経常利益の差」は財務活動の状況、「経常利益と純利益の差」は一時的な損益の大きさを表します。この差額を分析することで、会社の隠れたストーリーが読めてきます。 財務分析をさらに深めるための3つの重要経営指標 営業利益や経常利益といった利益の「額」を見るだけでは、企業の本当の実力はわかりません。 売上に対してどれだけ効率的に利益を生み出せているかという「率」で見ることで、企業の収益性や効率性を客観的に評価できます。 ここでは、財務分析をさらに深めるために不可欠な3つの重要指標を解説します。 分析に不可欠な3つの指標は以下の通りです。 本業の収益性がわかる「売上高営業利益率」 会社の総合的な稼ぐ力がわかる「売上高経常利益率」 資本の効率性がわかる「自己資本利益率(ROE)」 1. 本業の収益性がわかる「売上高営業利益率」 売上高営業利益率とは、売上高に対して本業の儲けである「営業利益」がどれくらいの割合を占めるかを示す指標で、企業の「本業における稼ぐ力」を直接的に測ることができます。 計算式は「営業利益 ÷ 売上高 × 100」で、この数値が高いほど、本業の収益性が高く、競争力のある事業を行っていると判断できます。 この指標を同業他社と比較したり、時系列で推移を見たりすることで、自社の事業の強みや課題を浮き彫りにすることが可能です。 2. 会社の総合的な稼ぐ力がわかる「売上高経常利益率」 売上高経常利益率とは、売上高に対する「経常利益」の割合を示す指標です。 本業の収益力に加え、財務活動の巧拙も含めた「会社全体の総合的な稼ぐ力」を評価することができます。計算式は「経常利益 ÷ 売上高 × 100」となります。 例えば、売上高営業利益率は高いのに、売上高経常利益率が低い場合、支払利息の負担が重いなど、財務体質に課題がある可能性が示唆されます。この指標を業界平均と比較することも有効です。 3. 資本の効率性がわかる「自己資本利益率(ROE)」 自己資本利益率(ROE: Return On Equity)とは、株主が出資したお金(自己資本)を使って、企業がどれだけ効率的に利益を生み出したかを示す指標です。 計算式は「当期純利益 ÷ 自己資本 × 100」で、この数値が高いほど、株主の資本を有効活用して高いリターンを生み出している「稼ぐ効率の良い会社」と評価されます。 ROEは、特に投資家が企業の収益性と成長性を判断する上で最も重視する指標の一つです。一般的にROEが10%を超えると優良企業の一つの目安とされます。 💬 ひとことポイント「額」だけでなく「率」で見よう!率は、会社の規模に関係なく収益性を客観的に比較できる便利なモノサシです。同業他社や過去の自社と比較することで、会社の現在地がより明確になります。 営業利益・経常利益・純利益に関するよくある5つの質問 ここでは、営業利益、経常利益、純利益に関して、多くの人が抱く疑問にQ&A形式でお答えします。 これらのポイントを押さえることで、財務諸表への理解がさらに深まります。 Q1. 人件費はどの利益の計算に含まれますか? A. 人件費は、本業の儲けを示す「営業利益」を算出する過程で、費用として差し引かれます。 具体的には、従業員の給与や賞与といった人件費は、その役割に応じて「売上原価」(例:工場の製造スタッフ)または「販売費及び一般管理費」(例:営業担当者、本社スタッフ)に含まれます。 したがって、人件費は営業利益の額を直接左右し、その後の経常利益や純利益の計算にも影響を与える重要なコストです。 Q2. 減価償却費はどこに影響しますか? A. 減価償却費は、人件費と同様に「営業利益」の計算に影響します。 減価償却費とは、工場設備や社用車といった高額な固定資産の購入代金を、法律で定められた使用可能な期間(耐用年数)にわたって分割し、毎年少しずつ費用として計上する会計処理です。 この費用は「売上原価」や「販売費及び一般管理費」に含まれるため、営業利益を計算する際に差し引かれます。実際に現金の支出を伴わない費用であるため、利益を調整し節税効果がある一方で、キャッシュフローの計算では利益に足し戻される特徴があります。 Q3. 純利益が赤字だとどうなりますか? A. 純利益が赤字(当期純損失)になると、企業の信用力が低下し、資金調達が難しくなるなど、経営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。 金融機関は融資の際に企業の返済能力を厳しく審査するため、最終利益が赤字の会社は「経営がうまくいっていない」と見なされ、新規の借入や融資条件の維持が困難になることがあります。 また、赤字が続くと内部留保が取り崩され、運転資金の不足や倒産のリスクも高まります。ただし、赤字の原因が一時的な特別損失による場合は、経常利益が黒字であれば過度に悲観する必要はありません。 Q4. 個人事業主の場合も考え方は同じですか? A. はい、儲けを計算する基本的な考え方は同じですが、会計上の用語が一部異なります。 個人事業主の場合、法人の利益に相当するものは「所得」と呼ばれます。 具体的には、1年間の総収入から必要経費を差し引いた「事業所得」が、法人の「営業利益」に近い概念となります。法人のように複雑な利益計算はありませんが、収入から経費を引いて儲けを把握するという本質は同じです。 Q5. 英語ではそれぞれ何と言いますか? A. グローバルなビジネスシーンや海外企業の決算書では、利益は以下のように英語で表記されます。 日本語英語売上高Sales / Net Sales売上総利益Gross Profit営業利益Operating Income / Operating Profit経常利益Ordinary Income / Recurring Profit当期純利益Net Income / Net Profit 💬 ひとことポイント利益と現金は別物!特に減価償却費は現金の支出を伴わない費用です。決算書上の利益だけでなく、キャッシュフロー計算書で現金の動きも必ず確認しましょう。 まとめ:3つの利益の違いを理解し、会社の本当の実力を見抜こう 今回は、多くのビジネスパーソンが混同しがちな「営業利益」「経常利益」「純利益」という3つの利益の違いと、その関係性について詳しく解説しました。 営業利益: 本業でどれだけ稼いだかを示す「本業の収益力」 経常利益: 財務活動なども含めた「会社全体の総合的な収益力」 純利益: すべての活動の結果、最終的に会社に残った「本当の成績」 重要なのは、どれか一つだけを見るのではなく、それぞれの利益が持つ意味を理解し、その差額から企業の経営状態を多角的に読み解くことです。 この記事を通して、損益計算書の数字の裏側にある企業のストーリーを読み解く楽しさを感じていただけたなら幸いです。もし、より深い分析や具体的な経営改善でお悩みの場合は、ぜひ一度Encoachの無料相談をご活用ください。 -
経常利益と人件費の関係とは?計算方法から適正比率、改善方法を解説
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「会社の経常利益を伸ばしたいが、人件費はどのくらいが適正なのだろうか」「コストと捉えがちな人件費と利益の関係性が知りたい」そんなお悩みはありませんか。 この記事では、経常利益と人件費の基本的な関係性から、自社の状況を客観的に分析するための4つの重要指標、さらには利益を最大化するための5つの具体策までを専門家が分かりやすく解説します。 この記事を読めば、人件費を未来への投資として捉え、持続可能な利益体質を築くための具体的な方法がわかります。 経営者が知るべき経常利益と人件費の3つの基本 企業の健全な成長を目指す上で、利益とコストの関係を正しく理解することは不可欠です。 特に、会社の総合的な収益力を示す「経常利益」と、経営の根幹をなす「人件費」は、常にセットで考えなければならない重要な経営指標です。ここでは、これら2つの指標の基本的な関係性について、3つのポイントから解説します。 1. 経常利益とは?会社の「総合的な収益力」を示す最重要指標 経常利益とは、会社が毎年どれくらい安定して稼ぐ力があるかを示す「総合的な収益力」の指標です。 本業の儲けである「営業利益」に、本業以外で得た収益(営業外収益)と費用(営業外費用)を加減して算出します。 例えば、製造業の会社が、持っている不動産の家賃収入(営業外収益)を得たり、銀行への借入金の利息(営業外費用)を支払ったりした場合、それらを営業利益と合算したものが経常利益となります。 このように、経常利益は一時的な大きな利益や損失を含まないため、「会社の平常時における真の実力」を表す指標として、銀行の融資審査や投資家が企業価値を判断する際に特に重視されるのです。 2. 人件費は経常利益の計算に含まれる?損益計算書(P/L)の位置付けで解説 結論として、人件費は経常利益を計算するより手前の、「営業利益」を算出する段階で費用として計上されます。 会社の成績表である「損益計算書(P/L)」において、人件費は「販売費及び一般管理費(販管費)」に含まれるのが一般的です。 損益計算書での利益の計算プロセスは、以下のようになります。 売上総利益 = 売上高 – 売上原価 営業利益 = 売上総利益 – 販売費及び一般管理費(←ここに人件費が含まれる) 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 つまり、人件費は本業の儲けである営業利益に直接影響し、その結果が経常利益の金額を左右するため、コントロールが非常に重要な費用項目といえます。 3.【図解】混同しやすい4つの利益との違い(売上総利益・営業利益・税引前当期純利益・当期純利益) 損益計算書には経常利益のほかにも複数の利益が登場し、それぞれ異なる意味を持ちます。これらの違いを正しく理解することで、自社の収益構造を多角的に分析できます。 利益の種類計算式何を示す利益か売上総利益売上高 – 売上原価商品やサービスの基本的な儲け(粗利)営業利益売上総利益 – 販管費本業での稼ぐ力経常利益営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用会社全体の総合的な収益力税引前当期純利益経常利益 + 特別利益 – 特別損失税金を支払う前の、その期に発生した全ての事象を含んだ利益当期純利益税引前当期純利益 – 法人税等最終的に会社に残る利益 例えば、長年使用してきた工場を売却して得た一時的な利益(特別利益)は、経常利益には含まれません。 経常利益は、このような一時的な損益を除いた「会社の継続的な実力」を測る上で最適な指標と言えるでしょう。 💬 ひとことポイント利益は5人兄弟のようなもの!売上総利益(長男)、営業利益(次男)、経常利益(三男)、税引前利益(四男)、当期純利益(五男)。それぞれの役割を理解すれば、会社の成績がより深く読めるようになります。 自社の人件費は適正?経営状況を可視化する4つの重要指標 自社の人件費が本当に適正なのか、客観的に評価することが重要です。ここでは、経営状況を数字で見える化し、人件費の妥当性を判断するための4つの重要指標を紹介します。 1.【労働分配率】会社の付加価値に対して人件費は適正か?業種別の目安も紹介 労働分配率とは、会社が生み出した儲け(付加価値)のうち、どれだけを人件費として従業員に還元したかを示す割合です。この比率が高いほど、儲けの多くが人件費に充てられていることを意味します。 付加価値とは、おおむね売上総利益(売上高-売上原価)と捉えると分かりやすいでしょう。 計算式は「労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100」です。自社の労働分配率を業種別の平均値と比較することで、人件費配分の客観的な判断が可能になります。例えば、飲食サービス業は78.8%ですが製造業は54.5%と、業種で大きく水準が異なります(2022年度調査)。 出典:2022年企業活動基本調査確報-2021年度実績-|経済産業省 2.【売上高人件費率】売上に対して人件費をかけすぎていないか? 売上高人件費率とは、売上高に占める人件費の割合を示し、企業の生産性を測る指標の一つです。この比率が低いほど、少ない人件費で効率よく売上を上げている、つまり収益性が高いと判断できます。 計算式は「売上高人件費率(%) = 人件費 ÷ 売上高 × 100」となります。 ただし、この指標は業種による差が大きいため注意が必要です。例えば、中小企業庁「中小企業実態基本調査(令和5年確報・2022年度実績)」によると、情報通信業は19.3%であるのに対し、卸売業は5.9%と、ビジネスモデルの違いが大きく反映されています。自社の数値を評価する際は、こうした公的な業種別データを参考にすることが重要です。 出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査(令和5年確報・2022年度実績)」 3.【一人当たり経常利益】従業員一人がどれだけ効率的に利益を生んでいるか? 一人当たり経常利益とは、従業員一人がどれだけの経常利益を生み出しているかを示す指標で、労働生産性を測るために用いられます。 計算式は「一人当たり経常利益 = 経常利益 ÷ 従業員数」です。 この数値が高いほど、従業員一人ひとりが効率的に利益創出に貢献していることを示します。この指標を時系列で比較することで、生産性向上のための施策が実際に利益に結びついているかどうかの効果測定にも活用可能です。企業の成長のためには、この指標を継続的に高めていく意識が重要です。 4.【売上高経常利益率】本業と本業以外を合わせた会社の収益性は高いか? 売上高経常利益率とは、売上高に対して経常利益がどれだけ残ったかを示す比率で、企業の総合的な収益性を判断する代表的な指標です。 計算式は「売上高経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 売上高 × 100」となります。 本業の収益性のみを示す営業利益率に対し、この比率は財務活動なども含めた会社全体の収益力を評価できます。比率が高いほど、本業の収益力に加え財務活動もうまくいっている健全な経営状態であると判断できるでしょう。中小企業庁が2024年3月に公表した「令和5年中小企業実態基本調査速報」によると、2022年度の中小企業の売上高経常利益率は平均で4.29%となっています。 出典:令和5年中小企業実態基本調査速報(要旨) 💬 ひとことポイントこれらの指標は単体で見るのではなく、複数組み合わせ、さらに業界平均や過去の自社データと比較することが肝心です。多角的な視点で自社の立ち位置を正確に把握しましょう。 経常利益を最大化する!人件費を最適化する5つの具体策 経常利益を最大化するには、人件費の最適化が不可欠です。しかし、人件費は未来への「投資」でもあります。従業員のやる気を維持しながら利益を出すための、具体的な5つのステップは以下の通りです。 【現状把握】自社の立ち位置を正確に知る 【生産性向上】ITツール導入などで無駄をなくす 【付加価値向上】商品・サービスの価値を高める 【人事評価制度】成果と報酬を連動させる 【採用・人員配置】戦略的な人材活用を行う それぞれ詳しく解説します。 1.【現状把握】まずは自社の各種指標を正確に計算し立ち位置を知る 人件費最適化の第一歩は、自社の現状を客観的な数値で正確に把握することから始まります。 まずは「労働分配率」や「売上高人件費率」などの指標を計算し、業界平均と比較して自社の立ち位置を明確にしましょう。 これらの指標を計算することで、自社が売上や付加価値に対して人件費をかけ過ぎていないか、あるいは適正な範囲にあるのかを客観的に評価できます。この現状把握が、これから進めるべき施策の方向性を定めるための羅針盤となるのです。 2.【生産性向上】ITツール導入や業務フローの見直しで無駄をなくす 従業員一人ひとりの生産性を高めることは、実質的な人件費の最適化に直結します。少ない人数や時間でより多くの成果を生み出す体制を構築することが重要です。 ITツールの導入や業務フローの見直しによって、これまで時間を要していた定型業務や情報共有を効率化し、従業員がより付加価値の高い業務に集中できる環境を整えましょう。 例えば、クラウド型の業務管理システムやコミュニケーションツールを活用することで、書類作成の時間を大幅に削減したり、不要な会議を減らしたりできます。これにより残業時間も削減され、結果として人件費を抑制しながら利益を向上させることが可能です。 3.【付加価値向上】商品・サービスの単価や価値を高め利益の源泉を増やす 人件費を直接削減するのではなく、それを上回る利益を生み出すことも重要なアプローチです。そのためには、事業が生み出す「付加価値」そのものを高める必要があります。 競合他社との差別化を図り、商品・サービスの単価やブランド価値を高めることで、利益の源泉そのものを増やしましょう。 付加価値が高まれば、顧客に選ばれる理由が明確になり、価格競争から脱却して適正な価格設定が可能になります。新商品の開発や既存サービスの品質向上など、自社の強みを活かして付加価値を高める戦略を検討することが、持続的な利益成長につながります。 4.【人事評価制度】成果と報酬を連動させ従業員のモチベーションを高める 従業員の働きが適正に評価され、報酬に反映される仕組みは、生産性向上に不可欠です。公平で透明性の高い人事評価制度は、従業員のエンゲージメントを高めます。 企業の目標達成への貢献度に応じて報酬が決まる、成果と連動した人事評価制度を構築・運用しましょう。 「頑張れば報われる」という実感が得られることで、従業員は自律的に目標達成や自己成長への意欲を高めます。短期的な成果だけでなく、チームへの貢献度といったプロセスも評価に組み込むなど、多角的な視点を持つことが組織全体の健全な成長を促す上で重要です。 5.【採用・人員配置】事業計画に基づいた戦略的な人材活用を行う 事業の成長ステージや戦略に合わせて、必要な人材を確保し、適材適所に配置することは、人件費を「投資」として最大限に活かすための鍵となります。 場当たり的な増員ではなく、中長期的な事業計画に基づいた戦略的な要員計画を立て、採用や人員配置を行いましょう。 経営計画を達成するために、どの部署に、どのようなスキルを持つ人材が、何人必要なのかを明確にすることが重要です。従業員一人ひとりのスキルや適性を見極め、最も能力を発揮できる部署へ配置することで、組織全体のパフォーマンスを最大化し、無駄のない効率的な人員体制を構築できます。 💬 ひとことポイント人件費の最適化は「削減」だけが答えではありません。「生産性向上」や「付加価値向上」といった攻めのアプローチと組み合わせることで、企業の成長と従業員の満足度を両立させましょう。 人件費や利益構造の改善に専門家の視点が必要ならEncoach株式会社へ 人件費の最適化や利益構造の改善は、多くの経営者が直面する根深い課題です。しかし、これらの問題は専門的な知識と客観的な視点を取り入れることで、解決への糸口が見つかります。 ここでは、多くの経営者がなぜ人件費の課題でつまずくのかを解説するとともに、解決策としてEncoach株式会社の財務コンサルティングサービスをご紹介します。 1. なぜ多くの経営者が人件費の課題でつまずくのか? 多くの経営者が人件費の課題でつまずくのは、短期的な視点でコスト削減を急ぎ、人件費を単なる「コスト」としてしか捉えられなくなるからです。 業績が悪化すると、財務諸表の中で大きな割合を占める人件費に真っ先に手をつけてしまいがちです。 しかし、この安易な削減は、従業員のモチベーション低下や優秀な人材の流出を招き、長期的には企業の競争力を削いでしまう危険性をはらんでいます。人件費の裏側には、従業員の生活や会社の未来を支える「人」がいるという視点が欠けてしまうことが、根本的なつまずきの原因です。 2. Encoach株式会社が提供する財務コンサルティングとは Encoach株式会社では、財務の専門家が経営者に伴走し、利益体質な経営を実現するための財務コンサルティングを提供しています。 私たちは、単に数字を分析するだけでなく、経営者が自信を持って事業に集中できる「仕組み」と「環境」を整えることを重視しています。 事業計画書の策定から月次の予実管理、資金繰りのサポートまでを一貫して行い、会社の財務状態を可視化し、本質的な経営課題の解決を支援します。財務知識に自信がない方でも、質の高いPDCAサイクルを回せるようになり、未来への新たなチャレンジを後押しします。 3. まずは無料相談から!貴社の課題をヒアリングします 「自社の人件費は本当に適正なのか」「利益を出すために、何から手をつければいいかわからない」といったお悩みはありませんか。Encoach株式会社では、そのような経営者の皆様に向けて、無料の個別相談会を実施しています。 貴社の現状や課題を丁寧にヒアリングし、専門家の視点から解決の方向性をご提案します。この相談が、貴社の未来をより良くするための第一歩となるはずです。無理な勧誘は一切ありませんので、まずはお気軽にお問い合わせください。 💬 ひとことポイント財務の課題は、社内の人間だけでは客観的な判断が難しいもの。信頼できる外部の専門家をパートナーにすることで、これまで見えなかった課題や新たな可能性が見えてきます。 経常利益と人件費に関するよくある4つの質問 ここでは、経常利益と人件費に関して、経営者や管理職の方からよく寄せられる質問にお答えします。基本的な疑問を解消し、より深く財務を理解するための一助となれば幸いです。 Q1. 営業利益が赤字で経常利益が黒字の場合、どう考えればいいですか? A. 本業では損失が出ていますが、本業以外の収益(営業外収益)でその損失をカバーし、結果的に利益が出ている状態です。 本業の収益力に課題がある一方で、有価証券の売却益や受取配当金といった財務活動がうまくいっているケースが考えられます。ただし、一時的な営業外収益で黒字になっている可能性もあるため、本業の立て直しが急務と判断できます。なぜ営業赤字なのかを分析し、早急に対策を講じる必要があります。 Q2. 営業利益と経常利益、経営においてどちらがより重要ですか? A. どちらも重要ですが、一般的には企業の「本業の稼ぐ力」を直接示す「営業利益」がより重視される傾向にあります。 本業が健全に成長しているかを見るには営業利益を、会社全体の総合的な収益力や財務活動を含めた実力を見るには経常利益を確認するのが適切です。会社の根幹である事業の収益性を評価できるため、金融機関の融資審査などでは特に営業利益が注目されます。 Q3. 役員報酬も損益計算書上では人件費として扱われますか? A. 会計処理上、役員報酬は従業員の給与とは区別され、「役員報酬」という勘定科目で販売費及び一般管理費に計上されるのが一般的です。 広い意味では人件費の一部と捉えられますが、会計・税法上は従業員の給与(人件費)とは明確に異なる扱いを受けます。これは、役員と会社が雇用契約ではなく委任契約に基づいているためです。金融機関などが会社の財務を分析する際は、この役員報酬の額も重要なチェックポイントとなります。 Q4. 人件費を減らさずに経常利益を増やすことは可能ですか? A. はい、可能です。人件費の削減は利益を増やすための一つの手段に過ぎず、安易な削減はかえって経営を悪化させるリスクがあります。 人件費を維持または増やしながら経常利益を増やすには、「売上を増やす」「人件費以外の経費を削減する」「生産性を向上させる」といったアプローチが有効です。具体的には、商品単価を上げる、ITツール導入で業務を効率化し残業代を減らす、付加価値の高い事業に人材を再配置するなどの方法が考えられます。 まとめ: 人件費はコストではなく未来への投資。正しく分析し、利益体質な経営を目指そう 本記事では、経常利益と人件費の関係性から、具体的な分析指標、そして利益を最大化するための最適化ステップまでを解説しました。 経常利益は会社の総合的な収益力を示す重要な指標であり、人件費はその利益を生み出すための源泉です。重要なのは、人件費を単なる「コスト」として捉えるのではなく、企業の未来を創るための「投資」と認識することです。 労働分配率や一人当たり経常利益といった客観的な指標を用いて自社の現状を正しく分析し、生産性向上や付加価値向上といった前向きなアプローチで人件費の最適化を図ることが、持続可能な利益体質の経営を実現する鍵となります。 -
経常利益率の目安は?【2025年最新】業種別・中小企業の平均値を解説
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「自社の経常利益率は、他社と比べて高いのか低いのか?」「業種ごとの経常利益率の目安が知りたい」 そんな経営者のために、本記事では経常利益率の目安を業種別・企業規模別に一覧表で徹底比較します。さらに、基本的な計算方法から具体的な改善策まで、税務・財務の専門家が分かりやすく解説。 この記事を読めば、自社の経営状態を客観的に把握でき、明日からの財務改善に繋がる具体的な一手が見つかります。 まずは結論!経常利益率の業種別・企業規模別の目安が一覧でわかる比較表 企業の総合的な収益力を測る「経常利益率」は、業種や企業規模によって目指すべき水準が大きく異なります。 自社の経営状態を客観的に把握するためには、まず自社の経常利益率を算出し、これらの平均値と比較することが第一歩です。 平均より高ければ経営が順調な可能性があり、低ければ何らかの課題を抱えているかもしれません。 この比較表を参考に自社の現在地を確認し、今後の経営戦略や財務改善に役立てていきましょう。 経常利益率の業種別・企業規模別 目安比較表 業種・分類経常利益率の目安出典全業種 (中小企業)約4.3%中小企業庁 全業種 (大企業)約11.0%日本経済新聞 優良企業の目安10%以上-製造業5.1%中小企業庁 建設業4.71%中小企業庁 IT・情報通信業7.04%中小企業庁 小売業2.53%中小企業庁 運輸業、郵便業3.44%中小企業庁 次の章からは、経常利益率の基本的な意味や計算方法について、さらに詳しく解説します。 💬 ひとことポイントまずは自社の立ち位置確認から!この表はあくまで一般的な目安です。自社の数字と比較し、なぜ差があるのかを考えることが経営改善のスタートになります。 そもそも経常利益率とは?企業の「総合的な収益力」がわかる3つの基本 経常利益率は、会社の「健康状態」を総合的に判断するための重要な指標です。 この指標は、本業の儲けを示す「営業利益」だけでなく、預金の利息や借入金の利息といった財務活動なども含めた、会社全体の平常時の収益力を示します。 そのため、経常利益率を正しく理解し分析することで、より実態に近い経営体力や資金効率を評価できるのです。 この章では、経常利益率の正しい意味、よく似た指標である「営業利益率」との違い、そして誰でも1分でできる計算方法という3つの基本を解説します。これらのポイントを押さえることで、自社の収益構造を正しく理解し、的確な経営判断を下す土台ができます。 1. 経常利益率の正しい意味と経営における重要性 結論として、経常利益率とは、企業の本業の儲けに加えて、財務活動なども含めた「会社全体の平常時の収益力」を示す指標です。 なぜなら、本業の成績を示す営業利益だけでなく、受取利息や支払利息といった「営業外」の損益も反映するため、より実態に近い経営体力を評価できるからです。 例えば、本業が順調で営業利益が多くても、多額の借入金があり支払利息が嵩んでいれば、経常利益率は低くなります。 このように、経常利益率は企業の収益性だけでなく、財務体質の健全性をも映し出す鏡であり、経営分析において極めて重要な役割を果たします。 2. 意外と知らない「営業利益率」との決定的な違いと比較方法 営業利益率と経常利益率は混同されがちですが、その違いを理解することが重要です。 営業利益率が「本業で稼ぐ力」を示すのに対し、経常利益率は「会社全体で経常的に稼ぐ力」を示します。 それぞれの利益は以下のように計算され、その違いが指標の意味の違いに繋がります。 営業利益:売上から売上原価と販管費を差し引いた「本業の利益」 経常利益:営業利益に「営業外収益(受取利息など)」を加え、「営業外費用(支払利息など)」を差し引いた利益 例えば、本業の傍らで行っている資産運用が成功していれば、経常利益率は営業利益率よりも高くなります。この2つの指標を比較することで、本業の収益性に加え、財務活動が経営に与える影響まで分析できるのです。 3. 1分でわかる経常利益率の計算方法 経常利益率は、複雑な知識がなくても簡単な計算式で算出できます。 売上高経常利益率(%)= 経常利益 ÷ 売上高 × 100 この計算式の「経常利益」は、本業の利益である「営業利益」に、受取利息などの「営業外収益」を足し、支払利息などの「営業外費用」を引くことで算出できます。 例えば、売上高が1億円で、最終的な経常利益が400万円だった場合、経常利益率は「400万円 ÷ 1億円 × 100 = 4%」となります。 この計算により、売上に対してどれだけの総合的な利益が残ったのかが一目でわかり、自社の収益性を客観的に評価することが可能です。 💬 ひとことポイント「経常」とは「平常時」のこと。本業の力に加え、資金繰りの上手さ(財務活動)も反映された、会社の総合的な実力値と捉えましょう。 【2025年最新データ】経常利益率の目安を4つの基準で徹底比較 自社の経常利益率が適正な水準にあるかを知ることは、経営改善の第一歩です。 しかし、その目安は企業の状況によって大きく変わります。 ここでは「全業種の平均」「優良企業の基準」「業種別の違い」「中小企業特有の視点」という4つの基準から、自社の立ち位置を客観的に測るための具体的な数値とポイントを解説します。 これらの基準と比較することで、自社の強みや弱みを多角的に把握し、次の戦略へと繋げることが可能になります。 1. 全業種の平均目安は「4〜5%」が一般的 結論として、全業種の経常利益率の平均的な目安は、一般的に4%から5%程度とされています。 これは、中小企業庁が公表する統計データなどでも示される標準的な収益水準であり、多くの企業がこの範囲に収まる傾向にあります。 例えば、売上が1億円の会社であれば、経常利益が400万円から500万円出ている状態が平均的といえるでしょう。 まずはこの数値を基準として、自社の収益性が平均と比べて高いのか、あるいは低いのかを把握することが大切です。 2. 「優良企業」と呼ばれる目安は「10%以上」 一般的に「優良企業」と呼ばれるには、経常利益率10%以上が一つの重要なベンチマークとなります。 なぜなら、10%を超える経常利益率を安定的に維持するには、高い付加価値を持つ商品・サービスの提供や、徹底したコスト管理、優れた財務戦略など、盤石な経営基盤が必要不可欠だからです。 特に、利益率が高いとされるIT業界のトップ企業や、独自の技術力を持つ製造業などでは、20%を超える企業も珍しくありません。 この10%という水準は、単に収益性が高いだけでなく、事業の競争力や持続可能性を示す指標ともいえるでしょう。 3. 【業種別】経常利益率の平均目安(製造業・小売業・IT・建設業など) 経常利益率の平均は、業種ごとのビジネスモデルやコスト構造によって大きく異なります。 自社の収益性を正しく評価するためには、同業種の平均値と比較することが不可欠です。 例えば、多額の設備投資が必要な製造業の平均が3〜5.3%程度であるのに対し、知的労働が中心のIT・情報通信業では7〜10%と比較的高くなる傾向があります。一方で、薄利多売のビジネスモデルである小売業や運送業では、1〜3%が平均的な水準です。 自社が属する業界の平均値をベンチマークとすることで、より精度の高い経営分析が可能になります。 4. 【中小企業】経常利益率の平均目安と見るべきポイント 中小企業の場合、経常利益率の数値だけを見て一喜一憂するのは早計です。 その数値に至った背景や企業の成長ステージもあわせて考慮することが重要です。なぜなら、中小企業は大企業に比べて経営資源が限られており、一時的な投資や外部環境の変化によって利益率が大きく変動しやすいためです。 例えば、事業拡大のために先行投資を行っている成長段階の企業では、一時的に利益率が低くなることがあります。 逆に、利益率が高くても、それが資産売却など一過性の収益によるものであれば、手放しでは喜べません。数字の裏側にあるストーリーを読み解く視点が求められます。 💬 ひとことポイント比較する相手が重要!やみくもに全業種平均と比較するのではなく、まずは自社と同じ業種、同じ企業規模の平均値と比べてみましょう。 自社の健康診断!経常利益率をさらに深掘り分析する2つの視点 経常利益率をただ眺めるだけでは、経営の課題は見えてきません。 本業の儲けを示す「営業利益率」と比較することで、自社の収益構造や財務体質をより深く、立体的に分析できます。 なぜなら、本業の儲け(営業利益)と会社全体の儲け(経常利益)の差を見ることで、財務活動が利益に貢献しているのか、それとも足を引っ張っているのかが明確になるからです。 ここでは、2つの代表的なケースを通して、自社の「健康状態」を診断する方法を解説します。 1. ケース① 経常利益率 > 営業利益率:財務活動が好調な証拠 経常利益率が営業利益率を上回っている場合、それは本業以外の財務活動がうまくいっている好調なサインと読み取れます。 これは、本業で稼いだ利益(営業利益)に加えて、受取配当金や有価証券の売却益といった「営業外収益」が、支払利息などの「営業外費用」を上回っていることを意味します。 例えば、余剰資金を有効活用した資産運用が成功しているケースや、本業に関連する子会社からの配当金が多い場合などがこれにあたります。 本業の力に加えて、資産活用の巧みさが会社全体の収益を押し上げている、健全な状態といえるでしょう。 2. ケース② 経常利益率 < 営業利益率:支払利息など財務体質に課題あり もし経常利益率が営業利益率よりも低いのであれば、財務体質に何らかの課題を抱えている可能性を示唆しています。 本業ではしっかりと利益を出せているにもかかわらず、会社全体の利益が目減りしている状況だからです。 この主な原因として考えられるのが、借入金に対する支払利息の負担です。その他にも、保有している有価証券の評価損などが影響している場合もあります。 本業の収益が、営業外のコストによって圧迫されているこの状態は、資金繰りの悪化にも繋がりかねません。早急に借入金の返済計画を見直すなど、財務体質の改善に着手する必要があるでしょう。 💬 ひとことポイント「経常利益率 ー 営業利益率」で計算してみよう!プラスなら財務が優秀、マイナスなら財務に課題あり、というシンプルな健康診断ができます。 経常利益率が低い…経営をV字回復させる4つの具体的な改善策 経常利益率が低いという現実は、企業の収益構造に何らかの課題が潜んでいるサインです。 しかし、打ち手は一つではありません。「収益性の改善」「コスト削減」「財務改善」という複数の視点からアプローチすることで、経営のV字回復は十分に可能です。 ここでは、明日から着手できる4つの具体的な改善策を、それぞれの専門家が解説します。 【収益性改善】売上総利益(粗利)を改善する 【コスト削減】販売費及び一般管理費(販管費)を削減する 【財務改善】営業外収益を増やす(資産活用など) 【財務改善】営業外費用を減らす(借入金の見直しなど) 1. 【収益性改善】売上総利益(粗利)を改善する まず着手すべきは、事業の根幹である売上総利益(粗利)を改善し、利益の源泉そのものを大きくすることです。 粗利は売上から原価を引いた最も基本的な利益であり、ここの改善が後続するすべての利益指標に好影響を与えるからです。 具体的な方法としては、複数の仕入先と交渉して原材料費を削減する、商品の提供方法を工夫して付加価値を高め価格を引き上げる、といったアプローチが考えられます。 自社の製品やサービスの価値を再定義し、原価と価格の両面から見直すことが、収益性改善の確かな一歩となります。 2. 【コスト削減】販売費及び一般管理費(販管費)を削減する 次に、利益を圧迫する要因となりがちな販売費及び一般管理費(販管費)を削減し、利益を確保できる筋肉質なコスト体質を目指しましょう。 販管費には人件費や広告宣伝費、オフィスの家賃などが含まれ、売上に直接連動しない固定費も多いため、聖域なく見直すことが重要です。 例えば、費用対効果の低い広告を停止する、ペーパーレス化を進めて消耗品費や印刷費を削減する、専門業務をアウトソーシングして人件費を変動費化する、といった施策が有効です。 一つ一つのコストを精査し、無駄をなくす地道な努力が、着実に利益率を向上させます。 3. 【財務改善】営業外収益を増やす(資産活用など) 本業の強化と並行して、活用できていない資産を見直し、営業外収益を増やすことで、会社全体の収益基盤を厚くすることが可能です。 本業の業績に左右されにくい収益源を確保することは、経営の安定化に直結します。 具体的な方法としては、使用していない土地や建物(遊休資産)を売却または賃貸に出す、保有している株式や金融商品を見直してより収益性の高いものに組み替える、といった資産の有効活用が挙げられます。 自社に眠っている資産を洗い出し、新たな収益源に変えられないか検討してみましょう。 4. 【財務改善】営業外費用を減らす(借入金の見直しなど) 最後に、営業外費用の大部分を占める支払利息を削減することは、経常利益率の改善に即効性のある打ち手です。 複数の金融機関に相談し、現在よりも有利な条件で融資を借り換えることで、支払利息という財務コストを直接的に削減できます。 金利の低いローンに借り換える、返済期間を延長して月々の返済負担を軽減するなど、様々な方法が考えられます。 これによりキャッシュフローが改善し、新たな投資や事業拡大への余力も生まれます。定期的な借入状況の見直しは、健全な財務体質を維持するために不可欠です。 💬 ひとことポイント改善策は「利益の分解」で考える!経常利益は「粗利-販管費+営業外収益-営業外費用」です。この4つの要素のどこに問題があり、どこから手をつけるべきか考えましょう。 専門家による経営改善・財務コンサルティングならEncoach株式会社へ 経常利益率の改善をはじめとする経営課題の解決は、時に専門家の客観的な視点と知見を要します。 自社だけで悩みを抱え込まず、外部の力を活用することも、飛躍への近道です。 Encoach株式会社は、経営者の皆様に寄り添い、未来を創る財務戦略のパートナーとなることを目指しています。 1. なぜ自社だけでの経営改善は難しいのか? 自社だけで経営改善を進めようとすると、日々の業務に追われ、客観的な視点を失いがちになるため、根本的な課題解決が難しい場合があります。 内部の人間だけでは、これまでの慣習や人間関係にとらわれ、大胆な改革に踏み切れないことも少なくありません。 また、財務や会計に関する専門知識が不足している場合、どこから手をつけるべきか分からず、時間だけが過ぎてしまうこともあります。 第三者である専門家が加わることで、しがらみのない客観的な立場で課題を抽出し、専門知識に基づいた的確な解決策を実行することが可能になるのです。 2. Encoachが提供する財務コンサルティングサービスのご紹介 Encoach株式会社は、財務の専門家が経営者に伴走し、「未来の数字を創る」ための経営財務コンサルティングを提供しています。 私たちは、過去の数字をまとめるだけの税務顧問とは一線を画し、事業計画や資金繰り表の作成支援を通じて、経営者が数字に基づいた的確な意思決定を下せるようサポートします。 月次の予実管理を徹底し、経営の現状を「見える化」することで、課題を早期に発見し、次の一手を共に考えます。 財務と向き合う仕組みを構築し、経営者が安心して新たな挑戦に集中できる環境を整えることが、私たちの使命です。 3. ご相談から改善実行までの流れとお客様の声 まずはお気軽に無料相談にお申し込みください。経験豊富なコンサルタントが、経営者様の想いやビジョン、そして現在の課題を丁寧にヒアリングします。 その上で、財務データを分析し、各企業様の状況に合わせたオーダーメイドの改善プランをご提案、実行までを伴走支援します。 お客様からは「資金繰りの不安から解放された」「数字の根拠を持って銀行と交渉できるようになった」「専門家が隣にいる安心感で、本業に集中できるようになった」といったお声を多数いただいています。 私たちは、1,000社以上の経営者を支援してきた実績とノウハウで、貴社の持続的な成長を力強く後押しします。 経常利益率に関するよくある4つの質問(Q&A) 経常利益率について、多くの経営者や実務担当者から寄せられる疑問があります。 ここでは、特に質問の多い4つのポイントをQ&A形式で分かりやすく解説します。 これらの知識は、日々の経営判断や分析をより確かなものにするために役立ちます。 1. 経常利益率の業種別ランキングはどこで見られますか? A. 経常利益率の公式な業種別データは、経済産業省の「企業活動基本調査」や中小企業庁の「中小企業実態基本調査」といった公的統計で確認できます。 これらの調査は毎年実施され、ウェブサイト上で結果が公開されているため、信頼性の高い情報源として活用できます。また、民間の調査会社や金融機関、業界団体が独自に調査・分析したレポートを発表している場合もありますので、複数の情報源を比較参照することをお勧めします。 2. 経常利益率が高すぎると何か問題はありますか? A. 基本的に経常利益率が高いこと自体は、収益性が優れている証であり、問題ではありません。しかし、その理由を分析することは重要です。 例えば、固定資産の売却といった一過性の「特別利益」によって利益率が一時的に高まっている場合、翌年度以降は元の水準に戻る可能性が高いです。 また、従業員への還元や未来への投資を過度に抑制した結果として高い利益率が実現している場合は、長期的な成長を阻害するリスクも考慮すべきでしょう。 3. 赤字(経常損失)の場合、経常利益率はどう考えれば良いですか? A. 経常利益が赤字(経常損失)の場合、経常利益率はマイナスの数値となり、これは平常時の事業活動全体でコストを賄いきれていない危険な状態を示します。 早急にその原因を究明し、対策を講じる必要があります。 主な原因としては、本業の不振(営業損失)、借入金利の増大、あるいはその両方が考えられます。まずは営業利益の段階で黒字か赤字かを確認し、問題の所在を特定した上で、売上向上策、コスト削減、財務改善といった抜本的な対策に取り組むべきです。 4. 個人事業主でも経常利益率の考え方は同じですか? A. 個人事業主の場合でも、事業の総合的な収益力を測るという点で、経常利益率の考え方そのものは法人と同様に非常に重要です。 ただし、会計上の扱いや税金の計算方法が法人とは異なります。個人事業主の確定申告における「所得金額」は、法人の利益に近い概念ですが、事業主の給与(生活費)が経費として計上されない点などに違いがあります。 そのため、法人と全く同じ基準で数値を比較するのではなく、過去の自分の事業成績と比較したり、同業の個人事業主の状況を参考にしたりして、経営状態を判断することが現実的です。 まとめ:経常利益率を目安に、データに基づいた強い会社作りを目指そう ここまで見てきたように、経常利益率は企業の「総合的な収益力」と「財務の健全性」を一枚の鏡のように映し出す、極めて重要な経営指標です。 自社の経常利益率を正しく把握し、業種別・企業規模別の平均値と比較することから、データに基づいた客観的な経営改善は始まります。 しかし、単に数字の良し悪しに一喜一憂するだけでは不十分です。大切なのは、その数字の背景にあるストーリーを読み解くこと。営業利益率と比較して財務体質を分析したり、時系列で変化を追いかけたりすることで、自社の強みと弱みがより鮮明になります。 もし経常利益率が低いのであれば、本記事で紹介した「収益性改善」「コスト削減」「財務改善」という4つの具体的な改善策を参考に、できることから着手してみてください。自社だけでの改善が難しいと感じたときは、専門家の客観的な視点を取り入れることも有効な選択肢です。 この記事をきっかけに、一人でも多くの経営者が自社の数字と真摯に向き合い、データに基づいた力強い会社作りへの一歩を踏み出すことを心から願っています。 -
労働分配率とは?計算方法から業種別目安、危険信号まで5つのステップで徹底解説
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「人件費が高すぎて利益が出ない」「従業員への還元が適切かわからない」と悩んでいませんか?労働分配率とは、企業が生み出した付加価値のうち人件費が占める割合を示す重要な経営指標です。この指標を正しく理解することで、人件費の適正性を客観的に判断し、従業員満足度と企業収益のバランスを最適化できます。 本記事では、労働分配率の基本概念から具体的な計算方法、業種別・企業規模別の適正目安、さらに数値の異常から読み取れる経営上のリスクまでを5つのステップで詳しく解説します。 労働分配率を活用した健全な経営により、従業員のモチベーション向上と企業の持続的成長を両立させましょう。 まずは結論!労働分配率の重要ポイントがわかる早見表 労働分配率とは、企業が生み出した付加価値(儲け)のうち、どれだけ人件費として従業員に分配したかを示す割合です。この指標を把握することで、人件費が適正かどうかを客観的に判断し、従業員満足度と企業収益の最適なバランスを見つけられます。 経営者が押さえるべき重要ポイントを表に整理しました。 項目内容基本的な計算式労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100一般的な適正水準50~60%判断基準業種別目安・企業規模別目安・過去の自社データとの比較高い場合のリスク収益性低下・投資資金不足・経営の硬直化低い場合のリスク従業員の士気低下・人材流出・過剰労働改善のポイント労働生産性の向上・粗利率の改善・業績連動型制度の導入 💬 ひとことポイント労働分配率は、会社の「儲け」と「人件費」のバランスシート。このバランス感覚が、経営の舵取りを左右します! 【STEP1】労働分配率とは?企業の「人件費の適正度」を測るモノサシ 労働分配率は、企業の財務分析において人件費の適正性を判断する重要な指標です。ここでは、労働分配率の基本から、経営者が知っておくべき理由、そして関連指標である労働生産性との関係まで解説します。 1. 労働分配率とは?わかりやすく解説 労働分配率とは、企業が生み出した付加価値のうち、人件費が占める割合を示す指標のことです。計算式は「労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値 × 100」で表されます。 例えば、150万円で仕入れた商品を250万円で販売した場合、付加価値(儲け)は100万円です。この付加価値100万円を稼ぐために人件費が60万円かかっていれば、労働分配率は60%(60万円 ÷ 100万円)となります。 一般的に50~60%が適正水準とされますが、業種や企業規模で大きく異なるため、同業他社や過去の自社データとの比較が重要です。 2. なぜ経営者は労働分配率を把握すべきなのか?3つの理由 経営者が労働分配率を把握すべき理由は、主に以下の3点です。 人件費の適正性を判断するため 良好な労使関係を維持するため 経営戦略の重要な判断材料とするため それぞれ解説していきます。 1. 人件費の適正性を判断するため 労働分配率は人件費の適正性を判断する重要な指標だからです。 人件費が高すぎると企業の収益性を圧迫します。逆に低すぎれば、従業員のモチベーションが低下し、優秀な人材が流出する原因にもなりかねません。 自社の労働分配率を客観的に把握し、適切な水準に保つことが、企業の持続的な成長に不可欠です。 2. 良好な労使関係を維持するため 労働分配率が適切なバランスを保つことで、良好な労使関係を築けるからです。 従業員は、自身の貢献が正当に評価され、給与として還元されていると感じることで満足度が高まります。 一方で、企業側も成長に必要な投資原資を確保できます。この双方のバランスを取ることが、企業の成長と従業員の満足度向上につながるのです。 3. 経営戦略の重要な判断材料とするため 労働分配率の分析は、経営における意思決定の重要な判断材料となります。 例えば、設備投資や新規事業への投資資金をどの程度確保できるか、あるいは人材にどれだけ投資を配分すべきか、といった戦略的な検討を行う際の基準となります。 適正な労働分配率を維持することは、企業の持続的成長と従業員の福祉向上を両立させるために不可欠なのです。 3. 労働分配率とセットで見るべき「労働生産性」との重要な関係 労働分配率と労働生産性は表裏一体の関係にあり、両方を併せて分析することで企業の真の収益力を把握できます。 労働生産性とは「付加価値 ÷ 従業員数」で算出され、従業員1人あたりが生み出す付加価値(儲け)を示す指標です。 これら2つの指標の関係は「労働分配率 × 労働生産性 ÷ 100 = 1人あたり人件費」という式で表せます。つまり、労働分配率が同じでも、労働生産性が向上すれば、従業員の給与水準を上げることが可能になるのです。 💬 ひとことポイント労働分配率は、従業員の給与を決めるだけでなく、会社の成長戦略にも直結する超重要指標!「労働生産性」とセットで見るのがプロの視点です。 【STEP2】労働分配率の計算方法を3ステップでマスター【シミュレーション付】 労働分配率を正確に算出するには、まず「人件費」の範囲と「付加価値」の計算方法を正しく理解することが重要です。ここでは、実際の計算手順を具体例とともに詳しく解説します。 1. 人件費の範囲を正しく理解する(役員報酬・福利厚生費など) 労働分配率の計算における「人件費」には、給与・賞与だけでなく、役員報酬や各種福利厚生費も含まれます。 具体的には、以下の項目がすべて人件費に該当します。 給与・賞与 雑給(アルバイトなど) 役員報酬 法定福利費(社会保険料の会社負担分など) 福利厚生費(通勤手当、住宅手当など) 退職金 特に決算賞与など、見落としがちな間接的人件費を漏れなく集計することが、正確な労働分配率を算出する第一歩となります。 2. 「付加価値」を算出する2つの方法(控除法・加算法) 付加価値の計算方法には、中小企業向けの「控除法」と大企業向けの「加算法」の2種類があります。 控除法は「付加価値 = 売上高 – 外部購入価額」という簡単な計算式です。外部購入価額には、仕入高や運送費、材料費などが含まれます。計算が簡単なため、中小企業で広く用いられています。 一方、加算法は計算式が複雑で、より精密な分析が可能です。製造過程で付加価値が高くなる大企業などに向いています。 3. 具体例でわかる!労働分配率の計算シミュレーション ここでは、A社(売上高5,000万円、製造業)の事例で、控除法による計算方法を解説します。 1. 付加価値の計算「付加価値 = 売上高 – 外部購入価額」5,000万円 – (仕入高2,000万円 + 材料費800万円 + 運送費200万円) = 2,000万円 2. 人件費の計算「人件費 = 給与+役員報酬+法定福利費+福利厚生費」1,200万円 + 300万円 + 240万円 + 60万円 = 1,800万円 3. 労働分配率の計算「労働分配率 = 人件費 ÷ 付加価値 × 100」1,800万円 ÷ 2,000万円 × 100 = 90% この90%という数値は製造業の平均51.0%と比べて非常に高く、人件費の見直しや生産性向上が急務であることがわかります。 💬 ひとことポイント正確な計算が第一歩!「人件費」には福利厚生費や役員報酬も含まれることを見落とさないようにしましょう。計算を間違えると、経営判断も誤ります。 【STEP3】あなたの会社は適正?労働分配率の2つの判断基準 労働分配率の適正性を判断するには、業種別・企業規模別の目安と、自社の過去データとの比較が重要です。ここでは、具体的な数値基準を示しながら、あなたの会社の労働分配率が適正かどうかを判断する方法を解説します。 1. 【業種別】労働分配率の目安一覧(製造業・IT業など) 労働分配率は業種によって大きく異なり、製造業では51.0%、IT業界(情報通信業)では53.7%が平均的な水準です。 経済産業省の2021年企業活動基本調査によると、主な業種の労働分配率は以下のようになっています。 業種労働分配率製造業51.0%情報通信業(IT業界)53.7%卸売業49.7%小売業49.4%飲食サービス業74.9%電気・ガス業22.3% 人的サービスが中心の飲食業などは労働分配率が高く、大規模な設備投資が必要な電気・ガス業などは低い傾向にあります。 出典:経済産業省「2021年企業活動基本調査(2020年度実績)」 2. 【企業規模別】労働分配率の目安一覧 企業規模が大きくなるほど労働分配率は低下する傾向にあり、大企業(資本金10億円以上)では52.4%、中小企業では約79~91%となっています。 中小企業庁の2023年版中小企業白書によると、2021年度の企業規模別労働分配率は以下の通りです。 企業規模(資本金)労働分配率10億円以上(大企業)52.4%1千万円以上1億円未満(中規模企業)78.8%1千万円未満(小規模企業)91.0% 出典:中小企業庁「2023年版中小企業白書」第1部第3章第3節 生産性の現況 リンク:https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2023/chusho/b1_3_3.html 大企業は設備投資の余力があるため労働分配率が低く、中小企業は人的資源への依存度が高いため労働分配率が高くなる傾向があります。 3. 他社比較より重要な「過去の自社データとの比較」 労働分配率の適正性を判断する上で最も重要なのは、過去3~5年間の自社データとの比較による傾向分析です。 同業他社との比較も参考になりますが、経営戦略や事業モデルの違いにより数値は大きく異なるためです。 注目すべきは、労働分配率の変動幅と変動要因の分析です。例えば、前年比で10%以上も上昇した場合、売上減少による付加価値の低下、あるいは人件費の急激な増加が考えられます。継続的なモニタリングで、経営課題の兆候を早期に把握することが可能になります。 💬 ひとことポイント他社との比較も大事ですが、もっと重要なのは「過去の自社」との比較。自社の傾向を掴むことが、適正水準を見極める最短ルートです! 【STEP4】労働分配率から企業の危険信号を読み解く7つのポイント 労働分配率の異常値は、企業経営における重要な危険信号となります。ここでは、数値の高低から読み取れるリスクと具体的な改善策、さらに与信調査での活用方法まで詳しく解説します。 1. 労働分配率が高い場合の原因と3つのリスク 労働分配率が業種平均を大幅に上回る場合、企業の収益構造に重大な問題が潜んでいる可能性があります。主なリスクは以下の3つです。 利益率の低下 経営の硬直化 資金繰りの悪化 それぞれ解説していきます。 1. 利益率の低下 労働分配率が80%を超えると、利益率が著しく低下し、将来への投資が困難になります。 人件費が利益を圧迫するため、設備投資や研究開発への資金確保が難しくなり、企業の将来的な競争力が大幅に低下する恐れがあります。 事業の成長に必要な投資ができなくなり、じわじわと経営が立ち行かなくなるリスクが高まります。 2. 経営の硬直化 人件費は固定費の性質が強いため、一度上がると簡単には下げられず、経営の柔軟性が失われます。 売上が減少しても人件費をすぐに削減することは難しく、市場の変動や景気の後退に迅速に対応できなくなります。 これにより、経営判断の選択肢が狭まり、赤字に転落しやすい脆弱な財務体質になってしまうリスクがあります。 3. 資金繰りの悪化 労働分配率が90%を超えるような状況では、資金繰りの悪化が深刻な問題となります。 キャッシュフローの大部分が人件費の支払いに充てられるため、手元資金が枯渇し、緊急時の資金調達が困難になる可能性があります。 金融機関からの融資も厳しくなり、企業の存続そのものを脅かす深刻な経営課題へと発展します。 2. 労働分配率を健全に下げるための4つの改善策 労働分配率を健全な水準に引き下げるには、単純な人件費削減ではなく、付加価値の向上を伴うアプローチが重要です。 生産性の向上 売上拡大による付加価値の増加 変動費の削減 人事制度の見直し ITシステムの導入や業務プロセスの改善で生産性を上げたり、新商品開発で売上を拡大したりすることで、人件費を維持しつつ労働分配率を改善できます。 3. 労働分配率が低い場合の原因と2つのリスク 労働分配率が業種平均を大幅に下回る場合(例:製造業で40%未満など)、従業員への還元が不適切な可能性があります。 優秀な人材の流出 従業員のモチベーション低下 同業他社と比較して著しく給与水準が低い場合、優秀な人材が他社へ転職し、企業の競争力が長期的に低下する恐れがあります。また、従業員が貢献に見合う報酬を得られていないと感じ、組織全体のパフォーマンスが低下するリスクもあります。 4. 労働分配率を健全に上げるための3つの改善策 労働分配率を健全な水準に引き上げるには、従業員への適切な還元と企業業績の両立が重要です。 成果報酬制度の導入 福利厚生の充実 人材投資の強化 業績向上に応じて従業員への還元を増やす成果報酬制度や、住宅手当などの福利厚生を充実させることで、実質的な労働分配率を向上させることが可能です。従業員のスキルアップ支援なども、長期的な生産性向上につながります。 5. 【要注意】急激な労働分配率の変化は不正のサイン? 労働分配率が短期間で20%以上変動した場合、経営上の異常事態または不正行為の可能性を疑う必要があります。 特に、売上が横ばいにもかかわらず労働分配率が急激に上昇した場合、架空の人件費計上や売上の過少申告といった不正が考えられます。 逆に急激に低下した場合は、給与の未払いや簿外取引による売上計上などが疑われます。定期的なモニタリングで異常値を早期に発見し、適切に対処することが企業のリスク管理において重要です。 6. 役員報酬の設定で労働分配率はどう変わるか 役員報酬は労働分配率の計算に含まれるため、その設定方法が指標に大きな影響を与えます。 特に中小企業では、役員報酬が人件費総額に占める割合が高く、その設定次第で労働分配率が10~20%変動することもあります。 業績連動型の役員報酬を導入すれば、好業績時は労働分配率が上昇し、不調時は低下します。一方、固定報酬制の場合は、売上変動に対して労働分配率の動きが緩やかになります。 7. 取引先の与信調査に労働分配率を活用する方法 労働分配率は取引先の経営健全性を判断する重要な指標として活用できます。 業界平均から大幅に乖離している企業は、経営上の問題を抱えている可能性が高く、与信リスクが高いと判断できます。 具体的には、労働分配率が業界平均の1.5倍を超える企業は資金繰り悪化のリスクが、0.5倍未満の企業は従業員の定着率や品質面でのリスクが考えられます。他の財務指標と組み合わせて総合的に評価することが重要です。 💬 ひとことポイント高すぎても低すぎても危険信号!労働分配率の異常値は、会社の健康状態を示すバロメーター。放置は禁物です。 【STEP5】原因不明の数値悪化はプロに相談!Encoachの企業調査 労働分配率の原因不明な悪化は、従業員の不正行為や企業経営上の重大な問題を示すサインかもしれません。ここでは、専門機関による企業調査の必要性と、Encoachの調査サービスについて詳しく解説します。 1. 不正の兆候?従業員の横領で労働分配率が悪化するケース 従業員による横領や着服は、労働分配率を異常に悪化させる重要な要因の一つです。 経費精算での交通費の不正請求、領収書の改ざんなど、様々な手口により企業の財務状況は悪化します。 特に経理担当者による会社資金の横領は、売上の過少申告や架空経費の計上を伴うことがあり、付加価値を実際より低く見せ、結果として労働分配率を異常に高く見せる可能性があります。 2. 採用候補者や取引先の信用調査でリスクを回避 採用段階での信用調査は、将来的な人的リスクを回避する最も効果的な方法です。 経歴詐称、ハラスメント歴、財務上の問題など、面接だけでは判明しない潜在的なリスクを事前に把握できます。 同様に、取引先の与信調査においても労働分配率は重要な判断指標となります。業界平均から大きく乖離している企業は経営上の問題を抱えている可能性が高く、適切な与信枠を設定することで取引リスクを最小化できます。 3. まずは無料相談から | Encoachの強みと実績 Encoach株式会社は、財務を主軸とした事業戦略の伴走支援を行う経営財務コンサルティング会社です。 代表取締役の北薗は、大手税理士法人で6年間にわたり1,000社以上の経営者支援を経験し、社内トップ1%の紹介実績と史上初の3年連続MVP受賞という実績を持ちます。 財務知識に自信がない経営者や資金繰りに不安がある企業に対し、本来あるべき事業計画・資金繰り表の作成を伴走しながらサポートします。 💬 ひとことポイント数字の裏に不正が隠れていることも…。原因不明の数値悪化は、専門家への相談をためらわないでください。早期発見が会社を守ります。 労働分配率に関するよくある質問(Q&A) 労働分配率について、経営者からよく寄せられる質問にお答えします。計算方法から適正水準まで、実務で役立つポイントを詳しく解説します。 Q1. 労働分配率は低い方が良いのですか? 労働分配率は単純に低い方が良いわけではなく、業種や企業規模に応じた適正水準を保つことが重要です。 低すぎる場合は従業員への還元が不足している可能性があり、従業員のモチベーション低下や優秀な人材の流出を招くリスクがあります。 最適な労働分配率は、従業員のモチベーション向上と企業の収益性のバランスを取ることです。自社の状況に合わせて目標水準を設定し、労働生産性の向上を図りながら、従業員への還元を増やすことが理想的なアプローチです。 Q2. 中小企業の労働分配率の目安はどれくらいですか? 中小企業の労働分配率は企業規模によって大きく異なり、小規模企業(資本金1,000万円未満)では91.0%、中規模企業(資本金1,000万円以上1億円未満)では78.8%が目安となります。 大企業の52.4%と比較して著しく高い水準にあります。 この差は、中小企業が人的資源への依存度が高く、設備投資への余力が限られているためです。労働分配率が90%を超える状況では資金繰りが懸念されるため、同規模・同業他社との比較や過去の自社データとの継続的な比較が重要になります。 Q3. 決算賞与は労働分配率の計算に含めますか? はい、決算賞与は労働分配率の計算に含める必要があります。 労働分配率の計算における人件費には、基本給や定期賞与だけでなく、決算賞与や業績賞与も含まれます。これらの賞与は従業員への還元の一部であり、企業の付加価値配分を正確に把握するために必要な要素です。 決算賞与などを含めた年間の人件費総額で労働分配率を算出することで、より正確な経営分析が可能になります。 Q4. 赤字の場合、労働分配率はどうなりますか? 赤字の場合でも労働分配率の計算は可能ですが、分母となる付加価値がマイナスになるため、数値の解釈には注意が必要です。 付加価値がマイナスの場合、労働分配率は数学的にマイナス値となりますが、この数値単体では経営判断の参考になりません。 このような場合は、売上高に対する人件費の割合(人件費率)や、過去の黒字時期との比較分析が有効です。赤字企業では労働分配率そのものよりも、キャッシュフロー分析などによる流動性の管理が優先されるべき課題となります。 まとめ: 労働分配率を正しく理解し、データに基づいた健全な経営を目指そう 労働分配率は企業の健全性を測る重要な経営指標であり、従業員への適切な還元と企業の収益性のバランスを示すモノサシです。 本記事でご紹介した通り、単純に数値の高低だけで判断するのではなく、業種別・企業規模別の目安と過去の自社データとの比較により、総合的な分析を行うことが重要になります。 労働分配率の適正な管理により、従業員のモチベーション向上と企業の持続的成長を両立させることが可能です。経営者の皆様には、月次または四半期ごとの継続的な測定により、データに基づいた経営判断を実践していただきたいと思います。 -
経常利益と営業利益の5つの違いとは?計算方法から企業の健全性を見抜く方法まで解説
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「営業利益と経常利益、似ているけど具体的な違いがわからない」「決算書のどちらの利益を見れば、会社の本当の実力がわかるの?」 そんな疑問をお持ちではありませんか。この記事では、営業利益と経常利益の5つの決定的な違いから、それぞれの計算方法、銀行や投資家が経常利益を重視する理由まで、専門用語を避け、具体例を交えながら分かりやすく解説します。 この記事を読めば、二つの利益指標を正しく使い分け、企業の本当の姿を見抜く力が身につきます。 まずは結論!営業利益と経常利益の主な違いが一目でわかる比較表 企業の経営状況を分析する上で重要な「営業利益」と「経常利益」。これら二つの利益はよく混同されがちですが、その性質は大きく異なります。 企業の評価において、営業利益は「本業で稼ぐ力」、経常利益は「会社全体の総合的な収益力」を示します。 本業が順調でも、借入金の返済が多ければ会社全体の利益は減りますし、逆に本業が不調でも、資産運用がうまくいっていれば利益が出ることもあります。以下の比較表で、両者の違いを明確に理解しましょう。 比較項目営業利益経常利益示すもの本業で稼ぐ力会社全体の総合的な収益力計算式売上総利益 – 販売費及び一般管理費営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用分析の範囲事業単体(本業)の収益性会社全体の経常的な活動 企業の利益構造を丸ごと理解!損益計算書における5つの利益の関係性 企業の成績表である「損益計算書」には、5つの利益が記載されています。会社の本当の姿を理解するためには、これら5つの利益がそれぞれ何を示し、どのような関係にあるのかを順を追って把握することが不可欠です。 損益計算書では、以下の5つの利益が順番に計算されます。 売上総利益(粗利):商売の基本となる利益 営業利益:本業の稼ぐ力を示す利益 経常利益:会社全体の総合的な収益力 税引前当期純利益:税金を払う前の最終利益 当期純利益(純利益):会社に残る最終的なお金 ここでは、利益が生まれる流れに沿って、各利益の意味を解説していきます。 1. 売上総利益(粗利):商売の基本となる利益 売上総利益は、企業が提供する商品やサービスの基本的な収益力を示す利益のことです。「粗利(あらり)」とも呼ばれます。 これは、企業の売上高から、商品の仕入れや製造にかかった直接的な費用である「売上原価」を差し引いて計算されます。例えば、80円で仕入れた商品を100円で販売した場合、売上総利益は20円です。この売上総利益が大きいほど、提供する商品やサービスそのものが持つ付加価値が高いことを意味します。 この段階では、人件費や広告費などの販売経費はまだ考慮されていません。 2. 営業利益:本業の稼ぐ力を示す利益 営業利益とは、企業が主軸とする「本業」でどれだけ稼いだかを示す利益です。 計算式は、先ほどの売上総利益から、商品を販売するためにかかった費用や会社を管理するための費用である「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引いて求めます。販管費には、従業員の給与、広告宣伝費、事務所の家賃などが含まれます。 営業利益は、その企業の本業における収益性や事業の効率性をダイレクトに表す指標です。この利益が黒字であれば、本業が順調であると判断できます。 3. 経常利益:会社全体の総合的な収益力 経常利益は、本業の儲けである営業利益に、本業以外の活動で経常的に発生する損益(営業外損益)を加味した利益です。 具体的には、預金の受取利息や保有株式の配当金といった「営業外収益」を加え、借入金の支払利息などの「営業外費用」を差し引いて算出します。 財務活動も含めた、企業の継続的な活動からどれだけの利益を生み出せているかを示すため、銀行や投資家が企業の安定性を判断する際に特に重視する指標です。 4. 税引前当期純利益:税金を払う前の最終利益 税引前当期純利益は、その期に発生したすべての収益からすべての費用を差し引いた、文字通り税金を支払う前の利益です。 経常利益に、固定資産の売却益や災害による損失など、その期にだけ臨時的・偶発的に発生した「特別利益」と「特別損失」を加減して計算されます。 この利益は、企業のすべての活動(経常的な活動+臨時的な活動)から得られた、法人税などを納める直前の最終的な利益額を示します。特別損益の額が大きくなければ、経常利益と近い数値になるのが一般的です。 5. 当期純利益(純利益):会社に残る最終的なお金 当期純利益とは、税引前当期純利益から法人税、住民税、事業税などの税金を差し引いた、一会計期間における最終的な利益です。これが、最終的に会社の手元に残るお金となり、「純利益」とも呼ばれます。 当期純利益は、その期の会社の経営活動の最終的な成果であり、株主への配当金の原資にもなります。この数値がマイナスの場合を「当期純損失」と呼び、いわゆる赤字決算を意味します。 企業の純粋な収益性を見るには、臨時的な損益が含まれるこの利益だけでなく、経常利益などと合わせて総合的に判断することが重要です。 💬 ひとことポイント損益計算書の5つの利益は、売上から費用を段階的に引いていくことで計算されます。この流れを理解することが、企業の収益構造を把握する第一歩です。 営業利益とは?「本業での稼ぐ力」を3つのポイントで解説 企業の収益性を測る上で欠かせない指標が「営業利益」です。営業利益は、その企業が主軸とする事業、すなわち「本業」でどれだけ効率的に利益を生み出せているかを示します。 ここでは、営業利益について以下の3つのポイントで詳しく解説します。 営業利益が示すもの:本業の成績表 営業利益の計算方法:売上総利益 – 販管費 営業利益からわかること:事業の収益性と効率性 それぞれ見ていきましょう。 1. 営業利益が示すもの:本業の成績表 営業利益は、企業が定款で定めている主たる事業活動から得られた利益であり、いわば「本業の成績表」です。 例えば、飲食店であれば飲食物の販売、小売業であれば商品の販売によって得た利益がこれにあたります。この利益には、財務活動による収益(受取利息など)や、本業とは関係ない臨時的な損益は含まれません。 そのため、純粋にその企業の中核事業が健全かどうか、競争力があるかどうかを判断するための最も基本的な指標となります。営業利益を見ることで、企業の本業が順調に稼げているかどうかが一目でわかります。 2. 営業利益の計算方法:売上総利益 – 販管費 営業利益は、損益計算書において、売上総利益から「販売費及び一般管理費(販管費)」を差し引いて算出されます。計算式は以下の通りです。 営業利益 = 売上総利益 – 販売費及び一般管理費 売上総利益(粗利)は、売上高から商品の仕入れや製造にかかった売上原価を引いたものです。そこからさらに、商品を売るための広告宣伝費や人件費、事務所の家賃といった、事業運営に不可欠な経費(販管費)を差し引いたものが、本業の儲けである営業利益となります。 3. 営業利益からわかること:事業の収益性と効率性 営業利益を分析することで、その企業の本業における収益性と事業運営の効率性が見えてきます。 営業利益が高いということは、主力事業の競争力が強く、かつ人件費や広告費などの経費を効率的にコントロールできている証拠です。 逆に、売上は大きいのに営業利益が低い場合は、仕入れコストが高い、あるいは経費を使いすぎているといった課題が隠れている可能性があります。このように、営業利益は事業そのものの実力を示す重要な指標です。 💬 ひとことポイント営業利益の分析では、売上高営業利益率(営業利益 ÷ 売上高)も重要です。この比率を時系列で比較したり、同業他社と比較したりすることで、事業の収益性の変化や業界内でのポジションを客観的に把握できます。 経常利益とは?「会社の総合的な実力」を3つのポイントで解説 営業利益が「本業の稼ぐ力」を示すのに対し、「会社の総合的な実力」を評価する上で重要なのが経常利益です。経常利益は、本業の利益に加えて、財務活動など本業以外の経常的な損益も反映した指標です。 ここでは、経常利益の役割を以下の3つの視点から掘り下げていきます。 経常利益が示すもの:会社全体の平常時の体力 経常利益の計算方法:営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 経常利益からわかること:財務活動を含めた安定性 それぞれ解説します。 1. 経常利益が示すもの:会社全体の平常時の体力 経常利益とは、企業が通常の事業活動全体を通じて、経常的(継続的)に得られる利益のことです。 これは、本業での儲けである営業利益に、預金の受取利息や借入金の支払利息といった、財務活動などから生じる損益(営業外損益)を加味したものです。 固定資産の売却益や災害損失といった一時的な損益は含まないため、その企業が「平常時」にどれだけの利益を生み出す力があるか、つまり会社の「基礎体力」や「本当の収益力」を判断する上で最も適した指標とされています。 2. 経常利益の計算方法:営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 経常利益は、本業の利益である営業利益に、本業以外の活動から経常的に発生する「営業外収益」を加え、同様に発生する「営業外費用」を差し引いて計算します。 経常利益 = 営業利益 + 営業外収益 – 営業外費用 営業外収益の主な例としては、預貯金の受取利息、保有株式からの受取配当金、為替差益などがあります。一方、営業外費用の主な例は、金融機関からの借入金に対する支払利息や為替差損などです。 3. 経常利益からわかること:財務活動を含めた安定性 経常利益を見ることで、本業の収益力に加えて、資産運用や資金調達といった財務活動を含めた企業全体の収益性や安定性を評価できます。 例えば、本業が好調(営業利益が黒字)でも、多額の借入金によって支払利息が膨らみ、経常利益が赤字になるケースもあります。 逆に、本業が不振(営業利益が赤字)でも、豊富な資金を元にした資産運用がうまくいき、経常利益が黒字になることもあり得ます。このように、経常利益は企業の財務的な安定性を見る上で重要な指標です。 💬 ひとことポイント銀行が融資審査で最も重視するのが経常利益です。「この会社は、本業と財務活動を合わせて、継続的に返済原資となる利益を生み出せるか?」を見極めるため、経常利益の金額と安定性が厳しくチェックされます。 【ケースで学ぶ】営業利益と経常利益の5つの決定的な違い 営業利益と経常利益は、どちらも企業の収益力を示す重要な指標ですが、その意味合いは大きく異なります。この違いを理解することは、企業の本当の姿を見抜くための第一歩です。 ここでは、両者の決定的な違いを以下の5つのポイントに分けて解説していきます。 分析できる範囲の違い:「事業単体」か「会社全体」か 計算に含まれる費用の違い:営業外損益の有無 評価される場面の違い:事業評価と企業評価 ケース①「営業利益 > 経常利益」:本業の利益を財務が圧迫 ケース②「営業利益 < 経常利益」:財務活動が本業をカバー それぞれ具体的に見ていきましょう。 1. 分析できる範囲の違い:「事業単体」か「会社全体」か 営業利益と経常利益の最も基本的な違いは、分析の対象となる範囲です。営業利益が「本業」という事業単体の収益力に焦点を当てるのに対し、経常利益は財務活動なども含めた「会社全体」の経常的な活動を評価します。 営業利益は、その企業の中核となる事業活動から直接生み出された利益だけを示すため、事業そのもののパフォーマンスを純粋に測ることができます。一方、経常利益は本業の利益に、本業以外の財務活動などから生じる損益も反映します。 つまり、営業利益は「事業単体の成績」、経常利益は「会社全体の総合力」を示す指標と言えます。 2. 計算に含まれる費用の違い:営業外損益の有無 二つ目の違いは、計算プロセスにあります。両者の計算を分ける決定的な要素は、「営業外損益」が含まれているかどうかです。 営業利益の計算では、本業の売上から売上原価と販管費を差し引くだけで、本業以外の要素は一切考慮しません。 それに対して、経常利益は、その営業利益に、受取利息などの「営業外収益」を加え、支払利息などの「営業外費用」を差し引いて算出されます。この計算式の違いにより、営業利益は本業の収益性を、経常利益は財務活動も含めた企業全体の収益性を表すという役割分担が生まれます。 3. 評価される場面の違い:事業評価と企業評価 分析の範囲や計算方法が違うため、営業利益と経常利益は評価される場面も異なります。一般的に、営業利益は社内での「事業評価」に、経常利益は金融機関や投資家による「企業評価」に用いられる傾向があります。 例えば、社内である事業部の業績を評価する場合、財務活動の影響を除いた純粋な事業の稼ぐ力を示す営業利益が重視されます。 一方、銀行が融資を検討する際や投資家が企業の安定性を判断する際には、借入金の状況など財務体質も含めた総合的な収益力を示す経常利益が極めて重要な判断材料となります。 4. ケース①「営業利益 > 経常利益」の企業からわかること 営業利益が経常利益を上回っている場合、その企業は本業で稼いだ利益を、本業以外の活動(主に財務活動)で減らしていることを示唆しています。これは、営業利益から経常利益を計算する過程で差し引かれる「営業外費用」が、加えられる「営業外収益」よりも大きい状態です。 典型的な例が、借入金が多い企業です。本業ではしっかりと利益(営業利益)を出していても、多額の借入金に対する支払利息(営業外費用)が重くのしかかり、会社全体の利益(経常利益)を圧迫しているケースが考えられます。 この状態は、事業そのものは好調であるものの、財務体質に課題を抱えている可能性を示しています。 5. ケース②「営業利益 < 経常利益」の企業からわかること 逆に、経常利益が営業利益よりも大きい場合は、本業の利益に加えて、財務活動など本業以外の活動でも収益を上げていることを意味します。これは、支払利息などの「営業外費用」よりも、受取利息や配当金、有価証券の売却益といった「営業外収益」の方が多い状態です。 例えば、本業の利益はそれほど大きくなくても、潤沢な自己資金を元にした資産運用(いわゆる「財テク」)がうまくいっている企業でこのパターンが見られます。 本業の収益力に加えて、財務活動の巧みさも示していると評価できる一方で、あまりに営業外収益への依存度が高い場合は、本業の競争力低下を金融収益で補っている可能性も考えられるため、その内訳を注意深く見る必要があります。 💬 ひとことポイント「営業利益と経常利益の差額」に注目することが、企業分析の鍵です。この差額は主に「営業外損益」、つまり財務活動の巧拙を表します。差額の要因を分析することで、企業の隠れたリスクや強みが見えてきます。 結局どちらが重要?銀行や投資家が経常利益を重視する3つの理由 営業利益と経常利益、企業の分析においてどちらがより重要なのでしょうか。本業の力を示す営業利益も大切ですが、金融機関や投資家といった外部のステークホルダーは、特に「経常利益」を重視する傾向にあります。 それには、企業の総合的な実力を見抜くための、主に以下の3つの理由が存在します。 企業の「本当の収益力」がわかるから 財務活動の巧拙がわかるから 企業の継続性・安定性を判断できるから それぞれ詳しく解説します。 1. 企業の「本当の収益力」がわかるから 銀行や投資家が経常利益を重視する第一の理由は、それが企業の「本当の収益力」を最も的確に示していると考えられるからです。 営業利益が本業のみの成果を表すのに対し、経常利益は本業の利益に加えて、企業が保有する預金の利息や借入金の支払利息といった財務活動から生じる損益も反映します。 つまり、本業だけでなく、資金の運用や調達といった事業活動全体を通じた、平常時における総合的な稼ぐ力を示すのが経常利益です。一時的な要因を除いた、その企業が継続的に生み出すことのできる利益の実態を表すため、経常利益は企業の基礎的な収益力を測る上で最も信頼性の高い指標と見なされています。 2. 財務活動の巧拙がわかるから 経常利益は、企業の財務活動の巧拙を判断する上でも重要な指標となります。営業利益と経常利益の差額は、主に受取利息や支払利息といった「営業外損益」によって生じます。この差額を分析することで、その企業が資産運用や資金調達をどれだけうまく行っているかが見えてきます。 例えば、営業利益よりも経常利益の方が大きい場合、それは企業が保有する資金を有効に活用して収益を上げている(受取利息や配当金が多い)証拠です。 逆に、営業利益より経常利益が大幅に少ない場合は、借入金が多く支払利息の負担が重いなど、財務面での課題を抱えている可能性が示唆されます。このように、経常利益は本業の成績だけではわからない、企業の財務戦略の成果を明らかにしてくれます。 3. 企業の継続性・安定性を判断できるから 金融機関が融資判断を行う際、最も気にするのが「貸したお金がきちんと返ってくるか」という点です。その判断の拠り所となるのが、企業の継続性と安定性であり、それを示すのが経常利益です。 経常利益は、土地の売却益のような一時的な利益(特別利益)や、災害による損失(特別損失)を含まない、企業が通常の活動で繰り返し得られる利益です。そのため、将来の利益を予測する上での信頼性が高く、その企業が今後も安定して事業を継続し、利益を生み出し続けられるかを判断するための重要な材料となります。 銀行は、この経常利益が安定的かつ継続的に黒字であるかを確認することで、企業の返済能力と長期的な安定性を評価しているのです。 💬 ひとことポイント株主にとっては最終的な利益である「当期純利益」が重要ですが、銀行や取引先にとっては、企業の「継続性」が何よりも重要です。そのため、一時的な損益を除いた「経常利益」が、企業の信用力を測る共通の物差しとして使われます。 企業の信用調査で役立つ!経常利益を使った経営分析の2つの手法 経常利益は、単に損益計算書上の数字として眺めるだけでなく、企業の経営実態を深く分析するための強力なツールとなります。特に取引先の信用調査などにおいて、企業の収益性や財務体質を見抜くために、主に以下の2つの分析手法が役立ちます。 収益性を測る「売上高経常利益率」の計算と目安 財務体質を暴く「営業利益との差額分析」 それぞれ見ていきましょう。 1. 収益性を測る「売上高経常利益率」の計算と目安 企業の総合的な収益性を客観的に評価する代表的な指標が「売上高経常利益率」です。これは、売上高に対して経常利益がどれくらいの割合を占めるかを示すもので、この数値が高いほど、事業全体で効率よく利益を上げられていることを意味します。 計算式は非常にシンプルです。売上高経常利益率(%) = 経常利益 ÷ 売上高 × 100 この比率を同業他社と比較したり、企業の過去の数値からの推移を見たりすることで、その企業の収益性が業界内でどのレベルにあるのか、また改善傾向にあるのか悪化傾向にあるのかを把握できます。売上高経常利益率は、企業の総合的な収益力を測るための重要なバロメーターです。 2. 財務体質を暴く「営業利益との差額分析」 営業利益と経常利益の差額を分析することで、その企業の財務体質を簡単に見抜くことができます。この差額は、企業が行った財務活動(資金の借入や運用)の結果そのものである「営業外損益」によって生まれるためです。 例えば、「営業利益 > 経常利益」となっている場合、本業で稼いだ利益が支払利息などの営業外費用によって減少していることを意味し、借入金への依存度が高いなど、財務面で課題を抱えている可能性が疑われます。 逆に、「営業利益 < 経常利益」の場合は、資産運用などで本業以外の収益を上げていることを示し、健全な財務活動が行われていると評価できます。このように、営業利益と経常利益の差額に注目するだけで、その企業の財務的な強みや弱みが浮かび上がってくるのです。 💬 ひとことポイント分析指標は、単年の数字だけでは意味がありません。「時系列比較(過去からの推移)」と「同業他社比較」を行うことで、初めてその数字が良いのか悪いのか、意味のある評価ができます。 財務諸表だけでは見抜けない取引先のリスクはプロの企業調査へ ここまで見てきたように、営業利益や経常利益などの財務諸表を分析することは、企業の経営状態を把握する上で非常に重要です。しかし、決算書に記載されているのはあくまで過去の実績であり、それだけでは取引先に潜むすべてのリスクを見抜くことはできません。 巧妙な粉飾決算や、数字には表れない経営者の資質、反社会的勢力との関係といった潜在的なリスクは、公開情報だけでは判断が困難です。安全な取引を継続し、予期せぬ損害から自社を守るためには、財務分析と並行して、専門家による踏み込んだ企業調査が不可欠です。 私たちEncoach株式会社は、長年の経験と独自のノウハウを持つ調査のプロフェッショナル集団です。財務データだけでは決して見えない取引先のリスクを徹底的に洗い出し、貴社のビジネスを確固たる安全へと導きます。 経常利益と営業利益に関するよくある5つの質問 ここでは、経常利益や営業利益について、多くの方が抱きがちな疑問にQ&A形式でお答えします。これらのポイントを押さえることで、さらに理解が深まるはずです。 Q1. 経常利益と純利益の具体的な違いは何ですか? 経常利益と純利益の最も大きな違いは、「特別損益」と「税金」を計算に含めるかどうかです。経常利益は会社が通常の活動で稼いだ利益を示すのに対し、純利益はその期の最終的な儲けを示します。 経常利益の計算には、土地の売却益や災害による損失といった、その期にだけ臨時的・偶発的に発生した「特別損益」は含まれません。一方、純利益は経常利益にこの特別損益を加減し、そこからさらに法人税などの税金を差し引いて算出される、会計期間の最終的な利益です。 つまり、経常利益が「会社の平常時の実力」を示すのに対し、純利益は「最終的に会社の手元に残るお金」と理解すると分かりやすいです。 Q2. 営業利益が赤字で経常利益が黒字になるのは、どんな状況ですか? 営業利益が赤字でありながら経常利益が黒字になるのは、本業の損失を、本業以外の経常的な収益でカバーしている状況です。つまり、営業利益に加算される「営業外収益」が、営業利益の赤字額を上回っているケースです。 典型的な例としては、本業の業績は振るわないものの、会社が保有する豊富な資金を株式や不動産で運用し、そこから多額の配当金や賃料収入(営業外収益)を得ている場合などが挙げられます。 本業の収益力には課題があるものの、財務活動(いわゆる「財テク」)がうまくいっている企業で見られるパターンです。ただし、本業の不振を財務収益で補っている状態が続く場合、根本的な事業改善が必要なサインとも言えます。 Q3. 個人事業主の場合、経常利益はどのように考えればよいですか? 個人事業主の所得計算において、法人会計の「経常利益」と完全に一致する勘定科目は存在しません。しかし、その考え方は所得税の計算に応用できます。 個人事業主の所得は、主に「事業所得」や「不動産所得」などから構成されますが、これが法人の営業利益に近いものと考えられます。そして、事業用の預金から生じる受取利息などは「利子所得」として扱われますが、これが法人の営業外収益にあたります。 個人事業主の場合、本業の儲けである事業所得などに、利子所得のような本業以外の経常的な所得を合算したものが、実質的な経常利益に近い概念となります。確定申告では、これらの各種所得を合算して総所得金額を算出し、税額を計算します。 Q4. 経常利益がマイナス(経常損失)だと、すぐに倒産しますか? 経常利益がマイナス(経常損失)になったからといって、ただちに倒産するわけではありません。企業の倒産は、利益が赤字であること(損益上の問題)よりも、手元の資金が尽きて支払いができなくなること(資金繰りの問題)が直接的な原因となるためです。 たとえ経常損失を計上しても、過去の利益の蓄積である内部留保が潤沢であったり、資産を売却したり、金融機関から新たな融資を受けられたりすれば、事業を継続することは可能です。 しかし、経常損失が続く状態は、会社の通常の事業活動全体で利益を生み出せていないことを意味するため、倒産のリスクが非常に高い危険なシグナルであることは間違いありません。 Q5. 経常利益率の業界別平均や目安はありますか? はい、あります。売上高経常利益率は業種によって大きく異なるため、自社の収益性を評価する際は、業界平均と比較することが重要です。経済産業省が発表する「企業活動基本調査」などで、業種ごとの平均値を確認できます。 以下は、2022年度のデータに基づいた主要な業種の売上高経常利益率の目安(中央値)です。 業種売上高経常利益率の目安(中央値)全産業5.4%情報通信業7.7%建設業5.9%製造業7.0% (機械)卸売業3.0%小売業3.6%不動産業8.3%サービス業6.8% 出典:「ザイマニ」 これらの数値はあくまで目安であり、自社の数値を業界平均と比較することで、収益性のポジションを客観的に把握する手がかりとなります。 まとめ:営業利益と経常利益の違いを理解し、企業の本当の姿を見抜こう この記事では、混同されがちな「営業利益」と「経常利益」の5つの違いや、それぞれの指標が持つ意味について詳しく解説しました。 重要なポイントを改めてまとめると、以下のようになります。 営業利益:企業が「本業で稼ぐ力」を示す利益。 経常利益:財務活動なども含めた「会社全体の総合的な収益力」を示す利益。 この2つの利益の違いを正しく理解し、両者のバランスや差額の要因を分析することで、単に決算書の数字を眺めるだけではわからない、企業の本当の姿が見えてきます。自社の経営状況を的確に把握するため、あるいは取引先や投資先の真の実力を見抜くために、ぜひこの知識を活用してください。 -
【専門家が解説】予実管理とは?目的から簡単な始め方、失敗しない5つのコツまで
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「予実管理を始めたいが、何から手をつければいいかわからない」「Excelでの管理に限界を感じている」 といった悩みはありませんか。この記事では、予実管理とは何かという基本から、経営を加速させるメリット、具体的な始め方、そして失敗しないための5つのコツまで専門家が解説します。 この記事を読めば、予実管理の全体像が明確になり、明日から自社で実践するための具体的な第一歩を踏み出せるようになります。 まずは結論!予実管理の目的・メリット・手順がわかる早見表 予実管理の全体像を素早く理解するために、その目的、メリット、そして具体的な手順を一覧にまとめました。この表を確認するだけで、予実管理がなぜ重要で、どのように進めればよいのか、その骨子を掴むことができます。 項目内容目的経営目標を達成するために、計画(予算)と実績の差異を分析し、経営課題を可視化すること。データに基づいた客観的な意思決定を支援し、安定した経営基盤を築きます。メリット・経営状況が「見える化」され、課題を早期に発見できる・迅速かつ的確な経営判断が可能になる・組織全体の目標達成への意識が向上する手順1. 【PLAN】目標設定と予算の策定2. 【DO】実績の収集3. 【CHECK】予算と実績の比較・差異分析4. 【CHECK】差異を生んだ根本原因の特定5. 【ACTION】改善策の立案と実行 予実管理とは?経営の現在地を把握する羅針盤 予実管理は、単なる数字の比較作業ではありません。企業の目標達成を支え、持続的な成長を促すための重要な経営の羅針盤です。 ここでは、予実管理の基本的な意味から、関連用語との違いまでを掘り下げて解説します。 1. 予実管理とは「予算」と「実績」を比較し、目標達成へ導く経営手法 結論として、予実管理とは、企業が立てた「予算(計画)」と、実際の活動結果である「実績」を比較・分析し、目標達成へと導く経営管理手法を指します。 なぜなら、計画通りに進んでいるか、あるいは計画からどの程度ずれているのかを定期的に確認することで、問題の早期発見と迅速な軌道修正が可能になるためです。 例えば、売上予算1,000万円に対し実績が800万円だった場合、その200万円の差がなぜ生まれたのかを分析し、次の打ち手を考えます。このように、予実管理は計画と現実のギャップを埋め、企業をゴールへと着実に前進させるためのナビゲーションシステムといえるでしょう。 2. 「予実」とは?言葉の基本的な意味を解説 「予実(よじつ)」とは、「予算(予定)」と「実績」という2つの言葉を組み合わせたビジネス用語です。ここでの「予算」は、売上や利益、コストなど、企業が一定期間で達成を目指す「目標数値」を指します。 一方の「実績」は、その期間における実際の企業活動の結果そのものです。 例えば、「今月の売上予算は500万円」と計画し、月末に「実績は450万円だった」と結果が出たとします。この計画(予算)と結果(実績)のセットが「予実」であり、この2つを管理することが予実管理の出発点となります。この基本的な言葉の意味を理解することが、正確な予実管理を行う第一歩です。 3. 予実管理と予算管理、管理会計の決定的な違い これらは混同されやすい言葉ですが、目的と範囲に明確な違いがあります。 結論から言うと、予実管理が「計画と実績の比較・分析による軌道修正」に焦点を当てるのに対し、予算管理は「目標達成のための計画策定と資源配分」が中心です。 航海に例えると、目的地を定めて航路図や食料を準備するのが「予算管理」です。そして、航海中に現在地と航路図を見比べてズレを修正するのが「予実管理」にあたります。 これら両方を含む、経営判断に役立てるための社内向け会計の仕組み全体が「管理会計」と呼ばれます。 💬 ひとことポイント予実管理は「過去の結果」を「未来の行動」につなげるための架け橋です。単なる数字合わせで終わらせず、次の一手を考えるためのツールと捉えましょう。 予実管理は意味ない?経営を加速させる3つのメリット 「予実管理は手間がかかるだけで意味がない」と感じる方もいるかもしれません。しかし、適切に運用すれば、予実管理は経営を大きく加速させる強力な武器となります。 どんぶり勘定の経営から脱却し、持続的な成長を実現するための3つのメリットを解説します。 経営状況の「見える化」で課題を早期発見できる データに基づいた迅速で的確な経営判断が可能になる 組織全体の目標達成への意識が向上し、人材育成にもつながる 1. 経営状況の「見える化」で課題を早期発見できる 予実管理の最大のメリットは、会社の経営状況が数字によって「見える化」され、課題をいち早く発見できる点にあります。予算という「あるべき姿」と実績という「現実の姿」を定期的に比較することで、計画とのズレを客観的に把握できるからです。 例えば、月次の売上実績が予算を下回った場合、その原因が営業活動の停滞なのか、市場の変化なのかを即座に検討し始められます。 このように、予実管理によって経営の健康状態が可視化されるため、問題が深刻化する前に対策を打つことが可能になります。 2. データに基づいた迅速で的確な経営判断が可能になる 予実管理は、経営者の勘や経験だけに頼らない、客観的なデータに基づいた的確な意思決定をサポートします。売上や経費、利益といった具体的な数値を根拠にすることで、判断の精度とスピードが格段に向上するためです。 例えば、ある商品の利益率が予算よりも低いというデータがあれば、その原因を分析し、価格改定やコスト削減といった具体的なアクションを迅速に検討できます。 数字という客観的な事実に基づいて判断することで、より確実性の高い経営戦略を立てられるようになるのです。 3. 組織全体の目標達成への意識が向上し、人材育成にもつながる 予実管理を全社で取り組むことで、組織全体の目標達成への意識が高まり、社員の成長にもつながります。会社全体の目標が各部門、そして個人の目標へと具体的に落とし込まれることで、従業員一人ひとりが「自分ごと」として目標達成を意識するようになるからです。 例えば、各部門が自部門の予算達成に向けて主体的に工夫を凝らすようになります。 このプロセスを通じて、管理職はコスト感覚やマネジメントスキルを実践的に学ぶことができ、結果として経営視点を持った人材が育っていきます。 💬 ひとことポイントメリットを最大化する鍵は「リアルタイム性」です。月次、週次とチェックの頻度を上げるほど、経営のハンドルを素早く切れるようになります。 予実管理の具体的なやり方【5つのステップで解説】 予実管理は、闇雲に始めても長続きしません。ここでは、多くの企業で実践されているPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)に基づいた、誰でも始められる5つの具体的なステップを解説します。 この流れに沿って進めることで、効果的な予実管理体制を構築できます。 【PLAN】目標設定と予算の策定 【DO】実績の収集(月次決算の実施) 【CHECK】予算と実績の比較・差異分析 【CHECK】差異を生んだ根本原因の特定 【ACTION】改善策の立案と実行 1. 【PLAN】目標設定と予算の策定 最初のステップは、企業の経営目標に基づき、現実的で納得感のある予算を策定することです。達成不可能な高すぎる目標や、簡単すぎる低すぎる目標では、社員のモチベーションを維持できず、管理自体が形骸化してしまうからです。 具体的には、過去の実績や市場の成長率といった客観的なデータを参考にしつつ、現場部門の意見もヒアリングしながら、会社全体、部門、チームや個人へと目標を落とし込んでいきます。 なぜこの目標数値なのかという根拠を明確にし、関係者全員で共有することが、予実管理を成功させるための最も重要な鍵となります。 2. 【DO】実績の収集(月次決算の実施) 予算を策定したら、次はその予算に対応する実績データを収集します。このとき重要なのは、できるだけ短いサイクルで実績を把握することです。 実績の把握が遅れると、問題の発見や軌道修正もその分遅れてしまうため、多くの企業では月単位で実績を集計する「月次決算」を行っています。 年次決算ほど厳密な正確性は求められませんが、売上、原価、人件費などの数値を迅速に集計し、経営状況をタイムリーに把握することが目的です。 3. 【CHECK】予算と実績の比較・差異分析 月次の実績値が出たら、当初立てた予算と比較し、どの項目で、どれくらいの差(差異)が生まれているかを分析します。この差異の大きさや発生箇所を特定することが、経営課題を明らかにするための第一歩です。 具体的には、勘定科目ごとに予算と実績の数値を並べ、「差異額(実績-予算)」や「達成率(実績÷予算)」を算出します。 これにより、どの項目が計画通りに進んでいて、どの項目に問題があるのかが一目でわかります。 4. 【CHECK】差異を生んだ根本原因の特定 予算と実績の差異を確認した後は、「なぜその差異が生まれたのか」という根本的な原因を深掘りします。表面的な現象だけを捉えて対策を打っても、同じ問題が再発する可能性が高いため、本質的な原因を突き止める必要があります。 例えば、「売上予算が未達」という結果に対し、原因が「新規の商談数が少ない」ことだとします。 ここで終わらず、「なぜ商談数が少ないのか?」をさらに掘り下げ、「競合の新サービスにより自社の魅力が薄れた」「営業担当者の提案スキルが不足している」といった根本原因まで特定します。 5. 【ACTION】改善策の立案と実行 根本原因が特定できたら、最後にそれを解決するための具体的な改善策を立案し、実行に移します。分析や評価だけで終わらせず、具体的な行動につなげて初めて、予実管理は経営改善のツールとして機能します。 例えば、根本原因が「営業担当者の提案スキル不足」であれば、「営業研修を実施する」「成功事例を共有する仕組みを作る」といったアクションプランを立て、責任者と期限を決めて実行します。 そして、その改善策の結果は、次の月の実績としてまた評価されます。このPDCAサイクルを回し続けることで、組織は継続的に学び、成長していくことができるのです。 💬 ひとことポイントPDCAは一度回して終わりではありません。「C(Check)」で原因を深掘りし、「A(Action)」を次の「P(Plan)」に活かすことで、らせん状に組織が成長していきます。 予実管理で失敗しないための5つのコツ 予実管理を導入しても、うまく機能しなければ意味がありません。形骸化させず、経営改善に直結させるためには、いくつかの重要なコツがあります。 ここでは、予実管理を成功に導き、失敗を避けるための5つのポイントを、具体的な理由とともに解説します。 目的を明確にし、全社で共有する 現実的で納得感のある予算目標を設定する 細かい差異にこだわりすぎず、重要なポイントに絞る できるだけ短いサイクル(月次)でPDCAを回す 現場へのフィードバックと対話を徹底する 1. 目的を明確にし、全社で共有する 予実管理を成功させる最初の鍵は、「何のために行うのか」という目的を明確にし、経営層から現場の従業員まで全員で共有することです。目的が曖昧なままでは、予実管理が単なる数字合わせの作業となり、従業員の当事者意識が生まれにくいからです。 例えば、「ノルマ達成を監視するため」ではなく、「課題を早期発見し、みんなで迅速に解決するため」といったポジティブな目的を共有することで、現場も協力しやすくなります。 経営目標達成という共通のゴールに向かうためのツールであると全社で認識を合わせることが、予実管理を形骸化させないための第一歩です。 2. 現実的で納得感のある予算目標を設定する 予実管理の土台となる予算目標は、現実的で、かつ現場が納得できる水準に設定することが極めて重要です。到底達成不可能な高すぎる目標は社員のやる気を削ぎ、逆に簡単に達成できる低すぎる目標は成長の機会を奪ってしまうからです。 具体的には、過去の実績データや市場動向を分析しつつ、実際に予算達成に向けて動く現場の責任者の意見を取り入れながら策定するプロセスが不可欠です。 挑戦的でありながらも、達成への道筋が見える納得感のある目標設定が、組織のモチベーションを引き出します。 3. 細かい差異にこだわりすぎず、重要なポイントに絞る 予実管理においては、発生したすべての差異を細かく分析するのではなく、経営へのインパクトが大きい重要な差異に絞って分析することが効率的です。すべての差異に同じ熱量で対応しようとすると、分析に多大な時間がかかり、本当に注力すべき大きな問題を見過ごすことになりかねません。 例えば、「差異が予算の10%以上、または金額で100万円以上の項目を優先的に分析する」といった社内ルールを設けることが有効です。 重要な差異に分析のリソースを集中させることが、迅速で効果的な改善アクションにつながります。 4. できるだけ短いサイクル(月次)でPDCAを回す 予実管理の精度と効果を高めるためには、できるだけ短いサイクルでPDCA(計画・実行・評価・改善)を回すことが欠かせません。半期や年一回の振り返りでは、問題が起こってから時間が経ちすぎてしまい、原因の特定が困難になったり、対応が手遅れになったりするからです。 理想は、月次決算に合わせて毎月予実の比較分析と改善策の検討を行うことです。 短いサイクルで軌道修正を繰り返すことで、経営判断のスピードが上がり、年度末の目標達成の確度を格段に高めることができます。 5. 現場へのフィードバックと対話を徹底する 予実差異の原因を分析し、改善策を実行するためには、管理部門から現場へ一方的に指示するのではなく、双方向の対話を徹底することが重要です。差異が生まれた背景や真の原因は、日々の業務を行っている現場にしかわからない情報の中に隠れていることが多いからです。 例えば、予算未達の結果に対して単に「なぜ達成できなかったのか」と詰問するのではなく、「何が障壁になっているか」「どうすればうまくいくか」を共に考える姿勢が求められます。 分析結果を現場と共有し、対話を通じて改善策を一緒に考えるプロセスが、現場の主体性を引き出し、実効性のある打ち手につながるのです。 💬 ひとことポイント予実管理は「管理」という言葉がついていますが、本質は「対話」です。数字をきっかけに現場と対話し、一緒に未来を創っていくことが成功の秘訣です。 予実管理に使うツールは?Excelとシステムの比較 予実管理を始めるにあたり、多くの企業がまずExcel(スプレッドシート)を利用します。しかし、事業の拡大とともにExcelでの管理に限界を感じ、専用の「予実管理システム」へ移行するケースも少なくありません。 ここでは、それぞれのツールのメリット・デメリットを比較し、自社に合った選び方を解説します。 1. まずはExcel(スプレッドシート)から始めるメリット・デメリット 結論として、特に中小企業や小規模な部門で予実管理を始める場合、追加コストがかからず、多くの人が使い慣れているExcelは非常に有効なツールです。 しかし、その手軽さの裏には、事業規模が大きくなるにつれて顕在化するデメリットも存在します。 メリットデメリットコスト・追加の導入費用が不要・大規模な運用には不向き操作性・多くの従業員が基本的な操作に習熟している・関数やマクロの知識が必要になる場合がある柔軟性・自社の管理項目に合わせて自由にフォーマットを作成可能・フォーマットが属人化しやすい共有・集計・メールや共有フォルダで簡単に共有できる・複数人での同時編集が難しい<br>・各部署からのデータ集計に手間がかかる管理・手軽に始められる・ファイルが増え、バージョン管理が煩雑になる Excelは導入のハードルが低く、まずは予実管理を試してみたいというフェーズにおいて最適な選択肢と言えます。 2. Excelでの管理に限界を感じたら「予実管理システム」の導入を検討 「各部署のExcelファイルを集計するのに時間がかかりすぎる」「どのファイルが最新かわからなくなる」といった課題に直面したら、それは「予実管理システム」の導入を検討すべきサインです。 予実管理システムは、Excel管理で発生しがちな問題を解決するために設計されています。 例えば、会計システムや販売管理システムから実績データを自動で取り込んだり、複数の担当者が同時に入力したりすることが可能です。これにより、手作業による集計工数や入力ミスが劇的に削減されます。 データの収集・集計作業を自動化し、分析や改善策の検討といった本来注力すべき業務に時間を使えるようにすることが、システムを導入する最大のメリットです。 💬 ひとことポイントツールの選択は会社のフェーズに合わせましょう。最初はExcelで十分。しかし「集計が大変」「ミスが多い」と感じたら、それは事業が成長している証拠であり、システム化を考える良いタイミングです。 専門家の伴走で予実管理を成功させたいならEncoachへ 自社だけで予実管理を軌道に乗せるのが難しい、あるいは、もっと質の高い経営判断に繋げたいとお考えなら、専門家の知見を活用するのも有効な選択肢です。 私たちEncoachは、単なる数値管理に留まらない、貴社の未来をデザインするための伴走支援を提供します。ここでは、Encoachが提供する具体的なサービスをご紹介します。 1. 貴社に合わせた予実管理体制の構築をゼロから支援 結論として、Encoachは貴社の事業内容や成長フェーズに合わせ、最適な予実管理の仕組みをゼロから構築するサポートを行います。 なぜなら、画一的なテンプレートを当てはめるのではなく、経営者が本当に見るべき数値を可視化し、自走できる体制を作ることが重要だと考えているからです。 具体的には、事業計画のヒアリングから始まり、未来の資金繰りまでを見据えた管理表の作成を伴走支援します。感覚的な経営から脱却し、客観的な数字に基づいて事業をコントロールできる体制を共に作り上げます。 2. 経営判断を加速する月次レビューの定例化と質の向上 Encoachは、月次での予実レビューを定例化し、その質を高めることで、経営判断のスピードと精度を向上させます。 予実管理は、一度仕組みを作って終わりではなく、定期的な振り返りと軌道修正のサイクルを回し続けることに本質があるからです。 私たちは、毎月のレビューに同席し、差異分析のサポートや次のアクションに繋がる問いかけを行います。これにより、経営者が財務状況をリアルタイムで把握し、自信を持って次の打ち手を決定できる「攻めの経営」への変革を後押しします。 3. 資金調達や事業計画策定まで見据えたコンサルティング 私たちの支援は、足元の予実管理に留まりません。将来の成長に必要な資金調達や、その基盤となる説得力のある事業計画の策定までを一貫してサポートします。 金融機関や投資家は、事業の将来性を数字で示すことができる企業を評価するため、精緻な事業計画と予実管理の実績は不可欠です。 Encoachは、成長ストーリーを具体的な数値計画に落とし込み、金融機関の紹介まで含めた資金調達の実行を支援します。 会社の未来をより良くするための第一歩として、まずはお気軽にLINE相談ください。 LINEで無料相談を申し込む 💬 ひとことポイント専門家の活用は、時間と精度を買う賢い投資です。社内に知見がない段階でも、プロの伴走があれば最短ルートで効果的な予実管理体制を築けます。 予実管理に関するよくある質問 予実管理について、多くの経営者や管理職の方から寄せられる代表的な質問にお答えします。疑問を解消し、予実管理への理解をさらに深めましょう。 Q1. 中小企業や個人事業主でも予実管理は必要ですか? 結論から言うと、むしろ経営資源が限られる中小企業や個人事業主にとってこそ、予実管理は極めて重要です。 なぜなら、どんぶり勘定の経営では、気づかないうちに資金繰りが悪化したり、事業機会を逃したりするリスクが高いからです。 予実管理を行えば、売上の減少や想定外のコスト増といった経営リスクを早期に察知し、手遅れになる前に対策を打つことができます。経営状況を客観的な数字で把握し、安定した事業運営と成長の基盤を築くために、事業規模に関わらず予実管理は必須の経営ツールと言えます。 Q2. 予実管理はプロジェクトのスケジュール管理にも応用できますか? はい、応用できます。予実管理の基本的な考え方は「計画と実績を比較し、その差異を分析して改善に繋げる」ことであり、これはプロジェクト管理にもそのまま当てはまります。 プロジェクトにおいては、売上やコストといった「お金」の予算だけでなく、作業工数や進捗率といった「時間」の予算も設定します。 そして、計画したスケジュールと実際の進捗を比較し、遅れが生じている場合はその原因を分析して、リソースの再配分などの対策を講じます。お金、時間、人のリソースを計画通りに進め、プロジェクトを成功に導くために、予実管理のフレームワークは非常に有効です。 Q3. 赤字部門の予実管理は、どのように進めれば良いですか? 赤字部門の予実管理で最も重要なのは、赤字からの脱却という明確な目標を設定し、その原因を徹底的に分析することです。 まずは、なぜ赤字に陥っているのかを「売上」「変動費」「固定費」に分解して分析します。原因が、売上か、原価か、あるいは人件費や家賃などの固定費なのかを特定するのです。 その上で、例えば「3ヶ月で単月黒字化する」といった具体的な利益目標を立て、コスト削減や売上向上施策など、原因に直接アプローチするアクションプランを実行・管理していくことが重要です。 Q4. 予実差異の分析は、具体的に何を見れば良いのでしょうか? 予実差異の分析では、単に「予算と実績の差額」を見るだけでは不十分です。なぜその差異が生まれたのかを深掘りするために、差異をさらに分解して見ることが重要になります。 例えば、売上高の差異であれば、「販売単価の変動による差異(価格差異)」と「販売数量の変動による差異(数量差異)」に分けて分析します。 これにより、「値引きが原因で利益が減ったのか」あるいは「販売個数が足りなかったのか」といった真の原因が明確になり、より的確な対策を立てることが可能になります。 まとめ:予実管理は目標達成への最短ルート。まずは第一歩から踏み出そう 本記事では、予実管理の基本的な意味から、そのメリット、具体的な進め方、そして成功させるためのコツまでを網羅的に解説しました。 予実管理とは、単なる数字の管理作業ではなく、会社の目標達成というゴールに向かって、現在地と進むべき方向を確認するための「経営の羅針盤」です。 経営状況を「見える化」し、迅速な意思決定を可能にすることで、変化の激しい時代を乗り越えるための強力な武器となります。 「難しそう」と感じるかもしれませんが、まずはExcelを使って、売上と主要な経費だけでも管理を始めてみましょう。大切なのは、完璧を目指すことよりも、まずは第一歩を踏み出し、PDCAサイクルを回し始めることです。 -
財務会計・税務会計・管理会計の違いとは?目的・役割から実務まで専門家が解説
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「財務会計、税務会計、管理会計。言葉は聞くけど、それぞれの違いがよくわからない…」「会社の数字を経営に活かしたいけど、どこから手をつければいいの?」 この記事では、そんなお悩みを解決するため、3つの会計の目的や役割の違いを、専門家が図解や比較表を交えて徹底解説します。 この記事を読ばれば、各会計の本質が理解でき、税務だけでなく、会社の未来を創る「管理会計」の重要性に気づくはずです。会社の数字を武器に変え、攻めと守りの経営を実現しましょう。 まずは結論!財務・税務・管理会計の主な違いが一目でわかる比較表 会社の経営に不可欠な「会計」には、大きく分けて「財務会計」「税務会計」「管理会計」の3種類が存在します。 これらは目的や作成ルールが異なり、それぞれが重要な役割を担っています。まずは、3つの会計の主な違いを比較表で確認しましょう。 比較項目財務会計税務会計管理会計①目的利害関係者(株主・銀行など)への財政状態と経営成績の報告税金の計算と納税経営者の意思決定支援②報告先株主、投資家、銀行などの利害関係者税務署経営者、役員、事業部長など社内の管理者③ルール企業会計原則などの会計基準法人税法などの税法会社独自のルール(定めなし)④時間軸過去の実績過去の実績過去・現在・未来⑤強制力法律で義務付けられている(会社法など)法律で義務付けられている(税法)任意 経営者が知るべき財務・税務・管理会計の5つの決定的違い 財務会計、税務会計、管理会計は、一見すると同じ「会計」という枠組みにありますが、その中身は大きく異なります。これらの決定的な違いは、主に以下の5つの観点から整理すると明確に理解できます。 目的:「誰のため」の会計か? 報告先:「誰に」報告するのか? ルール:「何に」基づいて作成するか? 時間軸:「いつ」の情報を扱うか? 強制力:作成義務はあるのか? これらの違いを理解することが、会社の数字を正しく読み解き、的確な経営判断を下すための第一歩です。それぞれ詳しく見ていきましょう。 1. 目的:「誰のため」の会計か?外部報告・納税・内部活用の違い 3つの会計の最も根本的な違いは、「誰のために、何を目指して行うのか」という目的にあります。 財務会計は、株主や銀行といった会社の外部にいる利害関係者(ステークホルダー)に対し、会社の財政状態や経営成績を正しく報告することが目的です。 一方、税務会計は、国や地方自治体に納めるべき税金の額を公平かつ正確に計算するために行われます。そして管理会計は、経営者や管理職が自社の経営状況を把握し、今後の戦略を立てるなど、社内の意思決定に役立てることを目的としています。 このように、目的が異なるため、それぞれのアウトプットも異なってくるのです。 2. 報告先:「誰に」報告するのか?利害関係者・税務署・経営者の違い 会計情報が「誰に報告されるのか」という報告先も、3つの会計を明確に区別するポイントです。 財務会計の報告先は、会社の外部にいる株主、投資家、金融機関といった利害関係者です。 彼らは、その報告書(財務諸表)を見て、その会社に投資すべきか、融資すべきかを判断します。 税務会計の報告先は、言うまでもなく税務署です。計算された所得に基づき、法人税などの申告書を提出し、納税義務を果たします。対照的に、管理会計の報告先は、社長や役員、事業部長といった社内の経営・管理層に限定されます。 外部に公表するものではなく、あくまで内部での活用が前提となります。 3. ルール:「何に」基づいて作成するか?会計基準・税法・独自ルールの違い 各会計が準拠するルールは、それぞれの目的を反映して定められています。 財務会計は、すべての企業が同じ基準で比較できるよう、「企業会計原則」などの一般に公正妥当と認められた会計基準に基づいて作成されます。 これにより、投資家は客観的な指標で企業を評価できます。 税務会計が従うのは、「法人税法」や「所得税法」といった税法です。これは、公平な課税を実現するための法律であり、すべての企業に一律で適用されます。 一方で、管理会計には法律や基準といった統一されたルールは存在しません。経営判断に役立つのであれば、会社ごとに完全に自由な形式や指標を用いて分析・報告することが可能です。 4. 時間軸:「いつ」の情報を扱うか?過去の実績と未来の予測の違い 会計が扱う情報の「時間軸」にも、明確な違いがあります。 財務会計と税務会計は、基本的に「過去」の活動実績をまとめたものです。 例えば、財務会計における損益計算書は、過去1年間の経営成績を示しますし、税務会計も過去の事業年度の所得に対して税額を計算します。 これに対して、管理会計は過去の実績分析はもちろんのこと、「未来」の予測も非常に重視します。 来期の売上目標を立てるための「予算編成」や、プロジェクトの将来的な収益性を評価する「投資判断」など、未来志向の経営戦略に不可欠な情報を提供するのが管理会計の大きな特徴です。 5. 強制力:作成義務はあるのか?法律で定められた義務と任意の取り組みの違い 会計の作成が法律で義務付けられているかどうか、という「強制力」の有無も大きな違いです。 財務会計(決算書の作成・開示)と税務会計(税務申告)は、それぞれ会社法や金融商品取引法、そして税法によってすべての会社に義務付けられています。 これらの義務を怠ると、罰則が科される可能性もあります。 一方で、管理会計の導入や運用は、完全に企業の「任意」です。 法律による作成義務はないため、実施しなくても罰せられることはありません。しかし、的確な経営判断や迅速な意思決定のためには極めて重要であり、多くの成長企業が積極的に取り入れているのが実情です。 💬 ひとことポイント3つの会計の違いは、「目的」「報告先」「ルール」「時間軸」「強制力」の5つの視点で整理するとスッキリ理解できます。特に「誰のために(目的)」を意識することが、各会計の本質を掴むカギです。 財務会計とは?会社の「成績表」としての役割 財務会計は、会社の経済活動を外部の利害関係者に報告するための会計です。その役割は、主に以下の3つのポイントで理解することができます。 最大の目的:利害関係者(株主・銀行など)への情報開示 準拠すべきルール:「企業会計原則」などの会計基準 主な作成書類:財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書) 株主や金融機関といった社外の人々が、会社の経営状況を客観的に判断できるよう、「会社の成績表」を作成し、開示する役割を担います。それぞれ解説していきます。 1. 利害関係者(株主・銀行など)への情報開示が最大の目的 財務会計の最大の目的は、株主や投資家、銀行などの社外の利害関係者に対して、企業の財政状態や経営成績を正しく報告することです。 なぜなら、これらの利害関係者は、公開された財務情報をもとに、その会社への投資を続けるべきか、新たにお金を貸しても大丈夫か、といった重要な意思決定を行うからです。 例えば、投資家は将来の収益性を、銀行は融資の返済能力を、財務諸表から読み取ろうとします。このように、財務会計は会社の信頼性を外部に示すための、非常に重要なコミュニケーションツールとしての役割を果たしているのです。 2. 準拠すべきは「企業会計原則」などの会計基準 財務会計は、すべての企業が共通の物差しで評価されるよう、「企業会計原則」などの一般に公正妥当と認められた会計基準に基づいて作成しなければなりません。 これは、会社ごとにバラバラのルールで決算書を作成してしまうと、企業間の比較ができなくなり、利害関係者が客観的な判断を下せなくなるためです。 例えば、企業会計原則を構成する7つの一般原則の一つである「明瞭性の原則」では、財務諸表によって利害関係者に対し必要な会計事実を明瞭に表示し、判断を誤らせないようにすることを求めています。こうした統一されたルールに従うことで、財務諸表の信頼性と客観性が担保されるのです。 3. 主な作成書類:財務三表(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書) 財務会計のアウトプットとして最も重要な書類が、「財務三表」と呼ばれる以下の3つです。これらは、それぞれ異なる切り口から会社の経営状態を映し出すため、3つをセットで見ることで会社の全体像を立体的に把握できます。 貸借対照表(B/S)決算日時点での会社の財産(資産)と借金(負債)、そして元手(純資産)のバランスを示し、「財政状態」がわかります。 損益計算書(P/L)一会計期間にどれだけ儲けたか(収益)、そのためにいくら使ったか(費用)、そして最終的に利益がいくら残ったかという「経営成績」を示します。 キャッシュフロー計算書(C/S)一会計期間における現金の収入と支出の流れ(キャッシュフロー)を、「営業活動」「投資活動」「財務活動」の3つの区分で示します。 💬 ひとことポイント財務会計は「外部向けの公式レポート」。利害関係者が会社の健康状態を正しく診断できるよう、国が定めた共通のルール(会計基準)に沿って作成することが鉄則です。 税務会計とは?「納税額」を正確に計算するための会計 税務会計は、会社が納めるべき税金の額を、法律に基づいて正しく計算するために特化した会計分野です。その特徴は、以下の3つの観点から整理できます。 目的:公平な課税の実現 根拠:「法人税法」などの税法 特徴:財務会計の「利益」と税務会計の「所得」にはズレが生じる 財務会計が会社の「成績表」であるのに対し、税務会計は「納税申告書」を作成するための計算プロセスと言えます。詳しく見ていきましょう。 1. 公平な課税を実現するための会計処理 税務会計の唯一の目的は、法人税や事業税などの税額を正確に算出し、国や地方自治体に申告・納税することです。 これは、国の財政を支える重要な税収を確保するとともに、「租税公平主義」の観点から、すべての法人に公平な税負担を求めるために行われます。 もし、各社が財務会計で作成した「利益」をそのまま課税対象にしてしまうと、会社ごとに採用する会計処理の方法によって税額に差が生まれ、不公平が生じる可能性があります。そこで、税法という統一されたルールのもとで課税対象となる「所得」を計算し、公平な課税を実現するのが税務会計の役割なのです。 2. 根拠となるのは「法人税法」などの税法 税務会計が準拠すべき絶対的なルールは、「法人税法」や「所得税法」、「消費税法」といった税法です。 財務会計が「企業会計原則」という複数の基準から成り立つことに対し、税務会計は課税の公平性と強制力を持つ法律のみを根拠とします。 例えば、財務会計上は全額費用として計上できる接待交際費も、税法上は資本金の額に応じて損金(税務上の費用)として認められる金額に上限が設けられています。このように、ある支出が費用になるかならないかは、最終的に税法の規定によって判断されるため、経営者は財務会計上の感覚だけでなく、税法特有のルールを理解しておくことが不可欠です。 3. なぜ発生する?財務会計の「利益」と税務会計の「所得」のズレを具体例で解説 財務会計上の「利益」と税務会計上の「所得」の金額は、多くの場合一致しません。 これは、両者の目的の違いから、収益(益金)や費用(損金)として認識する範囲とタイミングに「ズレ」が生じるためです。 財務会計は利害関係者への報告を目的とする一方、税務会計は公平な課税を目的としているため、考え方が異なるのです。 このズレには、いずれ解消される「一時差異」と、永久に解消されない「永久差異」があります。例えば、将来の退職金支払いに備える「退職給付引当金」は、財務会計では将来の負担に備えて当期の費用として計上しますが、税務会計では実際に支払われるまで損金とは認められません。この結果、会計上の「利益」よりも税務上の「所得」のほうが大きくなります。 💬 ひとことポイント税務会計は「税金計算のための専門ルール」。財務会計の利益がそのまま税金の対象になるわけではない、ということを覚えておきましょう。税法独自のルールを理解することが、適切な納税と節税の第一歩です。 管理会計とは?会社の「未来」を創るための経営の武器 財務会計や税務会計が過去の実績を報告する「守りの会計」であるのに対し、管理会計は会社の「未来」を創り出すための「攻めの会計」と言えます。その役割と特徴は、以下の3点で理解できます。 役割:経営者の意思決定をサポートする社内向け情報 特徴:決まったルールはなく、目的に応じて自由に設計可能 活用例:予実管理・原価計算・資金繰り管理 法律で定められた義務ではなく、あくまで経営者が自社の経営をより良くするための道具です。それぞれ解説します。 1. 経営者の意思決定をサポートする社内向け情報 管理会計の最大の役割は、経営者が的確な意思決定を下すために必要な社内向けの情報を提供することです。 外部向けの財務会計情報だけでは、「どの商品が一番儲かっているのか」「この事業から撤退すべきか」といった具体的な経営判断は困難です。 管理会計では、部門別や製品別の損益、プロジェクトごとの採算性など、経営者が知りたい情報を、経営者が判断しやすい形式でスピーディーに提供します。これにより、感覚や経験だけに頼るのではなく、具体的なデータに基づいた客観的で質の高い意思決定が可能になるのです。 2. 決まったルールはなく、目的に応じて自由に設計可能 管理会計には、財務会計の「企業会計原則」や税務会計の「税法」のような、守らなければならない統一的なルールは一切存在しません。 そのため、各企業が自社の経営目標や事業内容に応じて、完全に自由にその仕組みを設計できるのが大きな特徴です。 例えば、飲食チェーンであれば店舗ごとの売上や利益率を比較するでしょうし、IT企業であれば顧客獲得コストや解約率といった独自の指標(KPI)を重視するかもしれません。このように、自社の戦略に合わせてオーダーメイドの「経営の羅針盤」を作れる自由度の高さが、管理会計の強みなのです。 3. 具体的な活用例:予実管理・原価計算・資金繰り管理 管理会計は、具体的な手法として以下のようなものに活用され、経営の舵取りをサポートします。これらは会社の現状を可視化し、未来の行動計画を立てる上で不可欠なツールです。 予実管理年度や月次で立てた売上や利益の「予算」と「実績」を比較・分析する手法です。目標達成度を測り、計画とのズレが生じた原因を早期に特定し、軌道修正を図るために行われます。 原価計算製品やサービスごとにかかった費用(原価)を正確に計算することです。これにより、儲かっている製品・損している製品が明確になり、適切な価格設定やコスト削減策の立案に繋がります。 資金繰り管理将来の現金の出入りを予測し、資金ショートを防ぐための管理活動です。いつ、いくら資金が不足しそうかを事前に把握し、融資の申し込みなど先手を打つことが可能になります。 💬 ひとことポイント管理会計は「未来のための社内作戦会議ツール」。決まったフォーマットはありません。自社の目標達成のために「どんな情報が必要か?」を考え、自由にカスタマイズできるのが最大の魅力です。 管理会計の欠如が招く経営リスク|不正の兆候を見逃さないために 管理会計は、単に経営判断を助けるだけでなく、社内の不正を防止し、健全な組織を維持するための「守りの機能」も果たします。管理会計が機能していない「どんぶり勘定」の会社は、知らないうちに以下のような深刻な経営リスクを抱え込んでいる可能性があります。 「どんぶり勘定」が不正の温床になる 数値の異常放置が横領や不正会計につながる 内部統制が機能せず、不正を未然に防げない 不正の疑いがあっても、自社だけでの解決が困難 ここでは、具体的なリスクと対策を解説します。 1. 「どんぶり勘定」が不正の温床になる理由 お金の流れを大雑把にしか把握しない「どんぶり勘定」は、経理不正が発生しやすい土壌そのものです。 売上や経費の管理が曖昧で、誰が何にお金を使っているのかが不明確な状態では、不正な支出や着服があっても気づくことが困難です。 例えば、経費精算のルールが曖昧であれば、カラ出張や水増し請求といった不正が容易に行えてしまいます。しっかりとした管理会計の仕組みがなく、お金の流れがブラックボックス化している状態は、不正を企む者にとって絶好の機会を与えてしまうのです。 2. 数値の異常放置が横領や不正会計につながる危険性 管理会計を導入していないと、帳簿上の小さな数値の異常を見過ごしてしまいがちですが、それが大規模な横領や不正会計の兆候であるケースは少なくありません。 例えば、「原因不明の棚卸資産の減少」や「特定の取引先への支払いの急増」といった異常値を放置すると、不正行為はエスカレートしていきます。 最初は少額の出来心だった不正が、発覚しないことに味をしめて次第に大胆かつ大規模になり、気づいたときには会社経営を揺るがすほどの損害に発展している危険性があります。管理会計によって日頃から数値を詳細にモニタリングしていれば、こうした異常を早期に察知し、被害の拡大を防ぐことが可能です。 3. 内部統制の構築:管理会計で不正を未然に防ぐ仕組みづくり 不正を未然に防ぐためには、管理会計を活用した「内部統制」の仕組みを構築することが極めて重要です。 内部統制とは、社内で不正やミスが起こらないように、業務のプロセスやルールを整備し、適切に運用することです。 例えば、経費の申請者と承認者を分ける、現金や預金の管理担当者と記帳担当者を分ける(職務分掌)といったルールを設けることが挙げられます。管理会計の導入は、こうした業務プロセスの可視化と標準化を促し、相互牽制の効いた体制づくりに直結します。結果として、特定の個人に権限が集中することを防ぎ、不正が起こりにくいクリーンな経営環境を実現するのです。 4. 万が一不正の疑いがある場合は、迷わず専門調査機関へ相談を もし社内で不正の疑いが浮上した場合は、自社だけで解決しようとせず、速やかに探偵社や調査会社といった専門調査機関へ相談することが賢明です。 不正の調査には、高度な専門知識と客観的な視点が求められます。 不用意に社内で調査を進めると、証拠を隠滅されたり、人間関係の悪化を招いたりするリスクがあります。 企業調査を専門とする調査会社は、法的な知識と豊富な経験に基づき、慎重かつ確実に事実関係を調査します。不正の証拠を確保し、法的な手続きに進む場合でも、専門家の支援は心強い味方となるでしょう。 💬 ひとことポイント管理会計は「社内の監視カメラ」。お金やモノの動きを細かく見える化することで、不正の芽を早期に発見し、クリーンな経営環境を維持する「守りの砦」としての役割も担っています。 財務・税務・管理会計に関するよくある質問 ここでは、財務会計、税務会計、管理会計について、経営者や経理担当者から寄せられることの多い質問にお答えします。日々の業務や経営判断に役立つポイントを、Q&A形式でわかりやすく解説します。 Q1. 個人事業主に関係があるのはどの会計ですか? A. 個人事業主にとって最も直接的に関係するのは「税務会計」ですが、事業を成長させるためには「管理会計」の視点も重要になります。 個人事業主には、法人と違って決算を外部に公表する義務がないため、利害関係者への報告を目的とする「財務会計」の必要性は高くありません。 しかし、事業で得た所得に対する所得税の納税義務があるため、税法に基づいて収支を計算し、確定申告を行う「税務会計」は必須です。さらに、日々の経営状態を把握し、事業の成長戦略を立てるために、管理会計の手法を取り入れて売上や経費を分析することが、安定経営への近道です。 Q2. 財務会計と税務会計の具体的なズレ(申告調整)にはどんなものがありますか? A. 会計上の「利益」と税務上の「所得」のズレには、将来的に解消される「一時差異」と、永久に解消されない「永久差異」の2種類があります。このズレは、財務会計と税務会計で収益や費用を認めるタイミングや範囲が異なるために生じます。 一時差異の例減価償却費の限度超過額や、賞与・退職給付引当金などが代表例です。これらは会計上は費用として計上しますが、税務上は一定の限度額を超えた部分や、実際に支出されるまでは損金として認められません。ただし、将来的にはその差は解消されます。 永久差異の例税務上の損金として認められない寄付金や、上限を超えた交際費などが該当します。これらは会計上は費用でも、税務上は永久に損金とならないため、差が解消されることはありません。 Q3. 中小企業が管理会計を始めるには何から手をつければ良いですか? A. まずは「月次決算」の早期化と、自社の「現状を正確に把握する」ことから始めるのが最も効果的です。 どんぶり勘定から脱却し、経営判断に使える精度の高い情報を得るための第一歩です。 具体的には、月初5営業日以内には前月の試算表を完成させ、タイムリーに経営数値を把握できる体制を整えましょう。その上で、商品別・サービス別・得意先別といったセグメントで売上や利益を分解し、「どの事業が儲かっているのか」を可視化します。この現状分析が、次の打ち手となる具体的な目標設定や課題発見に繋がるのです。 Q4. 税務会計に関する知識を証明する資格はありますか? A. 税務会計の専門知識を証明する最も代表的な国家資格は「税理士」です。 税理士は税の専門家であり、税務代理、税務書類の作成、税務相談の3つは法律で定められた独占業務です。法人税や所得税、消費税など、複雑な税法の知識を駆使して適正な納税をサポートする役割を担います。 また、企業の財務諸表が適正であることを証明する監査を独占業務とする「公認会計士」も、税理士登録をすることで税理士と同様の業務を行えます。その他、日商簿記検定1級などの会計資格も、税務会計の基礎となる知識を証明するものとして評価されます。 まとめ:3つの会計を正しく理解し、攻めと守りの経営を実現しよう ここまで、財務会計、税務会計、管理会計という3つの会計の違いとそれぞれの役割について解説してきました。 財務会計: 利害関係者からの信頼を得るための「守り」 税務会計: 法令を遵守し、納税義務を果たすための「守り」 管理会計: データに基づいた意思決定で未来を創る「攻め」 これら3つの会計は、どれか一つだけ行えば良いというものではなく、それぞれが相互に関連し合いながら会社の経営を支えています。 健全で持続的な成長を目指す上で、税務会計だけでなく、自社の未来を切り拓く武器となる「管理会計」の視点を持つことが極めて重要です。過去の実績をまとめる財務・税務会計だけでは、厳しい競争環境を勝ち抜くことはできません。 自社の強みや弱みを数字で把握し、次の戦略を立てるための管理会計を導入することで、初めて攻守のバランスがとれた強固な経営体制が築かれるのです。 財務戦略でお悩みなら、Encoach株式会社へご相談ください 財務の重要性は理解できても、自社だけで最適な戦略を立て、実行するのは容易ではありません。Encoach株式会社は、代表の北園が大手税理士法人で1,000社以上の経営者を支援した経験を基に設立した、経営財務コンサルティングのプロフェッショナル集団です。 私たちは、単なる数字のアドバイスにとどまらず、経営者の「想い」を実現するための「未来の数字」を共に創り上げる伴走支援を信条としています。 資金繰りの不安解消から、成長を加速させるための資金調達、M&A戦略まで、財務に関するあらゆる課題に、経営者の右腕として寄り添います。会社の未来をより良くするための第一歩として、まずはお気軽にLINE相談ください。 LINEで無料相談を申し込む -
住宅ローン控除は借り換えでどうなる?金利切り替えでの注意点と計算方法を解説
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最近、金利の上昇を受けて、住宅ローンの金利を変動型から固定型に切り替える人が増えています。 その際に行う「借り換え」ですが、すでに住宅ローン控除を受けている方は要注意。旧ローンの控除がそのまま使えるとは限りません。 この記事では、住宅ローンの借り換えをした場合の住宅ローン控除の継続・計算方法・注意点についてわかりやすく解説します。始めてください。 住宅ローン控除とは?おさらい まずは基本を確認しましょう 控除期間:通常10年(条件により13年もあり) 控除率:年末ローン残高の0.7%(2024年以降の新制度) 控除限度額:新築・中古・省エネ住宅で異なる 控除対象:自分が住む住宅に限る 借り換えをしても控除は受けられるの? 答えは 「条件を満たせばOK」 です。ただし、控除が「引き継げる」のではなく、「新しいローンに対して再度控除の適用を受ける」形となります。 要件を満たせば、残りの控除期間について控除が可能です。 控除額の計算は「新ローンの借入額」ではなく、「旧ローンの年末残高相当額」が基準になります。 【図解】借り換え前後のローン残高と住宅ローン控除の違い 以下の図をご覧ください。固定金利へ借り換えた場合の控除額の違いを視覚的に示しています。 オーバーローンのケース(上図の右側) 借り換え前の旧ローン残高:2,800万円借り換え後の新ローン額:3,000万円(諸費用込み)借り換え後の新ローンの年末残高 2,900万円 計算:2,800万円×2,900万円/3,000万円=2,706万円控除対象残高:2,706万円控除額:2,706万円 × 0.7% = 18.94万円(増額分は控除対象外) ※借り換え2年目以降も同様に計算を行う必要があります。このように、借り換え後のローン額すべてが控除対象になるわけではない点に注意が必要です。 参考:国税庁 No.1233 住宅ローン等の借換えをしたとき 借り換え後に控除を受けるための要件 控除の継続には、以下の条件を満たす必要があります。 要件内容借り換え後の返済期間10年以上であること居住要件引き続き自宅として使用していること控除年数元の住宅ローンの残り年数分(延長不可) よくある誤解・注意点 借り換えたら控除がゼロになる? → いいえ、条件を満たせば継続可能 借り換えたローン全額が控除対象? → いいえ、旧ローン残高相当まで 控除期間がリセットされる? → いいえ、残存期間を引き継ぎます まとめ 住宅ローンの金利上昇に対応して借り換えを検討するのは、将来の家計を守る上でとても重要です。しかし、住宅ローン控除の仕組みを正しく理解しないと、節税のつもりが損になることも。特に借り換え後の「控除対象残高」や「控除継続の要件」には注意しましょう。迷ったときは税理士など専門家への相談もおすすめです。
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